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Snapdragon 8 Gen 2搭載ゲーミングスマホ「ROG Phone 7 Ultimate」。外付けクーラーも

ASUS JAPAN「ROG Phone 7 Ultimate」17万9,800円

 ASUS JAPANはゲーミングAndroidスマートフォン「ROG Phone 7」と「ROG Phone 7 Ultimate」を21日より発売する。価格は前者が12万9,800円~14万9,800円、後者は17万9,800円。

 前世代と同じく、今回も特別モデルの「Ultimate」が用意される。「ROG Phone 7 Ultimate」には背面ディスプレイ「ROG Vision」に加えて、電動開閉式のカバー機構を装備。外付けクーラーユニットにより、強制的に本体内の熱を排出可能となり、さらなるパフォーマンスアップが図られている。

 今回は「ROG Phone 7 Ultimate」の実機を借用したので、スペック、外観チェックに加えて、外付けクーラーユニット装着前後のパフォーマンスの変化、ゲーム専用ユーティリティなどについてもレビューしていこう。

Ultimateには背面画面に加えて、熱排出用電動開閉式カバーを装備

メインディスプレイは6.78型有機EL、背面ディスプレイはROG Vision。インカメラは3,200万画素カメラ、アウトカメラは5,000万画素広角、1,300万画素超広角(12.5mm、F2.2)、500万画素マクロを搭載

 まず「ROG Phone 7 Ultimate」に限定してスペックを解説していこう。OSは「Android 13(ROG UI)」、SoCは「Snapdragon 8 Gen 2」を採用。メモリは16GB(LPDDR5X)、ストレージは512GB(UFS 4.0)を搭載している。

 ディスプレイは6.78型有機EL(2,448×1,080ドット)を採用。背面にはグラフィックス表示可能な「ROG Vision」を搭載している。なおメインディスプレイ下部には、画面下指紋認証センサーが内蔵されている。

 カメラはアウトに5,000万画素広角(23.8mm、F1.9)、1,300万画素超広角(12.5mm、F2.2)、500万画素マクロ(23.6mm、F2.0)、LEDフラッシュ、インに3,200万画素カメラ(29.4mm、F2.4)を装備している。

最大輝度1,500cd/平方m、コントラスト比1,000,000:1の有機ELディスプレイだけに、非常に鮮やか、かつ締まった黒で画像、映像を表示できる。動画プレーヤーとしても優秀だ

 インターフェイスは、USB 2.0 Type-C、USB 3.1 Type-C×1(USB PD+DisplayPort 対応)、3.5mmコンボジャック、Nano SIMスロット×2を用意。ワイヤレス通信は5G、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、NFCをサポートしている。

「ROG Phone 7 Ultimate」は特殊形状のパッケージが採用。100%リサイクル可能なバイオマス素材が使われている
12×16mmのデュアルフロントスピーカーを本体左右に内蔵。通常のスマートフォンの約2倍のスピーカーを搭載することで、音量が約50%アップ。なお3.5mmコンボジャック、USB Type-C、Bluetoothのいずれで接続した場合でも空間オーディオを利用可能だ
下部には3.5mmコンボジャック、USB 2.0 Type-Cを用意
右側面には超音波タッチセンサー「AirTrigger 7」×2、ボリュームボタン、電源ボタン、左側面にはNano SIMカードトレイ×1、USB 3.1 Type-C×1を配置。USB 3.1 Type-Cの横の金属接点は、AeroActive Cooler 7と接続するためのものだ
トレイにはNano SIMカードを2枚装着できる
ディスプレイ下部には画面下指紋認証センサーが内蔵

 本体サイズは173×77×10.3mm、重量は246g。6,000mAh(3,000mAh×2)のバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間はWi-Fi時に約17.3時間、LTE時に約17.9時間、5G時に約15時間と謳われている。なおゲーミングスマホとしては初めてIP54の防水防塵性能を備えている。

 「ROG Phone 7 Ultimate」と「ROG Phone 7」との違いは下記の表にまとめているが、メモリ容量、背面ディスプレイの有無、重量、カラーバリエーションとなる。また、電動開閉式のカバー機構を備えているのは「ROG Phone 7 Ultimate」だけ。以上の違いを踏まえて、どちらのモデルを購入するか検討してほしい。

