Hothotレビュー
1億800万画素カメラ搭載の「Mi Note 10」はスマホカメラの常識を覆すのか
2019年11月15日 13:20
中国Xiaomiは、1億800万画素のメインカメラを搭載したスマートフォン「Mi Note 10」を発売した。価格は499~599ドル前後だ。
Mi Note 10は、スマートフォンの量産機として世界ではじめて1億800万画素のカメラを搭載したことが最大のウリとなっている。一方で消費者としては当然、「1億画素超は本当に意味を持つのか?」、「そんな小さいセンサーで1億画素超は実用的なのか?」といった疑問が湧いてくるだろう。
今回、海外のECサイトGearbestの協力によりサンプルを1台入手したので、通信機能をオフにして使わず、カメラ機能に絞ったレビューをお届けしたい。
苦汁をなめてきたXiaomiのカメラ
中国で行なわれたXiaomiスマホの発表会のストリーミングなどをご覧になられた方なら知っているだろうが、発表会の時間の大半は写真画質の説明である。これにはHuaweiやOPPO、Vivoといった競合メーカーも写真の画質向上に力を注いできており、その結果消費者に受け入れられ、Xiaomiがシェアを奪われた経緯がある。
Xiaomiは2018年3月のフラグシップモデル「Mi MIX 2S」で、第三者評価機関DxOMarkのMobile部門で101というスコアを打ち出し、それ以降、写真画質の向上を徹底する戦略を打ち出してきた。
しかし実際に筆者がそのMi MIX 2Sと、ほぼ同時期OnePlus 6の写真画質を比較すると「発表会ではそこまで言われてないOnePlus 6のほうが良くないか?」という感想を持った。なので、Mi Note 10発表会ストリーミングも、「まぁ話半分だろうなぁ」という気持ちで観ていた。今回、果たしてそのイメージを払拭できるのかが焦点となる。
今回Mi Note 10に搭載されているセンサーは、Samsungの「ISOCELL Bright HMX」。センサーサイズは1/1.33インチで、スマートフォン向けとしては過去最大クラスとなる。この開発にはXiaomiが積極的に関わっているため、しばらくは独占的にXiaomiに供給されると見られる。
ISOCELL Bright HMXの実現は技術的にものすごく難しいものというわけではない。というのもSamsungはすでに1/2インチで4,800万画素の「GM1」、1/1.7インチで6,400万画素の「GW1」を投入してきているからだ。この2モデルはともに画素サイズが0.8μmだが、これを単純に1/1.33インチに拡大すれば1億800万画素になる。
ただコストとなれば別問題で、1/1.33インチのセンサーに見合うレンズ、そのレンズを駆動して手ブレ補正に対応できるモーター機構を用意しなければならない。そのためMi Note 10のこのメインカメラモジュールの原価は「Snapdragon 855 5個分」になっているという。ここからも、Xiaomiの写真画質への執着心が伺える。
ちなみにMi Note 10の開発当初の写真画質の目標は「DxOMark MobileでP30 Proを超えること」だという。それだけHuaweiに苦汁をなめさせられたということがよくわかるのだが、実際にこれを難なく達成し、Huaweiの「Mate 30 Pro」に並ぶ121のスコアを記録した。筆者はMate 30 Proを所持していないため、これと比較することは不可能だが、Mi Note 10の画質には期待したいところだ。
1億800万画素の威力は?
