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実は侮れない性能のRTX 3050 Ti。MSI製ゲーミングノート「Katana GF76」で実力を測ってみた
2021年7月1日 09:50
MSIの「Katana GF76 11UD」は、CPUにIntel「Core i7-11800H」、GPUに「GeForce RTX 3050 Ti Laptop」を搭載する17.3型ゲーミングノートPCだ。性能的にはフルHD(1,920×1,080ドット)解像度での快適なゲーミングにフォーカスした製品だが、本製品の主な注目ポイントとしては、カジュアルゲーマー向けの最新GPU「RTX 3050 Ti」を早い段階で搭載してきた点が挙げられるだろう。
現時点ではノートPC向けにしか提供されていない本GPUがどの程度の性能を発揮するか、気になっている人も多いのではないだろうか。この記事ではKatana GF76 11UD(以下Katana GF76)の製品サンプルをもとに、特徴や使い勝手などのインプレッション、およびベンチマークによる性能チェックを実施していく。
144Hz液晶搭載、フルHD環境で快適なゲーム描画を実現しつつDXRにも対応
最初にKatana GF76の基本的なハードウェア性能を確認しよう。冒頭で述べた通り、本製品はCPUに8コア/16スレッドの「Core i7-11800H」、GPUに「GeForce RTX 3050 Ti Laptop」を搭載する。CPUに関して言えば、世代的に最新となる第11世代Coreプロセッサの高性能モデルで、ここ1年ほどで採用例が増えている競合AMDの「Ryzen 7 5800H」にもひけを取らないポテンシャルを備えている。
GeForce RTX 3050 Ti Laptopは、今年(2021年)5月に発表されたばかりのGPUで、現在のところ対応するデスクトップ版GPUは存在せず、ノートPC向けにのみ展開されるシリーズだ。
これまでGeForceシリーズの下2桁50番台GPUと言えば、性能的には“エントリー向け”の位置付けである場合が多かったが、基本的には本GPUもその例に漏れない。
GPUコアは新たに登場した「GA107」で、演算ユニットであるCUDAコアの総数は2,560基と、1つ上位にあたるノートPC版GPU「RTX 3060 Laptop」の3,840基よりも大幅に削減されている。ビデオメモリはGDDR6の4GBと、こちらも控えめだ。
RTX 3060 Laptopは、ノートPC向けながらWQHD(2,560×1,440ドット)解像度でゲームを楽しめるほどの性能的な余裕があったが、RTX 3050 Ti Laptopはよりコストを落とし、フルHD解像度でのゲーミング向けに用途を絞ったGPUと思っていいだろう。
ちなみにRTX 3050 Ti Laptopは、「RTX」の名を冠することからも分かる通り、ほかの同シリーズと同じく「RT Core」、「Tensor Core」を搭載。DXR(DirectX Raytracing)によるリアルタイムレイトレーシングや、Tensor Coreによる処理を行なう「NVIDIA Broadcast」などを利用可能だ。
特に下2桁50番台GPUとして初めてDXRに対応した点は興味深いが、果たして実際どの程度の性能が発揮できるかは、後ほどベンチマークセッションで確認していこう。
「Katana GF76」のディスプレイは、144Hzの高リフレッシュレート表示に対応する17.3型 フルHDパネルを採用。近年のゲーミングノートPCでは当たり前のように採用されがちな高リフレッシュレートディスプレイだが、なめらかな画面表示は快適なゲーム体験に直結するため、その効果は非常に大きい。
RTX 3050 Ti Laptopの処理性能を考えた場合、あらゆるタイトルで高いフレームレートを出せるとは言えないが、特にApex Legends、フォートナイトのような負荷が高くないFPSタイトルでは効果を実感しやすいはずだ。ちなみにゲーム画面の視認性を考えた場合、画面サイズが大きめである点もプラスに働きやすい。
メインメモリの容量は16GB(DDR4-3200、デュアルチャネル)で、ストレージは高速な512GB NVMe SSD。こちらは今時のノートPCとしては一般的な構成で、可もなく不可もないといったところ。
ちなみにBTOカスタマイズなどは不可能だが、MSI公認サポート店にノートPCとメモリ/ストレージを持ち込めば、製品保証を維持したまま増設サポートを受けることが可能だ。特にストレージ容量など、どうしても不安な場合は利用を検討するのもアリだろう。
ネットワーク機能は本体側面に用意されている有線LANコネクタが使用できるほか、内蔵するIntel「AX201」モジュールによるWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)無線通信にも対応。ちょっとした利用の際は無線LAN接続で、オンラインゲームのプレイ時には有線接続に切り替えるなど、シーンに合わせて便利なほうを選択できるのは嬉しい。
【表1】MSI Katana GF76 11UDの主なスペック | |
---|---|
CPU | Core i7-11800H(8コア/16スレッド、2.4~4.6GHz) |
チップセット | Intel HM470 チップセット |
GPU | GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU(GDDR6 6GB) |
メモリ | DDR4-3200 16GB(8GB×2) |
ストレージ | M.2 NVMe SSD 512GB |
ディスプレイ | 17.3型フルHD(1,920×1,080ドット)非光沢液晶、144Hz表示対応 |
