Hothotレビュー
性能2倍、ピクセル数50%増加、小型軽量化された「Oculus Quest 2」実機レビュー
2020年9月17日 02:30
Oculusは、スタンドアロン型VRデバイスの第3世代モデル「Oculus Quest 2」を9月17日に発表した。これまで日本では公式サイトと一部通販サイトで販売されてきたが、今回はGEO、ビックカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラの店頭でも取り扱われる。受け取り、販売は10月13日より開始予定。容量の異なる2モデルが用意されており、価格は64GBモデルが37,100円(税込)、256GBモデルが49,200円(税込)。
発売に先駆けて実機を借用したので、前モデルからどのような点が進化したのか、そしてその進化はVRプレイで体感できるのかという視点からレビューをお届けしよう。
CPUを強化、メモリ、ストレージを増量、画面のピクセル数が50%増加
Oculus Quest 2はSoCにXR向けの「Qualcomm Snapdragon XR2」を採用。メモリは前世代の4GBから6GBに増量、ストレージは上位モデルのみ倍増して64GBまたは256GBという構成だ。Snapdragon XR2はスマートフォン用で言えば「Qualcomm Snapdragon 865」相当のプロセッサ。前世代と比較してCPU、GPUは2倍の性能を実現している。Snapdragon XR2の詳細については笠原一輝氏のレポートを参照してほしい。
スペックにおけるもう1つの大きな進化がディスプレイの高解像度化。前世代は片目あたり1,440×1,600ドットだったが、Oculus Quest 2は1,832×1,920ドットとピクセル数が50%増加している。一方、パネルはOLEDからLCDに変更された。リフレッシュレートは当面は72Hzだが、今後のアップデートで90Hzに対応予定だ。
パソコン接続型VRデバイス「Oculus Rift S」は片目あたり1,280×1,440ドット/80HzのOLEDディスプレイを搭載しているので、Oculus Quest 2はOculusのなかでもっとも高解像度で、リフレッシュレートが高いわけだ。
小型、軽量化されている点もポイント。とくに重量は前世代の571gから503gへと10%以上軽量化されている。また、伸縮性のある柔らかいストラップが採用されており、装着性が向上。個人的にはOculus Questの樹脂製ストラップは少し放置するだけで白い粉吹きが発生していたので、それから解放されるだけでも買い替える価値はあると思う。
なおソフトウェアの互換性については相互互換となる。Oculusによれば、将来的にOculus Quest 2の処理性能を前提としたコンテンツがリリースされる可能性はあるが、当面は専用タイトルが発売される予定はないとのことだ。
Oculus Go | Oculus Quest | Oculus Quest 2 | Oculus Rift S | |
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発表日 | 2018年5月1日 | 2019年3月21日 | 2020年9月17日 | 2019年3月21日 |
発売日 | 2018年5月1日 | 2019年5月21日 | 2020年10月13日 | 2019年5月21日 |
カテゴリ | オールインワン型VR視聴 | オールインワン型VRゲーム | オールインワン型VRゲーム | PC対応VRゲーム |
価格 | 32GB:23,800円→19,300円 | 64GB:49,800円 128GB:62,800円 | 64GB:37,100円 256GB:49,200円 | 49,800円 |
ハードウェア | PC不要 | PC不要、PCと接続可能 | PC不要、PCと接続可能 | PC必要 |
トラッキング | 3DoF | 6DoF | 6DoF | 6DoF |
コントローラ | 1本 | 2本 | 2本 | 2本 |
CPU | Qualcomm Snapdragon 821 | Qualcomm Snapdragon 835 | Qualcomm Snapdragon XR2(処理性能は865相当) | - |
GPU | Adreno 530 | Adreno 540 | 不明 | - |
RAM | 3GB | 4GB | 6GB | - |
ストレージ | 32GB、64GB | 64GB、128GB | 64GB、256GB | なし |
ディスプレイ | 高速スイッチLCDディスプレイ、片目あたり1,280×1,440ドット、リフレッシュレート60Hz、メガネの上から着用可 | OLEDディスプレイ、片目あたり1,440×1,600ドット、リフレッシュレート72Hz、メガネの上から着用可 | 高速スイッチLCDディスプレイ、片目あたり1,832×1,920ドット、リフレッシュレート72Hz、今後のアップデートで90Hzに対応、メガネの上から着用可 | OLEDディスプレイ、片目あたり1,280×1,440ドット、リフレッシュレート80Hz、メガネの上から着用可 |
オーディオ | ヘッドフォン不要 | ヘッドフォン不要 | ヘッドフォン不要 | ヘッドフォン不要 |
ストア | Oculus Goストア | Oculus Questストア | Oculus Questストア | Oculus Rift Sストア |
サイズ | 190×115×105mm(幅×高さ×奥行き) | 193×105×222mm(同) | ストラップ折りたたみ状態:191.5×102×142.5mm(同)、ストラップ展開状態:191.5×102×295.5mm(同) | 不明 |
重量 | 468g | 571g | 503g | 不明 |
バッテリ駆動時間 | 約2時間 | ゲームの場合約2時間、動画視聴の場合約3時間 | ゲームの場合約2時間、動画視聴の場合約3時間 | - |
充電時間 | 不明 | 約2時間 | 約2.5時間 | - |
IPD | 固定 | 無段階に調整可能 | 58、63、68mmで調整 | 固定 |
コントローラ | 電源:単3電池×2 | 電源:単3電池×2 | サイズ:9×12cm、重量:126g、電源:単3電池×2 | 電源:単3電池×2 |
スペック以上に小さく感じる筐体、一部機構は低コスト化?
