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M4~M1までやる!MacBook Proの性能をまとめて比較

MacBook Pro(16インチ, 2024)

 AppleはM4 ProとM4 Maxを採用したノートPC最上位モデル「MacBook Pro」を11月8日に販売開始した。M4 Pro/M4 Maxだけでなく、最大120GB/sのデータ通信速度を実現したThunderbolt 5を装備。また12MPセンターフレームカメラを採用し、Nano-textureディスプレイがオプションに用意されるなど、プロ向けモデルとして機能強化が図られている。

 今回は貸出機の都合で「M4 Pro」搭載モデルを借用している。これまでのM1/M2/M3 Max搭載機と比較しつつ、M3 Maxに対して下剋上を果たせるのかという視点からレビューしていこう。

SoCの性能の伸び幅はNeural Engineが特に大きい

 MacBook Pro(16インチ, 2024)はOSにmacOS Sequoia バージョン15、SoCにM4 Pro/M4 Maxを採用。メモリは24GB/36GB/48GB/64GB/128GB、ストレージは512GB/1TB/2TB/4TB/8TBが用意されている。M4 ProとM4 Maxの細かなスペックについては下記の表にまとめたので参照してほしい。

【表1】Proシリーズのスペック
M4 ProM3 ProM2 ProM1 Pro
製造プロセス第2世代3nm3nm第2世代5nm5nm
トランジスタ数非公表370億400億337億
CPUコア12または14コア11または12コア10または12コア8または10コア
GPUコア16または20コア14または18コア16または19コア14または16コア
最大メモリ48GB36GB32GB32GB
最大メモリ帯域幅273GB/s150GB/s200GB/s200GB/s
【表2】Maxシリーズのスペック
M4 MaxM3 MaxM2 MaxM1 Max
製造プロセス第2世代3nm3nm第2世代5nm5nm
トランジスタ数非公表920億670億570億
CPUコア10または12コア14または16コア12コア10コア
GPUコア30または40コア30または40コア30または38コア24または32コア
最大メモリ128GB128GB96GB64GB
最大メモリ帯域幅546GB/s400GB/s400GB/s400GB/s

 M4 Pro/M4 Maxの性能の目安だが、ニュースリリースや製品公式サイトでは第1世代と比較しているため、第2世代、第3世代との違いが分かりにくい。そこで第2~4世代発表時の性能比較の記述を元に、グラフを作成してみた。「M4 Pro」のGPU、「M3 Pro」のCPUについては明確に比較できる記載がなかったので抜けとなっているが、大まかな性能差を把握するための参考としてほしい。

処理性能の伸び幅は、Neural Engineが特に大きいことが分かる

 ディスプレイは「16インチLiquid Retina XDRディスプレイ」(3,456×2,234ドット、リフレッシュレート最大120Hz)を採用。XDR輝度は1,000cd/平方mの持続輝度(フルスクリーン)、1,600cd/平方mのピーク輝度(HDRコンテンツのみ)と変わらないが、SDR輝度は前世代の600cd/平方m(屋外)から1000cd/平方m(屋外)へ引き上げられた。また、プラス2万2,000円で映り込みや反射を強力に抑える「Nano-textureディスプレイ」を選択可能だ。

ディスプレイは「16インチLiquid Retina XDRディスプレイ」(3,456×2,234ドット、リフレッシュレート最大120Hz、色域P3、コントラスト比1,000,000:1、ミニLEDバックライト)を採用

 インターフェイスはThunderbolt 5が3基HDMIが1基、そのほかにSDXCメモリーカードスロット、3.5mmヘッドフォンジャック、MagSafe 3ポートを装備。対応機器を接続した際に最大120GB/s(理論値)のデータ通信が可能となった。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3と据え置きだ。

本体前面と本体背面
右側面にはSDXCメモリーカードスロット、Thunderbolt 5×1、HDMI×1、左側面にはMagSafe 3ポート×1、Thunderbolt 5×2、3.5mmヘッドフォンジャック×1を用意

 Webカメラは、デスクビューに対応した12MPセンターフレームカメラ。手元を撮影したり、ユーザーや周囲の人の動きに合わせて自動的に画角を変更できる。スタジオ品質の3マイクアレイ、6スピーカーサウンドシステムはもちろん継承している。

