Hothotレビュー

特価3万円切りでM.2と2.5インチドライブを増設できる激安ノート「MAL-FWTVPC02BB」

14.1型の低価格ノートPCがわずか半年でグレードアップ

MAL-FWTVPC02BB

 FFF SMART LIFE CONNECTED株式会社(旧MARSHAL株式会社)が2月に33,800円で発売したノートPC「MAL-FWTVPC01BB」は、先着100台にかぎり29,800円という安さながら、フルHDのIPSパネルを採用した液晶ディスプレイを搭載した“価格破壊ノートPC”だった(MARSHAL、ドライブ増設可能な33,800円の14型フルHDノート参照)。

 それから約半年の9月、同社はその後継機種となる「MAL-FWTVPC02BB」を発売した。旧機種から見た目は大きく変わらないものの、CPUの変更などいくつかの仕様変更が加えられている(初回29,800円のKaby Lake R搭載14.1型激安ノート参照)。

 価格は税込37,800円と少し上がったものの、先着300台にかぎり29,800円で販売するキャンペーンも実施。つまり旧機種と同額のキャンペーン価格で、後継機種を入手できるという格好だ。

 旧機種は弊誌でレビューしているので(意外と作りは悪くない3万円台前半の激安ノートPCを試してみた参照)、そこからの変更点を押さえながら、改めてどんな製品に仕上がったのかを見ていきたい。

スペック向上、Windows 10 Pro搭載でも特価で3万円切り

 まずは「MAL-FWTVPC02BB」と、旧機種「MAL-FWTVPC01BB」のスペックを比べてみよう。

【表1】スペック比較
MAL-FWTVPC02BBMAL-FWTVPC01BB
CPUCeleron 3867U(2コア/2スレッド、0.8~1.8GHz、HD Graphics 610)Celeron N3350(2コア/2スレッド、1.1~2.4GHz、HD Graphics 500)
メモリ4GB LPDDR3
フラッシュメモリ64GB eMMC
拡張ベイ2.5インチSATA(7mm)、M.2(NGFF2280)2.5インチSATA(7mm)
ディスプレイ14.1型非光沢液晶(IPSパネル、輝度250cd/平方m)14.1型非光沢液晶(IPSパネル、輝度160cd/平方m)
解像度1,920×1,080ドット
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Home 64bit
汎用ポートUSB 3.0×2(うちType-C×1)、USB 2.0USB 3.0、USB 2.0×2
カードスロットmicroSD
映像出力Mini HDMI
無線機能IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2
有線LANEthernet
その他30万画素カメラ、モノラルマイク、音声入出力端子など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)334×220×21.1mm
重量1.39kg1,38kg
価格37,800円33,800円

 もっとも大きな違いはCPU。同じCeleronという名前がついている2コア/2スレッドの製品だが、旧機種はApollo Lake、すなわちAtom系で、本機はKaby Lake R、すなわちCore系になった。これで性能がどう変わったかは後々見ていく。ちなみに内蔵GPUは本機がIntel HD Graphics 610、旧機種が同500となっており、世代が上がっている。

 液晶はどちらもフルHD(1,920×1,080ドット)のIPSパネルとなっているが、本機のほうが輝度が高くなっている。またストレージの増設に使える拡張ベイが、旧機種では2.5インチSATAのみだったのに対し、本機では2.5インチSATAに加えてM.2も用意された。これも後ほど増設して試してみる。

 筐体サイズは変わらないが、重さが10gの微増。USB端子はUSB 2.0が1つ減った代わりに、USB 3.0 Type-Cが追加されている。筐体は21.1mmと比較的薄いながら有線LANも搭載しているのだが、100BASE-TXまでで1000BASE-Tには対応していない。速度だけで言えば、IEEE 802.11acまで対応している無線LANのほうが高速だ。

 あとは価格が税込で4,000円高くなっている。ただ先述のとおり、先着300台にかぎり29,800円で販売するとしており、むしろ4,000円安くなっている格好だ。本稿を執筆する9月5日時点では、自社販売サイトではまだ29,800円で販売されているが、ほかの販売サイトでは一部値上がりしているところもあるので、購入のさいにはご注意いただきたい。

性能は旧機種から順当に向上

 まずはベンチマークテストを行ない、可能な範囲で旧機種と比較してみた。ベンチマークプログラムのバージョンが変わっているものもあるので、あくまで参考としてご覧いただきたい。利用したのは、「PCMark 10 v2.0.2115」、「3DMark v2.10.6751」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」。

