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ASUS「ZenPad 3S 10(Z500M)」

~デジタイザペン対応の高コスパタブレット!

ASUS「ZenPad 3S 10(Z500M)」直販価格42,984円※デジタイザペンは別売り

 ASUSは10月21日よりAndroid 6.0搭載9.7型タブレット「ZenPad 3S 10(Z500M)」(以下Z500M)の販売を開始した。価格はオープンプライスで、直販価格は42,984円となる。

 Z500Mは9.7型ディスプレイを採用し、またデジタイザペンが使用可能なことから、「9.7インチiPad Pro」と比較検討している方も多いことだろう。今回は直販価格4,298円で販売されているデジタイザペン「Z-Stylus」も一緒に借用したので、合わせた使い勝手もレビューしていこう。

Quick Charge 3.0をサポートするも対応ACアダプタは別売り

 Z500Mは、9.7型IPS液晶ディスプレイ(2,048×1,536ドット、264dpi)を搭載したAndroidタブレットだ。OSのバージョンはAndroid 6.0。ホームアプリにはASUS製タブレット、スマートフォンで広く使われているZenUI Launcherが使われている。このホームアプリは素のAndroidよりもポップなデザインと色調が採用されているが、構成自体は大きく変更されておらず、比較的すんなりと操作や設定を覚えられる。

 CPUはMediaTek MT8176(6コア、2.1GHz+1.7GHz)、メモリ(RAM)は4GB(LPDDR3)、ストレージ(ROM)は32GB(eMCP)を搭載する。microSDメモリカードスロットが左側面に用意されており、最大128GBのmicroSDXC/SDHC/SDメモリカードを装着可能だ。試しにトランセンド製128GB microSDXCメモリカードを装着してみたところ、問題なくフォーマット、マウントできた。

 インターフェイスは、USB 2.0 Type-C×1、マイク/ヘッドフォンジャック×1、IEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth v4.2。センサーは、GPS(GLONASSサポート)、加速度センサー、光センサー、電子コンパス、磁気センサー、ジャイロセンサー、指紋センサーを搭載する。

 前面には500万画素カメラ、物理式指紋センサー内蔵ホームボタン、タッチ式戻るボタン、タッチ式マルチタスクボタン、背面には800万画素カメラ、上面にはマイク/ヘッドフォンジャック、アナログマイク、下面にはUSB 2.0 Type-C、ステレオスピーカー、右側面にはボリュームボタン、電源ボタン、左側面にはmicroSDメモリカードスロットが配置されている。

 バッテリは5,900mAhのリチウムポリマーを採用し、急速充電規格のQualcomm Quick Charge 3.0に対応している。ただし標準同梱のACアダプタは5V/2A仕様。急速充電するためには別途Quick Charge 3.0に対応した18WタイプのACアダプタが必要となる。

 Z500Mのサイズは240.5×163.7×5.8~7.15mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約430g。9.7インチiPad Proのサイズは240×169.5×6.1mm(同)、重量は約437g(Wi-Fiモデル)なので、サイズ感と重量感はほぼ同じだ。なお、Z500Mの本体カラーは今回試用したスチールブラック以外にシルバーが用意されている。

本体前面
本体前面上部。左が500万画素のインカメラ、右が光センサー
本体前面下部。左からタッチ式戻るボタン、物理式指紋センサー内蔵ホームボタン、タッチ式マルチタスクボタン
本体背面
本体背面上部には800万画素アウトカメラを搭載。フラッシュは用意されていない
本体上面。中央付近にアナログマイク、右にマイク/ヘッドフォンジャック
本体下面。中央にUSB 2.0 Type-C、その左右にあるのがステレオスピーカー
本体下部中央のアップ。USB 2.0 Type-C左右はトルクスねじで固定されている
本体右側面。左から電源ボタン、ボリュームボタン
本体左側面。左にあるのがmicroSDメモリカードスロット
microSDメモリカードスロットには、最大128GBのmicroSDXCメモリカードを装着可能だ
本体パッケージ
パッケージ同梱物一覧。左上から本体、タブレットスタンド、冊子・ちらし(製品保証書、ユーザーマニュアル、必ず早めにお読みください、Android搭載製品のアップデートについて、i-フィルター)、ACアダプタ、USBケーブル、ピン
タブレットスタンドは紙製
角度を変更できないが、購入してすぐ使用するタブレットスタンドとしては十分だ
標準で同梱するACアダプタ
5V/2A仕様。Qualcomm Quick Charge 3.0には対応していないので急速充電には利用できない
Z500M本体の実測重量は432g
ACアダプタとUSBケーブルの合計重量は78.5g

