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3分割の冷却機構で性能を最大に! HPの最新ゲーミングPC「OMEN by HP 45L」。LEDとスモーククリアパネルの美しいケースも魅力

OMEN by HP 45L

CPU水冷システムをミドルタワーケース上部に追加

 株式会社日本HPの新型ゲーミングPC「OMEN by HP 45L」は、ミドルタワーケースの上部が伸びて、隙間ができた独特な形状をしている。この伸びた部分には、OMEN Cryoチェンバーと呼ばれるCPU用水冷ラジエータが入っている。

 いわゆる簡易水冷と呼ばれるCPUクーラーは、ケース内部の端の方にラジエータを取り付けることが多い。ケース内のエアフローも考慮してラジエータを冷やすわけだが、CPU以外の熱源で温められたケース内の空気を使うことになるため、冷却性能が落ちやすいとも言われる。

 本機はラジエータ装着部分をケース内部から切り離し、わざわざ隙間を作った上でケース上部に持ってきている。もはや簡易水冷と呼ぶのも失礼な代物で、ハイエンドCPUをの高性能を維持するのに一役買ってくれそうだ。

 そういった部分に気を向けつつ、お借りした試用機の性能や使い心地を評価していく。

最新の第12世代Core搭載のハイエンド構成

 「OMEN by HP 45L」にはスペックが異なる2つのモデルがあり、試用機は上位モデルとなるエクストリームモデル。スペックは下記の通り。

【表1】OMEN by HP 45L
CPUCore i9-12900K(16コア/24スレッド、3.2~5.2GHz)
チップセットIntel Z690
GPUGeForce RTX 3090(GDDR6X 24GB)
メモリHyperX Fury 32GB DDR4-3733(16GB×2)
SSDWestern Digital WD Black 2TB(M.2 NVMe)
電源800W(80PLUS GOLD)
OSWindows 11 Pro
汎用ポートUSB 3.1×2(うち1基Type-C)、USB 3.0×4(うち1基Type-C)、USB 2.0×4、USB 2.0×4
映像出力HDMI 2.1×1、DisplayPort 1.4a×3
有線LANGigabit Ethernet
無線機能Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
その他音声入出力など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約204×470×555mm
重量約22.6㎏
税別価格63万8,000円(キャンペーン価格で486,200円)

 CPUはPコア・Eコアが各8コアのCore i9-12900K、GPUはGeForce RTX 3090で、間違いなく現行ハイエンド機となる。メインメモリはDDR4ながら、HyperX FuryのDDR4-3733を32GB搭載。ストレージはPCIe 4.0対応のWestern Digital製M.2 NVMe SSD「WD Black」の2TBを搭載。いずれもスペックシート上で製品名まで指定されており、安心感がある。

 OMEN Cryo チェンバーと呼ばれる水冷ユニットは、Cooler Master製の240mm水冷クーラーを採用している。さらにTIM(サーマルグリス)にShin-Etsu MicroSi製Extremeを使用。こちらもメーカーが指定されており、冷却システムへの強いこだわりが感じられる。

 本体サイズは高さ555mmと、フルタワーケース並。重量も約22.6kgと、大人の男性でも1人で外箱から本体を出すのは結構大変だ。内部のハイエンドパーツもさることながら、前面と左側面がクリアパネルになっているので、傷や破損がないよう慎重に扱いたい。

 価格は63万8,000円とかなり高価だが、直販のHP Directplusではキャンペーン価格での販売になっていることが多く、筆者が確認した3月23日時点では15万1,800円引きの48万6,200円で販売されていた。

 なお機種名の「45L」はおそらくケースの体積だと思われる。同じ「OMEN by HP」シリーズのデスクトップPCとしては「40L」が発売中で、「25L」が2022年春発売予定となっている。

CPUパワーを最大まで引き出す冷却機構。オーバークロックツールも標準搭載

 本機にはオリジナルのソフトウェア「OMEN Gaming Hub」がインストールされており、「パフォーマンス コントロール」機能が用意されている。標準では「最適」で、ゲームやコンテンツ作成向けの「パフォーマンス」が選べる。

