Hothotレビュー

東芝「REGZA Tablet AT703」

~トップクラスのスペックを持つデジタイザ対応WQXGA Androidタブレット

REGZA Tablet AT703
発売中

価格:オープンプライス

 「REGZA Tablet AT703」(AT703/58J)は、6月下旬に発売された、東芝のAndroidタブレット「REGZA Tablet」シリーズの最新モデル。10型クラスのAndroidタブレットとしてはトップクラスの性能に加え、「ペンの書き心地を再現する」というこだわりの手書き入力機能が大きな特徴だ。実売価格は9万円前後で、東芝のオンラインショップ「Toshiba Direct」では89,800円で販売されている。

クアッドコアCPUやWQXGAディスプレイなどトップクラスのスペック

 CPUは1.8GHz/クアッドコアのTegra 4を搭載し、メモリは2GB、内蔵ストレージは32GB。ディスプレイサイズは10.1型で、解像度はWQXGA(2,560×1,600ドット)、画素密度は300ppi。最近のハイスペックタブレットで採用されているフルHD超のWUXGA(1,920×1,200ドット)よりも解像度が高く、同サイズのタブレットではGoogleの「Nexus 10」と並ぶトップクラスの解像度だ。ディスプレイ表面は表面は強化ガラス「Corning Gorilla Glass 2」が採用されており、耐指紋コーティングも施されている。

 本体左側面にヘッドフォン端子と音量ボタン、microSDカードスロット、Micro HDMI、Micro USB、電源コネクタを搭載。microSDカードスロット、Micro HDMI、Micro USBはカバー内に収容されており、接続時にはカバーを毎回開けて接続する。埃が入りにくいという点ではうれしい仕様だが、こまめに端子を利用する場合はカバーの耐久性が気になるところだ。

 電源コネクタは12Vの専用端子となっており、USBでの給電には対応しない。バッテリは本体一体型で、容量は公開されていないが、駆動時間は約9.5時間、充電時間は約4.5時間を公称する。

 ボタン類は左側面が中心で、右側面はストラップホールのみ。本体上部には電源ボタンとステレオマイク、前面には有効画素数約120万画素のカメラ、背面には有効画素数約800万画素のカメラとフラッシュライト、ステレオスピーカーを搭載する。

本体前面。WQXGA(2,560×1,600ドット)、画素密度300ppiのディスプレイを搭載
端子類は本体左側面に集約
microSDカードスロット、Micro HDMI、Micro USBはカバー内
右側面はストラップホールのみ
本体上部に電源ボタンとステレオマイク
本体背面にカメラとフラッシュライト、ステレオスピーカー
本体底部
同梱品。ケース型のBluetoothキーボード、電源アダプタ、デジタイザペンのほか、両端がMicro USB型のケーブルが付属

 ワイヤレス関連も充実しており、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/nに加えて最新のIEEE 802.11ac(Draft)にも対応。Bluetoothも最新バージョンの4.0でサポートした低消費電力モードのBluetooth Low Energy(LE)と、従来のBluetooth通信の両方に対応する「Bluetooth Smart Ready」を取得しており、タブレットでは省略されることも多いGPSも搭載している。

 本体サイズは約260.7×178.9×10.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約671g。10型サイズのタブレットとしてサイズは標準的だが、重量は同じ解像度であるNexus 10の603g、iPad Retinaディスプレイ搭載モデルの652gよりも重い。手にした際もずっしりとした印象はあるものの、取り回しにさほど不便というほどの重さは感じず、10型サイズとしては十分に利用できる範囲の重量だ。

 Bluetoothキーボードも同梱。キーボードはタブレットカバーの役割も兼ねる2つ折り形状で、上部にAT703を装着することでクラムシェル型ノートPCのように扱える。ただし通信はあくまでBluetoothで行ない、ASUSの「Eee Pad Transformer」シリーズのようにキーボードと本体が合体する機構にはなっていない。Bluetoothキーボード装着時の本体サイズは約264.7×184.3×19.8mm(同)、重量は約1.2kg。

ベンチマークは非常に高い成績

 OSは最新のAndroid 4.2を搭載し、4.2のタブレット向け機能であるマルチユーザーにも対応。ホーム画面はAndroidの標準的なもので、左上が通知パネル、右上がクイック操作パネルになっており、クイック操作パネルからは無線LANやBluetoothのオン/オフ、マルチユーザーの切り替えといった設定のほか、マルチメディア機能として高画質設定や高音質設定も可能になっている。

 ホーム画面は5面構成で、下部にはホームボタン、戻るボタン、マルチタスクボタンをソフトボタンとして配置。また、画面左下にはスクリーンショットボタンも用意されており、音量下ボタンと電源ボタンの同時押しという操作を行なうことなく手軽にスクリーンショットを撮影可能。スクリーンショットは画像ファイルとして保存するだけでなく、後述するノートアプリ「TruNote」に保存することも可能だ。