OS | Windows 10 Home |
ネットワーク機能 | Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 |
本体サイズ | 398×273×25.2mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約 2.6kg |
実売価格 | 17万円前後 |
長野剛氏コラボの壁紙はインパクト大。持ち運ぶにはやや重め
続いて、本体の外観やインターフェイス類などをチェックしよう。本体カラーはブラック一色で、装飾らしい装飾は天面にMSIのロゴがある程度。一方で、側面部分にのみヘアライン加工が施してあったり、底面にハニカム状のデザインパターンがあったりと、細部にこだわりが感じられるのが印象的だ。
“日本刀の強さと美しさを表現した”とのことだが、置き場所を選ばないシンプルかつ落ち着いたデザインは本製品の魅力の1つと言っていい。
加えて本製品には、コーエーテクモゲームスの「信長の野望」シリーズ、「三國志シリーズ」などのイラストレーターとして知られる長野剛氏がデザインした壁紙が採用されている。衣装に赤い竜のマーク(言うまでもなく、MSIのロゴをイメージしていると思われる)が描かれた2人の武士が対峙する壁紙は一見の価値アリだ。
本体サイズは約398×273×25.2mm(幅×奥行き×高さ)と、17.3型ディスプレイを採用する都合もあってやや大きめ。本体重量も約2.6kgとなかなかの重さであり、電源アダプタと一緒に持ち運べば総重量3kgを超えてくるため、持ち運びにはそれほど向かないと思われる。
基本的にはリビングや自室などに据え置きで、ゲームを楽しむためのPCとして運用するのがベターだろう。
インターフェイスは、USB 3.0×3(1基はType-C)、USB 2.0、HDMI、Gigabit Ethernet、オーディオジャックを用意。HDMI映像出力を使えばディスプレイ次第で、より高い解像度でのゲームプレイも可能になるものの、RTX 3050 Ti Laptopはあまり高解像度での描画には向かないGPUのため、基本的にはマルチディスプレイ環境の構築などに使うのが良さそうだ。
キーボードはテンキーありの日本語配列を採用。キーピッチは実測17mm前後、キーストロークは1.7mmで、打鍵感は及第点だ。テンキーは独立しているものの、やや変則的な配列が目立つ。電源ボタンが右上に配置されているため、誤操作が気になる人は設定でボタンの挙動を変更しておくといいだろう。
PCゲームで使用しがちなWASDキー、左シフトやスペースバーまわりは特にクセのある配置もないため、あくまでゲーム用と考えれば、さして苦労することはないはずだ。なお、バックライトカラーは赤1色となっている。
また、本製品独自のユーティリティとしては、モニタリングやパフォーマンスチューニングなどの機能が統合された「MSI Center」、スマホゲームなどのプレイが可能なAndroidエミュレーター「MSI App Player」をプリインストールしている。
「Katana GF76」の性能をベンチマークでチェック
では、「Katana GF76」の性能をいくつかのベンチマークで計測してみよう。
今回は「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「FINAL FANTSY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK」といったベンチマークアプリに加え、「Apex Legends」、「Horizon Zero Dawn」、「Cyberpunk 2077」などの実ゲームタイトルでもフレームレートを計測した。ちなみに計測時の本体動作モードは全て出荷時の「バランス」としている。
【表2】ベンチマーク結果 | |
---|---|
3DMark v2.17.7137 | |
Time Spy Extreme score | 2,578 |
Time Spy Extreme Graphics score | 2,449 |
Time Spy Extreme CPU score | 3,685 |
Time Spy score | 5,565 |
Time Spy Graphics score | 5,315 |
Time Spy CPU score | 7,617 |
Fire Strike Ultra score | 3,279 |
Fire Strike Ultra Graphics score | 3,155 |
Fire Strike Ultra Physics score | 20,102 |
Fire Strike Ultra Combined score | 1,673 |
Fire Strike Extreme score | 6,346 |
Fire Strike Extreme Graphics score | 6,516 |
Fire Strike Extreme Physics score | 19,865 |
Fire Strike Extreme Combined score | 2,865 |
Fire Strike score | 12,460 |
Fire Strike Graphics score | 13,951 |
Fire Strike Physics score | 19,781 |
Fire Strike Combined score | 5,288 |
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク | |
1,920×1,080ドット 最高品質 | 13,833 |
