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Google製「Pixel Buds Pro」レビュー。タッチ操作/ノイキャン対応の完全ワイヤレスイヤフォン
2022年7月29日 02:00
Google製完全ワイヤレスイヤフォン「Pixel Buds Pro」が28日に発売された。価格は2万3,800円。AppleのAirPodsよりは安価に抑えられているが、ワイヤレスイヤフォンとしてはそこそこ高価な部類に入る。しかし、本製品は単に音楽や動画などの視聴だけでなく、Googleのサービスと組み合わせることで、スマートイヤフォンとして、ただのイヤフォンにはない機能性を提供する。
発売に先駆けて短時間ながら検証する機会を得たので、本製品の機能性や使い勝手などを紹介する。
Pixel Buds Proの主な仕様
まずはイヤフォンとしての機能性などを見ていく。Pixel Buds Proは、アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載した、Bluetooth接続の完全ワイヤレスイヤフォンだ。後で説明するように、Googleのサービスと組み合わせることで本領を発揮するが、iOSデバイスのほか、各種タブレットやノートPCなどでも利用できる。
製品ページでは対応コーデックの説明がないが、Pixel 6 Proでペアリングすると、AACで接続された。AACは一般的なBluetoothオーディオデバイスで採用されるSBCよりも高音質とされるコーデックだ。ただし、より高音質なaptX HDやLDACには対応していない。
国内では「Pixel Buds A-Series」(1万1,900円)が2021年8月に発売された。機能的にはこの先行製品に対して、ANC、外部音取り込みモード、マルチポイント接続、ワイヤレス充電といったものが追加。また、Pixel Buds A-Seriesもタップ操作には対応したが、音量調整ができなかったものが、Pixel Buds Proでは本体の前後スワイプでできるようになった。
本体サイズは22.33×22.03×23.72mm、重量は6.2g。完全ワイヤレスイヤフォンとしては一般的なサイズだろう。イヤーチップは大、中、小の3種類が付属している。筆者が普段利用している「EPOS GTW 270 Hybrid」と比べると、若干フィット感が弱い気がするが、軽く運動した程度では落ちることはなかった。
バッテリ駆動時間はANC機能オンで音楽再生した場合で最長7時間、オフだと最長11時間。ケースで充電させると、それぞれ20時間、31時間利用できる。本体のみでも、概ね1日充電なしで使えそうだ。実際、ANCオンで2時間半音楽を鳴らしてみたところ、バッテリ消費量は約2割だった。場合によってはANCオンでも半日近く使えそうだ。充電ケースはUSB Type-Cのほかqiによるワイヤレス充電にも対応するので、充電は楽だ。
充電ケースは白のみだが、本体はチャーコール(黒系)、フォグ(水色系)、レモングラス(黄緑系)、コーラル(オレンジ系)の4色展開。本体はIPX4準拠の、ケースはIPX2準拠の防水/防滴性能を持つ。
ワイヤレスイヤフォンとしての機能
今回、Pixel 6 Proと組み合わせて利用したが、ファストペア機能(Android 6以降で対応)により、充電ケースを開けた瞬間にPixel 6 Pro側に通知が出て、Pixel Buds Proが認識された。iPhoneや他の種類のデバイスとペアリングする際は、ケースにあるペアリングボタンを長押しして接続する。
続いて、セットアップを行ない、Googleアシスタントやタップ操作などの設定を行なう。その際に、イヤーチップによるフィット感の確認が行なわれる。なんとセンサーが耳の奥の気圧を測定し、それに応じてイヤフォン側で減圧を行なっているのだと言うから驚きだ。この調節はANCがオンであれば常時行なわれる。実際、数時間装着していても、耳が痛くなることはなく、音楽などを鳴らしていないとつけていることを忘れるほどだ。
両方の本体にタッチセンサーがあり、シングルタップで再生/一時停止、あるいは電話に出る、ダブルタップで次のトラック、あるいは通話を拒否、トリプルタップで前のトラックに戻る操作ができる。また、前方にスワイプで音量を上げ、後方にスワイプで音量を下げる。
さらに長押しで、ANCのオン/オフか、Googleアシスタントに話しかけるモードを利用できる。これは、左右のイヤフォンに違う機能を割り当てられるので、右の長押しでANCを切り替え、左の長押しでGoogleアシスタントを利用といった設定が可能だ。
音質については、日常的に聞いているYouTube Musicの音源でいくつかの楽曲を再生してみた。普段使っているEPOS GTW 270 Hybridはかなり低音をブーストする仕様なので、それに比べると低音は控えめだが、EPOS GTW 270 Hybridが低音を強調しすぎているだけで、Pixel Buds Proもベースやバスドラの音がしっかり奏でられている。
むしろ、高域、中域、低域ともバランスよく伸び伸びと抜けよく鳴っていると感じる。長年、数万円クラスのイヤフォンを常用しているが、Pixel Buds Proの音質はそれらに比肩するものだと感じる。
ちなみに、「ボリュームEQ」という機能があるのだが、これは音量が小さい時に低音と高音を調節するもの。通常音量でオン/オフを切り替えても音質は変わらない。
