Hothotレビュー
特徴的な外見とシンプルな設計のミドルクラスゲーミングPC「Legion Tower 5i Gen 8」
2023年5月2日 06:24
レノボ・ジャパン合同会社が発売中の「Legion Tower 5i Gen 8」は、ミドルタワー型のケースを採用したゲーミングPC。左側面パネルに強化ガラス製のクリアパネルを採用してLED装飾も施した、見た目にもこだわった製品だ。
デスクトップPCは、採用している各パーツの性能から見たコストパフォーマンスだけが注目されがちだが、実際に使ってみるとそれぞれにポリシーがあるのが分かる。その辺りも気にかけつつ、本機のレビューをお届けしたい。
シンプルなミドルクラスの構成。ネットワーク周りは充実
Legion Tower 5i Gen 8のスペックは下記の通り。
【表1】Legion Tower 5i Gen 8 | |
---|---|
CPU | Core i7-13700F (Pコア×8+Eコア×8/24スレッド、Pコア5.1GHz+Eコア4.1GHz) |
チップセット | Intel B660 |
GPU | GeForce RTX 3060(GDDR6 12GB) |
メモリ | 16GB DDR5-5600(16GB×1) |
SSD | 512GB(M.2 NVMe) |
光学ドライブ | なし |
電源 | 500W(80PLUS Silver認証) |
OS | Windows 11 Home |
汎用ポート | USB 3.1 Type-C、USB 3.0×4、USB 2.0×4 |
カードスロット | なし |
映像出力 | HDMI 2.1、DisplayPort 1.4a×3 |
有線LAN | 2.5Gigabit Ethernet |
無線機能 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
その他 | 音声入出力など |
本体サイズ | 約205×397×426mm |
重量 | 約14kg |
価格 | 18万9,860円(4月26日時点では17万9,850円で販売中) |
CPUは計16コアのCore i7-13700F、GPUはGeForce RTX 3060という組み合わせ。メインメモリが16GB、SSDが512GBというあたりからも、ミドルクラスのゲーミングPCとなっている。なおメインメモリは16GBの1枚のみで、メモリスロットは計4基(空き3基)。
ネットワーク周りは充実しており、有線は2.5Gigabit Ethernet、無線はWi-Fi 6E対応となっている。そのほかは光学ドライブなし、カードスロットもなしで、最近のゲーミングPCに求められる機能に絞り込んだ仕様だ。
こだわりの見えるポイントとしては、開放部の多いミドルタワー型ケースに、120mmファン搭載の空冷式CPUクーラーを搭載している点。ファンの最大回転数は3,520rpmと高速で、冷却性能を重視しているのが分かる。
シンプル形状のケースにLED装飾を組み合わせたメリハリあるデザイン
続いて外見を見ていく。ケースはダークグレーをベースにブラックを配したカラーリングで、シンプルなボックス形状。電源を落としている時には控えめなイメージだ。しかし電源を入れると前面ロゴや筐体内部のファンに仕込まれたLEDがレインボーカラーで光り、左側面パネルの上部にあるLEDがケース内部を照らす。
ケース前面と天面は大きなメッシュ状になっており、通気性を重視するとともに、ケース内のLEDライティングが透けて見える形。左側面パネルはシースルーの強化ガラスで、LEDライティングの見せ方にもこだわっている。
天面の前方には2基のUSB端子とヘッドフォン・マイク端子を備える。USB Type-Cは背面のみ。背面もUSB端子と有線LAN、音声入出力のみとシンプルな構成だ。
左側面パネルを開けて内部を詳しく見てみると、シースルーを想定しているだけあって内部はブラックで統一されている。配線が多く通るケース前方には化粧板のようなものが貼られており、配線が少ないマザーボード部分だけが見えるようにしてある。
マザーボードはLenovoのロゴが書かれたもの。サイズ的には拡張スロットが4スロット分で、microATXくらいに見える。メインメモリは1枚のみで、空きが3スロットある。
CPUクーラーやケースファンはLEGIONロゴが入ったもので、LEDが仕込まれたファンや冷却フィンの質感もとてもよく、CPUクーラーのファンをフィンに固定する部品が重厚な金属パーツでネジ止めされているなど、高級感がある作りだ。ただこのサイズ感なら、CPUをもう少し冷却できてもよさそうな気はする。
GeForce RTX 3060搭載のビデオカードはデュアルファン仕様で、背面にブラックの金属プレートを装着してデザインの統一感を出している。「GPU-Z」で確認したところ、サブベンダーはLenovo、ブーストクロックは1,777MHzとなっていた。
ストレージはM.2のSSDが1基のみ。右側面パネルを開けたところに3.5インチベイが2基と、2.5インチドライブを装着できそうな場所がある。SATAケーブルをつなげば使えそうだが、電源ケーブルの一部が収められていたりして、取り回しは少々難しそうに見える。
ケースファンは後方の120mmファン1基のみ。前方や天面から自然吸気し、CPUクーラーの風をストレートに受けて後方に排気する形のシンプルなエアフローだ。
騒音はアイドル時からファンの回転する音がしっかり聞こえる。CPUが高負荷になると、CPUファンとケースファンが連動して高回転で回り出し、風切り音がかなり大きくなる。音質は低めで耳触りではないものの、ケースの前方や天面が開放型なこともあり、音量はかなり大きく聞こえる。ゲームの音を邪魔するほどではないが、気になる大きさなのは確かだ。