ROG Phone 7のスペック
ROG Phone 7 Ultimate (AI2205)ROG Phone 7 (AI2205)
型番ROG7U-WH16R512ROG7-BK16R512ROG7-WH16R512ROG7-BK12R256ROG7-WH12R256
OSAndroid 13(ROG UI)
SoCSnapdragon 8 Gen 2
メモリ16GB(LPDDR5X)12GB(LPDDR5X)
ストレージ512GB(UFS 4.0)
ディスプレイ6.78型フルHD+ 有機EL
(2,448×1,080ドット、リフレッシュレート165Hz、応答速度1ms、タッチサンプリングレート720Hz、最大輝度1,500cd/平方m、コントラスト比1,000,000:1、sRGB比150%、DCI-P3比111.2%、色彩精度Delta-E<1、Corning Gorilla Glass Victus)
背面ディスプレイROG VisionAuraライト
アウトカメラ5,000万画素広角カメラ(23.8mm、F1.9)、1,300万画素超広角(12.5mm、F2.2)、500万画素マクロ(23.6mm、F2.0)、LEDフラッシュ
インカメラ3,200万画素カメラ(29.4mm、F2.4)
インターフェイス下部 : USB 2.0 Type-C、左側面 : USB 3.1 Type-C(USB Power Delivery 3.0、DisplayPort Alternate Mode対応)、3.5mmコンボジャック、Nano SIMスロット×2
ワイヤレス通信5G、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、NFC
バッテリ容量6,000mAh
バッテリ駆動時間Wi-Fi時 : 約17.3時間、LTE時 : 約17.9時間、5G時 : 約15時間
本体サイズ173×77×10.3mm
重量246g239g
防水防塵IP54
カラーストームホワイトファントムブラックストームホワイトファントムブラックストームホワイト
価格17万9,800円14万9,800円12万9,800円
AeroActive Cooler 7の表面には4つの物理ボタンを装備。また外付けクーラーユニットとしては初めてサブウーファを内蔵。本体スピーカーとサブウーファで2.1chサウンドを再生できる
AeroActive Cooler 7の裏面。本体とはUSB Type-C端子と2つの金属接点で接続する
AeroActive Cooler 7の上面には電源ボタンとリリースボタン、下面には3.5mmコンボジャックとUSB 3.1 Type-C×1を用意
AeroActive Cooler 7の右側面と左側面
底面のスタンドを開くと自立させられる。動画視聴時などに便利だ
パッケージ内には、本体、Aero Case、SIMイジェクトピン、USB ACアダプタ、USB Type-Cケーブル、AeroActive Cooler 7、トラベルポーチ、ユーザーマニュアルが同梱
トラベルポーチはAeroActive Cooler 7収納用。クッション性が高く、中身をしっかりと守ってくれる
専用ケースのAero Case。ケースを装着したままでAeroActive Cooler 7を取り付けられる
同梱されるUSB ACアダプタとUSB Type-Cケーブル。USB Type-Cケーブルの長さは実測120cm。なお今回の試用機は、USB ACアダプタがCタイプの海外仕様だ
USB ACアダプタの仕様は入力100-240V~1.5A、出力5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/3.25A、PPS : 3.3-11V/5A、3.3-21V/3.25A、容量65W
本体の実測重量は246.1g
AeroActive Cooler 7の実測重量は127.8g
Aero Caseの実測重量は12.1g
USB ACアダプタとUSB Type-Cケーブルの合計重量は実測182.1g

本体のみでAnTuTuで133万超えのAndroid最高速スコアを記録

 さてゲーミングスマホで最も楽しみなのは、やはりベンチマーク。今回は、本体のみと、AeroActive Cooler 7装着時の2パターンで計測を実施した。

 AeroActive Cooler 7はタッチパネル側を冷却するためのダクトが設けられており、背面側で最大25℃、タッチパネル側で最大8℃の冷却効果を実現しているとのこと。また動作モードは本体のみでは「Xモード」となるが、AeroActive Cooler 7装着時はよりハイパフォーマンス設定の「Xモード+」に切り替わる。どのぐらい処理性能が向上するのか楽しみだ。

