大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」
ノートPCを出さずに空港セキュリティを通過できるデル製バッグを国内外の空港で使ってみた
2019年5月27日 06:00
筆者が担当している本誌連載のタイトルに「東奔西走」とあるように、いつも国内外を飛び回って取材をしている。
飛行機を利用することも多く、その結果、ANAでは、5年連続で、最上位のダイヤモンドメンバーを継続しているほどだ。5月中旬からの10日間でも、国内外で延べ8回のフライトで取材をしてきたところだ。
それだけ飛行機に乗る機会があると、いくつか面倒に思うこともある。その1つが、保安検査場での手荷物検査のさいに、バッグのなかから、PCやタブレットを取り出すことだ。
筆者の場合、ノートPC(いま使っているのは、698gの富士通クライアントコンピューティングのLIFEBOOK UH-X/C3)のほかに、原稿執筆用のキングジム「ポメラ DM100」、取材時のメモ用途に富士通クライアントコンピューティングの電子ペーパー「クアデルノ」を携行しており、ときには、iPadも一緒に持ち歩くことがある。保安検査場では、これらのすべてをバッグから出している。プライオリティレーンを利用することが多いとはいえ、列ができていると、気分的にも焦りながら、バッグのなかから、PCなどを取り出す作業を行なっているのが、いつもの状況である。
そんなとき、デルから、空港の保安検査場で、ノートPCを取り出すことなく通過できるバッグを発売したという話を聞いた。
バッグの最上位シリーズであるDell Premierシリーズの「Dell Premier バックパック 15(PE1520P)」と、「Dell Premier ブリーフケース 15(PE1520C)」である。税別価格はいずれも10,500円。
これは便利そうだと思い、リリースを読んでみたが、そのリリースからは、なぜ保安検査場でノートPCを取り出さずに、通過できるのかといった理由がわからない。なにか特別に技術的な要素があるのかと思ってもみたが、それに関しても記載されていない。
そこで、このバックパックを実際に使ってみることにした。
入手したのは、Dell Premier バックパック 15だ。300×190×435mm(幅×奥行き×高さ)で、21Lの容量を持つ。ノートPCのほかに、日常での取材活動に必要なカメラやレンズ、PCなどのアクセサリ類、資料などを入れて持ち運ぶにも十分な容量があり、2泊3日程度の出張取材もこれだけで大丈夫だ。
耐久性に優れた1680D バリスティックポリエステルを採用するとともに、一部にレザーを使用して高級感を演出。肩からかけるバックパックストラップと、手に持って移動するためのレザークッション仕様の上部キャリーハンドルによって、ツーウェイでの使い方が可能。肩の輪郭に沿ったS字型のストラップとエアーメッシュ素材のバックパネルにより、快適にバックパックを持ち歩けるというのがウリだ。
そして、キャリーバックに据え付けが可能なトロリーストラップもある。海外取材などで、キャリーバックを持ち運ぶさいには、その上に固定することができる。重量は1.25kgと、それまで筆者が使っていたほぼ同等サイズのエディバウアーのバックパックよりは200gほど重たいが、しっかりとした仕上げが感じられるバックパックだ。
実際、バックの内側には自動車のフロントガラスから再生された耐水保護コーティング加工を施しており、悪天候のなかでもノートPCや重要書類が濡れることはないという。また、内張には、傷が付きにくい素材とEVAフォームのクッションを使用しており、軽量で耐衝撃性に優れ、移動中にノートPCをしっかりと保護する。
また、専用の携帯用充電器ポケットの穴にケーブルを通すことで、ノートPCをバックパックに入れたまま、持ち運んでいる間に充電が可能であり、目的地に到着したら、充電されたノートPCで作業を再開できるようにしている。
さらに、収納性にも優れている。収納は、バックパックの広いスペースや、前面の小物用ポケット、ファスナー付き前面レザーポケットなど5か所に分かれ、パスポートや手帳、スマートフォン、ぺンなどを効率よく収納できる。両サイドには、伸縮素材のサイドポケットがあり、ペットボトルや折りたたみ傘を収納できる。
機能性の高いバックパックであることは、持ち物の収納をはじめただけでわかったほどだ。
ノートPCを入れたまま保安検査場を通過できるバッグの仕組みとは?
