Hothotレビュー
特価3万円切りでM.2と2.5インチドライブを増設できる激安ノート「MAL-FWTVPC02BB」
2019年9月13日 11:00
14.1型の低価格ノートPCがわずか半年でグレードアップ
FFF SMART LIFE CONNECTED株式会社(旧MARSHAL株式会社)が2月に33,800円で発売したノートPC「MAL-FWTVPC01BB」は、先着100台にかぎり29,800円という安さながら、フルHDのIPSパネルを採用した液晶ディスプレイを搭載した“価格破壊ノートPC”だった(MARSHAL、ドライブ増設可能な33,800円の14型フルHDノート参照)。
それから約半年の9月、同社はその後継機種となる「MAL-FWTVPC02BB」を発売した。旧機種から見た目は大きく変わらないものの、CPUの変更などいくつかの仕様変更が加えられている(初回29,800円のKaby Lake R搭載14.1型激安ノート参照)。
価格は税込37,800円と少し上がったものの、先着300台にかぎり29,800円で販売するキャンペーンも実施。つまり旧機種と同額のキャンペーン価格で、後継機種を入手できるという格好だ。
旧機種は弊誌でレビューしているので(意外と作りは悪くない3万円台前半の激安ノートPCを試してみた参照)、そこからの変更点を押さえながら、改めてどんな製品に仕上がったのかを見ていきたい。
スペック向上、Windows 10 Pro搭載でも特価で3万円切り
まずは「MAL-FWTVPC02BB」と、旧機種「MAL-FWTVPC01BB」のスペックを比べてみよう。
MAL-FWTVPC02BB | MAL-FWTVPC01BB | |
---|---|---|
CPU | Celeron 3867U(2コア/2スレッド、0.8~1.8GHz、HD Graphics 610) | Celeron N3350(2コア/2スレッド、1.1~2.4GHz、HD Graphics 500) |
メモリ | 4GB LPDDR3 | |
フラッシュメモリ | 64GB eMMC | |
拡張ベイ | 2.5インチSATA(7mm)、M.2(NGFF2280) | 2.5インチSATA(7mm) |
ディスプレイ | 14.1型非光沢液晶(IPSパネル、輝度250cd/平方m) | 14.1型非光沢液晶(IPSパネル、輝度160cd/平方m) |
解像度 | 1,920×1,080ドット | |
OS | Windows 10 Pro 64bit | Windows 10 Home 64bit |
汎用ポート | USB 3.0×2(うちType-C×1)、USB 2.0 | USB 3.0、USB 2.0×2 |
カードスロット | microSD | |
映像出力 | Mini HDMI | |
無線機能 | IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2 | |
有線LAN | Ethernet | |
その他 | 30万画素カメラ、モノラルマイク、音声入出力端子など | |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 334×220×21.1mm | |
重量 | 1.39kg | 1,38kg |
価格 | 37,800円 | 33,800円 |
もっとも大きな違いはCPU。同じCeleronという名前がついている2コア/2スレッドの製品だが、旧機種はApollo Lake、すなわちAtom系で、本機はKaby Lake R、すなわちCore系になった。これで性能がどう変わったかは後々見ていく。ちなみに内蔵GPUは本機がIntel HD Graphics 610、旧機種が同500となっており、世代が上がっている。
液晶はどちらもフルHD(1,920×1,080ドット)のIPSパネルとなっているが、本機のほうが輝度が高くなっている。またストレージの増設に使える拡張ベイが、旧機種では2.5インチSATAのみだったのに対し、本機では2.5インチSATAに加えてM.2も用意された。これも後ほど増設して試してみる。
筐体サイズは変わらないが、重さが10gの微増。USB端子はUSB 2.0が1つ減った代わりに、USB 3.0 Type-Cが追加されている。筐体は21.1mmと比較的薄いながら有線LANも搭載しているのだが、100BASE-TXまでで1000BASE-Tには対応していない。速度だけで言えば、IEEE 802.11acまで対応している無線LANのほうが高速だ。
あとは価格が税込で4,000円高くなっている。ただ先述のとおり、先着300台にかぎり29,800円で販売するとしており、むしろ4,000円安くなっている格好だ。本稿を執筆する9月5日時点では、自社販売サイトではまだ29,800円で販売されているが、ほかの販売サイトでは一部値上がりしているところもあるので、購入のさいにはご注意いただきたい。
性能は旧機種から順当に向上
まずはベンチマークテストを行ない、可能な範囲で旧機種と比較してみた。ベンチマークプログラムのバージョンが変わっているものもあるので、あくまで参考としてご覧いただきたい。利用したのは、「PCMark 10 v2.0.2115」、「3DMark v2.10.6751」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」。
MAL-FWTVPC02BB | MAL-FWTVPC01BB(旧機種) | |
---|---|---|
PCMark10 | v2.0.2115 | v1.1.1739 |
PCMark 10 | 1,767 | 788 |
Essentials | 4,163 | 3,218 |
Apps Start-up score | 3,853 | 2,936 |
Video Conferencing Score | 4,434 | 3,537 |
Web Browsing Score | 4,213 | 3,211 |
Productivity | 2,923 | 2,054 |
Spreadsheets Score | 3,731 | 2,325 |
Writing Score | 2,291 | 1,815 |
Digital Content Creation | 1,232 | 617 |
Photo Editing Score | 1,485 | 588 |