「OMEN Gaming Hub」でパフォーマンスを調整できる

 またエキスパート向けとされるオーバークロック機能も搭載。通常では49倍とされるCPUコア倍率や、CPUコア電圧のオフセット、CPUのキャッシュをコアに接続するインターフェイスのレシオを自由に調整できる。これらは再起動することなく調整可能だが、設定次第でPCが応答しなくなる場合もあるとしている。メーカー提供ツールだが、オーバークロックでの動作を保証するものではない。

オーバークロック設定画面。エキスパートのみの表記がある
CPUコアレシオなどを任意の値に設定できる
アクティブなコア数ごとに倍率を変更可能

 オーバークロックはCPUのほか、メインメモリも対応する。初期設定では3,200MT/sの設定だが、XMPで3,733MT/sにクロックアップできる。こちらはユーザーが任意に調整するCPUのオーバークロックとは違い、XMPプロファイルとしてメモリに設定されているものを使うはずで、比較的安全と言える。とはいえオーバークロックには違いないので、エキスパート向けとされているのだろう。

XMPプロファイルに基づいてメインメモリのオーバークロックも可能

 以上を踏まえて、実機のベンチマークテストを行う。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2535」、「3DMark v2.22.7336」、「VRMark v1.3.2020」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「CINEBENCH R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。

 テストのうち、「PCMark 10 v2.1.2535」と「3DMark v2.22.7336」に関しては、「パフォーマンス コントロール」機能の「最適」と「パフォーマンス」に設定を切り替えて実施した。オーバークロックに関しては、安定動作する設定を探すのは本稿の目的ではないし、CPUの個体差もあり得るので、テストでは使用しない。

【表2】ベンチマークスコア
最適パフォーマンス
「PCMark 10 v2.1.2535」
PCMark 108,6218,861
Essentials11,04910,872
Apps Start-up score15,24915,229
Video Conferencing Score8,0717,798
Web Browsing Score10,96210,824
Productivity10,20711,205
Spreadsheets Score12,61214,945
Writing Score8,2628,401
Digital Content Creation15,42115,497
Photo Editing Score20,80720,564
Rendering and Visualization Score22,71123,029
Video Editing Score7,7617,859
「3DMark v2.22.7336 - Port Royal」
Score12,56412,485
「3DMark v2.22.7336 - Time Spy」
Score18,10018,062
Graphics score18,58518,577
CPU score16,18515,614
「3DMark v2.22.7336 - Fire Strike」
Score37,27838,809
Graphics score45,49845,601
Physics score40,06639,814
Combined score15,15918,011
「3DMark v2.22.7336 - Wild Life」
Score103,895103,709
「3DMark v2.22.7336 - Night Raid」
Score81,66680,451
Graphics score171,685167,355
CPU score20,56520,406
「3DMark v2.22.7336 - CPU Profile」
Max threads11,79311,834
16 threads10,37010,263
8 threads7,8587,808
4 threads4,1434,067
2 threads2,0982,081
1-thread1,0521,045
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score17,134-
Average frame rate373.53FPS
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score17,806-
Average frame rate388.17FPS
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score6,109-
Average frame rate133.17FPS
「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」(簡易設定6)
3,840×2,160ドット13,826-
1,920×1,080ドット43,541-
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(最高品質)
3,840×2,160ドット16,074-
1,920×1,080ドット30,872-
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
3,840×2,160ドット8,219-
1,920×1,080ドット16,818-
「CINEBENCH R23」
CPU(Multi Core)22,794pts-
CPU(Single Core)1,913pts-

 ハイエンド機だけあって素晴らしいスコアが並ぶ中、特に目を引くのがCPU系。「CINEBENCH R23」ではMulti Coreのスコアが2万ポイントを超え、16コアのパワーを見せつけている。MP Ratioは11.91と実コア数より低いが、これはPコアとEコアを混載した12世代Coreならではの結果と言える。

 「3DMark」の「CPU Profile」でも、1スレッドから8スレッドまではほぼ倍増しているが、16スレッドでは伸びが鈍化する。8スレッドまではPコアのみで処理し、16スレッドではPコアとEコアが動作した結果だとわかる。

 さらに注目したいのが「3DMark」の「CPU Profile」を実行中のCPUクロック。1スレッドから最大スレッドまで、全て約4.9GHzでぴたっと止まって微動だにしていない。最大スレッド動作時にはCPU温度が90℃近くまで上がっているのが確認できるが、それでもスロットリングはしない範囲で冷却できているということのようだ。