ベンチマークは本体のみと、AeroActive Cooler 7装着時の2パターンで実施している
本体のみの最大動作モードは「Xモード」。AeroActive Cooler 7を装着すると、よりパフォーマンスが高い「Xモード+」に切り替わる

 さて早速結果をお伝えすると、以下のグラフのようになった。

 つまり、「ROG Phone 7 Ultimate」にAeroActive Cooler 7を装着すると、「AnTuTu Benchmark V9」、「Geekbench 6」、「3DMark」のすべてにおいて約101%相当のスコアを記録したことになる。

 AeroActive Cooler 7装着時はもっと高い性能を発揮すると期待していたが、裏を返せば「ROG Phone 7 Ultimate」は本体のみで「Snapdragon 8 Gen 2」の能力を最大限近くまで引き出せているわけだ。

Xモード、Xモード+のいずれにおいても、記事執筆時点のAnTuTu Benchmarkのランキングで「ROG Phone 7 Ultimate」はトップスコアを記録した

 ちなみにAeroActive Cooler 7装着前後で、AnTuTu Benchmarkを90%まで動作させた直後の背面温度を計測してみた。本体のみでは最大36.4℃だったところ、AeroActive Cooler 7を装着した状態では最大33.6℃まで低下した(室温27.5℃で測定)。

 端末全体の平均温度も33.3℃から30.7℃へと低下しており、AeroActive Cooler 7が着実に冷却効果を発揮していることが証明された。

AnTuTu Benchmarkを本体のみで90%まで動作させた時点の背面温度は最大36.4℃
AnTuTu BenchmarkをAeroActive Cooler 7を装着した状態で90%まで動作させた時点の背面温度は最大33.6℃
AeroActive Cooler 7を装着した「ROG Phone 7 Ultimate」のロックを解除すると、冷却ファンが回転すると同時に、電動開閉式のカバー機構が開く
電動開閉式のカバー機構はこのように開く。冷却ファンの風が内側から流れ込み、外側に排出されるわけだ
AeroActive Cooler 7はタッチパネル側を冷却するためのダクトが設けられている

 なお「ROG Phone 7」はセンターSoCレイアウト、3000mAh×2のデュアルバッテリに加え、先代比で熱効率が10%向上したグラファイトシート、168%向上したベイパーチャンバーが採用されている。

 このベイパーチャンバーは「ラピッドサイクルベイパーチャンバー」と名付けられており、水の循環を速くするための6本の「還流水路」を設け、さらにY字型の形状になったウィックが採用されている。つまり「ROG Phone 7」シリーズ自体の冷却システムが大幅に進化しているわけだ。

新形状のY字型の通路によりさらにすばやく水が移動するようになっている

ゲーミングスマホとしての使い勝手も着実に向上

 「ROG Phone 7」シリーズには従来モデルと同様に、ゲームアシストツール「Game Genie」とシステム統合管理アプリ「Armoury Crate」がプリインストールされている。

 今回「Game Genie」には、仮想キーのタップ時に端末を振動させる「振動マッピング」、ゲーム中に自動的にショート動画が録画される「Xキャプチャー」、ゲーム中のイベントを自動検出して情報をポップアップ表示する「X Sense」、AirTrigger/マクロ/キーマッピングの設定済みプロファイルを適用する「ROG Instant Master」が新たに追加された。

 ただし、「Xキャプチャー」、「X Sense」、「ROG Instant Master」については7月時点で日本国内では利用できない。せっかくの目玉機能なので、早急に日本向けモデルにも実装されることを期待したい。

画面左右上から中央に向かってスワイプするとゲームアシストツール「Game Genie」が表示される
システム統合管理アプリ「Armoury Crate」では、動作モード、ROG Vision、AeroActive Cooler 7、Game Genie、AirTriggersなどを設定できる

 ゲーミングスマホと言えば、画面上の任意の仮想キーを「超音波ボタン」、「モーションコントローラー」、「クーラーボタン」に割り当てられるのが売りだ。しかし、ゲームによってはハードウェアチートに該当する可能性がある。利用の際には運営規約を必ずチェックしてほしい。

