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正当進化の「VAIO SX14」。第13世代Core搭載で買いになった?

VAIO SX14(VJS146、ファインホワイトモデル)

 VAIOから、軽量モバイルノート「VAIO SX」シリーズの2023年モデルが登場。12.5型の「VAIO SX12」と14型の「VAIO SX14」とも、プロセッサに第13世代Coreプロセッサを採用することで性能を強化しつつ、オンラインコミュニケーション機能の進化などを実現している。

 今回、14型モデルの「VAIO SX14(VJS146)」をいち早く試用する機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。6月16日より発売予定で、直販価格は19万9,800円から。

外観デザインは従来モデルと同じ

 「VAIO SX14(VJS146)」は、従来モデルをベースとしつつ、プロセッサや機能を強化したモデルとなっている。そのため、本体デザインは従来モデルから基本的に変化はない。

 天板には、従来同様にディスプレイ面まで届くなだらかなカーブの立体成型カーボン天板を採用。同時に、前方が薄く後方がやや厚いくさび型で、後方が斜めに切り取られたボディデザインは、一体感がありシャープな印象で、VAIOらしさが強く感じられる。

 もちろん、優れた堅牢性も従来同様で、米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810H」に準拠した落下や振動などの堅牢性試験をクリアしており、毎日安心して持ち歩ける。

 重量は仕様によって異なるが、最軽量仕様で1,044g、最も重い仕様でも1,167g。14型モバイルノートの中には1kgを切る軽さの製品も存在しているが、本機も十分軽い部類であり、軽快に持ち運べるはずだ。なお、試用機の重量は実測で1,080gだった。

 サイズは320.4×222.9×13.3~17.9mm。ディスプレイ左右のベゼル幅が狭められていることで、サイズ感は一般的な13.3型モバイルノートと大きく変わらない。

 カラーは、今回試用したファインホワイトのほか、アーバンブロンズ、ブライトシルバ、ファインブラック、VAIO直販ストア限定のファインレッドを用意。このほか、従来同様にALL BLACK EDITIONや勝色特別仕様も用意される。

ディスプレイを開いて正面から見た様子。本体デザインは従来モデルから変わっていない
天板。従来同様、側面付近までの立体成型カーボン天板を採用し、MIL-STD-810H準拠の優れた堅牢性を確保
正面
左側面。高さは13.3~17.9mmと前方から後方に向かって厚くなっている
背面
右側面
底面。フットプリントは320.4×222.9mmと、14型モバイルノートとしてはまずまずのコンパクトさだ
試用機の実測の重量は1,080gだった

第13世代Core i7 Pプロセッサの採用で性能を強化

 今回のVAIO SX14では、Intelの最新プロセッサであるRaptor Lakeこと第13世代Coreを採用。それも、Core i3はTDPが15WのUプロセッサとなるが、Core i5およびCore i7はTDPが28WのPプロセッサを採用。試用機ではCore i7-1360Pを搭載していた。

 同時に、Coreプロセッサの性能を最大限引き出すVAIO独自のチューニング「VAIO TruePerformance」も引き続き搭載。

 これにより、Core i7-1360P搭載モデルではプロセッサの処理能力が従来モデルのCore i7-1240P搭載モデルとくらべて113%に向上しているとのことで、より高い性能が発揮される。このあたりは、のちほどベンチマークテストでチェックする。

 また、最上位モデルとなる「ALL BLACK EDITION」では、さらに上位となるCore i7-1370Pを採用することで、VAIOシリーズとして最も優れた性能を発揮する。

 メモリは標準8GB、最大32GBの搭載が可能。内蔵ストレージは容量256GBから最大2TBで、PCIe 4.0準拠の高速SSDも選択可能だ。

 なお、試用機の主な仕様は以下にまとめた通りとなっていた。

VAIO SX14(VJS146)の主な仕様
プロセッサCore i7-1360P
Pコア:4コア・8スレッド/ブースト時最大5GHz
Eコア:8コア/ブースト時最大3.7GHz
スレッド数:16
メモリ32GB
内蔵ストレージ512GB PCIe 4.0 SSD
ディスプレイ14型液晶、1,920×1,080ドット
ノングレア、60Hz
無線LANWi-Fi 6E
BluetoothBluetooth 5.1
ワイヤレスWAN5G対応、Nano SIM対応
キーボード日本語、キーピッチ約19mm、キーストローク約1.5mm、キーボードバックライト搭載
カメラフルHD Webカメラ、プライバシーシャッター
生体認証顔認証、指紋認証
インターフェイスThunderbolt 4×2(USB PD対応)、USB 3.0×2、HDMI、Gigabit Ethernet、3.5mmオーディオジャック
OSWindows 11 Pro
駆動時間約17~28時間
サイズ/重量320.4×222.9×13.3~17.9mm/約1,044~1,167g