 「パフォーマンス コントロール」機能で「パフォーマンス」を選んでも、パフォーマンスの違いはほとんど見られない。ただ「3DMark」の「CPU Profile」で見た最高温度は2~3度ほど下がっている。ファンの回転数を上げて冷却性能を高めているようだ。騒音面での不満がないなら、常時「パフォーマンス」を選んでおいてもいいかもしれない。

 ゲーム系ベンチマークテストでは、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」の4Kのみ「快適」の評価で、他は全て最高評価となっている。これでも最高評価を出さない「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」が逆にすごいと思えてくるが、現状でパフォーマンスに不満を訴える部分はない。何ならオーバークロックも使えるのである。

 ストレージはスペックシートにあるとおり、Western Digital製NVMe SSD「WD Black」の2TB「SDBPNTZ-2T00-1106」が使われていた。シーケンシャルリードで約3.4GB/sと、PCIe 4.0対応のSSDとしては特に高性能というわけではないが、実用上では十分な性能だろう。ほかにHDDや光学ドライブなどは搭載されておらず、大型のケースにストレージがこれ1つだけ、というのもちょっと面白い。

CrystalDiskMark 8.0.4

 また実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はフルHDと4Kで実施。画質はいずれも最高設定。

【表3】ゲームのフレームレート
「Fortnite」
解像度3,840×2,1601,920×1,080
平均79.048175.651
下位90%72.869147.907
下位95%70.838140.221
下位99%57.409122.621
「Apex Legends」
解像度3,840×2,1601,920×1,080
平均142.923143.796
下位90%122.648122.513
下位95%119.697120.491
下位99%112.421113.968

 「Fortnite」では、4Kで平均約80fps、下位99%で60fps弱となった。リフレッシュレートが60Hzの一般的なディスプレイであれば何ら不満の出ない性能だ。フルHDであれば平均で約175fps、下位99%で120fpsを超えており、ハイリフレッシュレートディスプレイの利用も考えたい。

 「Apex Legends」では、4Kでも平均フレームレートが140fpsを超えている。ゲーム側で設定されたリミットの144fpsに近く、GPUの平均使用率は約85%で、まだ余裕がある状態だ。フルHDだとGPU使用率は約40%まで下がり、完全にオーバースペックになっている。

CPU、GPU、電源の冷却スペースを分離して理想的なエアフローに

本体正面のスモーククリアパネルから、LED搭載のケースファンが透けて見える

 続いて外観を見ていく。OMEN Cryoチェンバーを採用した縦長のケースはそれだけで目を引く形状だが、電源を入れると前面のOMENのロゴと、その下で縦に並ぶ3連ケースファンに搭載されたLEDがシンクロしてカラフルに輝く。かなり派手な装飾なのだが、ケースファンの手前にはスモークが入ったクリアパネルと黒のメッシュプレートがあるため、意外とギラギラした感じがなく、大人っぽさすら感じさせる。

 さらに左側面もクリアパネルで内部が見える。CPUの水冷ヘッドとメインメモリの背中、ケース左側面の上部にLEDが仕込まれており、やはりシンクロして色が変わる。ビデオカードも「GeForce RTX」の文字がLEDで白く光る(こちらは色変化なし)ため、PCの左前から見るとかなり賑やか。

 LEDの光り方は、「OMEN Light Studio」というツールで、色や光り方、変化の速さなどを細かく調整できる。多数のLED装飾を一元的に調整できる、自分だけの演出を簡単に作れる。

「OMEN Light Studio」で光り方をカスタマイズ

 端子部はケース上部(OMEN Cryoチェンバーの前部)にあり、4基のUSB端子とヘッドフォン端子・マイク端子、電源ボタンがある。端子部を含め、ケースに余計な凹凸はなく、上から下までストンとした直方体。色もマットブラックで統一されている。ケースの形状としてはかなり無骨な印象だ。

端子類は本体上部にある
左側面はクリアパネルで内部が見える。さらに上のOMEN Cryoチェンバー部分の穴も珍しい形状
右側面はフラットな金属パネル
天面は一面メッシュで、奥にOMEN Cryoチェンバーのラジエータが見える
背面はオーソドックスなデザイン。電源は下部にある
底面は広くメッシュになっている