Oculus Quest 2の本体カラーはごく薄いグレー。前世代のブラックは精悍なイメージだったが、今回は未来的清潔感を漂わせているデザインだ。また全体的に丸みが強くなっており、スペック以上にコンパクトに感じられる。
パッケージに入っているのは、Quest 2ヘッドセット、Touchコントローラ×2、電源アダプタ、充電ケーブル、眼鏡スペーサー、単3乾電池×2、リファレンスガイド、安全および保証ガイド。Oculus Quest 2はパソコンに接続してOculus Rift/Rift S用VRコンテンツをプレイ可能だが、そのさいに必要となる推奨ケーブル「Oculus Linkヘッドセットケーブル」(10,700円)は別売となる。
Oculus Quest 2は前面に4つのカメラを搭載し、外部にセンサーが不要なインサイドアウト方式の6DoF対応VRデバイス。この点は前世代と変わらないが、細かな変更が施されている。
まず一番大きな変更点はIPD(瞳孔間距離)の調整機構。前世代はスライダーで59~71mmの間で無段階に調整できたが、Oculus Quest 2はレンズ自体を58、63、68mmの3段階に動かす仕様となった。一度合わせれば何度も変更する調整機構ではないが、ヘッドセットを装着したまま調整できないのは慣れない人にはやや難しい。
もう1つの大きな変更がイヤフォン端子。前世代は左右側面にイヤフォン端子があり、それぞれに左用、右用のイヤフォンを挿せたが、Oculus Quest 2は左側面にしか用意されていない。左右に分かれた「Oculus Questインナーイヤー型ヘッドホン」(6,200円)はケーブルが顔や首に触れにくくて快適だったので、使えなくなったのは残念だ。
新しいTouchコントローラは「Riftコントローラ」のデザインから着想を得ているとのこと。ボタンの大まかな位置、数などは変更ないが、人間工学に沿った形状変更が施されている。たしかに前世代は握っているという感覚が強かったが、新しいTouchコントローラは手のなかに自然と収まっているような感触だ。
ただし、円形の「トラッキングリング」の形状も変わってしまったため、前世代用の「Oculus Quest携帯用ケース」(5,000円)に収まらなくなってしまった。専用ケースに収納したいなら、後述する新型ケースを購入する必要がある。
スペックは大きく向上したOculus Quest 2だが、ハードウェアの機構的にはIPDの調整機構、イヤフォン端子の数とグレードダウンしている。おそらくヘッドセットを小型化し、少しでも低価格化を図るための設計変更だと思われる。
画質、音質、動作速度、バッテリ駆動時間、発熱はいかに?
