Hothotレビュー
ソニー「VAIO Pro 13 | red edition」
~世界最軽量13.3型Ultrabookの特別モデル
(2013/6/28 00:00)
ソニーは6月10日、VAIOシリーズの2013年夏モデルを発表したが、同時に赤い筐体の新シリーズ「VAIO | red edition」も発表された。VAIO | red editionの第1弾は、夏モデルとして発表されたVAIO Pro 13/11、VAIO Duo 13、VAIO Fit 15/14の5シリーズがベースとなる。VAIO | red editionは、特別な塗装が施されているだけでなく、ベースモデルよりも高いスペックを選べるほか、限定サポートプランや専用ケースなども用意されている。まさに、こだわり派のための特別モデルだ。
今回は、VAIO Pro 13をベースとした「VAIO Pro 13 | red edition」(以下、VAIO Pro 13 red)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様、性能などが異なる可能性がある。
4層塗装+手磨き仕上げによって実現された深みのある赤色
VAIO Pro 13 redのボディは、その鮮やかで深みのある赤色が素晴らしい。単に赤い色で塗られたノートPCは、過去にいくらでも登場してきたが、VAIO Pro 13 redの美しい赤色は、そうした製品とは全く異なる。それもそのはず、VAIO | red editionは、この赤色にこだわり、通常の塗装よりも、遙かに手の込んだ塗装が施されているのだ。それも、材質に応じて塗装方法を変える、念の入れようだ。VAIO Pro 13 redの場合、上面と背面はUDカーボン製で、4層塗装+手磨き仕上げが施されており、キーボードベゼル部分は、モールドなので、クリアコーティングを含む3層塗装が施されている。まるで高級車のような塗装の光沢と質感は、これまでのPCにはなかったものだ。
VAIO Pro 13 red(およびベースとなったVAIO Pro 13)は、13.3型液晶搭載Ultrabookとして、世界最軽量を実現している。ベースモデルのVAIO Pro 13の本体サイズは、322×216×12.8~17.2mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.06kgである。13.3型クラスながら、重量は他社の11.6型クラスと比べても遜色はなく、手に持ってみても非常に軽い。携帯性を重視する人に向いた製品といえる。
ハイスピードSSDや店頭モデルの2倍のメモリを搭載
次に、基本スペックを見ていこう。VAIO Pro 13 redは、VAIOオーナーメードモデルと同じく、BTOにより仕様のカスタマイズが可能だ。CPUは、コードネーム「Haswell」こと、第4世代CoreプロセッサのCore i7-4500U(1.8GHz)またはCore i5-4200U(1.6GHz)から選択できる(店頭モデルはCore i5-4200Uのみ)。メモリ容量は8GB固定であり、こちらも店頭モデルの4GB固定に比べて、スペックが向上している。ストレージは、PCI Express接続のハイスピードSSDで、容量は512GBまたは256GBから選べる。店頭モデルは、SATA接続の128GB SSDであり、容量、インターフェイス帯域ともにVAIO Pro 13 redの方が上である。基本スペックを重視する人も、red editionを選択する意味があるだろう。今回の試用機は、Core i7-4500Uと128GB SSDを搭載していた(128GB SSDは、本来red editionでは選択できない。なお、後述のベンチマーク結果から、このSSDはSATA接続ではなく、PCI Express接続のようだ)。
液晶は13.3型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応である。2013年夏モデルのUltrabookは、液晶の高解像度化が一気に進み、3,200×1,800ドット液晶や2,560×1,440ドット液晶を搭載する製品も登場したため、特に高解像度とはいえなくなった感もあるが、13.3型のフルHDというのは、ドットピッチがあまり小さくならず、バランスのとれた解像度であり、一度に表示できる情報量も1,366×768ドットや1,600×900ドットに比べて多いため、使い勝手がよい。液晶パネルはIPS方式なので、視野角が広く、斜めからみても色が変わらない。また、「トリルミナスディスプレイ for mobile」と呼ばれるプレミアム液晶が搭載されており、発色も優れている。液晶の表示品位に関しても、Ultrabookの中ではトップクラスといえる。液晶上部には、有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
キーボードとタッチパッドの操作性は良好
キーボードはアイソレーションタイプの全87キーで、キーピッチは約19mmと余裕がある。キーストロークは約1.4mmで、こちらもUltrabookとしては深めだ。配列も標準的で、不等キーピッチもないため、快適なタイピングが可能だ。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。Ultrabookでは一般的な、パッドとボタンが一体化したタイプだが、パッドのサイズが大きく操作しやすい。パッドには、NFCリーダーが内蔵されており、NFCデバイスとの間で非接触通信が可能だ。
インターフェイスとしては、USB 3.0×2、HDMI出力、ヘッドフォン出力(ヘッドセット対応)、SDメモリーカードスロットを備えている。Ultrabookとしては標準的と言えるだろう。USB 3.0ポートのうち1つは、本体の電源がオフでも給電が可能なので、スマートフォンやデジカメなどの充電に便利だ。
ワイヤレス機能としてはIEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0+HSをサポートする。