FINAL FANTSY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK | |
1,920×1,080ドット 高品質 | 5,450 |
2,560×1,440ドット 高品質 | 3,888 |
3,840×2,160ドット 高品質 | 2,264 |
「3DMark」の総合スコアは、フルHD解像度以上を想定したテストが多いこともあり、総じてやや控えめとなった。総合スコアが10,000の大台を超えたのは、フルHD解像度で描画されるテストである「Fire Strike」のみだ。GPU自体がエントリー・カジュアル向けに調整されているため、やはりWQHDや4K解像度で高い性能を発揮するのは難しいと言えるだろう。
より本製品の真価が分かりやすいのは、比較的軽量な実ゲームベースの「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」の結果だ。このベンチマークでは計測可能な解像度がディスプレイの最大解像度に依存するため、フルHDのみでテストしているが、しっかりと最高判定である「非常に快適」の基準を上回るスコアを達成できている。テスト中のフレームレートは100fpsを上回る場面もあり、この手のタイトルでは本製品の144Hzディスプレイを存分に活用できそうだ。
高負荷タイトルである「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK」においては、フルHD解像度の判定が「やや快適」、WQHD解像度が「普通」判定で、4K解像度は「重い」という結果に。フルHD解像度では概ね滑らか描画ができており、AAA級タイトルの高画質設定であっても、まともにゲームがプレイできるだけの性能を持っていると言って良さそうだ。
続いて、実ゲームのフレームレート計測結果を見てみよう。
【表3】ゲームタイトルごとのフレームレート | ||
---|---|---|
タイトル | 平均fps | 最小fps |
Horizon Zero Dawn 1,920×1,080ドット 最高画質 | 62.0 | 13.0 |
Apex Legends 1,920×1,080ドット 最高画質 | 113.196 | 87.456 |
Cyberpunk 2077 1,920×1,080ドット 画質:ウルトラ | 33.377 | 24.395 |
Cyberpunk 2077 1,920×1,080ドット 画質:レイトレーシング・中 | 46.401 | 37.035 |
Cyberpunk 2077 1,920×1,080ドット 画質:レイトレーシング・高 | 30.592 | 17.799 |
「Horizon Zero Dawn」は、ゲーム内ベンチマークモードでフレームレートを計測した。AAA級の高負荷タイトルではあるが、フルHD解像度の計測では平均60fps超えを達成できており、良好な結果と言えそうだ。最新世代とは言え、下2桁50番台のGPU搭載ノートPCでこれだけの性能が発揮できることは素直に驚きで、近年のゲーミングノートPCの性能向上の恩恵が感じられる。
「Apex Legends」および「Cyberpunk 2077」は、NVIDIAの計測ソフト「Frame View」を使用し、どちらもゲーム内の一定コースを移動した際の1分間のフレームレートを計測した。
「Apex Legends」に関しては、フルHDで平均フレームレートが113fps、最小フレームレートが87fpsという結果に。画質設定は最も重くしてあるため、少し設定を落とせば平均144fpsに近いフレームレートも出せるだろう。
この手のシューター系タイトルをプレイする場合、高リフレッシュレートディスプレイの効果は絶大なので、流行の対戦型タイトルに挑戦したいカジュアルゲーマー・学生ゲーマーにも「Katana GF76」はおすすめしやすいだろう。
「Cyberpunk 2077」は現行屈指のヘビー級タイトルということもあり、最高画質の設定ではフルHD解像度でも平均フレームレートが30fps前後に落ち込んでしまう。
レイトレーシングを有効化してみると、「レイトレーシング・高」設定ではフレームレートが「ウルトラ」より若干下がる一方で、「レイトレーシング・中」設定では平均46fps前後まで向上した。「レイトレーシング・中」でも見た目の印象はなかなかにリッチなので、これをベースに画質を調整していくのが有効だろう。
このような選択の余地が生まれたのも、DXRに対応した「RTX 3050 Ti Laptop」を搭載している本製品のメリットと言えそうだ。
最後に、ストレージ系のベンチマークも確認してみよう。
データサイズ1GiB、テスト5回の条件で計測を実施。シーケンシャルリードでは2,000MB/s前後の良好な速度が出ている。シーケンシャルライトは971MB/sとやや振るわないが、とりあえずはNVMe接続のSSDらしい速度が出ていることが分かるだろう。データコピーやゲームの読み込みといったシーンでは、SATA接続のSSDやHDDを上回る速度のメリットが感じられるはずだ。
侮れない性能、カジュアルゲーマーの入門機としても魅力的
「Katana GF76」は、フルHD解像度設定のゲーミング用途では多くのタイトルを快適にプレイできる、エントリー向けとしては侮れない性能を備えたノートPCだ。
負荷が高くないオンラインゲームはもちろんのこと、設定次第では重量級のタイトルを問題なく遊べる余地があるため、必ずしも高い解像度にこだわらないというカジュアルゲーマー層や、主に対戦型のオンラインゲームをプレイしたいというユーザーにとっては、極めて良好な選択肢となるだろう。
特に初めてゲーミングノートPCに触れるというユーザーにとっては、過不足ない機能・性能が揃っており、コストパフォーマンスの良好なモデルとしておすすめしたい。