Hothotレビュー

薄くて小さいが画面は大きいプレミアムモバイル「HP Spectre 13」

日本HP 「HP Spectre 13(2017年11月モデル) パフォーマンスモデル」

 日本HPは、超薄型モバイルPC「HP Spectre 13」の新モデルとなる、2017年11月モデルを発表した。最薄部10.4mmという超薄型筐体に加え、ディスプレイの狭額縁化によるフットプリントの小型化も突き詰め、モバイル性が向上。さらに、第8世代Coreプロセッサ採用による性能の向上も実現している。

 今回は、最上位モデルとなるパフォーマンスモデルを試用する機会を得たので、ハードウェア面を中心に紹介する。すでに発売中で、直販価格は179,800円から。

フットプリントの小型化で携帯性が大きく向上

 「HP Spectre 13(2017年11月モデル) パフォーマンスモデル」は、超薄型モバイルPCとして話題を集めたHP Spectre 13シリーズの最新モデルだ。従来モデルは、高さが最厚部で11.2mmと、当時の13.3型ディスプレイ搭載モバイルノートPCとして世界最薄とされ、ディスプレイ部が浮いて見える独特な形状のヒンジ「シリンダーヒンジ」を採用するなど、プレミアムモデルらしい特徴によっておおいに話題となったが、今回登場した最新モデルでは、従来モデルも魅力を受け継ぎつつ、仕様面の強化を実現している。

 まず、薄さについては、10.4~12.5mmと、前方の最薄部については従来モデル同様だが、最厚部が1.3mm増えている。これは、第8世代Coreプロセッサ搭載による放熱機構の強化と、ディスプレイがタッチ操作に対応していることによるものだ。それでも、手に持った印象は十分に薄いと感じる。

 ただ、日本HPはこの新モデルについても“世界最薄”としているが、「年間100万台出荷するWindows OSまたはOS X搭載のPCベンダーにおける、クラムシェルタイプのタッチ対応ディスプレイ搭載ノートPCの高さを測定した結果に基づく」という長いただし書きがつられており、少々苦しいようにも感じる。

 薄さは従来モデルよりやや増えてはいるが、逆にフットプリントは308×225mm(幅×奥行き)と、従来モデルと比べて幅は17mm、奥行きは4mm短くなり、大幅な小型化を実現。これは、ディスプレイの左右と上部のベゼル幅を狭めたことによるものだ。近年は、ディスプレイのベゼル幅を極限まで狭めてフットプリントのコンパクト化が進んでいる13.3型モバイルノートだが、それらと比べても遜色のないサイズとなった。実際にカバンへの収納性も高まり、従来モデルよりも携帯性は大きく向上したと感じる。

 本体デザインも、従来モデルを踏襲しつつ手が加えられている。従来モデルでは、本体手前角や天板側面付近になだらかなカーブを取り入れていたが、新モデルでは角はかなり鋭角となり、天板側面のカーブもわずかとなり、全体的に直線的なデザインとなった。

 また、筐体カラーも従来モデルはダークグレーにブロンズゴールドをあしらった落ち着いた印象のカラーを採用していたが、新モデルではセラミックホワイトにゴールドをあしらうという、鮮やかなものへと変更。デザインと筐体カラーの変更によって、従来よりもフレッシュなイメージが強くなり、スタイリッシュさが増しているように感じる。

 筐体素材は、従来モデル同様に天板とキーボード面には削り出しのアルミニウム素材、底面には軽さと強度を兼ね備えるカーボンファイバー素材を採用することで、薄さを突き詰めつつ優れた強度も両立。実際に、液晶部や本体を強い力でひねってみてもほとんど歪まず、優れた強度を実感できる。堅牢性についての具体的なスペックは公表されていないが、300kgfの天面加圧試験をパスしている従来モデルとほぼ遜色のない堅牢性を備えていると考えて良さそうだ。

 重量は、公称1.11kgと従来モデル同様で、実測では1,112gだった。本体が非常に薄いこともあって、手にすると数字以上にずっしりと感じる。また、13.3型モバイルノートでは1kgを切る重量の製品が増えていることを考えると、できればもう少しの軽量化も実現してもらいたかったように感じる。

