~最大約18時間の長時間バッテリ駆動を実現 |
東芝は、スリムモバイルノート「dynabook R」シリーズの、2011年春モデル「dynabook R731」を発売した。光学式ドライブ搭載の13.3型液晶搭載ノートとして世界最軽量の軽さを実現した従来モデルの特徴を受け継ぎつつ、Sandy Bridgeを採用することでパフォーマンスが高まっている。今回は、dynabook R731の最上位モデルとなる、dynabook R731/39Bを紹介しよう
●軽量かつ薄型のボディを継承dynabook R731/39B(以下、R731/39B)は、従来モデルの特徴である薄く軽いボディをほぼそのまま受け継いでいる。
ボディサイズは、316×227×18.3~24.7mm(幅×奥行き×高さ、バッテリパック62AA装着時)。これは、従来モデルのR730/39Aと全く同じとなっており、ボディ形状はそのまま受け継がれていると考えていい。また、ボディデザインも同様で、ブラックボディかつヘアライン仕上げの天板なども、従来モデルと全く同じとなっている。
それに対し、重量は若干変化しており、公称値では標準バッテリに相当するバッテリパック62AA装着時で約1.29kg、大容量バッテリに相当するバッテリパック92AA装着時で約1.44kgとなっている。従来モデルから約0.02kg重くなっていることになる。従来モデルでは、光学式ドライブ内蔵の13.3型液晶搭載ノートとして世界最軽量(バッテリパック62AA装着時)としていたが、従来モデルの販売が終了したことで、その位置づけはR731/39Bにも受け継がれている。その意味で、従来モデルより重くなっていることを考えると、少々残念な気もする。ちなみに、実測の重量は、バッテリパック62AA装着時で1,254g、バッテリパック92AA装着時で1,392gであった。しかし、それでも十分軽量なことに変わりはない。
また、パームレスト部やHDDカバーにハニカムリブ構造を採用して強度を高めるとともに、100kgfの面加圧試験、76cmからの落下試験、30ccの防滴試験をクリアしており、モバイルノートに欠かせない堅牢性も申し分ない。薄型のボディサイズもそのままなので、携帯性はほとんど失われていないと考えていいだろう。
●公称約18時間と、非常に長時間のバッテリ駆動を実現
R731/39Bは、薄型軽量ボディに加え、バッテリ駆動時間が非常に長いという点も従来同様だ。製品には、容量66Whのバッテリパック62AAと、容量93Whのバッテリパック93AAの2個のバッテリが同梱されており、駆動時間はバッテリパック62AA装着時で公称約13時間、バッテリパック93AA装着時で公称約18時間とされている。駆動時間はそれぞれ従来モデルから約2時間ずつ増えており、さらなる長時間駆動が可能となっている。
そこで、実際にバッテリ駆動時間を計測してみた。まずはじめに、省電力設定を、東芝オリジナルの省電力設定である「eco」に設定するとともに、無線LANを有効にし、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、バッテリパック62AA装着時で約10時間54分、バッテリパック93AA装着時で約15時間48分であった。公称値から若干短かったものの、これなら日帰り出張など、ほぼまる1日外出先で利用するという場合でも、ACアダプタは不要といえるレベルで、まさに圧倒的なバッテリ駆動時間と言っていい。
次に、省電力設定を「高パフォーマンス」、バックライト輝度を100%に設定し、無線LANをONにした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート約8Mbps、1,280×720ドット)を連続再生させてみた。この場合には、バッテリパック62AA装着時で約3時間39分、バッテリパック93AA装着時で約5時間12分と、ecoモード時と比べて大幅に駆動時間が短くなった。このことから、ecoモードに設定した場合、不要なデバイスへの電力供給を切るなど、かなり思い切った電源管理が行なわれているものと考えられる。ただ、外出時に常に高パフォーマンスに設定して利用する必要性はそれほど高くないと思われるため、高い処理が必要な時だけ高パフォーマンスに設定し、それ以外はecoモードに設定して利用するようにすれば、バッテリ駆動時間に不満を感じることはないだろう。とにかく、薄型軽量ボディを実現しながら、これだけ長時間のバッテリ駆動を実現しているという点は、R731/39Bの大きな魅力であることは間違いない。
容量66Whのバッテリパック62AAと、容量93Whのバッテリパック93AAの2個のバッテリが同梱される | バッテリパック62AAの重量は実測で310g | バッテリパック93AAは、実測で447gだった |
付属のACアダプタは十分に小型。ただ、バッテリ駆動時間が長く、1日程度の外出なら持ち歩く必要は無いだろう | ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで実測303gだった |
バッテリ駆動時間 | |||
---|---|---|---|
標準バッテリ | 省電力設定:eco(東芝オリジナル) | BBench | 約10時間54分 |