フルHDまたは4K表示対応の14型ディスプレイを搭載可能

 ディスプレイも、従来同様にフルHD(1,920×1,080ドット)または4K(3,840×2,160ドット)表示対応の14型液晶を採用。フルHDではタッチ対応パネルも用意されるため、3種類から選択可能。なお、試用機はフルHDパネルが搭載されていた。

 試用機に搭載されているフルHDディスプレイは、モバイルノートとして標準的な仕様。発色性能などについて特に公表していないが、写真や動画を表示しても十分に鮮やかな発色が確認できる。

 クリエイター向けの広色域ディスプレイのようなハッとする鮮やかさはないものの、ビジネスモバイルノートとして考えると申し分ない表示性能を備えている。

 ただ、いくつか残念な部分もある。その1つがディスプレイ上部ベゼル幅の広さ。顔認証対応カメラや無線LANなどのアンテナを搭載するため、ある程度のサイズが必要ということは分かるが、近年の競合製品では上部もかなりの狭額ベゼルを実現している製品が増えており、それらと比べると少々気になってしまう。

 同時に、ディスプレイが16:9となっている点も少々残念だ。従来モデルをベースとした機能強化モデルということで仕方のない部分もあるが、競合製品では16:10などの縦の表示領域を増やしたディスプレイの採用が増えていることを考えると、どうしても古くさく見えてしまう。次のフルモデルチェンジでは、ぜひとも16:10などの縦長ディスプレイの採用を実現してもらいたい。

従来同様、アスペクト比16:9の14型液晶を搭載。試用機はフルHD表示対応だったが、タッチ対応パネルや4K表示対応パネルの搭載も可能
ディスプレイ表面は非光沢処理で外光の映り込みはほとんど感じられない。発色性能はモバイルノートとして標準的な印象だ
ディスプレイを開くと本体後方を持ち上げてキーボード面に適度な角度がつくリフトアップヒンジ構造も引き続き採用
ディスプレイが180度水平まで開く点も便利

カメラ画質やノイズキャンセルなどオンラインコミュニケーション機能を強化

 VAIO SX14の機能強化点として、第13世代Coreプロセッサに強化されたという点を紹介したが、もう1つの強化点となるのがオンラインコミュニケーション機能だ。

 これまでもVAIO SXシリーズでは、テレワークを快適にこなせ機能を搭載してきた。たとえば、WebカメラはHD解像度(720P)での撮影に対応するものだけでなく、フルHD解像度(1080P)での撮影に対応する約207万画素カメラも選択可能となっていたり、カメラで捉えた人を常に中心付近にくるようトリミングする自動フレーミング機能、逆光補正などの高画質化機能、マイクで拾った音声から騒音などの環境ノイズを削除するAIノイズキャンセリング機能などだ。

 それらは本機でも引き続き搭載しているが、それに加えて、撮影した映像のノイズ除去機能「TNR(Temporal Noise Reduction)」や「美肌効果」といった機能を新たに追加している。

ディスプレイ上部中央にWebカメラを搭載。カメラはHD撮影可能なものだけでなく、フルHD撮影可能なものや、顔認証カメラも搭載可能
VJS146では、自動フレーミング機能や逆光補正などのカメラの高画質化機能を引き続き搭載しつつ、ノイズ除去機能「TNR」や美肌効果といった新機能を搭載
AIノイズキャンセリング機能も搭載している

 まず、ノイズ除去機能のTNRだが、こちらは従来モデルまでは単一フレームのみでノイズ除去処理を行なっていたのに対し、TNRでは前後のフレームを加えた3フレームの情報を利用してノイズ除去処理を行なうようになった。これにより、より高精度かつクリアなノイズ除去が行なえるようになったという。

 たとえば、従来モデルでは縞模様の服で模様の破綻が見られていたのに対し、本機ではかなりクリアに表示されるようになっている。

 実際に旧モデルと撮影映像を比較してみたが、確かに縞模様がかなりクリアに捉えられていることが分かる。劇的な違いというわけではないかもしれないが、Web会議の相手としてはそのあたりが気になるのも事実で、この違いでもかなり相手には好印象を与えられそうだ。

こちらはVJS146で撮影した映像
服の部分を拡大しても、縞模様が比較的くっきり表示されている
こちらは従来モデルのVJS145で撮影した映像
服の部分を拡大してみると、VJS146よりも模様がぼやけて、破綻している部分も多いことが分かる

