大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

記録的な出足を見せたWindows 7の次の一手



 Windows 7が10月22日から発売となった。その売れ行きは、予想を上回るものだったといっていい。

 BCNによると、10月19日~10月25日におけるWindows 7のパッケージの販売数量は、Windows Vistaが発売となった1月29日~2月4日までのWindows Vistaのパッケージの販売数量に比べて、1.91倍に達しているという。

 マイクロソフトでも、Windows 7の出足は記録的なものになったとする。樋口泰行社長は次のように語る。「Windows 7の販売は思った以上に盛り上がりを見せ、22日の深夜の秋葉原には、1,000人以上が繰り出した。Windows Vistaの発売時に比べて、5~10倍の人出があったようだ。また、予約販売も好調。事前予約だけでWindows Vistaの発売3カ月後の販売本数に達した。また、発売初日におけるWindows 7のパッケージの販売本数は、Windows 98の時を上回った」

 ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでは、22日の販売本数は、事前予約数の3倍以上という実績。初日だけで1,500本を遙かに超える実績となった。

予想を上回る販売実績となったWindows 7ネットブックもWindows 7となり、販売を開始
深夜のパーツ通りの人ごみのなかに繰り出した樋口社長Windows 95のときには中心的存在だったラオックス ザ・コンピュータ館は暗闇のままだった

 10月23日午後7時過ぎから、マイクロソフトの初台オフィス内で開かれたMVP(Most Valuable Professional)によるWindows 7ローンチパーティーに出席した樋口社長は、身内のパーティーということもあって、「Windows 7は行けると思っていたが、正直なところ、ここまで行けるとは思っていなかった」と本音をチラリ。「ちょっと不適切な発言がありましたが」と付け加え、会場を湧かせた。

 また、来日していたWindows部門の責任者である米MicrosoftのWindows & Windows Live担当プレジデントのスティーブン・シノフスキー氏も、「Amazon.comにおける予約数は歴史的なものになり、ハリーポッターの販売数を上回った」と、その出足の良さを強調した。

 樋口社長によると、約7千万台のインストールベースのうち、3,400万台以上がそのままWindows 7にアップグレードが可能であり、残る市場において、PCの買い換え需要が想定されるとしている。

 また、IDCの予測によると、Windows 7は、2010年末までに全世界で1億7,700万本以上、日本では1,000万本のライセンス出荷が見込まれ、Windows 7のエコシステムを形成するパートナーによって、2009年10月から2010年末までの期間に、関連製品やサービスによって、2兆3千億円以上の収益が見込まれるという。

 Windows 7の人気ぶりは意外なところにも波及した。バーガーキング・ジャパンは、10月22日~28日までの1週間、Windows 7の発売を記念して、約113gのビーフパティを7枚使用したWindows 7 WHOPPERを用意。各店舗とも一日先着30人を対象に特別価格777円で販売し、その後は、1,450円の定価で販売したものの、販売開始翌日の午後2時には、1,700個のWindows 7バーガーを販売。秋葉原の店舗では、午前7時のオープン時から約10分で先着30人分のWindows 7 WHOPPERRが完売したという。同社の発表によると、4日間の販売数は6千個に達し、あまりの好評ぶりに、11月6日まで期間を延長することを決定した。

 実際、24日午後に秋葉原昭和通り店を訪れてみたが、すでに定価販売になっていたものの、多くの来店客がWindows 7 WHOPPERを注文。注文からテーブルに運ばれてくるまでに、40分から1時間待ちという、ファストフード店とは思えないような待ち時間。それだけ、高い人気を誇っていたというわけだ。

4日間で6,000個を販売したというWindows 7 WHOPPER

 10月22日から25日の3日間、マイクロソフトの樋口泰行社長をはじめとする同社幹部および社員は、連日、Windows 7の発売にあわせたイベントに奔走した。

 22日午前0時には、樋口泰行社長、堂山昌司副社長らが、秋葉原を訪問。公式訪問が明らかになっていなかっただけに、秋葉原の関係者も驚きの様子で樋口社長を迎え、午前0時のDSP版のカウントダウン販売の際には、パーツ通りのど真ん中に居合わせることになった。

 秋葉原入りしたときには、「いつもとあまり変わらないよ」と答えていた樋口社長だが、パーツ通りの人込みのなかに入ると、「これだけの多くの人がいると、ドキドキ、ワクワクしてくる」とやや興奮気味にコメント。さらに、午前0時のカウントダウン販売を、多くの人々と迎えると、「まるで正月が来たような感じ。多くの人たちと一緒に新年を迎えた気分がする」と、樋口社長を取り囲む大勢のユーザーたちと拍手をしながら発売を祝った。「この勢いを見て、社員が自信をもって、Windows 7の販売に力を入れることができる」と、ここで大きな手応えを感じたようだ。

