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タッチパッド大型化やバッテリ搭載で使いやすくなった「キーボードPC II」を使ってみた

テックウィンドの「キーボードPC II」

 昨年(2016年)1月にテックウィンドが発売した「キーボードPC」は、一見するとコンパクトなワイヤレスキーボードにしか見えないが、液晶ディスプレイを繋げば立派なPCとして利用できるユニークなPCだった。本体とキーボードが一体化しているという昔懐かしい構成が、特に古参のPCユーザーから大きな注目を集めたことは記憶に新しい。

 そして今年(2017年)2月2日、このキーボードPCの後継機種となる「キーボードPC II」が発売された。キーボードが一体化したコンパクトな筐体、という基本的な構造は前機種を引き継ぎながらも、大型のタッチパッドやバッテリを搭載して使い勝手を高めたことが特徴となる。

 今回はこのキーボードPC IIの新しい魅力を探っていこう。

タッチパッドのサイズはかなり大きくなった

 下の表は、主なスペックをキーボードPCと比較したものだ。

 CPUはコードネーム「Cherry tail」世代の最新モデル「Atom x5-Z8300」に変わり、メインメモリは2GBから4GBに強化された。メインメモリが増えたことに伴い、OSも32bit版から64bit版に変更されている。ストレージは32GBのeMMCで、実売価格は27,000円前後だ。

【表】新旧スペック比較
キーボードPC IIキーボードPC
CPUAtom x5-Z8300(1.44GHz)Atom Z3735F(1.33GHz)
メモリ4GB2GB
ストレージ32GB eMMC
ネットワーク100BASE-T、IEEE 802.11b/g/n
BluetoothBluetooth v4.0
主なインターフェイスHDMI、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0、USB 2.0、microSDカードスロットHDMI、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×2、microSDカードスロット
外形寸法(幅×奥行き×高さ)321.46×115×26.6mm287×125×26.5mm
重量約560g約288g

 まるでワイヤレスキーボードのようなコンパクトな筐体に、PCとして利用するための機能を完全に組み込むというデザインコンセプトに変化はない。操作デバイスとしてはキーボードとタッチパッドを搭載しており、キーボードPC II単体で操作は可能だ。そしてキーボードPC IIのタッチパッドは、前機種のキーボードPCよりもかなり大きい。

 キーボードPCでは、スペースキー横に幅5.5cm、高さ2.5cm(実測値)のタッチパッドを搭載するだけであり、正直なところ日常的な操作を全て行なうにはちょっとつらいサイズだった。しかしキーボードPC IIでは、幅は6cm、高さ9cm(同)のスペースを確保しており、操作性は飛躍的に向上した。さまざまなマルチタッチ操作にも対応しており、キーボードPC IIのみで快適な操作が可能だ。

キーボードは左、タッチパッドは右に装備する。かなり大型なのでタッチパッドの使い勝手は良い

 ただしタッチパッドのサイズを大きくした影響で、キーピッチはやや短めになっている。キーボードPCのキーピッチは、実測値で19mmとフルサイズキーボードに近いサイズだ。しかしキーボードPC IIでは実測値で16mm。キートップのサイズも、15×15mmから13×13mmと小さくなっている(いずれも実測値)。打ちにくさを感じさせるほどではないが、タッチタイプ時はちょっと気を付けた方が良い。

上がキーボードPC II、下がキーボードPC。キーボードやタッチパッドの構成はかなり変わっている

 もう1つ大きな変更点は、バッテリを搭載し、電源ケーブルを接続しなくても利用できるようになったことだ。キーボードPCを外出先で利用する場合、本体に加えて電源を確保するためにACアダプタも持ち歩く必要があった。しかしキーボードPC IIでは、本体のみで利用できる。

 またバッテリからの給電で動作するため、ACアダプタに足を引っかけてケーブルを抜いたり、仮に断線してもPCが異常終了することがない。ノートPCと同じく、内蔵バッテリがUPSのようなフェイルセーフとして機能するわけで、より安心して利用できるようになった。

添付されるACアダプタを接続しなくても、バッテリのみで約6時間動作する

 各種インターフェイスは背面に集中して装備する。構成はディスプレイ出力端子がHDMIとミニD-Sub15ピンの2種類、ネットワーク端子として100BASE-TXの有線LANポートを1基、さらにUSB 2.0ポートとUSB 3.0ポートを1基宛という構成だ。microSDカードスロットも備えている。数は少なめではあるが、PCとして使うには必要十分の構成と言える。