Rendering and Visualization Score | 739 | 356 |
Video Editing Score | 1,707 | 1,126 |
Idle Battery Life | 7時間21分 | - |
Modern Office Battery Life | 5時間48分 | - |
3DMark Fire Strike | v2.10.6751 | v2.6.6238 |
Score | 545 | 242 |
Graphics score | 602 | - |
Physics score | 1.894 | - |
Combined score | 197 | - |
3DMark Night Raid | v2.10.6751 | |
Score | 2,264 | - |
Graphics score | 2,724 | - |
CPU score | 1,158 | - |
3DMark Sky Diver | v2.10.6751 | v2.6.6238 |
Score | 2,010 | 1,026 |
Graphics score | 1,960 | - |
Physics score | 2,271 | - |
Combined score | 2,059 | - |
3DMark Cloud Gate | v2.10.6751 | v2.6.6238 |
Score | 3,111 | 2,381 |
Graphics score | 4,992 | - |
Physics score | 1,342 | - |
3DMark Ice Storm Extremev | 2.10.6751 | |
Score | 19,476 | - |
Graphics score | 21,287 | - |
Physics score | 15,009 | - |
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(標準品質(ノートPC)) | ||
1,920×1,080ドット | 1,091 | |
1,280×720ドット | 2,006 | |
CINEBENCH R20 | ||
CPU | 289cb | - |
CPU(Single Core) | 156cb | - |
CrystalDiskMark v6.0.2 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 161.9 MB/s | 185.1 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 113.5 MB/s | 243.2 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 23.91 MB/s | 56.41 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 13.63 MB/s | 42.3 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 23.43 MB/s | 77.51 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 13.87 MB/s | 44.83 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 9.401 MB/s | 6.12 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 10.95 MB/s | 37.28 MB/s |
完全に同一のテストがないため単純比較はできないものの、どうやら性能の向上は確かにあるようだ。とくにGPUを使う処理に関しては差が大きくなっている。とはいえ3Dゲームをバリバリ遊べるほどの性能ではないし、CPUの性能も2倍を超えるとは思えないので、「価格差のわりには性能の向上が大きい」という程度で考えたほうがいい。
唯一同じテストができているeMMCは、なぜか旧機種のほうがかなり性能が良いように出ている。とはいえシーケンシャルで161MB/sも出ていればeMMCとしては十分だし、HDDよりは快適なのは確か。ただ容量が64GBで据え置きなのはやはり厳しく、今回使用したベンチマークテストのプログラムをすべてインストールすると、残容量がほとんどなくなる。
負荷テストを兼ねて「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」も動かしてみたが、画質と解像度を下げてなんとか“普通”の評価。ベンチマーク中の映像を見ても、なんとか遊べる程度には動いていたので、3Dゲームでももっと軽いものならそこそこ動きそうな感触はある。
バッテリ駆動時間は、ディスプレイの明るさを40%に設定して実施。オフィス使用想定では5時間48分、アイドル時には7時間超と長い駆動時間が確保できている。メーカーからは駆動時間は約5.6時間と発表されているので、それを上回る良好なデータだ。
IPS液晶は十分ながら、キーボードなど癖のある部分も
実際の使用感も見ていきたい。筐体は旧機種と同様、内も外もブラックで統一されたもの。天面はロゴもなく、端が緩い曲面になっている程度で非常にシンプルだ。プラスチック製で薄い筐体のため、液晶部分はたわみやすく、本体も端を持つと少したわむ。このあたりは値段なりの作りだなと感じる。
ACアダプタは出力約40Wの小さなもので、重量はケーブル込みの実測で231g。本体と合わせても1.6kg強となり、持ち運びにも不自由しない重さに収まる。
起動すると、OSの立ち上がりやアプリの起動などに少しタイムラグを感じる。これはストレージの速度のほかに、CPUやメモリの性能によるところもありそうで、このあたりも値段なりと納得するしかない。ただディスクのアクセスランプがないので、アプリが起動中なのかどうか一瞬悩ましく感じる。
冷却用のファンも内蔵されている。底面から吸気し、背面とディスプレイの隙間になる部分から排気する。低負荷時にはファンが止まってほぼ無音状態。ベンチマークテストなどで高負荷にするとファンが回るが、回っているのがわかる程度の小さい音でさほど気にならない。