【表2】ベンチマークスコア
MAL-FWTVPC02BBMAL-FWTVPC01BB(旧機種)
PCMark10v2.0.2115v1.1.1739
PCMark 101,767788
Essentials4,1633,218
Apps Start-up score3,8532,936
Video Conferencing Score4,4343,537
Web Browsing Score4,2133,211
Productivity2,9232,054
Spreadsheets Score3,7312,325
Writing Score2,2911,815
Digital Content Creation1,232617
Photo Editing Score1,485588
Rendering and Visualization Score739356
Video Editing Score1,7071,126
Idle Battery Life7時間21分-
Modern Office Battery Life5時間48分-
3DMark Fire Strikev2.10.6751v2.6.6238
Score545242
Graphics score602-
Physics score1.894-
Combined score197-
3DMark Night Raidv2.10.6751
Score2,264-
Graphics score2,724-
CPU score1,158-
3DMark Sky Diverv2.10.6751v2.6.6238
Score2,0101,026
Graphics score1,960-
Physics score2,271-
Combined score2,059-
3DMark Cloud Gatev2.10.6751v2.6.6238
Score3,1112,381
Graphics score4,992-
Physics score1,342-
3DMark Ice Storm Extremev2.10.6751
Score19,476-
Graphics score21,287-
Physics score15,009-
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(標準品質(ノートPC))
1,920×1,080ドット1,091
1,280×720ドット2,006
CINEBENCH R20
CPU289cb-
CPU(Single Core)156cb-
CrystalDiskMark v6.0.2
Q32T1 シーケンシャルリード161.9 MB/s185.1 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト113.5 MB/s243.2 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード23.91 MB/s56.41 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト13.63 MB/s42.3 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード23.43 MB/s77.51 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト13.87 MB/s44.83 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード9.401 MB/s6.12 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト10.95 MB/s37.28 MB/s

 完全に同一のテストがないため単純比較はできないものの、どうやら性能の向上は確かにあるようだ。とくにGPUを使う処理に関しては差が大きくなっている。とはいえ3Dゲームをバリバリ遊べるほどの性能ではないし、CPUの性能も2倍を超えるとは思えないので、「価格差のわりには性能の向上が大きい」という程度で考えたほうがいい。

 唯一同じテストができているeMMCは、なぜか旧機種のほうがかなり性能が良いように出ている。とはいえシーケンシャルで161MB/sも出ていればeMMCとしては十分だし、HDDよりは快適なのは確か。ただ容量が64GBで据え置きなのはやはり厳しく、今回使用したベンチマークテストのプログラムをすべてインストールすると、残容量がほとんどなくなる。

 負荷テストを兼ねて「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」も動かしてみたが、画質と解像度を下げてなんとか“普通”の評価。ベンチマーク中の映像を見ても、なんとか遊べる程度には動いていたので、3Dゲームでももっと軽いものならそこそこ動きそうな感触はある。

 バッテリ駆動時間は、ディスプレイの明るさを40%に設定して実施。オフィス使用想定では5時間48分、アイドル時には7時間超と長い駆動時間が確保できている。メーカーからは駆動時間は約5.6時間と発表されているので、それを上回る良好なデータだ。

IPS液晶は十分ながら、キーボードなど癖のある部分も

外見はロゴもなく黒一色

 実際の使用感も見ていきたい。筐体は旧機種と同様、内も外もブラックで統一されたもの。天面はロゴもなく、端が緩い曲面になっている程度で非常にシンプルだ。プラスチック製で薄い筐体のため、液晶部分はたわみやすく、本体も端を持つと少したわむ。このあたりは値段なりの作りだなと感じる。

 ACアダプタは出力約40Wの小さなもので、重量はケーブル込みの実測で231g。本体と合わせても1.6kg強となり、持ち運びにも不自由しない重さに収まる。

 起動すると、OSの立ち上がりやアプリの起動などに少しタイムラグを感じる。これはストレージの速度のほかに、CPUやメモリの性能によるところもありそうで、このあたりも値段なりと納得するしかない。ただディスクのアクセスランプがないので、アプリが起動中なのかどうか一瞬悩ましく感じる。

 冷却用のファンも内蔵されている。底面から吸気し、背面とディスプレイの隙間になる部分から排気する。低負荷時にはファンが止まってほぼ無音状態。ベンチマークテストなどで高負荷にするとファンが回るが、回っているのがわかる程度の小さい音でさほど気にならない。

左側面はUSB 3.0、電源、Mini HDMI、USB 3.0 Type-C
右側面はmicroSDスロット、ヘッドフォン・マイク端子、USB 2.0、Ethernet
前面にはとくになにもない
背面にもなにもないが、ディスプレイの間部分に排気口がある
底面は吸気用のスリットと、ストレージの増設部分のカバーがある
ACアダプタは小型で持ち運びの邪魔にならない

 本機の売りの1つであるIPSパネルの液晶は、やや白っぽく見えてコントラストはあまり高くはないし、色味もさほど鮮やかではない。とはいえ、どの角度から見ても色相の変化は見られず、視野角もかなり横に回らないとまったく違和感がないのはIPSパネルならではの高性能。取り立てて高画質ではないというだけで、普段使いで不満が出るようなことはないだろう。

 また普段は画面をかなり暗めで使う筆者が、本機では画面の明るさを100%にしてもまぶしさは感じなかった。スペックシートによると、これでも旧機種から輝度が上がったということなので、もしかすると旧機種で不満が上がっていた部分なのかもしれない。

 キーボードは旧機種からかなり変更がある。筐体の端まで使うようになり、左側にはゆとりが、右側には1列分キーが増えている。これにより、すべてのひらかなキーやカーソルキーがフルサイズになるなど改善が見られる。右端に追加されたキーが+、-、*、/になっているのを見るに、日本語入力と計算関係の入力を改善しようという意図が見られる。