ホーム画面
右上にクイック操作パネル
プリインストールのアプリ一覧

 ベンチマークの測定結果はQuadrant Professionalが12,280と1万を超えており、AnTuTu Benchmarkは28,706、MOBILE GPUMARKの結果は63,915と、どの結果も非常に高い結果を残した。実際の操作感も非常に快適で、ホーム画面はもちろんブラウザの読み込みやアプリの切り替えも高速に動作する。特にブラウザはWQXGAの高解像度も相まって非常に視認性が高く読みやすい。

ベンチマークアプリAT703ARROWS Tab F-05EARROWS NX F-06E
Quadrant Professional 12,2803,98510,561
AnTuTu BenchmarkRAMのパフォーマンス6,8701,3803,305
CPUの整数性能6,2241,7363,713
CPUの浮動小数点演算性能9,9191,4594,874
2D描画1,4106971,477
3D描画3,3981,2086,369
データベースのIO555535560
SDカードの書込速度136138150
SDカードの読込速度194193196
CPU周波数1,810MHz
4コア
1,700MHz
4コア
1,728MHz
4コア
総合28,7067,34620,624
MOBILE GPUMARK 63,91520,10988,419

 バッテリ容量は公開されていないが、無線LANとGPSをオン、Bluetoothをオフ、画面の明るさを最低に設定した状態で、Twitterによる3分おきの新着チェックを行ないながらフルHD動画を連続再生したところ、7時間後にバッテリが15%を切り、8時間でバッテリが完全になくなった。公称の9.5時間と比べるとインターネット接続の頻度が高い計測のため、カタログスペックは十分に満たした結果と言えるだろう。

【動画】実際に操作したところ

書きやすさに加えて機能も充実した手書きノートアプリ「TruNote」

 高い処理能力や高解像度のディスプレイなど性能の高さはもちろんのこと、AT703の魅力はなんといっても手書き機能。AT703の液晶ディスプレイは電磁誘導式デジタイザを搭載するほか、1,024段階の感圧センサーを内蔵したデジタイザペンを標準で同梱。さらにソフト面でも筆跡の追従性やペン先と表示位置を予測する「筆跡予測エンジン」を搭載しており、紙に書く感覚を徹底的に追求したという。

デジタイザペン
ペンを手に持ったところ

 こうした手書き機能を最も活用できるのがプリインストールされている専用のノートアプリ「TruNote」だ。手書きに最適化されたノートアプリだが、文字や図などを記入できるのは同梱のデジタイザペンで行ない、手で直接画面を操作する場合はメニューの呼び出しやページ送りを行なうといったように、操作方法によって異なる機能が動作する仕組みだ。

 ペンの種類は5種類、色は10種類から選択でき、太さや透明度も自由に調整可能。ペンの種類は3種類まで保存できるため、文字入力用、赤ペン用、マーカー用などと使い分けることができる。入力した文字の削除は画面上部の消しゴムアイコンから可能なほか、デジタイザペンの反対側でタッチすることで、消しゴム付き鉛筆の感覚でデータを削除することが可能だ。

「TruNote」
ノート画面
ペンの種類
手書きサンプル

 実際に文字やイラストをTruNoteで書いてみると、ペン操作に対して画面の表示は一瞬遅れがあるものの、紙への手書きとかなり近い感覚で記入できた。ペンを持つ力の入れ具合によって筆圧が反映され、“はね”や“はらい”も表現できるだけでなく、入力した文字の追従性も高いため、タブレットであることを意識せず快適に手書き文字を入力できる。

 前述の通り手での操作は文字入力に影響を与えないため、手をディスプレイの上に置いて文字やイラストを書くことができるのも便利。手でも文字入力が可能なタブレットでは、文字を書くために手をディスプレイに置くと余計な入力がされてしまうため、手を画面から浮かせて記入する必要があるが、TruNoteであればそうした操作を気にせず、紙へ書くかのように手をしっかりディスプレイの上に固定して書くことができる。

 手書き入力をより便利にする機能も各種搭載。手書きの文字を範囲選択してメニューから「検索」を選ぶと、手書きの文字をテキストに変換してブラウザで検索できる。また、スクリーンショットボタンで保存した画像をTruNoteに取り込み、手書きでメモを加えるといった使い方もできる。

手書き文字を範囲指定してブラウザで検索

 手書き入力はメモを取るだけでなく検索に利用することもできる。手書き入力は手軽にデータを保存できる反面、検索性ではテキスト入力の方が優れていたが、TruNoteは保存済みのメモを手書き文字で検索できるため、入力から再利用までを手書きで完結できる。記号も手書きで検索できるため、後で読み返したい部分は星印をつけておくといったタグに近い使い方も可能だ。