 樋口社長は、この日午前1時過ぎには秋葉原を後にし、翌朝のパッケージ版の発売に控えた。22日午前8時過ぎにはビックカメラ有楽町店に入り、さらに午前11時からのザ・プリンスパークタワー東京での会見に出席。同会場で開かれた発売記念パーティーに出席後には、一度オフィスに戻ったものの、午後5時には秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkibaに来店。その後、TV出演のスケジュールをこなして、発売日を終えた。

 翌23日もTV出演や、社内での会議などをこなしたのち、午後7時から開かれたマイクロソフトのMVPによるWindows 7ローンチパーティーに出席。さらに、24日には、東京・秋葉原のベルサール秋葉原で開催されたWindows 7博覧会(通称・セブン博)に登場。ウルトラセブンなどとともに、Windows 7のタッチ機能を実演してみせた。

ヨドバシカメラマルチメディアAkibaを視察する樋口社長マイクロソフトMVPのメンバーが開いたローンチパーティーに樋口社長が出席

 セブン博会場では、午前11時から、米MicrosoftのWindows & Windows Live担当プレジデントのスティーブン・シノフスキー氏もスピーチ。Windows 7のメリットを訴えてみせた。

 実は、日本におけるWindows 7の発売時点に、米本社のVIPが来日したのは今回が初めてのこと。シノフスキー氏も、22日午前9時の発売時には、秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkibaに駆けつけるど、精力的に活動していた。

 24日のセブン博でのスピーチが終わったところで、シノフスキー氏にコメントをもらうことができた。シノフスキー氏は、「Windows 7の発売のタイミングに日本にいることができて幸せだった。22日午前0時の発売のタイミングには、秋葉原にいられなかったのは残念だが、22日午前9時からのパッケージ版の販売開始時には、日本の販売店、パートナー、カスタマーとともに発売を祝うことができた。日本は大変重要な市場であり、そのために来日したが、この数日で、日本ではすばらしいエコシステムが確立されていることを実感できた。日本のユーザーには、パートナー各社から提供される周辺機器、ソフトを利用して、Windows 7のすばらしさを、早く体感してもらいたい」。

 さらに、スピーチの前には、バーガーキングのWindows 7 WHOPPERを食したとのことで、「これも日本でしか体験できないこと。いま、日本にいて、なにがよかったかという感想を求められても、お腹がいっぱいとしかいえない」と、ジョークを飛ばすほど、来日して大きな手応えを感じたようだ。

数多くの人が集まったセブン博。Windows 7への関心の高さをうかがわせたウルトラセブン、ウルトラマンゼロとともにポーズをとる樋口社長ウルトラセブンの前で、タッチ機能をデモンストレーションする樋口社長
ウルトラセブンはタッチ機能を見て不思議がり、自分の指をみつめる21日午後11時30分過ぎに秋葉原に出向いた堂山副社長が7の指文字シノフスキー氏は24日午前11時のセブン博でスピーチ後、7の指文字

 発売日の22日から、土日までの初速は、マイクロソフトにとって予想以上の結果だったといえよう。あとはWindows Vistaのように、初速の好調後に、互換性問題に端を発して、停滞が出たということがないような仕掛けが必要だ。

 樋口社長は、「発売前から多くの人に、Windows 7を使っていただき、高い評価をいただいている。その点がWindows Vistaのときとは大きく異なる。継続的に勢いを持続できると考えている」とする。

 マイクロソフトは、22日の記者会見で、これまでの軽快感や操作性の高さといった基本機能の強化に加えて、「Windows Touch」、「Digital TV」、「Home Networking」という3つの新機能を説明した。

 また、24日からのセブン博でもこれらの新機能を、公の場では初めて訴えてみせた。発売前までの訴求は、OSとしての基本機能の説明を中心とし、Windows 7の改善点を前面に打ち出したが、発売にあわせて、いよいよマイクロソフトはWindows 7の新機能の訴求を開始したのだ。

 「まだまだ訴求したい内容がある。これからは新機能の訴求を強化し、コアユーザーから一般ユーザーへと認知を広げていくことになる」(マイクソロフトのビジネスWindows本部の中川哲本部長)とする。

 これまでの基本機能の強化を訴求しただけで、予想以上の出足をみせたWindows 7。これから新機能を訴求することで、さらにWindows 7への注目度を高めることもできるだろう。

 継続的な売れ行きに自信をみせるのも、発売4日間の手応えとともに、これからも訴求する要素が数多く残っているという点が見逃せないといえる。