 次に美肌効果。こちらはスマートフォンのカメラに搭載されていることでもお馴染みの、肌をクリアに補正する機能だ。

 スマートフォンほど“盛った”美肌補正ではないものの、美肌効果をオフにした場合の画像と比べてみると、肌のくすみや影が取れてすっきりとした印象になっていることが分かる。

 ちなみにテスト画像は美肌効果が最も高くなる「レベル3」に設定して撮影したものだが、レベル1から3までの3段階で変更できるので、効果を見ながら設定を調整するといいだろう。

美肌効果はレベル1から3までの3段階で変更可能
美肌効果オフで撮影した画像
美肌効果レベル3で撮影した画像。肌のくすみや影がとれてすっきりとした表情になっている

豊富なセキュリティ機能をしっかり継承

 今回の試用機の主な仕様は先に紹介している通りだが、細かな部分を改めて紹介しておこう。

 プロセッサは第13世代Coreプロセッサを採用し、i5/i7ではTDPが28WのPプロセッサを採用。メモリは最大32GB、内蔵ストレージは最大2TBのPCIe 4.0準拠SSDを搭載可能。

 キーボードは従来モデルと同じで、キーピッチ約19mm、キーストローク約1.5mmのアイソレーションタイプキーボードを採用。キータッチは柔らかすぎず堅すぎずで、しっかりとしたクリック感も感じられ、打鍵感は良好だ。

 また打鍵音が静かな点もうれしい。キーボードバックリアとも搭載しており、暗い場所でも快適に入力できる。タッチパッドは独立したクリックボタンを備えており、こちらも良好な操作性だ。

 無線機能は、Wi-Fi 6E準拠の無線LANとBluetooth 5.1を標準搭載。また、オプションで5G対応のワイヤレスWANも搭載可能。

 試用機はワイヤレスWANを搭載していたが、問題なく5G通信網に接続できた。利用可能なSIMはNano SIMで、本体後方底面にSIMカードスロットを備える。

 なお、法人向けモデルではワイヤレスWANは4G対応のみとなるが、eSIMが利用でき、Nano SIMとの使い分けが可能(デュアルSIMシングルスタンバイ対応)となる。

キーボードは従来モデル同様のアイソレーションタイプキーボードを搭載
主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保
ストロークは約1.5mmで、打鍵感も良好。打鍵音が静かな静音仕様もうれしい
キーボードバックライトも搭載する
タッチパッドは独立したクリックボタンを備えており、こちらも良好な操作性だ
5G対応ワイヤレスWANを搭載可能。SIMフリー仕様で、国内キャリアのSIMなどを装着して5G通信網のデータ通信が利用可能
本体底面後方にNano SIMカードスロットが用意される

 従来モデル同様に、豊富なセキュリティ機能もしっかり継承している。生体認証機能は電源ボタン一体型の指紋認証センサーを標準搭載し、オプションで顔認証カメラの同時搭載にも対応。試用機では双方を同時搭載していたが、環境やマスク着用の有無によって双方を使い分けられるのは便利だ。

 また、カメラ部分には人感センサーを搭載し、本体前に人がいる時にはスリープ移行やスクリーンセーバーの起動を抑制したり、本体前から人がいなくなると自動的に画面を消してロック状態へ移行、人が戻ると自動的に画面をオンにして顔認証でロックを解除する、といった運用が可能となる。

 カメラには物理的にレンズを覆うプライバシーシャッターも搭載しており、カメラを使いたくない場面では物理的にシャットアウトできる。

 このような豊富なセキュリティ機能の搭載によって、ビジネスシーンでも安心して利用できるだろう。

電源ボタン一体型の指紋認証センサーを標準搭載
ディスプレイ上部のカメラは顔認証カメラも選択でき、プライバシーシャッターも搭載される
カメラ部分に人感センサーを搭載し、本体前から人がいなくなると自動的にロック状態へと移行
本体前に人が戻ると自動的に復帰して顔認証でロック解除したり、人がいる間はスリープやスクリーンセーバーの起動を抑制できる

 ポート類は、左側面にUSB 3.0と3.5mmオーディオジャックを、右側面にUSB 3.0、Thunderbolt 4×2、HDMI、Gigabit Ethernetをそれぞれ配置。

 付属ACアダプタは従来モデルと同じUSB Type-C接続で、出力は65W。サイズは特別コンパクトというわけではないが、そこまでかさばるサイズではない。実測の重量は付属電源ケーブル込みで222.7gだった。

左側面にUSB 3.0と3.5mmオーディオジャックを配置
右側面にUSB 3.0、Thunderbolt 4×2、HDMI、Gigabit Ethernetを配置
付属ACアダプタは従来モデルと同じ出力65WのUSB Type-C接続のものとなる
ACアダプタの実測の重量は付属電源ケーブル込みで222.7gだった

