Hothotレビュー
必要にして十分。スペックに緩急つけた10万円強のミドルクラスノート「mouse K5」
2021年2月9日 06:55
できるだけスペックの高いノートパソコンが欲しいけれど、予算に合わない。そこから自分が使いそうにない余計な機能を省いた、もっとリーズナブルなモデルがあればいいのに……と嘆いていた人に、もしかすると今回の15.6型ノート「mouse K5」はしっくりくる1台かもしれない。
mouse K5は、これまで「m-Book K」シリーズとして展開してきたモデルの後継機種に当たる。ディスクリートGPUを採用しながら価格を抑えたコストパフォーマンスの高さはそのままに、各部スペックをブラッシュアップして一段と魅力的な製品に仕上げている。どんな風に進化しているのか、さっそく紹介しよう。価格は10万9,800円(税別)から。
最新ではないが、実績あるハードウェアでまとめたシンプルな装備
最初に言ってしまうと、mouse K5はハイパフォーマンスを謳ってはいるが、最新スペックを追求したモデルではない。同社Webサイトでは「ハイエンドノート」という括りになっているものの、どちらかというと実績あるハードウェアを選び抜いて完成度を高めたミドルクラスノート、という表現が当てはまるのではないかと思う。しかしその分、価格面では税別10万円台からというこなれた設定になっているのだ。
たとえばハードウェアスペックを見ると、CPUは第10世代Core i7-10750H(6コア/12スレッド、2.6~5GHz、Comet Lake-H)で現時点の最新世代の1つ前。メモリは標準16GB(試用機種は32GB、最大64GB)と比較的大容量を搭載し、メインストレージは512GB(最大2TB)のNVMe SSD、セカンドストレージは1TB(最大2TB)のHDDという構成だ。
スペックとしてはいたってスタンダードな印象を受けるが、ポイントとなるのはディスクリートGPUとしてGeForce MX350を搭載していること。CPU性能の高さはお墨つき、メモリやストレージの容量も不満はない。でも、もしこれがCPU内蔵グラフィックスであれば「ミドルクラス」としてはやや物足りないだろう。そこをMX350で補うことで、絶妙なバランスの高性能を実現している。
加えて、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax、最大2.4Gbps)にもきっちり対応するなど「最新感」のある装備も忘れていない。Gigabit Ethernetも備えているため、どこでも高速かつ安定した通信環境を整えられる。4つあるUSBポートのうち1つはUSB 3.1 Type-Cで、外部ストレージとの高速なデータ転送で活躍してくれる。バッテリによる稼働時間はカタログスペック上は約11.5時間とのことで、据え置き前提でバッテリ容量が犠牲にされがちな15型クラスにしてはスタミナもたっぷりだ。
その一方で、標準OSはWindows 10 Home(オプションでProも選択可)。15.6型の液晶ディスプレイはフルHD(1,920×1,080ドット)という標準的な解像度。昨今のマルチメディア性能をウリにしたパソコンのように、幅広い色空間やHDRなどへの対応はない。Webカメラは100万画素(HD解像度)となっていて、Web会議には十分だがWindows Helloの顔認証には非対応となる。
22.8mmのやや薄型の筐体ということもあり、光学ドライブは内蔵していない。USB Type-Cポートについても、DisplayPort Alternate Modeや充電の機能を省き、データ転送に用途が絞られている。外部ディスプレイはHDMIポートとMini DisplayPortで接続する方法のみだ。
こうしてハードウェア面の特徴をざっと挙げてみると、性能面は底力があり、オールマイティに活躍してくれそうではある。ただ、こだわりのあるユーザーなら欲しいかもしれない装備、あるいは一般にはそこまで重視されないと思われる機能はバッサリ省かれており、ごくシンプルにまとめ上げているようだ。この割り切り感がむしろmouse K5の魅力の1つとも言えるだろう。
ユーザーのことを考えた気の利いたインターフェイス周り
「オールマイティに使えそう」と書いたが、CPUやGPUのスペック、インターフェイス類などを改めて眺めてみると、mouse K5はクリエイターにもちょうどいいのではないか、と強く感じる部分が多い。
その理由は、繰り返しになってしまうが、まず1つはディスクリートGPUであるGeForce MX350を搭載していること。たとえばRAW形式の写真を現像してJPEG出力するさい、あるいは編集した動画をレンダリング(ファイル出力)するさいなどに、最近ではGPUを活用して高速処理することが多くなってきている。CPU単体やCPU内蔵GPUでは実用に耐えない作業も、MX350のおかげで短時間で画像・映像処理が可能となるのだ。
また、デザイン、編集、プログラミングなど、多数のアプリケーションを同時並行で扱うことになる業務ではマルチディスプレイ環境が必須、というのは実感している人も多いだろう。先述のとおり、mouse K5もマルチディスプレイに対応しているが、ここでは外部ディスプレイと接続するHDMIポートとMini DisplayPortが本体の「背面」に用意されていることに注目したい。
外部ディスプレイと接続するインターフェイスは、ノートパソコンの場合だいたいは本体側面にある。しかし、ほとんど据え置きして使う15.6型ノートパソコンの場合、外部ディスプレイと接続しっぱなしにすることも少なくないわけで、側面からつねにコネクタとケーブルが伸びているのはわずらわしいものだ。マウス操作の邪魔になったり、参考資料をノートパソコンの横に置きにくかったりして、デスクスペースを有効に使えないことにもなる。