以下のサンプルはすべて左から順に(スマホ版でご覧になられている場合は上から順に)2,700万画素モード(標準)、1億800万画素モード(選択)、そしてソニーの高級コンデジ「RX100」(2,000万画素)との広角端の比較である。RX100を入れたのは、「Mi Note 10の価格-中国で販売されているSnapdragon 730G搭載一般的なスマホの価格≒RX100の価格」だからだ。
ただ、RX100は広角端が35mmフィルム換算で28mmと、Mi Note 10の25mm(同)と比較して若干狭く、アスペクト比も3:2となっている。また、RX100は稼働を伴うズームレンズだ。よってこの比較は厳密にはフェアではないが、Mi Note 10の実力を窺い知るにはいい材料だ。
なお、撮影モードは基本的にすべて「撮って出し」で、RX100は「プレミアムおまかせオート」である(RX100を購入してこのモードで撮影する人は少数派だと思うが)。
PROモードで設定できるメインカメラのISO感度は最高で3200、そのほかのカメラは1600まで。夜景などの暗いシーンはやたらとISO感度を上げるのではなく、複数枚写真をソフトウェアで合成して対応すると見られる。
基本的にISO800までは常用可能。ISO1600以上だとエッジがわずかにぼやけるようになるが、拡大して目を凝らすような見方をしなければ十分であり、InstagramやFacebookに作品として上げられるレベルだろう。
なお、Mi Note 10の絞りはF1.6で固定であり、被写界深度を変更できず、将来的に対処するにしてもソフトウェアになるだろう。自然なシャープさやボケを再現できるあたりは、まだまだRX100といったハイエンドコンデジにアドバンテージがある。ちなみにRX100も常用可能なISO感度は800までだが、ISO1600以降はノイジーになる代わりにシャープさを残す印象で、Mi Note 10との処理は対照的である。
Mi Note 10には5つの背面カメラが搭載されているが、歪曲収差はかなり抑えられており、まっすぐ写るのはやはり気持ちいい。超広角と広角レンズの四隅は若干流れているが、目くじらを立てるほどではないだろう。
Mi Note 10をこの1~2日持ち歩いた感想だが、シャッタースピードや絞りといったパラメータをいじって作品作りをしたいといった要望でもなければ、日常のスナップには十二分すぎるほどの写真品質だと感じた。少なくともMi MIX 2Sで感じた「発表会で話した画質は所詮話半分」という印象は完全に払拭された。
ちなみに気になるファイルサイズだが、2,700万画素と1億800万画素という数字の差(4倍)ほど大差があるわけではない。たとえば最初の作例(書店店頭)の2,700万画素モードは12,630,276Byte(12MB)だが、1億800万画素モードは20,427,311Byte(19.4MB)と、約62%増にとどまる。
仮に24bitカラーの無圧縮で記録する場合、1億800万画素のデータ量は約326MBに相当する(12,032×9,024×24bit÷8)わけだが、JPEGで圧縮されると画素数ほどの差が生じなくなるようだ。
試しにPCのPhotoshopに読み込み、JPEGで再保存をかけてみたところ、画質最高の12でのファイルサイズは1億800万画素モード時で36.8MB、2,700万画素モード時で14.9MBと、約2倍に留まった。一方画質を10に落とすとそれぞれ21.8MB、6.4MBとなる。おそらくMi Note 10は、2,700万画素モード時は(Photoshopで言うところの)最高画質、1億800万画素モード時はそれより若干品質を落として圧縮処理していると思われる。
唯一気になるのは、1億800万画素モードでは記録に約3~4秒かかる点で、この間カメラの操作はできない。このあたりは画素の処理量が多いため致し方ないところもある。ハイエンドのSnapdragon 855を採用すればもっと短縮できただろうから、この点だけは悔やまれる。
先述のとおり、今回のメインカメラモジュールはSnapdragon 855 5個分の原価に相当する。この高性能カメラを搭載しながら3,000元を切る価格を実現したかった、というのが本製品を開発する原点であったため、妥協したものだ。とは言え、Snapdragon 730Gとこのカメラを搭載してもこの価格というのは、さすがコスパのXiaomiというほかない。
そのほか使い勝手を見ていく