 一方、仮想キーの操作に振動というフィードバックを与える「振動マッピング」は、ゲームの臨場感を盛り上げる新たな機能として楽しく利用可能だ。振動によりタップしたかどうかを確認できるという実用的なメリットもあるので、こちらも運営規約を確認しつつ利用していきたい。

「振動マッピング」では画面上の仮想キーに対して端末の振動を割り当てられる。最大10カ所まで設定可能だ
画面上の任意の仮想キーを「超音波ボタン」、「モーションコントローラー」、「クーラーボタン」などで操作可能となる
横持ちした際の左右上部の超音波ボタンに仮想キーを割り当てれば、ゲーム機のL/Rボタンのように直感的に操作が可能
超音波ボタンと、AeroActive Cooler 7の4つの物理ボタンに仮想キーを割り当てれば、親指を合わせて8本の指で複雑な操作が可能だ

 背面ディスプレイ「ROG Vision」は「ROG Phone 7 Ultimate」だけの装備。状況に応じて異なるアニメーションが表示されるほか、任意のテキストを速度、フォント、色などをカスタマイズして表示可能だ。「ROG Phone 7 Ultimate」のユーザー同士で、メッセージ交換などをしても楽しそうだ。

ROG Visionには状況ごとに異なるアニメーションが表示される
左上から「外部アクセサリー接続時」、「Xモード」、「画面オン時」、「端末の充電中(通常充電)」、「ゲーム中」、「電話を着信時」のアニメーション
ROG Visionには任意のテキストを表示可能。速度、フォント、色などをカスタマイズ可能だ
今回は筆者のペンネームを表示させてみたが、アイデア次第で多彩な用途に活用できそうだ

Zenfoneシリーズを作り続けているASUSだけにカメラ品質も高い

 ゲーミングスマホと言ってもカメラ性能も重要。ということで、最後にカメラテストを実施してみた。結果は下記の写真を見てもらったほうが早いが、ASUSはZenfoneシリーズを作り続けているだけに、カメラの品質も非常に高い。

 特に夜景モードについては全体的に明るさを引き上げて、階調豊かに描写しつつ、強い光源の白飛びも抑えている。望遠カメラが搭載されていない点を除けば、他社のフラグシップスマートフォンと比べても遜色ないレベルだ。

 ただし、500万画素マクロカメラだけはいただけない。オートフォーカスが搭載されていないので、被写体との距離を変えて何枚も撮影しないとピントが合わない。「ROG Phone 7 Ultimate」は高額なスマートフォンなのだから、もっと使い勝手のいいマクロ撮影機能を搭載してほしい。

左から5,000万画素広角カメラ(23.8mm、F1.9、1μm、SONY IMX 766)、1,300万画素超広角(12.5mm、F2.2)、500万画素マクロ(23.6mm、F2.0)、LEDフラッシュ
作例
1,300万画素超広角カメラで撮影
5,000万画素広角カメラで撮影
5,000万画素広角カメラで撮影(8倍デジタルズーム)
5,000万画素広角カメラで撮影(夜景モード)
500万画素マクロカメラで撮影

2023年のゲーミングスマホの中で最も完成体に近い存在だ

 「ROG Phone 7 Ultimate」の最大の進化点は冷却システム。ライバルであるREDMAGICは本体内に小さな空冷ファンを内蔵することで冷却性能を向上させてきたが、「ROG Phone 7 Ultimate」は外付けクーラーユニットからの新鮮な風を、電動開閉式のカバー機構により本体内に取り入れることにより、強制的に本体内の熱を排出し、AnTuTu Benchmarkのランキングでトップスコアを記録した。

 また、「ROG Ally」のレビューでも触れたがASUS JAPANのローカライズはほぼ完璧で、複雑なゲーミングスマホの全機能を日本語でマスターできる。

 最速のパフォーマンスを達成し、使い切れないほどの機能を備えた「Game Genie」と「Armoury Crate」を搭載。そして丁寧にローカライズされた「ROG Phone 7 Ultimate」は、2023年のゲーミングスマホの中で最も完成体に近い存在だ。