オプションとしてACアダプタと一体化できるワイヤレスルーターが用意
付属のACアダプタは、VAIO Duo 13と同じくUSBポートを備えており、VAIO Pro 13 red本体に電力を供給しながら、同時にUSB給電によってスマートフォンなどの充電が可能だ。オプションとしてこのACアダプタとドッキングして使うワイヤレスルーターが用意されているのも面白い。今回は、このワイヤレスルーター「VGP-WAR100」も一緒に試用することができたので紹介しよう。
VGP-WAR100は、コンパクトなワイヤレスルーターであり、VAIO Pro 13 redなどに付属するUSB給電対応ACアダプタから電源の供給を受けて動作する。VGP-WAR100は、ACアダプタと一体化できるので、持ち歩きにも便利だ。VAIO Pro 13は、有線LANには対応していないが、VGP-WAR100を利用すれば、その代わりとなる。出張などで、ホテルの部屋に有線LANしか用意されていない場合などに役立つ。
また、オプションとしてHDMI出力をミニD-Sub15ピンに変換する「VGAアダプター」も用意されている。ミニD-Sub15ピンのみに対応したプロジェクターに接続する場合などに便利だろう。
オプションのシートバッテリ装着で、公称約26時間の長時間駆動が可能
バッテリ駆動時間が非常に長いこともVAIO Pro 13の魅力だ。本体内蔵の標準バッテリは交換できないが、標準バッテリだけで公称約13時間の駆動が可能であり、オプションのシートバッテリを本体背面に装着することで、公称駆動時間は2倍の約26時間に延びる。
本体背面の中央に、シートバッテリを装着するためのコネクタが用意されているが、そのコネクタにはカバーが取り付けられている。シートバッテリを装着する際には、カバーを外す必要があるが、シートバッテリの裏面にその外したコネクタカバーを装着できるようになっているので、カバーを紛失する恐れが少ない。シートバッテリを背面に装着すると、キーボードに適度な傾斜が付き、タイピングしやすくなる。シートバッテリを装着しても、重量は1,360g前後であり、十分携帯可能だ。ただし、シートバッテリのカラーはブラックのみなので、VAIO Pro 13 redとは色が合わないのが残念だ。
PCI Express接続でシーケンシャルリード1GB/sec
参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、ソニー「VAIO Duo 13」、「VAIO Fit 15」、ASUS「TransAiO P1801」のスコアも掲載した。
結果は下の表の通りで、Core i5-4200Uを搭載したVAIO Duo 13と比べて、PCMark05やPCMark Vantage、PCMarkなどのスコアは全体的に高い。特に注目すべき点は、ストレージ性能である。PCMark05のHDD Scoreは、VAIO Duo 13が36043なのに対し、VAIO Pro 13 redは63337と1.8倍近く高い。CyrstalDiskMark 2.2の結果も、VAIO Pro 13 redのシーケンシャルリードは987.8MB/secで、VAIO Duo 13の2倍以上となっている。そこで、最新の「CrystalDiskMark 3.0.2f」を利用して、VAIO Pro 13 redのストレージ転送速度を計測したところ、シーケンシャルリードは実に1,013MB/secを記録した。今回試用したVAIO Pro 13 redのSSDは128GBで本来は選べない構成だが、SATA接続では1基のSSDで、600MB/secを超える転送速度は実現できないため、PCI Express接続となっているのであろう。さらに、VAIO Duo 13やVAIO Fit 15との比較では、グラフィックス描画性能が大きく向上していることもわかる。
また、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、内蔵バッテリで10時間18分もの長時間駆動が可能になった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。さらに、シートバッテリを背面に装着した計測を行なうと、実に21時間もの駆動が可能であった。常時無線LAN有効でこれだけ持てば不満はない。
VAIO Pro 13 | red edition | VAIO Duo 13 | VAIO Fit 15 | TransAiO P1801 | |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-4500U (1.8GHz) | Core i5-4200U (1.6GHz) | Core i7-3537U (2GHz) | Core i7-3770 (3.4GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4000 | GeForce GT 730M |
PCMark05 | ||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 8293 | 8203 | 9453 | 14047 |
Memory Score | 6708 | 7302 | 8082 | 11721 |
Graphics Score | 2722 | 2590 | 2777 | N/A |
HDD Score | 63337 | 36043 | 9939 | 8844 |
PCMark Vantage 64bit | ||||
PCMark Score | 15722 | 13238 | 9038 | 11323 |
Memories Score | 7637 | 7758 | 5666 | 7165 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 9549 | 10782 | 8348 | 10339 |