 テキスト変換機能も備えており、手書きの文字を全てテキストに変換してメールで送信する、といった使い方も可能。また、面白い機能としては手書きの図形や表を文書ファイルとしてエクスポートすると、自動で図形や表組みに変換してくれる。変換されたデータは再編集も可能で、変換ミスがあった文字を手動で直したり、図形の大きさを変更することも可能だ。

手書き文字での検索
記号で検索
手書きの表をデータとして自動変換
半透明や、太さを調整してイラストも描ける

 手書き入力だけでなく検索にも対応し、図形も変換できるなど充実した機能を持つTruNoteだが、残念なのはアプリのインターフェイス。TruNoteのホーム画面はテーブルの上をイメージしたデザインになっており、ノートの選択や保存のたびにアニメーションが発生する。アニメーションの動作自体はさほど遅いというわけではないが、ビジネスユースで考えた時、情報を取り出したいときに余計なアニメーションが発生するのは面倒に感じる。この点はもっとシンプルなインターフェイスと切り替えたいと感じた。

 なお、TruNoteアプリは縦表示のみとなっており、本体を横にして書く場合はメニューが縦表示のままとなるほか、文字認識も正しく行なわれない。横表示でメモを取りたい場合などに備えて、横表示モードも欲しい。

 また、手書き機能としては十分以上の機能ではあるが、カラーが全10色しかなく、入力できるのも全てフリーハンドのため、表現力という点ではさほど高くない。ビジネスであれば必要最低限の機能ではあるものの、イラストを描いて楽しみたい、という使い方では色の制限などが若干物足りなく感じるかもしれない。

REGZAシリーズのAV連携機能も充実

 東芝のTVやレコーダのブランド「REGZA」を冠するだけに、REGZA製品とのAV連携機能も充実。REGZAの録画番組をネットワーク経由で再生する「RZプレーヤー」、レコーダを経由して放送中の番組を視聴する「RZライブ」、録画番組をダビングして持ち出せる「RZポーター」といったアプリがプリインストールされているほか、東芝のREGZA向けクラウドサービス「TimeOn」と連携し、当日の録画予約をカレンダーで確認したり、お気に入りのシーン情報をユーザー同士で交換する機能などを備える。

ネットワーク内の録画番組を再生する「RZプレーヤー」
放送中の番組をライブ再生する「RZライブ」。AT703をTVとして利用できる
番組表アプリ「RZ番組ナビ」

 再生環境も2,560×1,600ドットというフルHD超の高解像度に加えて、東芝独自のアルゴリズムで映像を高画質化する「レゾリューションプラス」を搭載。音声もharman/kardonステレオスピーカーに加えて、DTSの高音質化機能を搭載するなど、ハードとソフトの両面から高品質化を図っている。

 実際に試してみたところ、音質に関しては高音質化機能のオン/オフではっきり違いが分かる。オフの状態ではややくぐもった感じで音が聞こえてくるが、オンにすると低音がしっかり伝わり、音に奥行きを感じることができた。一方、レゾリューションプラスに関しては元々ディスプレイが高解像度のためかさほど違いを感じることができなかった。高画質設定は画面の半分のみオンにすることも可能なため、動画視聴の際に比べてみるのも面白そうだ。

 ハイスペックタブレットを十二分に活用できるだけのAV連携機能だが、対応機器がREGZAのみに限られるのが残念。東芝のタブレットだから当然といえば当然ではあるものの、ハイスペックかつ手書き入力という独自の特徴を持つタブレットだけに、REGZAの周辺機器として購入するのではなく、メインのタブレットとして購入したユーザーのためにも、REGZA以外の連携機能も欲しいと感じた。

800万画素カメラはシンプルながら高性能

 背面カメラは約800万画素でオートフォーカスにも対応。右上のアイコンをタッチするか、画面を長押しすると円形のメニューが表示され、タッチしたまま指をアイコンに動かすことで設定や機能を選ぶことができるほか、画面を右にフリックするとギャラリーを表示する。直感的ではないものの、メニューボタンから細かく設定を変更するよりも慣れると使いやすい。

カメラアプリ
静止画、動画のほかパノラマにも対応
画面長押しで円上のメニューを表示

 タブレットのカメラはスマートフォンに比べて低機能なことが多いが、AT703のカメラは画質も十分でメニューも使いやすく、手ぶれ補正も搭載されているため写真が撮りやすい。資料やホワイトボードの撮影だけでなく、旅行や食事を撮影する時にも十分活用できそうだ。

作例(※クリックすると3,264×2,448ドットの写真を表示します)