なお、後述のベンチマーク結果とともに詳しく紹介するが、「サーマル・モード設定」を「静音モード」にしている場合は、アイドル時からほとんど音量が変化しない。ゲームのパフォーマンスには大きな影響を及ぼさないので、適宜動作モードを変更するといいだろう。
高性能なCPUは静音モードでも十分なパフォーマンスを発揮
次に実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2600」、「3DMark v2.26.8092」、「VRMark v1.3.2020」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。
本機は専用ツール「Lenovo Vantage」にある「サーマル・モード設定」でパフォーマンスの調整が可能。初期設定は高性能な「パフォーマンス・モード」で、ほかに「バランス・モード」と「静音モード」が選べる。ベンチマークテストは3つの設定を切り替えてそれぞれ実施した。
なお今回の試用機に使われているパーツのうち、ビデオカードやストレージなどのようにスペックシートで明確に製品の指定がないものについては、実際の製品では異なるパーツが使用される場合もある。あらかじめご理解の上、ご覧いただきたい。
パフォーマンス・モード | バランス・モード | 静音モード | |
---|---|---|---|
PCMark 10 | 8,500 | 8,410 | 8,334 |
Essentials | 11,529 | 11,321 | 11,222 |
Apps Start-up score | 17,378 | 16,284 | 16,195 |
Video Conferencing Score | 8,094 | 8,257 | 8,080 |
Web Browsing Score | 10,896 | 10,792 | 10,802 |
Productivity | 11,096 | 11,043 | 11,027 |
Spreadsheets Score | 14,242 | 13,869 | 13,859 |
Writing Score | 8,646 | 8,793 | 8,774 |
Digital Content Creation | 13,025 | 12,911 | 12,694 |
Photo Editing Score | 14,270 | 14,269 | 14,274 |
Rendering and Visualization Score | 19,021 | 18,617 | 17,633 |
Video Editing Score | 8,141 | 8,102 | 8,128 |
パフォーマンス・モード | バランス・モード | 静音モード | |
---|---|---|---|
Speed Way | |||
Score | 1,783 | 1,784 | 1,766 |
Port Royal | |||
Score | 5,055 | 5,047 | 5,076 |
Time Spy | |||
Score | 9,035 | 9,032 | 8,972 |
Graphics score | 8,538 | 8,535 | 8,542 |
CPU score | 13,496 | 13,491 | 12,562 |
Fire Strike | |||
Score | 21,195 | 21,077 | 20,940 |
Graphics score | 21,793 | 21,671 | 21,738 |
Physics score | 42,322 | 41,434 | 36,839 |
Combined score | 10,846 | 10,852 | 10,892 |
Wild Life | |||
Score | 48,917 | 48,177 | 48,900 |
Night Raid | |||
Score | 62,007 | 61,824 | 58,952 |
Graphics score | 94,754 | 94,386 | 94,345 |
CPU score | 20,960 | 20,923 | 18,860 |
CPU Profile | |||
Max threads | 12,121 | 11,768 | 9,911 |
16-threads | 10,593 | 10,560 | 9,066 |
8-threads | 8,234 | 8,212 | 7,549 |
4-threads | 4,300 | 4,246 | 4,296 |
2-threads | 2,202 | 2,214 | 2,208 |
1-thread | 1,093 | 1,101 | 1,106 |
パフォーマンス・モード | バランス・モード | 静音モード | |
---|---|---|---|
Orange Room | |||
Score | 12,429 | 12,480 | 12,403 |
Average frame rate | 270.95fps | 272.06fps | 270.39fps |
Cyan Room | |||
Score | 9,220 | 9,220 | 9,174 |
Average frame rate | 201.00fps | 201.00fps | 200.00fps |
Blue Room | |||