Music Score | 18049 | 13969 | 12051 | 8585 |
Communications Score | 19798 | 15330 | 12300 | 15585 |
Productivity Score | 24448 | 17391 | 7223 | 7891 |
HDD Score | 62248 | 40338 | 11431 | 4424 |
PCMark Vantage 32bit | ||||
PCMark Score | 13652 | 12335 | 8809 | 10190 |
Memories Score | 7324 | 7517 | 5029 | 7050 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 8514 | 9670 | 7121 | 9252 |
Music Score | 16885 | 13198 | 10609 | 8012 |
Communications Score | 17580 | 11095 | 10611 | 14139 |
Productivity Score | 21896 | 15487 | 6915 | 7075 |
HDD Score | 63355 | 40919 | 10711 | 4407 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||||
PCMark score | 4500 | 4468 | 3971 | 3708 |
Lightweight score | 3520 | 3145 | 2276 | 2573 |
Productivity score | 2624 | 2418 | 1785 | 2031 |
Entertainment score | 3097 | 3316 | 2910 | 3467 |
Creativity score | 8456 | 8039 | 7614 | 7109 |
Computation score | 10444 | 11219 | 15773 | 11906 |
System storage score | 5466 | 5075 | 3251 | 2182 |
Raw system storage score | 6367 | 4387 | 1192 | 670 |
3DMark03 | ||||
1,024×768ドット 32bitカラー (3Dmarks) | 13605 | 8677 | 13486 | 29062 |
CPU Score | 2018 | 1560 | 1980 | 計測不可 |
3DMark | ||||
Ice Storm | 34294 | 15150 | 37436 | 63692 |
Cloud Gate | 3923 | 4399 | 4184 | 8120 |
Fire Strike | 501 | 654 | 587 | 1143 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
HIGH | 7424 | 6397 | 4565 | 6687 |
LOW | 10862 | 8882 | 6760 | 計測不可 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||||
DP | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.73 |
HP | 100 | 99.97 | 100 | 100 |
SP/LP | 100 | 99.97 | 100 | 99.97 |
LLP | 100 | 99.97 | 100 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 42 | 21 | 12 | 4 |
HP(CPU負荷) | 32 | 15 | 4 | 1 |
SP/LP(CPU負荷) | 30 | 10 | 3 | 1 |
LLP(CPU負荷) | 28 | 7 | 1 | 0 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||||
シーケンシャルリード | 987.8MB/s | 477.9MB/s | 146.0MB/s | 171.4MB/s |
シーケンシャルライト | 434.1MB/s | 134.3MB/s | 87.86MB/s | 167.9MB/s |
512Kランダムリード | 604MB/s | 418.7MB/s | 114.6MB/s | 62.95MB/s |
512Kランダムライト | 416.2MB/s | 132.4MB/s | 78.06MB/s | 52.86MB/s |
4Kランダムリード | 28.42MB/s | 22.47MB/s | 11.22MB/s | 0.951MB/s |
4Kランダムライト | 69.71MB/s | 48.69MB/s | 19.64MB/s | 0.894MB/s |
BBench | ||||
標準バッテリ | 10時間18分 | 12時間58分 | 4時間17分 | N/A |
標準バッテリ+シートバッテリ | 21時間 | なし | なし | N/A |
美しいだけでなく、Ultrabookとして高い性能を実現
VAIO Pro 13 redの最大の魅力は、ボディの美しい塗装だが、店頭モデルでは選べないCore i7-4500Uを選択でき、ハイスピードSSDを搭載するなど、Ultrabookとしての基本性能もトップレベルだ。重量も13.3型Ultrabookとして世界最軽量であり、バッテリ駆動時間も、シートバッテリ装着時は実測で21時間を記録するなど非常に優れている。ベースモデルに比べて価格は高くなるが、その深く鮮やかな塗装を一目見れば、その価格差も納得できる。基本性能とデザイン性、携帯性を重視する人に最適な製品であろう。