mouse K5のように背面に接続するスタイルになっていると、そうした問題は起きにくい。電源端子も同じく背面にあり、ユーザーの手に届く範囲は徹底的にケーブルを排除して、すっきりしたデスク周りで気が散ることなく作業に集中できるわけだ。テンキーつきのフルキーボードも15.6型らしくキーピッチ(19mm)に余裕があり、タイプ時の耳障りなクリック音などがなく、静音性が高い点も作業性の高さにつながっている。
動画配信、チャット、オンライン会議に最適なサウンド関連機能
さらにもう1つ、サウンド関連機能の充実度にも注目したい。mouse K5では、ソフトウェアによるサウンドエフェクトエンジン「Sound Blaster Cinema 6」に対応しており、プリインストールされているユーティリティを使って高度なサウンドエフェクトを加えたり、音質向上を図ったりすることが可能になっている。
mouse K5が内蔵しているのはステレオスピーカーだが、ゲームや映画、音楽といったコンテンツの種類ごとに最適なエフェクト、イコライジングにワンタッチで切り替えられる。これらのサウンドエフェクトは内蔵スピーカーだけでなく、ヘッドフォンで聞くときも有効だ。さらにはHDMIで外部機器に接続している場合にも反映されるので、コンパクトなPCスピーカーやサウンドバーなどと組み合わせたときにも一段と迫力ある音質を体感できるはずだ。
ただこれは、どちらかというとクリエイターより一般ユーザー向けの機能と言えるかもしれない。しかし広義のクリエイターという意味では、動画・音声のライブ配信者に最適な機能もある。Sound Blaster Cinema 6のユーティリティでは、マイクに入力した音声を異なる声質にリアルタイム変換してくれる「Voice Morph」という機能があるのだ。
声を男性から女性に変えたり、老人っぽくしたり、あるいはロボットやファンタジーな生物(をイメージしたもの)に変えたりできる。ユニークな声質にしてライブ配信したいとき、もしくはゲーム中に自分の生声でチャットするのは恥ずかしいときに役立ってくれるだろう。ちなみに内蔵マイクでもVoice Morphは利用できるが、その場合はややノイズが目立ちやすいようなので、できれば外部マイクで活用したいところだ。
加えて、ヘッドフォン(ヘッドセット)端子とマイク端子が別にあるのも、mouse K5がクリエイタ―に適していると言える部分。リスニングと音声取り込みをヘッドフォン・マイク兼用のヘッドセット1つでまかなってもいいが、可能なかぎり高音質を目指すためにヘッドフォンとマイクは別にしたいという人もいるだろう。サウンドの確認は高音質のヘッドフォンにし、音声の取り込みは単体の据え置きマイクなどにすれば、ワンランク上のコンテンツを作り出せるはずだ。
ヘッドフォンとマイクが別端子で用意されている点は、プライベートおよびビジネス用途においても有用だ。ボイスチャットやオンライン会議でも、互いに聞き取りやすい音質を実現できるからだ。mouse K5のサウンド機能は意外と汎用性が高く、使い勝手のいいものになっていると言えるだろう。
GeForce MX350搭載機種ならではの高い性能を発揮
ディスクリートGPUを搭載しているということで、やはり気になるのはどれほどの性能を発揮してくれるか、というところ。クリエイター向けにも満足できる性能になっているのか、ベンチマークテストで確かめてみたい。
PCMark 10では、アプリ起動やWebブラウジングといった日常操作系、WritingなどのProductivity分野で高いスコアを叩き出しており、実用アプリケーションは快適に使えそうだ。内蔵NVMe SSDが比較的高速であることや、MX350がしっかり仕事してくれているのが大きいのだろう。USB接続した外部SSDもシーケンシャルは読み書きともに1GB/s前後に達しており、外付けストレージ上で直接作業してもストレスはない。
PCMark 10のGamingと、3DMarkの各スコアについては、近年のゲーミングノートパソコンや内蔵GPUが強化された第11世代Coreシリーズ搭載機種と比べると見劣りしてしまうのは仕方がないところ。それでも、ファイナルファンタジーXIVはフルHD解像度で「非常に快適」と判定され、3Dゲームを満足に遊べる性能は備えている。
RAW画像の現像処理はGPUの有無で2.5倍以上の差がついており、ここでもMX350を搭載している意義は大きい。なお、Davinci ResolveについてはGPUオフでの計測ができなかったため、GPUによってどれくらい高速になるのかが比較できなかった。が、編集操作やプレビュー再生など作業全般でもたつくようなこともなく、CPU性能の地力の強さとディスクリートGPUの恩恵を感じられるのはありがたい。
必要十分な性能と気の利いた設計の「頼りがいのあるミドルクラス」
何か突出した性能や個性があるわけではないけれど、mouse K5は一般的なデスクワークからクリエイティブな制作業務まで、幅広く無難にこなすのに必要十分な性能・機能を持っている。
実績ある高速CPUに大容量メモリというベース。それに加えて外部ディスプレイ端子がすべて背面にあり、ヘッドフォン・マイクがそれぞれ別端子で用意されているという細かいながらも気の利いた設計は、仕事の作業効率や品質を高めたいユーザーに「刺さる」ポイントではないだろうか。
Windows Helloなどのセキュリティ機能や高解像度ディスプレイといったエクストラの装備がなく、ほぼブラック一色に統一された外観も含め、徹底的にシンプルさにこだわってコストパフォーマンスを高めたmouse K5。「頼りがいのあるミドルクラス」とでも言うべき惹きの強さを秘めた1台になっていると感じる。