 ビジネス向けのドキュメントツールとして撮影アプリ「TruCapture」も搭載。ホワイトボードや紙の資料などをカメラで撮影した場合、斜めに撮影して台形状になった画像を長方形に補正してくれる。また、写真に蛍光灯の光が映り込んでいる場合、2つの異なる角度から撮影した画像を合成することで蛍光灯の光が入らないよう補正することもできる。

斜めから撮影した写真を補正できる「TruCapture」
台形補正はホワイトボードやドキュメントで役立つ
蛍光灯の光を消し込むよう2枚を合成することも可能

 文字入力はジャストシステムの「ATOK」をプリインストール。QWERTYキーボード、10キーボードのほか、手書きでの文字入力にも対応。ただしこちらは手書き文字を認識してテキスト変換する仕組みで、直接手書きで文字を書けるわけではない。また、10キーはデフォルト設定がATOK独自の「フラワー」になっており、慣れていないユーザーは戸惑うかもしれない。一般的なフリック入力を使いたい場合は文字切り替えボタンで表示される設定画面から切り替えておこう。

キーボードはQWERTYキー、10キーのほか手書きにも対応
10キーは初期状態で「フラワー」設定

 REGZA Tablet向けのアプリやサービス、ショッピングなどを紹介する「東芝プレイス」は、東芝のオンラインショッピング「Toshiba Direct」やAndroid情報サイト「アンドロイダー」、ヤマハミュージックメディアの「MySound」といった自社、他社サービスのショートカットになっており、独自アプリとして提供されているのは電子書籍サービス「BookPlace」のみ。また、Bookplaceも独自運営のサービスに加え、BookLiveが運営する「BookLive for Toshiba」の2サービスが紹介されている。

東芝プレイスはブラウザで表示。自社または他社サイトへのリンクが中心。電子書籍のみ自社運営のサービス「BookPlace」が利用できる

ケースとして利用できるBluetoothキーボード

 同梱のBluetoothキーボードは、前述の通りAT703本体を装着することでクラムシェル型ノートパソコンのように使うことができる。キーボード上部には本体装着部のカバーを固定するくぼみがあり、このくぼみとカバー部分がマグネットで合わさることでタブレットが自立する仕組みだ。

 キーボード左側面には充電用のMicro USBポート、電源ボタン、Bluetoothペアリングボタンを搭載。充電に関しては付属のUSBケーブルを利用してAT703本体から給電することも可能なほか、キーボードを使わない場合は電源をオフにしておくことでバッテリを節約できる。カバー部にはカメラ用の穴と電源ボタンが容易されており、左右は両側ともタブレット本体が見える機構になっているため、キーボードを装着したまま充電や電源のオンオフ、カメラ撮影などが可能だ。

 キーボードは6列で、一番上の列ににはホームボタンや戻るボタン、音量や輝度調整など機能のショートカットが割り当てられている。10型タブレットと同幅のキーボードということもあってキーボードの間隔も広く打ちやすい。ケースと一体型になっているので、重量を気にしなければ持ち運ぶのにも便利だ。

 ただ、同梱のデジタイザペンを収納する部分が本体はもちろんケースにもないため、別途デジタイザペンを持ち歩かなければいけないのが残念。感圧センサーを内蔵しているだけに本体側へ収納するのはサイズ的にも難しそうだが、ケース側は多少大きさの都合もつきやすいだけに、AT703ならではの魅力であるペン入力を活用するためにもペンの収納場所が欲しかったところだ。

キーボード
キー配列
側面
充電用のMicro USBポート、電源スイッチ、Bluetoothペアリングボタン
AT703を装着したところ
装着時の背面

実用度の高い手書き機能に魅力を感じるかが購入のポイント

 WQXGAディスプレイやクアッドコアCPUなどハイスペックタブレットとしても注目の端末だが、やはり一番のポイントは手書き機能の充実だろう。ただ単に快適な手書きができるだけでなく、手書きによる検索やテキスト変換など手書き入力を最大限に活用できる。特に手書きでも検索できる機能は、後から探す手間が煩雑になりがちだった手書きメモを、テキストのように扱えるという点で非常に実用的かつ魅力的な機能だと感じた。

 一方気になるのはやはり価格面。Bluetoothキーボードやデジタイザペンが付属するとはいえ、32GBで約9万円という価格は、同解像度のNexus 10 32GBモデルと比べても倍近い値段だ。この手書き機能にどこまで魅力を感じるかが、AT703を選択する最大のポイントだろう。

 また、気軽に持ち歩けるノートとして10型サイズはやや大きい。ノート感覚でさっと取り出せるという意味では7型サイズの後継機も期待したいところだ。

(甲斐 祐樹)