 ただ、それ以外のキー配置がかなり曲者。一番驚いたのは右のShiftキーが省かれていることで、普段から右のShiftを使っている筆者には相当厳しい。またEnterキーが横長で、それに伴って“]”キーが違う位置に移動されていたり、ファンクションキーの列に“¥”キーがあったりもする。キー配置に余裕ができたのだから、オリジナルのキーを追加するより、スタンダードなキー配置を目指してほしかった。

 サウンドはステレオスピーカーを搭載しているのだが、なぜか2つともキーボードの左上部に固めてある。耳を近づけると確かに2つのスピーカーがあるようなのだが、いかんせん距離が近すぎて、ステレオ感はほぼない。音質はサイズなりに低音がほとんど出ていないものの、高音はうまく出せていて聞き疲れしにくく、意外と悪くない。位置さえ間違えなければよかっただけに、ここは惜しい。

IPS液晶を採用したディスプレイは十分な品質を確保
視野角も広く、色相の変化もほとんどない
キーボードは左右に広くなったが、キー配置がかなり特殊
タッチパッドは見た目にボタンのない一枚板。左右の下部がボタンになっている

M.2と2.5インチの両方にストレージを増設可能

底面のカバーを開けたところ。M.2と2.5インチのスペースがある

 本機には2.5インチSATAとM.2の空きスロットがあるそうなので、こちらにSSDの増設を試みた。なお公式サイトからダウンロードできるマニュアル(本体には付属していない)によると、SATAあるいはM.2にドライブを増設した時点で、保証対象外になるとしている。

 本体の裏を見ると、いかにもなカバーがあるのでネジを外して開けてみると、想像どおり2.5インチSATAとM.2の空きスロットが確認できた。M.2にはNVMeとSATAの2つのタイプがあるのだが、スロットの切り欠きのかたちを見るに、NVMeは正しい向きに装着できない。マニュアルにもSATA対応のSSDが装着可能とされており、NVMeは使用できない。

 早速、M.2のSATA SSDを装着してみる。増設スロットはカバーを開ければ一見してわかる場所にあり、作業はとても簡単だ。またストレージを増設すると保証対象外になると言いながら、本体には増設ストレージ用の金具とネジのセットが同梱されている。増設は自己責任と言いながらも親切心が見えておもしろいが、部品の使い方はマニュアルにも書かれておらず予備もないので、どのネジをどう使うのかは実物をよく見て作業してほしい。

固定用の部品はパッケージに同梱されている
M.2、2.5インチにWestern Digital製のWD Blueシリーズを増設したところ。両方とも同時に認識する

 使用したSSDは、Western Digital製のWD Blueシリーズで、SATA(1TB)、M.2(250GB)とも問題なく認識し、両方を同時使用もできた。「CrystalDiskMark v6.0.2」でベンチマークしてみたところ、いずれもシーケンシャルで500MB/sを超え、元々のeMMCよりかなり高速な値が出ている。

【表3】「CrystalDiskMark v6.0.2」
SATAM.2
Q32T1 シーケンシャルリード554.8 MB/s554.9 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト508.9 MB/s507.2 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード288.9 MB/s292.7 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト275.5 MB/s274.9 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード149.0 MB/s159.5 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト154.6 MB/s155.1 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード30.40 MB/s30.27 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト55.77 MB/s55.69 MB/s

 さらにシステム移行ツールを使ってeMMCのデータをM.2 SSDにコピーし、BIOSで起動優先順位を変更してやると、正しくM.2 SSDから起動できた。ただOSやアプリの立ち上がりがそれほど早くなった感じはなく、やはりCPUやメモリなどほかのボトルネックがあるように感じられる。とはいえ、64GBにリカバリ領域まで取られたeMMCでは使い勝手が悪いので、SSD増設を前提に考えておくのは悪くない。

 メモリも増設したいところだが、2.5インチやM.2のように簡単にアクセスできる場所にない。BIOS上ではLPDDR3の2GBが2枚認識されており、大容量のものに交換できそうな気もするのだが、裏面を開けるのが構造的にかなり難しく、破損の恐れがあるので今回はひかえた。製品保証のことも考慮すると、4GBの環境で使う前提でいたほうがいいだろう。

Webブラウジングやオフィスワークなどの軽作業に好適

 総合的に見ると、3万円程度で購入できるWindows 10 Proのマシンとしては、十分元が取れると感じられた。Webブラウジングやオフィスワーク、動画再生くらいの軽作業ならほぼストレスを感じることはない。画面もIPSなりの性能にとどまるとはいえ、解像度もフルHDになっていて、激安ノートとしては十分。重量も1.39kgと持ち運びにも対応できるので、ストレージさえ増設すれば幅広い用途に使える。

 ただし、キーボードレイアウトだけは要注意。学習用に安価なWindows PCが欲しい学生なり、出張で持ち出すサブPCが欲しい社会人なりにすすめたいのだが、文字入力を頻繁に使う人には気軽に推せない。これを“値段なり”と言ってしまうのはあまりにもったいないので、もし次があるならぜひとも改善を期待したい。