デスクビューを有効にすると手元を撮影可能。なおユーザーの顔と、手元の映像を同時に撮影できる

 本体サイズは355.7×248.1×16.8mm、重量はM4 Proが約2.14kg、M4 Maxが約2.15kg。100Whのリチウムポリマーバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間はM4 Proが最大17時間のワイヤレスインターネット、最大24時間のビデオストリーミング、M4 Maxが最大14時間のワイヤレスインターネット、最大21時間のビデオストリーミングだ。M4 Proは前世代よりバッテリ駆動時間が長くなっており、「Mac史上最も長い最大24時間のバッテリ駆動時間を実現」と謳われている。

 価格はM4 Pro(14CPU/20GPU/16NE)/24GBメモリ/512GB SSD/標準ディスプレイという最小構成で39万8,800円、M4 Max(16CPU/40GPU/16NE)/128GBメモリ/8TB SSD/Nano-textureディスプレイという最大構成で113万6,800円だ。

最小構成で39万8,800円、最大構成で113万6,800円

 なお、今回は解説を省略しているが、従来どおり14.2インチモデルも用意されている。

ボディは100%再生アルミニウム製。カラーはシルバー、スペースブラックの2色
本体サイズは355.7×248.1×16.8mm
キーボードは日本語(JIS)、英語(US)、英語(UK)、中国語(拼音)、中国語(注音)、韓国語などから選択できる。スペイン語キーボードは日本のAppleストアからは購入できなくなった
ディスプレイの最大展開角度は実測136度
パッケージには本体、140W USB-C電源アダプタ、USB-C - MagSafe 3ケーブル(2m)、説明書が同梱。Nano-textureディスプレイのオプションを選択した場合はポリッシングクロスが追加される
140W USB-C電源アダプタのプラグ部分は取り外せる
140W USB-C電源アダプタの仕様は入力100-240V~2A、出力28V/5A、20.5/5A、15V/5A、9V/3A、5.2V/3A、容量140W
Nano-textureディスプレイ搭載モデルに同梱されるポリッシングクロスは薄め
細かに編まれた柔らかな繊維が、Nano-textureディスプレイ上の汚れを優しく除去してくれる
本体の重量は実測2,122g
140W USB-C電源アダプタとUSB-C - MagSafe 3ケーブル(2m)の合計重量は実測334g

2万2,000円のオプション「Nano-textureディスプレイ」はぜひ追加したい

  Pro(16インチ, 2024)の使い勝手におけるMacBookの売りのひとつが「Nano-textureディスプレイ」。標準ディスプレイでも反射防止コーティングが施されているが、Nano-textureディスプレイは映り込みや反射をもっと強力に低減してくれる。単に照明や外光の影響を受けにくいというだけでなく、画像、映像がより鮮やかに感じられるのだ。

 27インチ5Kディスプレイ「Apple Studio Display」は標準ガラス版が21万9,800円、Nano-textureガラス版が26万6,800円と4万7,000円の価格差がある。しかし、MacBook Pro(16インチ, 2024)版での価格差は2万2,000円だ。後付けできないだけに、ぜひ追加しておきたいオプションだ。

「Nano-textureディスプレイ」では、「非光沢ディスプレイ」のような画質の影響は感じない
照明がまったく映り込まないわけではないが、輝度を少し上げたり、わずかに角度を変えればほとんど気にならなくなる

 キーボードのキーピッチは実測19mm前後、キーストロークは実測1.3mm前後。打鍵感は反発力が心地よく、打鍵音も低めだ。文字キーはすべて等幅に揃えられているので、すべてのキーに自然に指が届く。特に前世代から変更は加えられていないようだが、その必要性を感じない上質なキーボードと言える。

キーピッチは実測19mm前後
キーストロークは実測1.3mm前後
バックライトは環境光センサーによって明るさが自動的に調整される
ホームポジションに手を置くと親指の付け根などがトラックパッドに触れるが、パームリジェクションにより誤操作しない
トラックパッドの面積は実測160×100mm
電源ボタンはTouch ID(指紋認証センサー)一体型

 ディスプレイ上部に内蔵された12MPセンターフレームカメラは、Webカメラとしては申しぶんない画質と機能性だ。ユーザーを追尾するセンターフレームカメラの挙動も自然で、かつなめらか。イメージセンサーの性能自体もよいのだろうが、iPhoneのカメラで培われた画像処理技術が大きく貢献していることは間違いない。このような横方向での技術の転用は、多くのカテゴリのデバイスを手がけているAppleの強みだ。