では、どうやって、空港での保安検査場や、米国のTSAセキュリティチェックポイントを通るときに、ノートPCを取り出さずに通過できるのだろうか。
それは、このバックパックの構造にある。
ノートPCが収納できる部分が、大きく開き、まさにバックパックが真っ二つに開くかたちになる。その状態とすることで、バックパックにノートPCを入れたまま、手荷物のX線検査を追加することができるのだ。
デルの説明によると、手荷物検査時に、ノートPCをバッグから取り出さなくてはいけないのは、ノートPCを特別に検査するためではなく、物質密度が高いノートPCをバッグに入れたままにして、X線検査を行なうと、ノートPCに遮断されて、ほかの荷物の検査が適切にできないため、というのが理由だという。
そこで、ノートPCやタブレットは、バッグから取り出さなくてはならないというわけだ。そして、インナーケースに入れたノートPCは、そこから取り出さなくても検査ができるのは、インナーケースのなかには、たくさんの荷物が入っていないことが前提であるためだ。最近では、装置の高精度化も手伝って、スマートフォンやタブレットはバッグのなかに入れたままでも通過できるケースがある。海外の空港では、iPadやiPhoneは、バッグに入れたままでもいいと指示されることもある。
デルのバックパックの場合、ショルダー側にノートPC専用の収納があり、バックパックを真っ二つに開くと、ノートPCだけのエリアが生まれることになる。いわば、インナーケースにノートPCが入っているのと同じ状態ができるというわけだ。
一方で反対側には、タブレットなどが収納できるスペースとともに、広い収納スペース、小物用ポケット、サイドポケットなどが集約される。デルによると、タブレットの収納スペースは、ほかの収納スペースと被るため、ここから取り出さなくてはならないというが、ノートPCは、専用エリアに収納しておけば、バックパックのファスナーを全開にするだけで、バックパックからは取り出さずに検査を通過できるという仕組みだ。
実際にノートPCをバッグから出さずに通過できるか試してみる
5月中旬から連続した国内外の出張取材に、このDell Premier バックパック 15を使用し、本当に通過できるのかどうかを実験してみた。
この間、8回のフライトがあり、米国での国内線から国際線に乗り継ぐ場合を除いた7回の保安検査場通過があった。ここでさまざまなかたちで実験をしてみた。
最初が、羽田空港の国際線の手荷物検査である。じつは、ここでは、ノートPCをバックパックに入れたまま、真っ二つに開きもせずに、そのまま検査機を通してみた。すると、なんと、そのまま通過してしまったのだ。予想外の結果に、一瞬、デルのバックパックの性能の高さを実感しそうになったが、よくよく考えてみると、これは、デルのバックパックの性能というよりも、羽田空港の国際線の検査機の性能の高さなのかもしれない。
そう言えば、以前、サンフランシスコの空港に新たな検査機が導入されたときには、ノートPCを出さずに通過するように指示されたことがあった。これからは、これが標準になるのかな、と思って少しうれしくなったが、約3カ月後に同じ場所を訪れたときには、装置は同じだったが、今度は、従来どおり、ノートPCを出すように指示された。それ以来、ノートPCを出すように指示されており、あのときだけの特別措置のような結果になっている。
次の実験は、米シカゴ国際空港での国内線への乗り継ぎでの手荷物検査だ。ここでは、羽田空港同様に、バックパックのなかにノートPCを入れたまま、開かずに通してみた。すると、今度は、通過できず、検査員に注意され、バッグのなかからノートPCを取り出され、再検査を行なうことになった。これが普通の結果なのだろう。ただ、検査員が取り出したLIFEBOOK UH-X/C3が、予想以上に軽かったのか、検査員が少し驚いた顔をしていたのが愉快だった。
3回目の挑戦は、フロリダ州の米オーランド国際空港である。
ここでは、ポメラ、iPad、クアデルノは取り出して、別のトレイに入れ、ノートPCだけをバックパックに入れたまま、真っ二つに開いて、検査機を通すことにした。これは、デルが推奨する基本的な使い方だ。
