Hothotレビュー

Kaby Lake-Yを搭載した世界最薄&ファンレスの14型2in1日本エイサー「Spin 7」

日本エイサー「Spin 7」実売価格194,000円前後

 日本エイサー株式会社は、Kaby Lake-Yプロセッサを搭載した世界最薄の14型2in1 PC「Spin 7」を1月31日に発表し、2月16日より販売を開始する。

 本製品は、TDP 4.5Wの「Core i7-7Y75(1.30/3.60GHz)」を搭載することでファンレス構造を可能にした2in1 PC。ディスプレイが360度回転するコンバーチブルタイプの2in1 PCとして、世界最薄10.98mmの筐体を実現している。今回は本製品の詳細スペック、使い勝手、性能などについてレビューしよう。

熱設計消費電力の低いKaby Lake-Yプロセッサを採用、質感の高い筐体

 Spin 7に用意されているモデルは1機種だけ。そのモデルには、CPUに熱設計消費電力(TDP)の低いKaby Lake-Yの「Core i7-7Y75(1.3~3.6GHz)」、メモリは8GB、ストレージは256GB SSD(Serial ATA)、ディスプレイは14型フルHD IPS光沢液晶(1,920×1,080ドット、157dpi)、OSは「Windows 10 Home 64bit Anniversary Update」を搭載し、「Microsoft Office Home & Business Premium プラス Office 365 サービス」がプリインストールされている。なおメモリ、ストレージは増設できない。

【表1】Spin 7の主要スペック
OSWindows 10 Home 64bit Anniversary Update
CPUCore i7-7Y75(1.3~3.6GHz)
メモリDDR3L-1600 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD(Serial ATA)
ディスプレイ14型フルHD IPS光沢液晶(1,920×1,080ドット、157dpi)
通信IEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.1
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(兼電源、兼HDMI出力)×2、720p Webカメラ、マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック
バッテリ容量41.58Wh(2700mAh)
バッテリ駆動時間約8時間
本体サイズ約324.60×229.60×10.98mm(幅×奥行き×高さ)
重量約1.2kg
本体色シェールブラック
Microsoft OfficeMicrosoft Office Home & Business Premium プラス Office 365 サービス
実売価格194,000円前後(※2月2日調べ)

 本体サイズは約324.60×229.60×10.98mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.2kg。日本エイサーによれば、7.5mmの狭額ベゼルを採用することで、13.3型クラスの筐体に14型ディスプレイを搭載しているとのこと。ただし、720p Webカメラをディスプレイ上部に内蔵しているため、上部のベゼルは約17mmとなっている。ディスプレイ上部のベゼルを狭額化するよりも、自然な構図でビデオ通話できることを優先させたわけだ。

 筐体の材質は天面、キーボード面、底面全てがアルミニウム合金。ディスプレイは「Corning Gorilla Glass 5」を採用することで、高い耐衝撃性、耐擦過性が確保されている。ちなみにCorning Gorilla Glass 5自体は、1.6mの高さから落としても最大80%が破損を免れる耐衝撃性能が実現されている。

 本体色はシェールブラック。粗い粒子が黒くツヤツヤと光っており、ノートPCには珍しいカラーリングだ。大人の道具的な存在感を醸し出しているが、ツヤがあるぶん手脂の痕が目立つのが個人的には気になった。

 端子・ランプ・ボタン類は、右側面にUSB 3.1 Type-C(兼電源、兼HDMI出力)×2、マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック、左側面に盗難防止用スロット、電源ボタン、ボリュームボタン、ヒンジ部に電源インジケータとバッテリインジケータが配置されている。残念ながらメモリーカードスロットは用意されていない。なお、盗難防止用スロットは側面と底面が繋がっているので、ストラップホールとしても利用できそうだ。

 付属のACアダプタは、入力100-240V、出力20V、2.25A、容量45W。ケーブルの長さは約2.5m(ACアダプタのケーブルが約1.5m、電源ケーブルが約1m)。設計上のバッテリ容量は41.58Wh(2,700mAh)となっており、カタログスペック上は約8時間連続利用できる。

 1つ留意いただきたいのが電源端子として利用するUSB 3.1 Type-Cが右側のみにあること。ACアダプタのケーブルが長いので実用上問題になることは少ないが、筆者は仕事机の左側に電源タップを置いているので取り回しにやや苦労した。