本体天板部分。従来同様のアルミニウム削り出しだが、直線的なデザインに変更。カラーはセラミックホワイトで、ゴールドをアクセントとして採用し、フレッシュでスタイリッシュな印象となった
ディスプレイを開いた状態。ディスプレイ上部と左右のベゼル幅が狭められたことで、フットプリントの小型化を実現している
本体正面。液晶と本体側の間には内側に鋭角な切り込みを用意することで、ディスプレイの開閉も容易となっている
左側面。高さはほぼフラットだが、10.4~12.5mmと、前方がやや薄くなっている
背面
右側面
底面。底面にはカーボンファイバー素材を採用し、軽さと強度を両立。フットプリントは308×225mm(幅×奥行き)と、従来モデルから大幅にコンパクトとなり、携帯性が向上している
重量は実測で1,112gと、ほぼ公称通り。軽量化が進んでいる13.3型モバイルノートとしては少々重い印象だ

タッチ操作に対応する13.3型フルHDディスプレイを採用

 ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を採用。パネルの種類はIPSで、申し分ない広視野角を備える。パネルの表面は光沢仕様となっており、発色は十分に鮮やかだ。特に表示品質についての言及はないが、このクラスの製品として申し分ない表示品質を備えていると言える。ただ、外光の映り込みがやや激しい点は気になった。

 また、HP Spectre 13新モデルではあらたにタッチパネルを搭載しており、タッチ操作に対応。2in1仕様とはなっていないが、タッチ操作に対応したことで、画面に触れて直感的な操作が可能となり、操作性が向上した。なお、ペン入力には対応しない。

 ところで、ディスプレイのヒンジは従来モデル同様のシリンダーヒンジを採用している。円筒を切り抜いたような独特の形状のヒンジだが、適度なトルクでスムーズな開閉が可能なのはもちろん、ディスプレイもしっかりと保持し、ぐらつきもほとんどない。また、背面から見るとディスプレイが浮いているように見えるのも従来同様で、この独特のデザインは他にはない大きな魅力と言える。ただ、ディスプレイ部は最大でも約125度ほどまでしか開かない点は少々残念だ。

1,920×1,080ドット表示対応の13.3型IPS液晶を採用。タッチパネルも搭載しており、タッチ操作にも対応している
表面が光沢処理のため、発色は十分に鮮やかで、表示品質はこのクラスのモバイルノートとして申し分ない印象。ただ、外光の映り込みはやや気になる
ディスプレイのヒンジは、従来モデル同様のシリンダーヒンジを採用
背面側からはディスプレイ部が浮いているように見える、独特の質感は大きな魅力だ
ヒンジの仕様上、ディスプレイは125度ほどまでしか開かない点は少々残念

バックライト搭載のアイソレーションキーボードを搭載

 キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを採用している。フットプリントが小型化されたことで、従来モデルに比べると側面ギリギリまでキーが配置されており、見た目の印象も変わっている。

 主要キーのキーピッチは19mmフルピッチ。配列も自然で、タッチタイプも余裕だ。また、ストロークも1.3mmと、超薄型筐体にしてはしっかりとした深さを確保。個人的にはやや硬めのタッチと感じるが、しっかりとしたクリック感も感じられ、打鍵感は悪くない。さらに、従来モデル同様、キーボードバックライトも搭載しているため、暗い場所でも快適なタイピングが可能だ。

 ただ、Enterキーの右に一部キーが配置されている点は気になる。従来モデルでは、Enterキーの右にキーは配置されていなかった。

 ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを採用。やや横に広い形状となっているが、面積は十分に広く、ジェスチャー操作も可能で、操作性は申し分ない。また、ポインティングデバイスは周囲がダイヤモンドカット加工されており、デザイン性が高められている。ちょっとした部分ではあるが、プレミアムモデルらしい特徴と言っていいだろう。

キーボードはアイソレーションタイプ。スペースキーの幅が広い点が特徴となっている
主要キーのキーピッチは19mmフルピッチで、タッチタイプも申し分ない
ストロークは1.3mmと、超薄型筐体としてはしっかりとした深さがある。タッチはやや硬めだ
キーボードバックライトも搭載しており、暗い場所でのタイピングも快適だ
基本的な配列は標準的だが、Enterキーの右にキーが配置されている点は気になる