さて、実際にOculus Quest 2を試用した感想をお伝えしよう。まずディスプレイの画質については、ピクセル数が50%増加しているが、「精細になった」というより「格子が見えなくなった」というのが正確な表現だと思う。ただし格子が見えなくなることにより、グラフィック本来の色、質感が表現されているので、大きな進化と言える。
その一方で、OLEDからLCDにパネルが変更されたことにより、コントラスト比は低下しており、OLEDならではの真の黒で見えるという美点は失われている。総合的には画質は向上していると感じているが、黒の表現にこだわる方にはマイナスポイントであることはたしかだ。
左右ストラップに内蔵されているスピーカーはボリュームが大きく底上げされ、より迫力あるサウンドを楽しめるようになった。また、ヘッドセットにポジショナルオーディオが組み込まれており、ヘッドフォンなしにキャラクターが背後に忍び寄るような感覚を体験できる。
しかし、最大ボリュームにするとコンテンツによっては、こめかみのあたりに振動を感じた。不快というほどではないが結構くすぐったい。大きめの音量でコンテンツを楽しむのならイヤフォンを使うことをおすすめする。
動作速度についてはアプリストアにベンチマークソフトが見当たらなかったので、VRコンテンツの起動時間を計測してみた。下記がその結果だ。
タイトル名 | デバイス | 所要時間 |
---|---|---|
THE CLIMB | Oculus Quest | 32秒28 |
Oculus Quest 2 | 28秒04 | |
ARIZONA SUNSHINE | Oculus Quest | 54秒80 |
Oculus Quest 2 | 49秒07 |
プログラムが起動し、入力待ちが発生するまでの時間を計測しただけなので、CPU、GPUの性能の目安とはならない。しかしパフォーマンス向上の1つの成果として参考にしてほしい。少なくとも、ゲーム中の新しいステージのロード時間も同様に短縮されるはずだ。
バッテリ駆動時間については、ADV「東京クロノス」とFPS「Robo Recall」を30分プレイしたあとのバッテリ残量を調べてみたところ、下記のような結果となった。このテストは、Oculus Questのバッテリが劣化しているため、Oculus Quest 2のみで実施している。
タイトル名 | 結果 |
---|---|
東京クロノス | 30分で残量80% |
Robo Recall | 30分で残量78% |
ADVとFPSで思ったより差が出なかったが、バッテリ残量0%までの所要時間を単純計算すると東京クロノスは2時間30分、Robo Recallは2時間16分ということになる。VRプレイは普通のゲームより疲れが激しい。十分なバッテリ駆動時間を備えていると言える。
最後にOculus Quest 2でRobo Recallを10分プレイした直後の表面温度を計測してみたが、前面上部で44.2℃という結果になった(室温24.3℃で測定)。ノートパソコンの底面並みの発熱だが、サーモグラフィーカメラの画像を見ていただければわかるとおり、温度は前面に集中している。そこを触ればほんのり熱いが、プレイに支障はないはずだ。
専用アクセサリも豊富にラインナップ
同時発売されるアクセサリについても紹介しておこう。
「Quest 2 フィットパック」(5,200円)
一対の遮光ブロッカー、幅の広い顔、または幅の狭い顔の形状にフィットする交換可能なフェイシャルインターフェイスのセットだ
「VRカバーフェイスインターフェイス&フォーム交換セット」(29ドル)
曇り止めのエアフローチャンネル、取り外し可能なノーズガード、交換可能なフォームのセット。北米ではOculus.comから購入可能
「Logitech G333 VRインイヤーヘッドホン」(50ドル)
Oculus Quest 2用のインイヤーヘッドフォン。調整可能なケーブルとストラップで邪魔にならず、脱着の手間もかからない。北米では、Oculus.Com、Logitech、Amazon、Best Buyで購入可能
「Logitech PROゲーミングヘッドセット」(100ドル)
Oculus Quest 2用のオーバーイヤーヘッドセット。レザーイヤーパッドにより外部の騒音をブロックできる。また邪魔にならないカスタムケーブルが採用されている。北米では、Oculus.Com、Logitech、Amazon、Best Buyで購入可能
個人的に購入検討しているのは「Quest 2携帯用ケース」と「Quest 2 フィットパック」。Quest 2携帯用ケースは保管にも持ち運びにも便利だし、Quest 2 フィットパックは鼻の低い顔の平たい族には必携アイテムだ。おそらくケースについてはサードパーティーからも発売されるだろうが、Quest 2 フィットパックは形状が複雑なので他社から発売されたとしても選択肢は少ないと思う。鼻のすき間からの光洩れが気になる方は同時購入を強くおすすめする。
Oculus Questから買い替える価値はあるか?
OculusによればOculus Questは想定以上に販売が好調だったとのこと。その後継機であるOculus Quest 2ではさらなるユーザー獲得のため、下記に列挙したローンチタイトルをサードパーティーと準備している。また日本は最重要戦略国として、前述のとおり店頭販売を行ない、日本市場だけのキャンペーンや、日本向けのVRコンテンツを準備しているとのことだ。
さて、率直に言えば、Oculus Questを購入したユーザーがOculus Quest 2に買い替える必要はないと思う。最新ゲームがOculus Questで遊べないわけではないからだ。
しかし、ディスプレイから格子模様がほぼ消えたことで、VRデバイスとしての没入感は格段に向上している。スタンドアロンVR、そしてパソコン用VRで最高の体験を望んでいる方なら、Oculus Quest 2は買って満足しかないニューモデルと言えよう。