本機の売りの1つであるIPSパネルの液晶は、やや白っぽく見えてコントラストはあまり高くはないし、色味もさほど鮮やかではない。とはいえ、どの角度から見ても色相の変化は見られず、視野角もかなり横に回らないとまったく違和感がないのはIPSパネルならではの高性能。取り立てて高画質ではないというだけで、普段使いで不満が出るようなことはないだろう。
また普段は画面をかなり暗めで使う筆者が、本機では画面の明るさを100%にしてもまぶしさは感じなかった。スペックシートによると、これでも旧機種から輝度が上がったということなので、もしかすると旧機種で不満が上がっていた部分なのかもしれない。
キーボードは旧機種からかなり変更がある。筐体の端まで使うようになり、左側にはゆとりが、右側には1列分キーが増えている。これにより、すべてのひらかなキーやカーソルキーがフルサイズになるなど改善が見られる。右端に追加されたキーが+、-、*、/になっているのを見るに、日本語入力と計算関係の入力を改善しようという意図が見られる。
ただ、それ以外のキー配置がかなり曲者。一番驚いたのは右のShiftキーが省かれていることで、普段から右のShiftを使っている筆者には相当厳しい。またEnterキーが横長で、それに伴って“]”キーが違う位置に移動されていたり、ファンクションキーの列に“¥”キーがあったりもする。キー配置に余裕ができたのだから、オリジナルのキーを追加するより、スタンダードなキー配置を目指してほしかった。
サウンドはステレオスピーカーを搭載しているのだが、なぜか2つともキーボードの左上部に固めてある。耳を近づけると確かに2つのスピーカーがあるようなのだが、いかんせん距離が近すぎて、ステレオ感はほぼない。音質はサイズなりに低音がほとんど出ていないものの、高音はうまく出せていて聞き疲れしにくく、意外と悪くない。位置さえ間違えなければよかっただけに、ここは惜しい。
M.2と2.5インチの両方にストレージを増設可能
本機には2.5インチSATAとM.2の空きスロットがあるそうなので、こちらにSSDの増設を試みた。なお公式サイトからダウンロードできるマニュアル(本体には付属していない)によると、SATAあるいはM.2にドライブを増設した時点で、保証対象外になるとしている。
本体の裏を見ると、いかにもなカバーがあるのでネジを外して開けてみると、想像どおり2.5インチSATAとM.2の空きスロットが確認できた。M.2にはNVMeとSATAの2つのタイプがあるのだが、スロットの切り欠きのかたちを見るに、NVMeは正しい向きに装着できない。マニュアルにもSATA対応のSSDが装着可能とされており、NVMeは使用できない。
早速、M.2のSATA SSDを装着してみる。増設スロットはカバーを開ければ一見してわかる場所にあり、作業はとても簡単だ。またストレージを増設すると保証対象外になると言いながら、本体には増設ストレージ用の金具とネジのセットが同梱されている。増設は自己責任と言いながらも親切心が見えておもしろいが、部品の使い方はマニュアルにも書かれておらず予備もないので、どのネジをどう使うのかは実物をよく見て作業してほしい。
使用したSSDは、Western Digital製のWD Blueシリーズで、SATA(1TB)、M.2(250GB)とも問題なく認識し、両方を同時使用もできた。「CrystalDiskMark v6.0.2」でベンチマークしてみたところ、いずれもシーケンシャルで500MB/sを超え、元々のeMMCよりかなり高速な値が出ている。
SATA | M.2 | |
---|---|---|
Q32T1 シーケンシャルリード | 554.8 MB/s | 554.9 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 508.9 MB/s | 507.2 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 288.9 MB/s | 292.7 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 275.5 MB/s | 274.9 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 149.0 MB/s | 159.5 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 154.6 MB/s | 155.1 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 30.40 MB/s | 30.27 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 55.77 MB/s | 55.69 MB/s |
さらにシステム移行ツールを使ってeMMCのデータをM.2 SSDにコピーし、BIOSで起動優先順位を変更してやると、正しくM.2 SSDから起動できた。ただOSやアプリの立ち上がりがそれほど早くなった感じはなく、やはりCPUやメモリなどほかのボトルネックがあるように感じられる。とはいえ、64GBにリカバリ領域まで取られたeMMCでは使い勝手が悪いので、SSD増設を前提に考えておくのは悪くない。
メモリも増設したいところだが、2.5インチやM.2のように簡単にアクセスできる場所にない。BIOS上ではLPDDR3の2GBが2枚認識されており、大容量のものに交換できそうな気もするのだが、裏面を開けるのが構造的にかなり難しく、破損の恐れがあるので今回はひかえた。製品保証のことも考慮すると、4GBの環境で使う前提でいたほうがいいだろう。
Webブラウジングやオフィスワークなどの軽作業に好適
総合的に見ると、3万円程度で購入できるWindows 10 Proのマシンとしては、十分元が取れると感じられた。Webブラウジングやオフィスワーク、動画再生くらいの軽作業ならほぼストレスを感じることはない。画面もIPSなりの性能にとどまるとはいえ、解像度もフルHDになっていて、激安ノートとしては十分。重量も1.39kgと持ち運びにも対応できるので、ストレージさえ増設すれば幅広い用途に使える。
ただし、キーボードレイアウトだけは要注意。学習用に安価なWindows PCが欲しい学生なり、出張で持ち出すサブPCが欲しい社会人なりにすすめたいのだが、文字入力を頻繁に使う人には気軽に推せない。これを“値段なり”と言ってしまうのはあまりにもったいないので、もし次があるならぜひとも改善を期待したい。