インターフェイスは背面に集中して装備する。電源ボタンも背面にある

デスクトップ中心の使い方なら問題ない

 基本仕様は、いわゆる低価格タブレットやスティック型PCとほぼ同じだ。実際に使ってみると、意外なほど普通に動作するし、Windows 10はキビキビと動作する。アプリのウィンドウの移動に手間取ったり、描画の遅れが生じる場面もほとんどない。

 Atomは、ミニノートPCなどWindows XPを搭載する低価格なPCで使われてきた歴史が長い。描画負荷が高いWindows Vista以降のOSだと、まともに使えないのではないかというイメージを持つユーザーは多いが、最近のAtomを搭載するデバイスであれば、Windows 7や10も問題なく利用できる。

デスクトップ中心の使い方であれば、Windows 10もキビキビと動作する

 3Dグラフィックスの描画性能は弱いのでPCゲームには向かないが、デスクトップを中心に利用する書類作成やWebブラウズ、動画再生程度の作業ならまったく問題はない。Webブラウザベースのゲームの場合、画面の切り換えが少なく負荷の低いゲームでは問題なかったが、3Dグラフィックスを多用したり、SDキャラが細かく動いたりするゲームでは、厳しく感じる場面はあった。

 参考のため、いくつかのベンチマークテストも実行してみた。著者の経験から判断するレベルではあるが、おおむね前述した低価格タブレットやスティック型PCとほぼ同じ傾向だった。前機種のキーボードPCと比べると、数値上は性能が向上しているテストもあるが、体感できるレベルではない。

PCMark 8 v2.7.613 Home Accelerated
3DMark v2.2.3509 Cloud Gate
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
ドラゴンクエストXベンチマーク
CrystalDiskMark v5.2.1

 ただ、内蔵ストレージが32GBと少ないため、インストールできるアプリや保存できるファイルは少なくなる。最新のWindows Updateを適用し、ディスクのクリーンアップとシステムファイルのクリーンアップを行なった後にユーザーが利用できる容量は、15.5GBだった。OneDriveやDropboxなどのネットストレージをうまく活用したい。

 またキーボードPCとは異なり、USB 3.0ポートを1基搭載しており、高速なUSB 3.0対応USBメモリを利用できる。試しにシーケンシャルリードが最大245MB/sの高速なUSBメモリ「Extreme USB 3.0」(SanDisk)の64GBで読み書き速度を計測してみたところ、仕様上の最大速度までは達しなかったものの、シーケンシャルリードは200MB/s以上だった。

 USBメモリ本体が背面方向にはみ出すがジャマならば、ポート部分からほとんどはみださないコンパクトなタイプのUSBメモリを利用すると良いだろう。

Extreme USB 3.0のCrystalDiskMark v5.2.1の結果
USB 3.0ポートからほとんどはみださずに利用できるUSBメモリもある。写真はSanDiskの「Ultra Fit USB 3.0 Flash Drive」

ビジネス向けPCとしての可能性にも注目

 インパクトのあるデザインにまず驚かされるが、一般的なユーザーが行なう軽作業程度ならなんら困らないレベルの実用性も確保しており、意外なくらい「使える」という印象だ。ファンレスなので非常に静かに利用できるのもうれしい。価格も安く、簡単な調べ物で使うサブPCや、PCの使い方を子供が学ぶために使うPCとしては最適だ。

 ビジネスの現場でも役に立つ。置き場所に困らないコンパクトな筐体なので、使わない時は本棚などの隙間に挿し込んでおけば、デスクスペースをゆったり広く使える。また約560gと軽量なので、オフィスで使っているキーボードPC IIをそのまま出張先に持ち出すことも可能だ。

 液晶ディスプレイは搭載していないため、外出先にTVやディスプレイ、プロジェクタなどの映像出力機器が用意されている必要はある。しかし打ち合わせや提案を会議室で行なう場合は、そうした機器を借りやすいし、最近は軽量なモバイルディスプレイも増えた。

 キーボードPC II本体とそうしたモバイルディスプレイさえあれば、オフィスで普段から利用しているPCを使って、プレゼンテーションや提案などが行なえるわけだ。考え方や環境によっては、かなりおもしろい使い方ができるPCと言える。