配信修行僧

ロープロなElgato製マイクアームにガススプリング式のプロモデルが追加

Elgato「Wave Mic Arm Pro」(ホワイト)

 このたびElgatoは、マイクアームの最上位モデルとなる「Wave Mic Arm Pro」を発売した。基本的な外観やフォームファクターは、既存の「Wave Mic Arm LP」を踏襲しつつ、アーム前腕部分をガスシリンダー式とすることで、角度調節しやすくなり、耐荷重も増やした。今回日本での発売に先立って試す機会を得たので、簡単に紹介しよう。

実は3世代目となるWave Mic Arm Pro

 多くのマイクアームは「∧」のような形状をしている。単に録音するだけならこれで問題ないが、動画の収録や配信で使う場合は、アームが人の顔にかぶりやすく、取り回しに苦労する。

 一方、ElgatoのWave Mic Arm LPは、LP(Low Profile)という文字が表わすように、高さの低いマイクアームで、台座から伸びる部分の高さが10cmほどしかない。これにより、人の顔にかぶりにくくなる。また、動画ではなく録音のみで使う場合も、マイクアームをモニターの下から伸ばすといった使い方もでき、取り回しがしやすいのが特徴だ。

Wave Mic Arm Pro(左)とWave Mic Arm LP(右)

 Wave Mic Arm Proは、これらの特徴を受け継ぎつつ、前腕部分をガスシリンダー式にした製品だ。

 実は、2021年に発売されたWave Mic Arm LPは、途中でマイナーバージョンアップしている。初期モデルでは、中央ヒンジを六角レンチで固定したり緩めたりしていたのが、後期モデルでは手で回せるつまみ式になった。また、マイクケーブルを収納する機構や、そのふたのマグネットの磁力も改善された。その後期モデルを考慮すると、Wave Mic Arm Proは3代目にあたることになる。

 そして、「Pro」という名称からも推測できる通り、現行製品の後継ではなく追加の上位モデルとなる。価格もWave Mic Arm LPが1万6千円前後のところ、Wave Mic Arm Proは29,980円と倍近い価格付けがされている。

ホワイトモデルもある

既存モデルから踏襲した点、変更された点

 では、新製品を既存モデルと比較しながら紹介していこう。

 まず、クランプ部分はほとんど変わっていないように見え、実際旧製品の台座に新しいアームを取り付けることも可能だが、高さが1cmほど低くなっている。これにより、クランプに近い水平アーム下部のクリアリングは70mmから60mmとなっている。アーム自体の高さは同じなので、水平アームの高さも1cm低くなった形となる。

 これにより、モニターの下などに通している場合は、より狭いスペースに通せることになるが、水平アームの下に何かがある場合、前モデルでは干渉しなかったのに、新製品では干渉する場合も出るだろう。

 クランプのスペックは変わっておらず、最大60mmまでの厚みの机に取り付けられる。クランプ自体は金属製で堅固な作りだが、クランプの内側は柔らかいシートが貼られているので、机を傷つけにくい。そして、レバー部分がラチェット式となっており、レバーのボタンを押すことでクランプ部分はそのままにレバーを逆方向に回せるのも旧モデル譲りで、レバーを一回転させるスペースがない場合でも取り付けられる。

台座はクランプ式
厚み60mmまで対応
レバーはラチェット式なので、レバーを回しきれない所でも固定できる

 水平アームは長さが300mmで、360度回転できるのも変わらない。ただし、マイクケーブルの収納方法が変わっている。旧モデルは、上側にふたがあり、それを外してケーブルを収納する、あるいは根本部分は下側の穴からケーブルを通すこともできた。これに対し、新モデルは下側にふたがあり、下からケーブルを通し、下からケーブルが出る形となる。傾斜アーム側もこれは同じだ。

 また、ライザーパーツが付属しており、水平アーム、傾斜アームのいずれかの根本を35mm持ち上げることもできる。

水平アーム部分
下側にマグネット式のふたがあり、ここにマイクケーブルを通す
ライザーを取り付けると35mm高さを持ち上げられる

 傾斜アームは前述の通り、つまみあるいは六角レンチでヒンジの固さや角度を調整していたものが、ガスシリンダー式となった。新製品も付属の六角レンチでヒンジ(ガスシリンダー)の固さを調節するが、旧製品と違って、いったん調整すれば、ヒンジを六角レンチで緩めなくても、滑らかに角度を変えられる。

ガスシリンダー式となった傾斜アームの関節部分
固さは六角レンチで調節可能
こちらもマグネット式のふたが下部にあり、ここにケーブルをはわせる

 そして、旧製品は傾斜アームが下60度、上90度まで傾けられたのに対し、新製品は下50度、上70度までとなった。多くの人にとっては問題ないと思うが、旧製品を上下どちらかいっぱいまで傾けて使っていた人にはネックとなる。左右360度回転するのは変わらない。

 一方で、耐荷重量は2kgから3kgへと増強された。本製品をマイクではなくカメラ用に使いたい人にはありがたい強化点だろう。

 先端のボールヘッドは、デザインは変更されているが、つまみで固さを変更する点は変わっていない。ボールヘッドのネジの径は1/4インチで、3/8インチと5/8インチへの変換アダプタも従来どおり付属する。

先端のボールヘッドは、デザインは変わっているが使い方は旧製品と同じ
変換アダプタも付属するのでさまざまな機器を取り付けられる

 なお、細かい点だが、傾斜アームの関節部分の丸いカバーはマグネットによる着脱式になった。今後、カスタマイズパーツが出るのかもしれない。

どちらかと言うとカメラ用で、頻繁に位置調整をする人向けか

筆者の利用環境。マイクはShureのMV7Xを使っている

 筆者はWave Mic Arm LPの後期モデルを普段から使っているが、直近の数週間、Wave Mic Arm Proを使ってみた。旧製品の時から、水平アームがロープロファイルなので、配信や動画撮影で自分に大きく被らない点を重宝している。

 ただ、マイクアームを左右に回転させて、使わない時はよけておき、使う時は正面に回転させて持ってくるという使い方をしていて、マイクの高さはほとんど変更することがない。そのため、個人的には手軽に角度を変えられるという新製品のメリットは生かし切れていない。

 また、角度を調節する場合、先端のボールヘッドは固定のままとなるため、アームの角度を変えた後に、マイクを最適な方向に向けるには、ボールヘッドのつまみを緩めて調節して、再度固定するという手間は発生する。それでも旧製品より使いやすくなっていることは確実だ。

 そして、本製品はどちらかと言うとカメラと組み合わせる方が便利かもしれない。メーカーとしてはマイク用をうたっており、カメラの取り付けについてメーカー保証はしていないと思うが、マイクは重くても数百gくらいなので、耐荷重量は旧製品でもマイク用としてはオーバースペックと言える。新製品の3kgなら、ミラーレスカメラ+レンズ+同社のPrompterという組み合わせでも重量的には行けそうで、三脚代わりに使うのもよさそうだ。