素のAndroidに近い構成のホームアプリ、指紋認証センサーは高速

 前述の通り、Z500MのホームアプリにはZenUI Launcherが採用されている。構成はいたってシンプル。デフォルトでは3ページ構成で、中央の画面にはGoogleアプリ、天候、連絡先、「SuperNote」のウィジェットが配置されている。

 画面上部の外から下に向かってスワイプすると、クイック設定ツールと通知領域が表示される。画面の中で下に向かってスワイプすると検索画面が、上に向かってスワイプすると「ホーム画面の管理」が表示される。

 丸を基調として、パステルカラーが多用されているが、Googleの標準ホームアプリと構成自体は大きく変わらない。もちろんクイック設定ツールやホーム画面は自由にカスタマイズ可能だ。

 設定画面も標準のAndroidと同様に、無線とネットワーク、デバイス、ユーザー設定、システムに分類されているので、各種設定時に戸惑うことはない。

 アプリ一覧(ドロワー)は、五十音順及びアルファベット順に並ぶ「すべて」、ダウンロードした順に並ぶ「ダウンロード」、フォルダーを作り配置を固定できる「カスタマイズ」、使用した順に並ぶ「最近使ったアプリ」の4つから表示モードを切り替えられる。このアプリ一覧は、標準のAndroidよりユーザーフレンドリーだ。

 なお、Z500Mはホームボタンに指紋認証センサーが一体化しているが、非常に感度がよく、また認識スピードも速い。もちろん縦持ち、横持ちして指を当てる角度が変わっても、まったく支障なくロックが解除される。指紋をくまなく登録しておけば、ロック解除に失敗してストレスを感じることはまずない。

Googleアプリ、天候、連絡先、SuperNoteのウィジェットが並ぶ
画面上部の外から下に向かってスワイプするとクイック設定ツールと通知領域が表示される
画面の中で下に向かってスワイプすると検索画面が表示される。キーワード入力ボックスの下には、最近使ったアプリが新しい順に並ぶ
画面の中で上に向かってスワイプすると「ホーム画面の管理」が表示される。ホーム画面は、背景やアイコンを個別に設定することも、テーマによってまとめて変更することも可能だ
設定画面は、無線とネットワーク、デバイス、ユーザー設定、システムに分類
工場出荷時のアプリ一覧画面1枚目
工場出荷時のアプリ一覧画面2枚目。「NEED FOR SPEED」、「SimCity」などのゲームのインストール用アイコンも登録されているが、キャリア端末ほど多くのアプリは入っていない
【動画】Z500Mの指紋認証センサー搭載ホームボタンによるロック解除は、コンマ数秒単位で完了する。しっかりホームボタンを押し込んでいれば、即座に指を離しても支障ない

画面の発色は素直、太陽光下でも視認性が確保される

 Z500Mの9.7型IPS液晶ディスプレイは2,048×1,536ドット、264dpi。画面サイズ、解像度ともに9.7インチiPad Proと全く同じだ。解像感に不満を感じる方はまずいないだろう。色域は公表されていないが、借用機で手持ちの画像をプレビューしたところでは、階調豊かで素直な発色というのが率直な感想だ。

 本製品には、周囲の環境に合わせてコントラストとシャープネスを調整し、屋外での視認性を向上させる「VisualMaster」という技術が採用されている。実際に太陽光がディスプレイに差している状態でWebページなどを見てみたが、色や階調はかなり失われるものの文字や図形はしっかり判別できる。屋外でスケジュール帳やマップを確認するときなどに本機能は重宝するはずだ。

 Z500Mはサウンド面も注力しており、ハイレゾ音源に対応し、またイヤフォンやヘッドフォン使用時に7.1chのバーチャルサラウンドサウンドを楽しめる「DTS Headphone:X」という技術が採用されている。

 標準で搭載されている「音楽」アプリで、FLAC形式のハイレゾ音源を読み込んでみたが、当然のことながら問題なく再生できた。しかし低音重視の音作り自体は好ましいものの、ハイレゾ音源ならではの解像感や、音の分離を実現しているかというと少々物足りないというのが正直なところだ。

 また、iPad Proは上面と下面にそれぞれ2つずつのスピーカーを搭載しており、縦持ちしても横持ちしてもステレオサウンドが楽しめるが、Z500Mのステレオスピーカーは本体下部のみなので、横持ちしたときには片側のみで鳴ることになる。もしZ500Mでじっくりと映像コンテンツなどを鑑賞したいのであれば、イヤフォンやヘッドフォンを使うか、Bluetoothスピーカーなどを用意した方がよさそうだ。