省電力設定:高パフォーマンス | 動画連続再生 | 約3時間39分 | |
大容量バッテリ | 省電力設定:eco(東芝オリジナル) | BBench | 約15時間48分 |
省電力設定:高パフォーマンス | 動画連続再生 | 約5時間12分 |
●超薄型の13.3型ワイド液晶を搭載
R731/39Bには従来モデル同様、1,366×768ドット表示対応の、13.3型ワイド液晶が搭載されている。バックライトはLEDで、液晶表面は光沢処理が施されているため、発色は鮮やかだ。また、薄型軽量LEDパネルを採用することにより、パネル部が非常に薄いという点も従来モデル同様で、ボディ全体の薄さに貢献している。
ただ、正面から液晶パネルを見ている場合には、十分鮮やかな発色なのだが、上下の視野角がかなり狭く、わずかに見る角度が変わっただけで色合いが大きく変化して見える点は気になった。また、中央部と周辺部で明るさに違いが感じられる場合もある。これは、薄型軽量LEDパネルの特性なのかもしれないが、少々残念な部分だ。
ところで、液晶パネル部が非常に薄く、たわみやすいように感じられる点も若干気になった。ただ、面加圧100kgfの堅牢性が実現されているため、強度に問題はないはずだ。よほど乱暴に扱わない限り、液晶パネルが割れることはないだろう。
1,366×768ドット表示対応の13.3型薄型軽量LED液晶を搭載。発色は鮮やかだが、上下の視野角が非常に狭く、わずかな視点変更で発色や明るさが大きく変化する点は気になる | 液晶パネル部は非常に薄く、若干たわみやすいが、堅牢性に優れるため弱々しいという印象はない |
●Sandy Bridge採用でパフォーマンスが向上
では、基本スペックを確認していこう。
CPUは、第2世代Coreプロセッサー・ファミリーである、Core i5-2520Mを採用。動作クロックは、従来モデルに搭載されていたCore i5-560Mより低いものの、ベースとなる処理能力が向上していることで、全体の処理能力も向上している。チップセットは、Intel HM65 Expressで、グラフィックス機能はCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000が利用される。
メインメモリは、PC3-10600 DDR3 SDRAMを標準で4GB搭載し、最大8GBまで搭載可能。本体底面からメインメモリ用のSO-DIMMスロットにアクセス可能だが、標準で2GBモジュールが2枚取り付けられており、増設時に交換の必要がある。
さらに、USB 3.0が1ポート新たに搭載されている。SSDの容量が128GBと若干少ないことを考えると、高速なデータ転送が行なえるUSB 3.0ポートが用意された点は大いに歓迎できる。
これ以外の基本スペックは、従来モデルとほぼ同等だ。ストレージデバイスは、128GBのSSDと、DVDスーパーマルチドライブを搭載。SSDは、1.8インチのモジュールタイプのもの(型番はTHNSNC128GMLJ)を採用。ネットワーク機能は、IEEE 802.11a/b/g/nおよびWiMAX対応のCentrino Advanced-N+WiMAX 6250と、Gigabit Ethernetを標準搭載している。
側面ポート類は、左側面に、電源コネクタ、アナログRGB出力、eSATA/USB 2.0共用ポート×1、USB 2.0ポート×1、HDMI出力、右側面にSDカードスロット、ExpressCard/54スロット、ヘッドフォン・マイク端子、USB 3.0ポート×1、Gigabit Ethernetの各ポートがそれぞれ用意されている。左側面のeSATA/USB 2.0共用ポートは、電源を落としている状態でも電力を供給し、携帯機器などの充電が行なえる、スリープアンドチャージに対応している。
キーボードは、従来モデルと同じ、キーの間が開いたアイソレーションタイプのキーボードを採用。キーピッチは横は19mmだが、縦はやや狭くなっているため、デスクトップ用のキーボードに慣れている場合には若干違和感を感じる。とはいえ、いびつな配列などはなく、慣れれば十分軽快に扱える。ポインティングデバイスは、パッド式のタッチパッドで、従来同様ジェスチャー機能にも対応。また、クリックボタン中央部には指紋認証用のセンサーが取り付けられている。
●バッテリ駆動時間を重視したモバイルPCを探している人にオススメ
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」の5種類。比較用として、パナソニックのLet'snote B10と、NECのLaVie M LM750/DS6Rの結果も加えてあるが、今回のR731/39Bの試用機では、OSがWindows 7 Professionalの32bit版となっていたため、参考として比較してもらいたい。
dynabook R731/39B | Let'snote B10 | LaVie M LM750/DS6R | ||
---|---|---|---|---|
CPU | Core i5-2520M (2.50/3.20GHz) | Core i5-2520M (2.50/3.20GHz) | Core i7-660UM (1.33/2.40GHz) | |