ANCについては、普段使っていないので他の製品との比較はできないが、かなり強力だと感じている。Pixel Buds Proの耳への密着感はぼちぼちだが、EPOS GTW 270 Hybridほどではない。遮音性も同様で、何も音を鳴らしていないと、自宅ではエアコンなどの環境音は多少漏れ聞こえてくる。
しかし、ANCをオンにした途端に、自宅がほぼ無音と化した。EPOS GTW 270 Hybridでもわずかにエアコンの音は漏れ聞こえるのだが、Pixel Buds ProでANCを使うと無音に近いレベルにまで遮断された。試用時間が短かったこともあり、エアコン以外の検証は電車での移動で試した程度だが、低音のゴーっという連続的なノイズはかなり効果的に遮断される。一方、高音ノイズや短いノイズにはそこまで効かないようだ。
具体的には電車の車輪から出ていると思われる連続的な音はほぼ聞こえなくなるが、枕木を乗り越えた時のガタッという音は聞こえるという具合だ。
もっとも、音楽を再生していると、ANCの有無にかかわらず外部の騒音は聞こえなくなる。そういった中、ANCをどう活用するのかだが、今のご時世、ノートPCとつないでWeb会議用として重宝しそうだ。全てではないが、外部の騒音を消すことで、会話がより聞こえやすくなる。あるいはWeb会議以外の仕事中も、音楽を流さないでも耳栓代わりにすると、集中力を高められそうだ。Pixel Buds Proはマルチポイント接続に対応するので、スマホとノートに同時接続可能で、そういう使い方も現実的だ。
ただし、これはPixel Buds Pro固有の問題ではないが、大方のBluetoothコーデックの仕様として、0.2~0.3秒の遅延が発生する。Web会議ならこの程度の遅延は致命的ではないが、リアルタイム性が求められるゲームでの利用はほぼ無理と思っていい。
なお、ANCはオフにするだけでなく、マイクで集音して敢えて外の音を通す「透過」モードも利用できる。これを使うと、イヤフォンを外すことなく外部の音をクリアに聴くことができる。切り替えには長押しが必要なので、オフィスで同僚に話しかけられた時はイヤフォンを外してしまった方が早いが、屋外を歩いている時透過モードをオンにすれば、イヤフォンを外すことなく周囲の車などの音をしっかり聴けるようになる。
マイク機能については時間との兼ね合いで検証できなかったが、ビームフォーミングを使った集音のほか、音声加速度計、風音を軽減するメッシュカバーにより、雑音が多い環境や風が強いところでもクリアな音声を実現しているという。
通知読み上げなど、Googleアシスタントとの併用で広がる機能性
AppleのAirPodsがSiriと連携できるように、Pixel Buds ProもGoogleアシスタントと連携できる。むしろこの連携こそがPixel Buds Proの真価だと言える。
Google アシスタントを設定した側のイヤフォンを長押しすると効果音が鳴り、Googleアシスタントの音声待ち受け状態になる。この状態で音声コマンドを使い、話し終わったら指を離す。Googleアシスタントは非常に多機能なので、イヤフォンに絡んだよく使いそうな機能を中心に紹介すると、音楽の再生開始やスケジュールの確認、天気の確認などがある。
スマホがメッセージング系アプリの通知を受け取ると、Pixel Buds Proでその効果音が鳴る。未確認の通知がある状態で、Pixel Buds Proを長押しし、何も話さずに指を離すと、現在時刻を告げ、続いて各種通知をアシスタントが読み上げてくれる。スマホが手元から少し離れている時や運動中などに確認するのに便利だ。また、メッセージング系のアプリの通知に対しては、音声で返信もできる。
Googleアシスタントは、Androidスマホと一般的なBluetoothイヤフォンの組み合わせでも利用できるが、試した限りだと、長押ししから何も話さずに指を離して通知内容を読み上げてくれるのはPixel Buds専用の機能のようだ。
そのほか、この使い方自体はPixel Buds Proでなくてもできるが、Googleマップのナビとの併用も便利だと感じた。スマホの地図やナビは便利だが、画面を見ながら歩くのは危険だ。しかし、イヤフォンをつないだ状態でナビ機能を使うと、曲がるべきところでGoogleアシスタントが音声で教えてくれる。
製品ページだと、「リアルタイム翻訳」機能も訴求されているが、これは字面から想像する機能からは少し遠い。中身は基本的にはGoogle翻訳アプリだし、スマホの操作も必要となる。Pixel Budsに特化した使い方としては、相手にスマホを渡しておき、こちらが話す時はイヤフォンを長押ししながら話すと、スマホ側で翻訳後のメッセージが再生される。続いて相手がスマホのマイクボタンをタップしながら話すと、翻訳結果がイヤフォンから聞こえるという具合だ。
屋外でのスマホ利用をより便利かつ安全にしてくれるイヤフォン
Pixel Buds Proを使ってみて感じたのは、屋外でのスマホ利用をより便利かつ安全にしてくれるということだ。筆者のスマホはPixel 6 Proだが、普段Googleアシスタントはあまり使っていないが、スマホを取り出さなくても通知内容を知れるのは便利だし、長押しで手軽に起動できるので、もっと使ってみようかという気になる。
また、Googleマップの例のように、屋外でのながらスマホの危険性を減らしてくれる使い方もできるし、透過モードを使うことで、周囲の音が聞こえずに交通事故にあう危険性も減らせる。
音質やバッテリの持ち、装着感など、ワイヤレスイヤフォンとしての性能もハイエンド製品として十分なものであり、広くお勧めできる製品だ。また、秋以降に空間オーディオにも対応予定で、今から楽しみだ。