Hothotレビュー
8万円から買える「ThinkBook 13s」を喫茶店や新幹線でモバイルワークに使ってみた
~ThinkPadシリーズの弟分の実力を実地で試す
2019年7月11日 11:00
レノボ・ジャパンのノートPCは、おもにビジネスでの利用を想定した「ThinkPad」シリーズと、個人ユーザー向けの「Ideapad」、「Yoga」シリーズというブランドで整理されている。しかし5月29日にレノボが発売した「ThinkBook 13s」は、そのどれでもない「ThinkBook」シリーズに属する新しいノートPCだ。
位置付け的には企業向けのThinkPadシリーズに近いが、個人ユーザーにも受け入れやすいデザインと、低コストで大量導入にも向くという特徴がある。今回はこのThinkBook 13sの検証にあたり、単純なベンチマークテストだけではなく、利用シーンを踏まえた各種テストを行ない、ビジネスモバイルノートPCとしての特性を確かめてみた。
第8世代Core i5搭載で8万円を切る価格
Thinkシリーズの弟分ということで、BTOメニューを利用した豊富なカスタマイズに期待したくなるところだが、現状ではThinkPadシリーズほどの自由度はない。CPUやOSのグレード、メモリやストレージの容量別に選択肢が用意されており、そこから自分の用途にマッチしたモデルを選ぶというかたちになる。
最小構成価格だと税込で141,480円だが、執筆時点ではクーポン適用で79,920円になる。クーポン適用が前提にはなるが、4コア8スレッド実行に対応するCore i5-8265Uや、NVMe対応で容量が256GBのSSDを搭載したモバイルノートPCを、8万円を切る価格で購入できるのは破格だ。
【表1】ThinkBook 13sの最小構成モデルのスペック | |
---|---|
型番 | 20R9004YJP |
OS | Windows 10 Home |
CPU | Core i5-8265U(4コア/8スレッド、1.6~3.9GHz、UHD Graphics 620) |
メモリ | DDR4-2400 SDRAM 8GB |
ストレージ | 256GB(PCI Express NVMe) |
ディスプレイ | 13.3型(1,920×1,080ドット、非光沢) |
通信 | IEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0 |
おもなインターフェイス | USB 3.0(1基はType-C)×3、HDMI、ヘッドフォン/マイク端子 |
キーボード | 日本語キーボード |
カメラ | 92万画素 |
バッテリ駆動時間 | 約13.1時間 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 307.6×216.4×15.9mm |
重量 | 1.34kg |
直販価格 | 141,480円(クーポン適用時79,920円 ※執筆時点) |
液晶パネルのサイズは13.3型。筐体の横幅は307.6mm、奥行きは216.4mm、厚みは15.9mmと、このサイズのパネルを搭載するノートPCとしてはやや小さめという印象を受ける。ただ重さは1.34kgと、最近のモバイルノートPCとしてはやや重い。
筐体には、ヘアライン加工で素材感を活かしたアルミ合金を採用する。天板やパームレストには、薄いレノボのエンブレムとブランド名が入っているが、デザイン全体を引き立たせるアクセントの役割をになっており、全体的に高級感がある。
キーボードは、筐体と同じく深いシルバーを基調としたカラーリングで、全体的に調和の取れたデザインだ。キーピッチは実測値で18mm確保しており、軽めのタッチでスムーズに入力できる。入力時の音も小さく、後述する電車やカフェでの作業時でもまわりに迷惑がかかりにくい。
電源ボタンには指紋センサーが組み込まれている。左横には指紋に似せたシールが貼ってあるので、機能的にもわかりやすい。センサー部分は、指先を当てるだけでよいタイプで、軽くタッチすれば認証作業が終了する。
電車やカフェのせまい机ではどうなる?