チップセット | Intel HM65 Express | Intel HM65 Express | Intel HM55 Express | |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics | |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 | 4GB | 4GB | |
ストレージ | 128GB SSD (THNSNC128GMLJ) | 500GB HDD (HTS545050B9A300) | 640GB HDD (WD6400BPVT-26HXZT1) | |
OS | Windows 7 Professional | Windows 7 Professional 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit | |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a | ||||
PCMark Suite | 11170 | 6587 | 4922 | |
Memories Suite | 6574 | 3730 | 2614 | |
TV and Movies Suite | 4860 | 3876 | 2935 | |
Gaming Suite | 8338 | 3800 | 2604 | |
Music Suite | 12622 | 6620 | 4852 | |
Communications Suite | 12352 | 8797 | 5592 | |
Productivity Suite | 12466 | 5765 | 3565 | |
HDD Test Suite | 26206 | 3287 | 3464 | |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | 10714 | N/A | N/A | |
CPU Score | 9307 | 9175 | 5379 | |
Memory Score | 9994 | 7211 | 4859 | |
Graphics Score | 4819 | 3746 | 1754 | |
HDD Score | 35408 | 5153 | 5659 | |
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1,280×1,024ドット | ||||
3DMark Score | 1941 | N/A | N/A | |
GPU Score | 1535 | N/A | N/A | |
CPU Score | 9398 | N/A | N/A | |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | ||||
3DMark Score | 4596 | 2947 | 1322 | |
SM2.0 Score | 1586 | 956 | 409 | |
HDR/SM3.0 Score | 1802 | 1153 | 529 | |
CPU Score | 3557 | 3552 | 1867 | |
Windows エクスペリエンスインデックス | ||||
プロセッサ | 7.1 | 7.1 | 5.7 | |
メモリ | 5.5 | 5.9 | 5.7 | |
グラフィックス | 5.6 | 4.4 | 3.7 | |
ゲーム用グラフィックス | 6.2 | 6 | 4.8 | |
プライマリハードディスク | 6.8 | 5.9 | 5.9 | |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】 | ||||
1,280×720ドット | 2126 | 1440 | 567 | |
1,920×1,080ドット | 1079 | 732 | 319 |
結果を見ると、なかなか優れたパフォーマンスが発揮されていることがわかる。SSDを搭載しているため、ストレージ関連のテスト結果が抜きん出ているのはもちろん、CPUの処理能力も十分に高いと言える。また、3D描画能力も、軽めの3Dゲームなら解像度を落とすことで十分に快適にプレイできるレベルで、こちらも従来モデルよりパフォーマンスアップした。R731/39Bは、基本的にはビジネスシーンでの利用が中心になると思われるが、Intel HD Graphics 3000が搭載するHD動画再生支援機能やQuick Sync Videoが利用でき、AV用途にも活用できるだろう。
R731/39Bは、従来モデル同様、薄型軽量ボディを受け継ぎつつ、Sandy Bridge採用によるパフォーマンスの向上や、さらに長時間となったバッテリ駆動、USB 3.0ポートの搭載などにより、モバイルノートとしての魅力がさらに高まっている。重量が若干重くなった点や、視野角が狭い液晶パネルなど、気になる部分もあるが、圧倒的なバッテリ駆動時間の魅力はかなり大きい。そのため、バッテリ駆動時間を重視したモバイルPCを探している人に特にオススメしたい。
(2011年 4月 5日)
[Text by 平澤 寿康]