本体天面。エイサーのロゴは鏡面仕上げ
本体底面。左側のヒンジの右横にはリセットスイッチが設けられている
本体前面。中央にはディスプレイを開けるための窪みが用意されている
本体背面
左側のヒンジの右横には電源インジケータとバッテリインジケータが配置されている
本体右側面。左からマイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック、USB 3.1 Type-C(兼電源、兼HDMI出力)×2
本体左側面。左から盗難防止用スロット、電源ボタン、ボリュームボタン
シェールブラックの表面は粗い粒子がツヤツヤと黒く光る
ディスプレイ面。Corning Gorilla Glass 5が採用されており、高い耐衝撃性、耐擦過性を確保。タブレットモードで気兼ねなく利用できそうだ
ディスプレイ両端のベゼルは7.5mm
720p Webカメラをディスプレイ上部に内蔵しているため、上部のベゼルは約17mmと広い。カメラ動作時は左側のLEDランプが緑色に点灯する
本体同梱品。左上から本体、USB Type-C to USB Type-A 変換ケーブル、ACアダプタ、電源ケーブル
USB Type-C to USB Type-A 変換ケーブル。Spin 7にはUSB Type-A端子がないので当面は必需品となる
付属のACアダプタは入力100-240V、出力20V、2.25A、容量45W
本体の実測重量は約1275g
ACアダプタと電源ケーブルの合計実測重量は269.5g。つまり本体、ACアダプタ、電源ケーブルの合計実測重量は1544.5gとなる

利用スタイルは4種類、変形すると4つのモードを自動認識

 Spin 7はほかのコンバーチブルタイプの2in1 PCと同様に、ノートPC、タブレット、ディスプレイ、テントモードの4つのスタイルに変形可能だ。ディスプレイの角度とモーションセンサーによってそれぞれのモードを判別しているようで、変形すると現在のモードを示す画像が数秒ほど表示される。もちろんモードが変更されれば、自動的に左右の音声が切り替えられる。

 試用していて使いにくく感じたのがキーボード無効化のタイミング。ノートPCモード以外ではキーボードは無効化されるが、現在のモードを示す画像が表示されるまでキーボードが有効のままなのだ。つまりディスプレイを回転させる際にキーボードに触れてしまうと、誤操作が発生する。

 キーボードに触れないように変形させることも可能だが、無理な持ち方をすれば落としてしまいそうだ。ディスプレイを180度以上回転させた段階で、キーボードを無効化する仕様にするべきだ。

 また、もう1つ気になったのがヒンジの緩さ。個体差による可能性もあるが、貸し出し機はパームレスト部を両手で握って上下に揺らすだけで、ディスプレイが倒れてしまった。例えば、テーブルに置いていたSpin 7のパームレスト部を握って立ち上がるだけで、60度ぐらいスーッと倒れてしまう。

 ディスプレイが360度回転するSpin 7は、勢いが強ければディスプレイがテーブルと強烈に激突しかねない。タッチパネルを操作した時に倒れるほどヒンジが緩いわけではないが、もう少し硬めに設定した方がいいと感じた。

【訂正】今回借りた機材は個体不良であることが分かったため、ヒンジ部について検証した動画を削除しました。

ノートPCモード
タブレットモード。ヒンジを利き手側に持ってくると握りやすい
ディスプレイモード。キーボード面全体で支えるのでテントモードより安定感がある
テントモード。本体底面が下側に触れないので、ベッドの上でうつ伏せ視聴する際に重宝する
Spin 7を変形させると画面上部に現在のモードが画像で表示される
ノートPCモード以外ではキーボードが無効化される
個体差による可能性もあるが、貸し出し機はパームレスト部を握って軽く振るだけでディスプレイが倒れるほどヒンジが緩かった

キーボードの打鍵感、トラックパッドのクリック感は良好で音も静か

 本製品のキーボードは、87キー/日本語仕様のアイソレーションキーボード。「Acer FineTip」と呼ばれる独自のフローティング構造を採用しておりタイピング感は良好だ。

 キーストロークは少し浅く感じるが、キーピッチは実測19mm以上確保されており窮屈な印象はない。快適に長文入力できるキーボードと言える。キーボードの仕様で唯一残念なのはバックライトを搭載していないことぐらいだ。

 初めて本製品のキーボードを実際に見た時に驚いたのがトラックパッドの広さ。実測約140×65mm(幅×奥行き)が確保されており、ウィンドウ操作や、ジェスチャー操作が広々としたスペースで快適に行なえる。ただ、余りに幅が広すぎて、右クリックしたつもりが左クリックになっていたということが何度もあった。慣れるのに時間がかかりそうだ。