スペックも充実

 シリーズでも上位モデルとして位置付けられているHP Spectre 13 パフォーマンスモデルは、性能面も充実している。

 搭載CPUは、4コア8スレッド処理に対応するCore i7-8550U。メインメモリは標準でLPDDR3-2133を16GBと豊富に搭載。これだけのメモリ容量なら、CPUの性能を最大限に引き出すのはもちろん、多くのメモリを消費するアプリも快適に利用できる。また、内蔵ストレージは容量512GBのPCIe/MVNe準拠M.2 SSDを搭載。SATA SSDよりも高速なアクセス速度で、アプリ利用時などのボトルネックにならない。このあたりは、パフォーマンスモデルの名に恥じない仕様と言える。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LANとBluetooth 4.2を標準搭載。生体認証機能としては、Windows Hello対応の顔認証用赤外線カメラを搭載しており、顔認証によるログオンが可能。このほか、約92万画素のWebカメラ、Bang & Olufsenブランドのステレオスピーカなどを搭載している。

 なお、外部ポートは本体背面側にUSB 3.1準拠USB Type-C×1と、Thunderbolt 3×2、オーディオジャックのみと、従来モデル同様かなり割り切った仕様となっている。標準でUSB Type-A変換ケーブルが付属するため、一般的なUSB周辺機器の利用は問題なく、Thunderbolt 3ポートからの映像出力も可能だが、その他の周辺機器は利用時に変換アダプタやUSB Type-C対応ポートリプリケータなどの利用が不可欠となり、かなり不便だ。このあたりは、ある程度の妥協が必要と言える。

 ACアダプタはUSB PD準拠のものが付属。出力は最大65Wのため、比較的サイズは大きいが、電源ケーブルのかわりにプラグを直接備えるアダプタを装着すれば、コンパクトに持ち運べる。また、背面のUSB 3.1 Type-CとThunderbolt 3ポートは全てUSB PDに対応しているため、どのポートに接続しても給電が可能だ。この他、本体収納用のスリーブケースも付属している。

ポート類は背面に集約されており、USB 3.1 Type-Cと、Thunderbolt 3×2を用意
オーディオジャックも用意されているが、メモリカードリーダーやHDMI出力などのポートは用意されていない
パッケージにはUSB Type-C - Type-A変換ケーブルが付属しており、一般的なUSB周辺機器の利用は問題ないが、その他の周辺機器の利用にはポートリプリケータなどが必須となる
ディスプレイ上部には、約92万画素のWebカメラと、Windows Hello対応の顔認証用赤外線カメラを搭載
付属のACアダプタはUSB PD対応のもので、背面USB Type-Cポートに接続して利用する
ACアダプタには、電源ケーブルだけでなく直接プラグを備えるアダプタを取り付けて利用できる
プラグアダプタを取り付けると、ACアダプタもコンパクトに持ち運べる
背面USB Type-CおよびThunderbolt 3ポートは全てUSB PD対応で、ACアダプタをどのポートに接続しても給電が可能だ
ACアダプタの重量は、プラグアダプタ装着時で実測260.5gだった
パッケージには、専用スリーブケースも付属する
スリーブケースは本体にジャストフィット。本体に傷を付けることなく持ち歩ける

高負荷が続くと性能低下が顕著に

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.0.1403」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.4.4163」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、マウスコンピューターの「m-Book B504H」と、富士通の「LIFEBOOK UH75/B3」の結果も加えてある。