9.7型IPS液晶ディスプレイは2,048×1,536ドット、264dpi
色域は公表されていないが階調豊かで素直な発色
快晴の日に直射日光が当たっていても文字を無理なく判読できる視認性が確保されている
本体下部のステレオスピーカーは、最大ボリュームだと少々筐体の共鳴が気になる。大ボリュームでじっくりリスニングするならイヤフォンやヘッドフォンを利用しよう

タブレット端末としては必要十分なカメラ画質

 Z500Mには、800万画素の背面カメラと500万画素の前面カメラが搭載されている。ASUSはスマートフォン用カメラの開発・製造で画質チューニングのノウハウを獲得しており、本製品でもタブレット端末としては必要十分な品質が確保されている。

 1つだけ気になったのが、十分な光量がある場所でまれに露出が上がり、色が淡く写る傾向があったこと。観賞に堪えないというほどのレベルではないが、失敗が許されない被写体を撮影する際には、何回かシャッターを切るか、露出(明るさ)を手動で調整することをオススメする。

背面カメラ(f/2.2、1/60秒、ISO156)
背面カメラ(f/2.2、1/170秒、ISO116)
背面カメラ(f/2.2、1/30秒、ISO146)
背面カメラ(f/2.2、1/514秒、ISO116)。やや色が淡い
背面カメラ(f/2.2、1/1202秒、ISO118)
前面カメラ(f/2、1/1613秒、ISO117)。標準で「美人エフェクト」が適用される

素速く書いても追従するデジタイザペン、書き味は硬め

 Z500Mには、アクセサリとしてデジタイザペン「Z Stylus」が別売されている。Z Stylusは1,024段階の筆圧感知機能を搭載しており、手のひらの意図せぬ描画を防止するパームリジェクション機能も利用できる。ただし、残念ながら傾き検知機能はサポートされていない。

 Z500Mには、Z Stylusに対応したノートアプリ「SuperNote」やメモアプリ「クイックメモ」がプリインストールされている。SuperNoteは手書きとソフトウェアキーボード入力に対応した本格ノートアプリ。クイックメモは画面上に貼れる付箋メモとして利用する。とは言っても、「OneNote」、「Evernote」、「MetaMoji Note」などもっと多機能なノートアプリが存在するので、使い慣れているノートアプリを利用するのが一番だ。

 さて肝心の使い勝手だが、描線の追従性についてはまったく不満はない。かなり素速くペン先を走らせても、多少線が遅れて書かれることはあっても、線の形が歪むことはなかった。もちろんアプリによって描線の追従性は変化するが、SuperNoteを使う限りは問題ないレベルだ。

 一方、書き心地については好みが分かれるかもしれない。Z-Stylusのペン先はかなり硬めで、筆者が書き比べたところ、Apple Pencilや、Surfaceペンの2Hに相当しているようだ。ペン先の硬さの好みは人それぞれ。Z-Stylusの書き心地を気に入る方も当然いるだろう。しかし少し滑りすぎるように感じた方は、反射防止(アンチグレア)タイプの液晶保護フィルムを貼ることで摩擦抵抗を調整すると、書き味が改善される可能性がある。

ASUS「Z-Stylus」直販価格4,298円
グリップにファンクションボタンが用意されている。ファンクションボタンは前と後ろで2つの機能が割り当てられている
パッケージ同梱物一覧。左上からマニュアル、単6電池、チップ取り外し用工具、交換用チップ
ペン先が消耗したら、チップ取り外し用工具で引き出して新品と交換する
電源は単6電池を使用。入手しにくいので予備を購入しておきたい
単6電池を含む重量は約19.2g
ペン先を画面に近づけてファンクションボタンの前をワンプッシュすると、各種アプリを起動するランチャーが表示される。SuperNote上でペン先を画面に近づけてファンクションボタンの前を長押しすると、ペンから消しゴムに機能が切り替わる。ペン先を画面に近づけてファンクションボタンの後ろをワンプッシュすると、消しゴムからペンに機能が切り替わる。機能の割り当てが少々ややこしい
Z-Stylusの筆圧感知は1024段階。アマチュアレベルであれば十分な解像度だ
1回目は小さく、2回目は大きく、連続して円を描いてみた。ペン先から多少遅れて線が描かれているが、線が歪むことはない