 本機の特徴であるケースは、最上段のOMEN Cryoチェンバーがメインとなるケースから分離されているだけでなく、下段がプレートで区切られている。上段はCPU、中段はビデオカードとマザーボードなど、下段は電源と、エアフローを完全に分けている。

 最大の熱源となるCore i9-12900KとGeForce RTX 3090を分離するだけでなく、電源部分も分離しているのが面白い。これによって前方から後方へと直線的でわかりやすいエアフローが実現できている。エアフローを明確に3つに分離した合理的なケースで、見た目の派手さとうまく両立できている。デメリットがあるとしたら、大きくて重い、というところだけだ。

 ストレージがM.2 SSDのみのため、エアフローを考える必要がないのも大きい。ちなみにストレージを増設できる空きスロットとして、M.2スロットが1基、3.5インチベイ(2.5インチ兼用)と2.5インチベイが各2基用意されているため、HDDなどの増設も可能。ただし購入時のカスタマイズ項目に、ストレージの増設は入っていない。

 搭載デバイスの数が少ないこともあり、配線はシンプルで目立たない。スムーズなエアフローを実現しつつ、ケース内をLED装飾で美しく見せることにも貢献している。

左サイドパネルを開けたところ
CPUにはLED内蔵の水冷ヘッドが装着されている
ケース内部は余裕があり、ビデオカードの巨大さが余計に目立つ
右側面パネルを開けたところ
各種ドライブベイは右側面からアクセスできる。電源はCooler Master製
「LED BOARD」と書かれた基板がある。LED装飾に関わるものはここに接続されるのだろう

 騒音は、アイドル時や低負荷時にはかなり静か。ファンの操作音は僅かにあるが、オフィスワークはもちろん、家庭でもリビングで動作させてビデオを見るなどしても全く邪魔にならない程度(LED装飾はともかく)。オフィス向けのPCと比べても大差ない。

 高負荷時は、CPUの負荷を上げると、上段のOMEN Cryoチェンバーが動き出す。負荷のかけ始めは低めの風切り音がはっきり聞こえてきて少しうるさいのだが、数十秒でファンの回転がぐっと抑えられ、ほぼアイドル状態と変わらない程度まで静かになる。「CINEBENCH R23」の実行中も、CPU使用率が100%であるにも関わらず、CPU温度は65度程度で安定し、ファンの回転は非常にゆるやか。OMEN Cryoチェンバーによる冷却がうまく機能している。

 GPUに高負荷をかけると、ビデオカードのファンから低い風切り音がはっきりと鳴りだす。耳障りな音質ではなく、ゲームの音をスピーカーから出してしまえばそれほど気にならないが、音量としては決して小さくはない。ハイエンドビデオカードの宿命だが、それでも他のハイエンドゲーミングPCと比べれば騒音は抑えられている方だと感じる。余裕のあるレイアウトと、重量があり左右に空気穴のないケースが功を奏しているようだ。

高性能と美しい外見を両立しつつ、コスパも高いハイエンド機

高級感のある外見と、高い性能を両立している

 本機はHPの最高級ゲーミングPCとして高いスペックを備えるだけでなく、3分割されたエアフローによる強力な冷却で安定して高性能を維持し、さらにLED装飾による外見にもこだわって作られている。それぞれに妥協はなく、最高のゲーミングPCを作ろうとしているのがわかる。

 筆者が実際に使って最も強く感じたのは、ケースの出来の良さだ。LED装飾は好みが分かれるので置いておくとしても、OMEN Cryoチェンバーによる冷却性と、無骨な直方体形状でありながらもスモーククリアパネルによる高級感の演出は、実用性と所有欲の両面を満たしてくれる。

 価格はスペック相応に高価だが、キャンペーン適用価格なら他社製品と比較してもむしろ割安なくらい。ハイエンドゲーミングPCが欲しいのであれば、外見と冷却性能も含めて非常にコストパフォーマンスに優れた1台だと思う。

 唯一残念なのは、購入時のカスタマイズの幅がほとんどないところ。ハイエンドを求める人なら、メインメモリやストレージの増設も考えたいはず。OMEN Cryoチェンバーが最大360mmのラジエータを搭載できる設計になっていることを鑑みれば、今後のカスタマイズやモデルの追加もあってしかるべき。マシンとしての完成度が非常に高いだけに、より多くの人が興味を持てるようラインナップが広がることを期待したい。