87キー/日本語仕様のアイソレーションキーボードを採用
「カタカナ ひらがな ローマ字」キーから右のキー以外は、ほぼキーの幅が揃えられているので、違和感なくタッチタイピングできる
キーピッチは実測約19.33mm
トラックパッドは実測約140×65mm(幅×奥行き)
バックライトが搭載されていないのは残念だが、暗闇でもディスプレイの明かりでキートップを確認することは可能だ
最初に普通の強さで、次に強めにSpin 7のキーを叩いてみた。音の大きさは環境に左右されるので、音の傾向を参考にして欲しい

鮮やかさに欠けるが素直な発色の映像、ビビリ音が音源によって発生

 Spin 7のディスプレイ解像度はフルHD(1,920×1,080ドット、157dpi)。精細度が物足りなく感じる方もいるだろうが、Kaby Lake-Yの「Core i7-7Y75(1.30/3.60GHz)」に4K解像度は荷が重い。堅実な選択と言える。

 本製品の色域は公表されていないが、画質は素直な発色で好ましく感じられた。やや鮮やかさに欠けるように思えるが、グラデーションは滑らかに描写されている。「Surface Pro 4」などと並べると大人しく見えるが、Spin 7の発色は再現性を重視したものとして十分納得できる。

 一方、サウンド面は音源次第で難がある。普段リファレンス用に使用している音源を聴いている際には、高音も低音もしっかりと出ていてPCらしからぬ迫力あるサウンドだと感じたが、Windowsの「システムエラー」や「システム通知」の音、「Minecraft: Windows 10 Edition」のオープニングBGMを最大ボリュームで聴くとビビリ音が大きく発生していた。

 Spin 7のスピーカーは重低音が苦手なようなので、音源によってはヘッドフォンや外付けスピーカーを利用した方がいい。

14型の大画面にフルHD解像度を組み合わせているので、ディスプレイに顔を寄せなくてもギャザーを確認できる
左がSpin 7、右が「Surface Pro 4」。この写真では背景が暗く写っているが、画面を実際に見た時と同じ色合いに写るように露出を調整している
Spin 7のステレオスピーカーは底面左右に配置されている。テーブル面からスピーカーを離すと、少しビビリ音は低減される
「Minecraft: Windows 10 Edition」のオープニングBGMを最大ボリュームで再生してみた。断続的にビビリ音が発生しているのでかなり気が散る

負荷の高いベンチでは力不足を感じるが、一般用途には十分な性能

 最後にベンチマークスコアを見てみよう。今回Spin 7の比較対象としては、Kaby Lake-Uの「Core i7-7500U(2.70/3.50GHz)」を搭載する東芝の「dynabook V82」のスコアを使用した。Core i7プロセッサが、Kaby Lake-YとKaby Lake-Uでどのくらい性能が異なるか確認するためだ。

 使用したベンチマークプログラムは下記の通り。

  • 総合ベンチマーク「PCMark 8 v2.7.613」
  • 総合ベンチマーク「PCMark 7 v1.4.0」
  • 3Dベンチマーク「3DMark v2.2.3509」
  • CPU、OpenCLのベンチマーク「Geekbench 4.0.3」
  • CPUのベンチマーク「Geekbench 3.4.1」
  • CPU、OpenGLのベンチマーク「CINEBENCH R15」
  • ゲーミングPCベンチマーク「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」
  • ゲーミングPCベンチマーク「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」
  • ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 5.2.1」
  • 「Adobe Photoshop Lightroom CC」RAW画像の現像時間を
  • 「Adobe Premiere Pro CC」フルHD動画の書き出し時間を計測
  • 「BBench」連続動作時間を計測