ここで気になっていたのは、真っ二つに広げると、当然バックパック2個分の長さがあり、トレイには入りきらないということだ。しかも、バックパックを開けたまま通している人は見たことがない。高圧的な態度を取ることが多い米国の空港の検査員になにか注意されるのかと思ったが、開けたままでレーンに載せることにはまったく問題がなく、検査員も何事もなかったように、開いたままのバックパックをそのまま検査機に入れた。
空港によっては、すべての荷物をトレイに載せるが、オークランド国際空港の場合は、バッグなどはトレイに載せずに検査機を通過させる場合が多く、このバックパックもその流れのなかで、トレイに載せることなく自然に流れていった。ただ、検査機から出てきた開いたままのバックパックは、他人の荷物よりも大きく感じ、少し恥ずかしいような気がした。こう思うのは日本人だからだろうか。
今度はノートPCともう1台デバイスををバッグに残したまま通過を試みる
土日をはさんで、今度は羽田空港から、国内線を利用した。ここからの実験は、次の段階に入る。いわば応用編とも言える使い方のテストだ。
羽田空港では、真っ二つに開いたものの、ノートPCを収納したままにするのと同時に、荷物側のタブレットの収納スペースにも、そのままタブレットを残して、検査機を通過させてみた。羽田空港の国際線では、ノートPCを入れたまま、開かずに通過した実績があるだけに、国内線でもこの使い方は大丈夫だろうと思っていたが、案の定、そのまま通過することができた。
続いて、帰りは、大阪の伊丹空港である。ここでは、真っ二つに開きながら、ノートPCの収納部分に、ポメラを一緒に収納して通してみた。これも問題なく通過した。
翌日のフライトは、再び、羽田空港である。過去2回の羽田空港の保安検査や伊丹空港の保安検査は、すべてプライオリティレーンを使っていたが、今回は、通常の保安検査のレーンを使用してみた。これも、スムーズに通過した。
ちなみに、国内の空港で、バックパックを真っ二つに開いて、検査機を通すことは、検査員から特別になにも言われることはなかった。むしろ、バックパックを開いて通す準備をすると、「それで、大丈夫ですよ」というような気配を感じる行動をしてくれる検査員が多かった。「なにやっているんですか」というような態度の検査員は1人もいなかった。そして、どの空港でも、2つのトレイを上手に組み合わせて、2つのトレイに開いたバックパックを載せて、検査機を通過させる仕組みとしていた。
検査員にとってみると、バックパックを真っ二つに開いて通すことは、もはや通常なのかもしれない。
そして、最後が、宮崎ブーゲンビリア空港である。ここは、デルの宮崎カスタマーセンターがある、いわばデルのお膝元。デルのバックパックであれば、スムーズに通らないわけがない。そこで、応用編として一番過酷であろうと勝手に思い込んでいたノートPCの収納スペースに、2台のノートPCを入れることに挑戦してみた。結果は、無事に通過。複数台を入れておくのも大丈夫のようである。
実験の結果は、シカゴ国際空港を除けば、すべて通過した。この優秀な成果に、宮崎ブーゲンビリア空港のラウンジでは、ビールで1人乾杯をしてみた。
こうした実験を通じて、優れた収納性やノートPCの保護といったバックパックの基本機能の高さとともに、保安検査場でもファスナーを全開にするだけで、ノートPCを入れたまま通過できる利便性を感じた。
最初は、ファスナーを開ける手間と、ノートPCを取り出す手間はそんなに差がないと思っていたが、何度も繰り返していると、ファスナーを開けるだけのほうが簡単であることがわかる。また、バッグから取り出すさいに、誤ってノートPCを落としまうというとトラブルも防ぐことができる。
飛行機の利用が多い人や、バックパックの買い替えを検討している人は、このバックパックを購入候補として考えてみるのもいいかもしれない。
※編集部よりプレゼントのお知らせ
今回紹介した「Dell Premier バックパック 15(PE1520P)」を1名様にプレゼントいたします。応募ページは後日PC Watch上に公開いたしますので、今しばらくお待ちください。
【お詫びと訂正】初出時に、一部不適切な写真が掲載されておりましたので、削除いたしました。