ディスプレイ上部には、12MPセンターフレームカメラ、LEDインジケータ、環境光センサーが内蔵
右上のステータスメニューのカメラアイコンをクリックすると、「センターフレーム」、「ポートレート」、「スタジオ照明」、「リアクション」、「背景」、「デスクビュー」などを有効化できる

M4 ProがM3 Maxを部分的は上回るCPU性能を発揮

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。なお前述のとおり、今回は貸出機の都合で「M4 Pro」を搭載したマシンを借用。つまりProモデルとMaxモデルとの比較になっている点には留意してほしい。4機種の主要スペックは下記のとおりだ。

【表3】検証機のスペック
MacBook Pro(16インチ, 2024)MacBook Pro(16インチ, Nov 2023)MacBook Pro(16インチ, 2023)MacBook Pro(16インチ, 2021)
SoCApple M4 ProApple M3 MaxApple M2 MaxApple M1 Max
CPU高性能コア×8、高効率コア×4高性能コア×16、高効率コア×4高性能コア×8、高効率コア×4高性能コア×8、高効率コア×2
GPU20コア40コア38コア32コア
Neural Engine16コア16コア16コア16コア
メモリ48GB128GB96GB64GB
ストレ-ジ2TB8TB4TB2TB
OSmacOS Sequoia バージョン15.1macOS Sonoma バージョン14.1.1macOS Ventura バージョン13.2macOS Monterey バージョン12.0.1

 まずCPU性能だが、MBP(M4 Pro)はマルチコア性能でかなり健闘している。MBP(M4 Pro)はMBP(M3 Max)に対して、Cinebench 2024のCPU(Multi Core)は103%相当、Geekbench 5.3.1のMulti-Core Score(Apple Sillicon)は100%相当、Geekbench 6.3.0のMulti-Core Score(Apple Sillicon)は107%相当だ。もちろんmacOSのバージョンが異なるので、再計測すれば異なる結果が出る可能性はある。しかし、MBP(M4 Pro)はMBP(M3 Max)にかなり近いCPU性能を備えていると言えるだろう。

 なおシングルコア性能については、MBP(M4 Pro)はMBP(M3 Max)に対して116~126%相当のスコアを叩き出している (Geekbench 5.3.1のSingle-Core Score(Intel)を除く)。CPUコア単体の性能は着実に進化しているわけだ。

Cinebench 2024
Cinebench R23.200
Geekbench 5.3.1
Geekbench 6.3.0

 一方、GPU性能については、MBP(M4 Pro)はMBP(M3 Max)に対して、68~84%相当のスコアに留まった。今回のMBP(M4 Pro)のGPUコア数は20コア、MBP(M3 Max)のGPUコア数は40コア。GPUコア単体の性能が向上していても、2倍の差はさすがに覆せなかったわけだ。

Cinebench 2024
Geekbench 5.3.1
Geekbench 6.3.0

 ストレージについてもMBP(M4 Pro)はMBP(M3 Max)に今回はおよばなかった。MBP(M4 Pro)は2TB、MBP(M3 Max)は8TBのSSDを搭載している。今回の「MacBook Pro(16インチ, 2024)」でも同様の結果となるかは現段階では確認できないが、ストレージの容量によって速度が異なる可能性は高い。

Blackmagic Disk Speed Test
AmorphousDiskMark 4.0.1
AmorphousDiskMark 4.0.1

 バッテリ駆動時間については、エネルギーモードを「自動」に設定して、ディスプレイの明るさ6/16、音量6/16でYouTube動画を連続再生したところ、20時間54分17秒動作した。今回は「Mac史上最も長いバッテリー駆動時間を実現」と謳われている「M4 Pro」搭載機でベンチマークを実施しているが、この謳い文句を証明した結果となった。

YouTube動画を連続再生した動作時間

M4 Pro、M4 Maxのハイパフォーマンスをバッテリ駆動で享受できる

 MacBook Pro(16インチ, 2024)は、プロフェッショナルなクリエイター、パワーユーザーに適したノートPCだ。特に、M4 Pro、M4 Maxのハイパフォーマンスをバッテリ駆動で享受できるのはポイントが高い。また、最大120GB/sのデータ通信速度を実現するThunderbolt 5、12MPセンターフレームカメラ、Nano-textureディスプレイ(オプション)などの先進機能も備えている。

 最大構成の価格は確かに高価だが、メモリ、ストレージを「現実的なスペック」に設定すれば、「現実的な価格」に落ち着く。ハイパワーを長時間屋外で活用したいという方に、本製品は最有力な選択肢と言えるだろう。