HP Spectre 13 パフォーマンスモデルm-Book B504HLIFEBOOK UH75/B3
CPUCore i7-8550U(1.8/4GHz)Core i7-8550U(1.8/4GHz)Core i5-8250U(1.6/3.4GHz)
チップセット
ビデオチップIntel UHD Graphics 620Intel UHD Graphics 620Intel UHD Graphics 620
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 16GBDDR4-2400 SDRAM 8GBDDR4-2400 SDRAM 4GB
ストレージ512GB SSD(PCIe/NVMe)512GB SSD(SATA)128GB SSD(SATA)
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Home 64bitWindows 10 Home 64bit
PCMark 10 v1.0.1403PCMark 10 v1.0.1275
PCMark 10 Score388935533240
Essentials832373366814
App Start-up Score1142396718541
Video Conferencing Score699062485977
Web Browsing Score722365356198
Productivity681061215769
Spreadsheets Score822975187073
Writing Score563649844706
Digital Content Creation281627112591
Photo Editing Score335534003137
Rendering and Visualization Score179118131782
Video Editting Score361027113112
PCMark 8 v2.8.704PCMark 8 v2.7.613
Home Accelarated 3.0394935703456
Creative accelarated 3.0505245944444
Work accelarated 2.0482845524574
Storage504949564866
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)44.741.4239.12
CPU519571534
CPU (Single Core)159169144
3DMark Professional Edition v2.4.41633DMark Professional Edition v2.4.3819
Cloud Gate781575316971
Graphics Score879479687455
Physics Score562463205683
Sky Diver41163982動作せず
Graphics Score38293672
Physics Score67707321
Combined score40173794
Time Spy384360-
Graphics Score334313-
CPU Score27122699-
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)389227222358
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)210426211324

 結果を見ると、そのほとんどがCore i5-8250U搭載のLIFEBOOK UH75/B3の結果を上回っている。上位CPUを搭載するため、これは当然だが、同じCPUを搭載するm-Book B504Hの結果と比べても上回っている部分が多い。これは、HP Spectre 13ではメモリがデュアルチャネルで16GBと大容量搭載しているためと考えられる。このあたりは、さすがパフォーマンスモデルらしい結果と言っていいだろう。

 ただ、1つ気になった部分がある。それは、CINEBENCHのCPUのスコアだ。マルチスレッド処理でのCPUの純粋な処理能力を計測するテストだが、m-Book B504Hはだけでなく、LIFEBOOK UH75/B3のスコアも下回っている。

 計測回数を重ねても傾向は変わらなかったため、テスト中のCPU動作クロックをチェックしてみたところ、テストを開始してしばらくすると、CPUの動作クロックが大きく低下していることがわかった。具体的には、m-Book B504Hの高負荷時と比べて200~300MHzほど動作クロックが低くなっていた。このあたりは、薄型化による影響と考えられる。

 ただ、普段の利用シーンでは長時間CPUがフル稼働する場面は多くなく、ほかのベンチマークテストのスコアで良好な結果が得られていることからも、それほど深刻な問題ではないと言えるだろう。

 ちなみに、高負荷時の冷却ファンの動作音は、確実に耳に届くレベルではあるが、うるさいと感じるほどではない。個人的には、もう少しうるさくてもいいので、高負荷時にしっかり冷却できた方がいいようにも思うが、性能と動作音のバランスは悪くない。

後部底面のメッシュから吸気し、その奥の排気口からCPUの熱を排出。吸気口と排気口はゴム足で隔てられており、高熱の排気を吸い込まないように配慮されている。高負荷時のファンの動作音は比較的静かで、それほどうるさくない

 次に、バッテリ駆動時間だ。HP Spectre 13の公称のバッテリ駆動時間は、約11時間15分(MobileMark 2014で計測)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「(バッテリー)より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約8時間20分だった。公称には届いていないものの、実測で8時間を超える駆動時間なら、モバイル用途としても納得できるはずだ。

携帯性と性能が向上し、魅力が高まった

 HP Spectre 13新モデルは、従来モデルと比べて薄さはほぼそのままに、フットプリントの小型化を実現するとともに、第8世代Coreプロセッサの採用によって性能も高められている。高性能なモバイルPCを探している人にとって、大いに魅力が高まったと言える。

 また、従来よりもスタイリッシュかつフレッシュさが溢れるデザインとなったことで、ビジネスシーンからパーソナルユースまで、どういったシーンにもマッチするようになった点も大きなポイント。このデザイン性の高さは、他の製品にはない大きな魅力となるはずだ。

 モバイルPCとしては、もう少し軽さを追求して欲しかったのと、外部ポートがUSB Type-CとThunderbolt 3のみで、外部周辺機器の利用はやや面倒な部分もあるが、全体的には完成度は十分に優れている。モバイル性と性能を両立したモバイルPCとしてお勧めしたい。