日常用途に十分な性能、3D描画性能はやや低い

 最後にベンチマークの結果を見てみよう。今回ベンチマークに使用したアプリは「AnTuTu Benchmark v6.2.1」、「Quadrant Standard Edition v2.1.1」、「Geekbench 4.0.1」、「3DMark - The Gamer’s Benchmark 1.5.3285」、「Speedtest.net」。また合わせて、「Kindle電子書籍リーダー」でコミックを5冊ダウンロードするのにかかる時間と、YouTube動画を連続再生した際の連続動作時間を計測した。比較対象にしたのは「Xperia Z4 Tablet」と「12.9型iPad Pro」だ。

 Xperia Z4 Tabletは現行モデルではないが、多くのスマートフォンやタブレットに採用されたCPUを搭載しているので比較対象機種として採用した。12.9型 iPad Proは、Z500Mと競合する9.7インチiPad Proと同じCPU、同容量のメモリを搭載しているため今回の比較対象機種として使用している。

ZenPad 3S 10(Z500M)Xperia Z4 Tablet12.9型 iPad Pro
OSAndroid 6.0Android 6.0.1iOS 10.1.1
CPUMediaTek MT8176(6コア、2.1GHz+1.7GHz)Snapdragon 810(8コア、2.0GHz+1.5GHz)Apple A9X(2.26GHz)
メモリ(RAM)4GB3GB4GB
AnTuTu Benchmark v6.2.1
トータルスコア7692191488194731
3D139503166872683
UX292652918260588
CPU270422459449662
RAM6664604411798
Quadrant Standard Edition v2.1.1
トータルスコア2386839785
CPU86038169666
Mem1556112650
I/O1478714023
2D500182
3D24532402
Geekbench 4.0.1
Single-Core Score158613513049
Multi-Core Score372339464805
3DMark - The Gamer’s Benchmark 1.5.3285
Sling Shot using ES 3.090226903997
Speedtest.net(7回計測した平均値)
下り92.37 Mbps109.23 Mbps121.64 Mbps
上り184.91 Mbps241.90 Mbps167.95 Mbps
Kindle電子書籍リーダー(コミックを5冊ダウンロード)
合計時間4分8秒974分36秒262分8秒45
YouTube動画を連続再生(最大輝度)
連続動作時間4時間25分51秒4時間17分36秒4時間19分1秒

 AnTuTu Benchmark v6.2.1の「CPU」、Geekbench 4.0.1のスコアは3機種ともそれほど大きな差は開いていないが、AnTuTu Benchmark v6.2.1の「3D」、3DMark - The Gamer's Benchmark 1.5.3285のスコアはZ500Mが引き離されている。ブラウジングや動画視聴した際の使用感としては3機種に大きな違いは感じなかったが、今後処理の重い3DゲームがAndroid用にリリースされた際には、Z500Mのフレームレートに不満が生じる可能性があるだろう。

 Speedtest.netと、Kindle電子書籍リーダーのダウンロード時間の計測は、Wi-Fi通信の速度差を比較するために実施したが、少なくともSpeedtest.netでは実使用で問題となるほどの速度差は生じていない。しかし、Kindle電子書籍リーダーのダウンロード時間は、iPad ProがAndroid勢を圧倒する結果となった。Speedtest.netでそれほど差が生じていない以上、Kindle電子書籍リーダーのAndroid版とiOS版にはなんらかの効率の差があるものと思われる。

 なお、YouTube動画を連続再生している間に、サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」で温度をチェックしてみた。前面の最大温度は36.6℃、平均温度は31.3℃、背面の最大温度は33.5℃、平均温度は30.6℃という結果だった。前面、背面ともに平均温度が体温を大幅に下回っているので、利用時に不快な熱を感じることはなさそうだ。

前面の最大温度は36.6℃、平均温度は31.3℃
背面の最大温度は33.5℃、平均温度は30.6℃

日常的にメモをデジタル化するための高コスパなタブレット!

 デジタイザペンに対応、指紋認証センサーを搭載した9.7型タブレットが約4万円で手に入るのだから、Z500Mのコストパフォーマンスは非常に高い。Z-StylusもApple PencilやSurfaceペンよりはるかに安価に入手可能なのも嬉しいところだ。記事執筆時(11月4日)時点で、直販サイトのみならずほとんどの通販サイトで在庫切れになっているのもうなずける。

 イラストを描くことを目的にするのであれば、傾き検知機能に対応したiPadとApple Pencilの組み合わせの方が望ましい。しかし、メモや図を書くのであればZ500MとZ-Stylusの組み合わせで十分活躍してくれる。日常のメモをすべてデジタル化するための手頃な価格のタブレットを探していた方には、待ちに待っていた1台と言えるだろう。

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