Score | 2,631 | 2,641 | 2,656 |
Average frame rate | 57.36fps | 57.57fps | 57.89fps |
パフォーマンス・モード | バランス・モード | 静音モード | |
---|---|---|---|
PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator(簡易設定6) | |||
3,840×2,160ドット | 2,775 | 3,086 | 2,948 |
1,920×1,080ドット | 20,073 | 20,243 | 20,143 |
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(最高品質) | |||
3,840×2,160ドット | 7,101 | 7,081 | 7,074 |
1,920×1,080ドット | 21,222 | 21,232 | 21,209 |
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質) | |||
3,840×2,160ドット | 3,891 | 3,879 | 3,845 |
1,920×1,080ドット | 9,222 | 9,194 | 9,030 |
パフォーマンス・モード | バランス・モード | 静音モード | |
---|---|---|---|
CPU(Multi Core) | 26,528pts | 24,273pts | 21,384pts |
CPU(Single Core) | 2,027pts | 2,003pts | 2,005pts |
CPUは16コア/24スレッドのパワーがきっちり発揮されており、「3DMark」の「CPU Profile」では最大スレッド時でもCPUクロックは約5.1GHzを維持している。ただしCPU温度は約97度まで上昇しており、スロットリングを起こすギリギリのラインではないかと思われる。夏場などで室温が上がると若干の性能低下が起こるかもしれない。
「静音モード」の設定下では、スコアが若干悪くなっている。CPUファンの回転数を抑えつつもCPU温度も60度台くらいまで抑え込んでいるようで、CPUクロックが4GHz程度まで落ちているタイミングが見られる。ただ3Dグラフィックス系のスコアは落ちておらず、CPUパワーが多少落ちても、ボトルネックはGPU側のままという状態のようだ。もしゲームプレイ時に騒音が気になったら「静音モード」にするのも現実的な選択肢だ。
ストレージはMicron製「MTFDKBA512TFH」が使われていた。シーケンシャルリードは約6.7GB/sと高速で、使用時にも違和感はなかった。
また実際のゲームプレイのテストとして、フォートナイトのバトルロイヤル1戦と、エーペックスレジェンズのチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はフルHDと4Kで実施。サーマル・モード設定はパフォーマンス・モードを選択した。
3,840×2,160ドット | 1,920×1,080ドット | |
---|---|---|
平均 | 29.655fps | 48.864fps |
下位90% | 25.761fps | 40.707fps |
下位95% | 24.652fps | 38.996fps |
下位99% | 22.006fps | 34.423fps |
3,840×2,160ドット | 1,920×1,080ドット | |
---|---|---|
平均 | 70.563fps | 140.434fps |
下位90% | 56.751fps | 119.242fps |
下位95% | 53.707fps | 114.846fps |
下位99% | 46.021fps | 107.282fps |
フォートナイトでは、DirectX 12でクオリティプリセットを最高、レイトレーシングは不使用とした。4Kでは平均約30fpsと厳しく、フルHDなら平均約49fpsまで上がるが、フレームレートを重視するならもう少し画質を下げた方がよさそうだ。
エーペックスレジェンズでは、画質設定を全て最高に設定し、144Hzのリミッター上限を解除している。ただしスポットシャドウディテールを最高の「極」に設定するとVRAM不足が指摘されたため、1段階下げた「最高」を使用した。4Kで平均70fpsを超えており、60Hz環境ならば十分な値。フルHDなら約140Hzと高リフレッシュレートにも対応できる。
過不足のないシンプルな仕上がり。外見が気に入ったならおすすめ
本機を総評すると、ゲーミングPCとしての完成度は十分だと感じると同時に、デザイン面への配慮が強く感じられる。電源オフ時には落ち着いたダークグレー筐体で目立たず、電源オン時にはLEDライティングで自己主張する。実際にはLEDの数はそれほど多くはなく、隙間の多いデザインのケースから覗くライティングの見せ方がうまい。
ケースの高さはミドルタワー並だが、奥行きは短めで、設置スペースも比較的狭くて済む。必要な時にだけ存在感を示し、それ以外ではおとなしく収まってくれる。
欠点を挙げるならCPUファンの騒音の大きさだが、高負荷時はサーマル・モードの変更による逃げ道があるし、静音モードでもゲームに支障が出ない程度のパフォーマンスを発揮する。アイドル時に静かなPCを求める人には向かない、という程度だ。
ゲーミングPCとしては、それ以外に気になる短所は特に見当たらない。ソフト・ハードともシンプルかつ無難な作りで、PCの初心者から上級者まで安心して使える1台だ。