従来モデルと比べて大幅な性能向上を確認

 では、ベンチマークテストの結果を紹介する。今回利用したベンチマークソフトは、「PCMark 10 v2.1.2600」、「3DMark Professional Edition v2.25.8098」「Cinebench R23.200」の3種類だ。比較用として、CPUにCore i7-1260Pを搭載する2022年モデル「VAIO SX14 VJS145」の結果も掲載している。

検証機のスペック
VAIO SX14(VJS146)VAIO SX14(VJS145)
CPUCore i7-1360PCore i7-1260P
メモリ32GB16GB
ストレージ512GB PCIe 4.0 SSD512GB PCIe 4.0 SSD
OSWindows 11 ProWindows 11 Pro

 なお、テスト時には最大限の性能を引き出せるように、「VAIOの設定」アプリでCPUとファンの動作モードを「パフォーマンス優先」に設定するとともに、Windowsの電源モードも「最適なパフォーマンス」に設定して行なっている。

ベンチマークテストは「VAIOの設定」アプリでCPUとファンの動作モードを「パフォーマンス優先」に設定して行なった

 まずPCMark 10の結果だが、従来モデルと比べてほぼすべての項目で本機がスコアを伸ばしていることが分かる。

 同様にCinebenchではマルチスレッド処理のテストがさらに大きな伸びを示している。3DMarkの結果は、Time Spyではそこまで大きな伸びとなっていないが、Night Raidではかなり大きな差となっている。

 今回は、搭載メモリが本機は32GB、従来モデルが16GBと異なっていたため、テスト結果がより大きな差になって現れた可能性もあるが、それでもベンチマークテストでこれだけのスコア差が得られることから、実作業でも十分体感できるほどの性能差があると言っていいだろう。

 これなら、重い作業はもちろん、複数のアプリを同時に利用するような作業もかなり快適に行なえそうだ。

 ところで、ベンチマークテスト中の空冷ファンの動作音は、本機のほうが従来モデルと比べてわずかに静かな印象だった。

 とは言え、ファンの動作音や風切り音はしっかりと耳に届き、高負荷状態で静かな場所で利用する場合などはややうるさいと感じるだろう。

 もちろん、低負荷時にはファンの動作音はほとんど聞こえなくなるため、よほど処理の重い作業を長時間行なわない限り、静かな場所での利用も大きな問題はないはずだ。

 続いてバッテリ駆動時間だ、本機の公称の駆動時間は、仕様によって異なることもあって、約17~28時間とかなり幅のある数字となっている。

 ただ、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%、無線LANをオン、ワイヤレスWANをオフ、キーボードバックライトをオフ、CPUとファンの動作モードを「標準」に設定し、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測してみたところ、14時間18分の駆動を確認した。

 ベンチマークテストでこれだけの駆動時間が確認されたということは、おそらく実利用でも10時間は十分利用できるはず。これなら1日の外出利用でも、高負荷な作業を長時間行なわない限りACアダプタの携帯は不要だろう。

 ちなみにVJS146では「バッテリー節約設定」という機能も新たに用意された。こちらはVAIO独自にCPUのパフォーマンスを制限たり、ファンの動作モードやディスプレイ輝度を制限することで、快適さを損なうことなく駆動時間を長くするための設定とのこと。

 今回は試用時間が少なかったこともあり効果を検証できなかったが、VAIOによるとMicrosoft Teams利用時(Web会議接続台数3台で3台ともカメラをオンにした状態)に約10%の消費電力低減を確認しているという。少しでも駆動時間を延ばしたいという場合には、このバッテリー節約設定の活用も有効となりそうだ。

目新しさは少ないが正統な進化を遂げている

 ここまでVAIO SX14(VJS146)をチェックしてきたが、従来モデルとの違いが搭載プロセッサや一部機能のみで、外観などは従来同様ということもあって、それほど目新しさは感じられなかった。

 同時に、ディスプレイを16:10などの縦長ディスプレイを採用したり、ディスプレイ上部のベゼル幅ももう少し狭くしてほしかったように思う。

 それでも、プロセッサが第13世代Core Pプロセッサに強化されたことで、性能面は大きな進化を実現。同時にテレワークで便利に活用できるオンラインコミュニケーション向けの新機能もなかなか便利に活用できそうだ。

 また、従来モデルで定評のあったセキュリティ機能などもしっかり受け継がれており、製品としての魅力は十分に高められている。そういった意味で、マイナーチェンジモデルではあるものの、正統な進化を遂げていると言っていいだろう。

 高性能で軽快に持ち歩け、長時間利用できるビジネスモバイルノートを探している人なら十分満足できる製品と言える。