重さは1.34kgとはいえ、モバイルノートPCとしては十分な軽さだ。実際にビジネスバッグに入れて取材などに出てみたが、それほど手に負担を感じるほどではない。筆者は1.1kgのモバイルノートPCを日常的に持ち歩いているので、そのあたりのモデルと比べればさほど違いはないと感じる。ほぼフラットなデザインを採用していることもあり、一般的なビジネスバッグならスッと収納できる。
今回は“モバイル環境で仕事を行なう”ということを想定し、いくつかのテストを実施してみた。
まずは、ファーストフード店やカフェなどで仕事を継続する場合の使い勝手の検証だ。大きめな机を用意する店では検証にならないので、小さめの机を用意していたマクドナルドとスターバックスコーヒーで、書類作成などの作業を行なったときの使い勝手を紹介しよう。
まずマクドナルドでは、イスに向かう短辺側が横幅45cm前後の細長い机で作業を行なった。机の中央に置く場合、両側に7cm前後のスペースが生じる。タッチパッドを使うなど、ノートPCのみで作業が完結する場合は、とくに問題はない。ただマウスを使いたいなら、左右どちらかにノートPCをズラして、それなりのスペースを確保する必要はありそうだ。
スターバックスコーヒーでは、おなじみの丸いスタンドテーブルを利用して作業してみた。ただ、意外とこのスタンドテーブルは大きめであり、テーブルの手前中央にノートPCを置いても、左右にはおおむね14cm前後の空きスペースができる。マウスを利用する場合でも余裕を持って作業できるはずだ。
ちなみに今回テストを行なったマクドナルドやスターバックスコーヒーでは、設置されたイスと机の高さのバランスが絶妙で、ThinkBook 13sを使った作業自体は非常に快適に行なえた。こうしたカフェやファーストフード店の「使い勝手の良さ」にも助けられたかたちでもある。
デキル仕事人なら、「新幹線や電車の車内」もまた作業スペースの1つとなる。今回は東北新幹線の一般車両に設置されているテーブルにThinkBook 13sを置いてみたところ、サイズ的にはひとまわり大きい程度で、左右に寄せてもマウスを置くようなスペースはなさそうだ。
ThinkBook 13sに付属するACアダプタは、電源コンセントと接続する部分がケーブルになっている一般的なものである。新幹線が装備する電源コンセントにこのケーブルを挿し、充電しながら利用することも可能だった。
車内で膝の上に載せて使いたい場合、男性なら足をきゅっと内側に寄せたほうが安定して利用できる。手前に重心を感じることもあり、液晶ディスプレイ側が後ろに倒れることもなかった。また、今まで利用してきたノートPCのなかではキータイプの音が小さく、電車などで使う場合は周囲の迷惑になりにくいのも便利だ。
今回のテストでは、おおむね半日程度ThinkBook 13sを持ち歩くことになった。流れとしては、満充電にしたThinkBook 13sをスリープ状態で約1時間携帯し、2時間ほどWebブラウズや書類作成と言った軽作業を行なう。さらに別の場所に移動するために約1時間スリープし、移動先で再び2時間程度の軽作業を行なう。
これらの作業後、スリープ状態にして2時間後に帰宅という流れだったが、バッテリの残量を確認すると59%だった。この程度の作業であれば、バッテリ容量を心配することなく仕事をこなせると考えてよさそうだ。
なお、今回の試用機は前述の表1に記載したスペックの最小構成のモデルではなく、CPUはCore i7-8565U(4コア/8スレッド、1.8~4.6GHz、UHD Graphics 620)、メモリ16GB、ディスクリートGPUのRadeon 540Xを搭載するハイエンドモデルだったことをお断わりしておく。
三拍子そろった高性能なモバイルノートPCは個人ユースにもマッチ
基本的なベンチマークも測定してみたが、こちらのデータについてもハイエンドモデルを使ったものになる。とはいえ、Core i5搭載の最小構成モデルでもWindows 10やMicrosoftのOfficeアプリは、問題なく利用できるはずだ。
【表2】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 Extended v2.0.2115 | |
PCMark 10 Extended score | 3,580 |
Essentials | 8,470 |
App Start-up score | 11,636 |
Video Conferencing score | 7,469 |
Web Browsing score | 6,992 |
Productivity | 7,285 |
Spreadsheets score | 9,973 |
Writing score | 5,322 |
Digital Content Creation | 3,622 |
Photo Editing score | 4,858 |
Rendering and Visualization score | 2,622 |
Video Editting score | 3,732 |
Gaming | 1,989 |
Graphics score | 2,780 |
Physics score | 5,115 |
Combined score | 833 |
PCMark 10 Battery Test v2.0.2115 | |
MODERN OFFICE | 8時間10分 |
3DMark v2.6.6238 | |
Time Spy | 897 |
Fire Strike | 2,520 |
Sky Diver | 8,711 |
CINEBENCH R15.0 | |
CPU | 604cb |
CPU(Single Core) | 182cb |
3DMarkのスコアは、Intelの内蔵GPUを利用したときと比べるとおおむね2倍に近いスコアだった。3D描画に対する負荷の低いPCゲームであれば、十分にプレイ可能だ。ただ、3Dグラフィックスの描画性能を検証するベンチマークテストの最中は、冷却ファンの動作音がそれなりに大きくなる。
CrystalDiskMark 6.0.2の結果を見ると、NVMe対応のSSDを搭載しているにしてはややもの足りない数値ではある。帯域がPCI Express 3.0x2に制限されているのではないか、という印象を受ける。
ただ、ベンチマークの数値は低いとはいえ、実際の使用感にはまったく影響はない。起動、シャットダウン、スリープへの以降や復帰なども含め、ストレージに関するあらゆる動作はキビキビとしており、アプリの起動などの応答性も問題ないレベルだった。
デザイン、モビリティ、性能と三拍子そろったモバイルノートPCが、キャンペーン価格とはいえ8万円前後で購入できるというのはかなりうれしい。基本的には大量導入を前提とした企業ユースが主体とはいえ、個人でもレノボの直販サイトを利用すればこの価格で普通に購入できる。高校生や大学生が日常的に利用するモバイルノートPCの入門機としても最適であり、手ごろにモバイルノートPCが必要なら注目したい製品である。