ではカメラ以外の部分について簡単に触れておきたい。大型センサーを搭載していることもあり、本体サイズは74.2×157.8×9.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量は208gと重量級レベルである。とくに厚みはかなりあり、カバー装着後のMi MIX 2Sほどだ。このため本体はエッジ湾曲のOLEDディスプレイを採用し、手にしたときに厚く感じることを防いでいる。
ただこのエッジ湾曲OLEDディスプレイ、見栄えはするし明るく綺麗ではあるが、手放して褒められるレベルではない。スマホにおけるエッジ湾曲ディスプレイ採用の走りはSamsungの「Galaxy Note Edge」だろう。しかしGalaxy Note Edgeはそのエッジ部分にさまざまな独自の表示を行なう「サブディスプレイ」扱いとなっていて、それなりの価値はあったものの、それ以降のエッジ湾曲ディスプレイ採用機はメインディスプレイの内容を湾曲して表示させるだけのものとなってしまい、フォルムと手持ち感の向上以外、特別なメリットを持たず、コンテンツの一部が見にくくなるだけである。
PCの湾曲ディスプレイが内側に湾曲しているのは、目とコンテンツの距離が均等になるから見やすくなるというメリットをもたらすが、スマホのエッジ湾曲ディスプレイはむしろその逆だ。もちろん、持ちやすさとのトレードオフになるのだが、「逆湾曲していても見やすい光学技術」が開発されてから採用すべきだったであろう。
さて、今回の入手したのはグリーンモデルだが、背面カバーの仕上げはかなり手が込んでいて満足感が高い。Mi MIX 2Sでは、「カメラを横に構えたときに文字が逆さまになる」問題を抱えていたが、本製品ではそれも解消されている。手にしたときのスムーズ感は上々である。
3.5mmステレオミニジャックと赤外線リモコン機能は、一時期のXiaomi製品から削除されていたが、中国国内ユーザーの強い要望によって復活した。この点は歓迎すべきだろう。近年流行りの画面内指紋センサーを搭載しているが、大型化したこともあり、反応も速い。光学式のため、認証時はかなり強い光を発する。
ちなみに本体がスリープに入っているときでも画面に触れると指紋センサーの位置を表示してくれる。すでにその上に指を置いているのであれば即座に画面がロック解除される。慣れてしまえば従来の指紋センサーと変わらない使い勝手を実現できるだろう。また、地域設定を日本以外にすれば顔認証も利用できる(なぜ日本に設定するとダメなのかは不明)。
OSは最新の「MIUI 11」で、鳴るごとに異なる水滴や鳥の鳴き声になるのは面白い。フルスクリーンジェスチャーによるウィンドウ切り替え/戻る操作もスムーズで、一度試すともとに戻れなくなりそうだ。なお、標準ではXiaomiの製品らしく、Booking.comやゲームなどのサードパーティ製アプリがあらかじめプリインストールされていた(削除は可能)。
ベンチマークは公式サイトよりダウンロードできるAntutu Benchmark V8をUSBメモリ経由でコピーして利用した。Snapdragon 730Gは、2世代前のSnapdragon 835に拮抗するスコアを残した。「崩壊3rd」のようなハイエンド3Dゲームでなければ、一般利用で困ることは一切ないだろう。
日本上陸に期待
Mi Note 10は残念ながら技適を取得しておらず、海外でしか利用できないが、海外の旅先にコンデジを持っていき写真を記録しているのなら、十分その代わりになるほどの実力を備えている。海外でInstagramをはじめとするSNSを活用しているアクティブなユーザーにはおすすめできる。
MIUI 11のローカライズを見るかぎり、日本語の翻訳はほぼ完璧であり、完成度の高いカメラ画質や本体品質とあいまって、今すぐ日本市場に投入できないのがとても残念に思えるほど。Mi Note 10の国内価格次第では、アッパーミドルクラスのAndroid市場に一石を投じる可能性を秘めている。
Xiaomiは9月に日本の公式Twitterアカウントを開設しており、スマホの市場投入をほのめかすようなツイートも投稿している。Huaweiが米国の貿易制裁で、優秀なカメラを搭載したハイエンドモデルが日本に投入されず、しばらく停滞感があるこの市場が、再び盛り上がってくれることに期待したい。
何か素敵なことが起きそうです🇯🇵… It's time you try something new!#SmartLifeMadeSimplepic.twitter.com/OXFkAN5BEH
— Xiaomi Japan (@XiaomiJapan)November 8, 2019