 下記がその検証機器の仕様と、ベンチマークの結果だ。

【表2】検証機の仕様
Spin 7dynabook V82
CPUCore i7-7Y75(1.3~3.6GHz)Core i7-7500U(2.7~3.5GHz)
GPUIntel HD Graphics 615(300MHz/1.05GHz)Intel HD Graphics 620(300MHz/1.05GHz)
メモリDDR3L-1600 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD(Serial ATA)512GB SSD(Serial ATA)
OSWindows 10 Home 64bit Anniversary Update
【表3】ベンチマーク結果
PCMark 8 v2.7.613
Home Accelarated 3.03,0043,476
Creative Accelarated 3.03,7294,323
Work 2.04,1324,627
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score4,8735,523
3DMark v2.2.3509
Fire Strike Ultra174220
Fire Strike Extreme339400
Fire Strike691868
Sky Diver2,9293,857
Cloud Gate4,8336,340
Ice Storm Extreme34,35342,773
Ice Storm46,76158,410
CINEBENCH R15
OpenGL33.56 fps41.47 fps
CPU212 cb340 cb
Geekbench 4.0.3
32-bit Single-Core Score3,2323,699
32-bit Multi-Core Score5,1287,425
64-bit Single-Core Score3,6444,127
64-bit Multi-Core Score5,5997,858
OpenCL17,26219,655
Geekbench 3.4.1 Intel(32-bit)
Single-Core Score2,9423,271
Single-Core Score Integer2,9893,407
Single-Core Score Floating Point2,6393,218
Single-Core Score Memory3,4543,108
Multi-Core Score5,3096,172
Multi-Core Score Integer5,7287,166
Multi-Core Score Floating Point5,6366,676
Multi-Core Score Memory3,8203,179
Geekbench 3.4.1 Intel(64-bit)
Single-Core Score3,1733,615
Single-Core Score Integer3,3673,736
Single-Core Score Floating Point2,8163,642
Single-Core Score Memory3,5013,323
Multi-Core Score5,5397,816
Multi-Core Score Integer6,2288,917
Multi-Core Score Floating Point5,7428,927
Multi-Core Score Memory3,7593,395
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット3,3034,110
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト
1,280×720ドット6,2977,188
SSDをCrystalDiskMark 5.2.1で計測
Q32T1 シーケンシャルリード554.298 MB/s548.312 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト465.054 MB/s280.191 MB/s
4K Q32TI ランダムリード285.247 MB/s320.352 MB/s
4K Q32TI ランダムライト243.626 MB/s207.849 MB/s
シーケンシャルリード457.292 MB/s452.206 MB/s
シーケンシャルライト410.205 MB/s275.576 MB/s
4K ランダムリード37.740 MB/s19.603 MB/s
4K ランダムライト80.883 MB/s92.934 MB/s
Adobe Photoshop Lightroom CCで50枚のRAW画像を現像
4,912☓3,264ドット、自動階調3分53秒422分41秒87
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し
1,920×1,080ドット、30fps10分36秒046分28秒83
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%)
バッテリ残量5%まで8時間12分44秒12時間59分42秒

 Kaby Lake-YのTDPが4.5W、Kaby Lake-UのTDPが15W。総合ベンチマークでは大きな差は開いていないが、CPUベンチマークや、負荷の高い実アプリではSpin 7がかなり苦戦している。特にAdobe Premiere Pro CCのフルHD動画書き出し速度では、dynabook V82の処理時間の約1.63倍に相当する10分36秒04という結果に終わった。

 しかし、フルHD動画の書き出しに実時間の2倍の時間がかかっているが、アプリの操作自体にはそれほどストレスを感じることはなかった。極端に負荷の重い処理はじっくり待つと割り切れば、8GBのメモリを搭載したSpin 7は動作は安定しているので、なんら問題なくメインマシンとして利用可能だ。

 さて恒例の高負荷時の発熱を、サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」でチェックしてみよう。

 今回は室温20℃の部屋で「CINEBENCH R15」の「CPU」を連続で5回実行してみたが、キーボード面の最大温度は44.1℃、底面の最大温度は42.2℃だった。ファンレス構造を採用しているぶん熱がこもりやすいようだが、底面はキーボード面よりも1.9度低かったので、膝上で利用していてもそれほど不快に感じることはなかった。

キーボード面の最大温度は44.1℃。ファンレス構造を採用しているSpin 7は発熱が一カ所に集中している
底面の最大温度は42.2℃。キーボード面より底面の方が温度は低い
ACアダプタの最大温度は35.5度。容量45Wということで比較的発熱量は低かった

世界最薄筐体と静音性が魅力のスタンダード2in1 PC

 「Core i7」を謳っていてもTDP 4.5WのプロセッサはSkylake世代(第6世代)では「Core m7」だったわけで、RAW画像の現像や動画の書き出しなどの高負荷処理には力不足は否めないというのが正直な感想だ。「Core i5」でもTDP 15Wの「Core i5-7200U(2.50/3.10GHz)」搭載モデルを選択した方が高い性能を得られる作業も多いだろう。

 しかし言うまでもなく処理性能だけがPCの尺度ではない。Spin 7には世界最薄の精悍な筐体、ファンレスによる静音性、Microsoft Officeをプリインストールして20万円を切るコスパなどの優位点がある。「Core i7」というイメージに惑わされず、質感、機能、性能、アプリ、価格のバランスを踏まえて検討すれば、十分魅力的なスタンダードモデルと言えよう。