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6,980円の無線ゲーミングマウス「PYRA WIRELESS」



PYRA WIRELESS

発売中
価格:6,980円


 PCショップ「ドスパラ」から、ドイツROCCAT製の無線ゲーミングマウス「PYRA WIRELESS」が発売された。価格は6,980円と安価だ。

 無線のゲーミングマウスは、ロジクールの「G7」が2005年に登場して以来、マイクロソフトの「SideWinder X8」や、Razerの「Mamba」など、少しずつ増えてきているが(G7は販売終了しているが)、無線によるレイテンシやバッテリ重量の問題が、ゲーマーにとって導入のネックになっているように思う。

ロジクールの「G7」マイクロソフトの「SideWinder X8」Razerの「Mamba」

 しかし、無線への需要が存在するのも確かだ。ゲーミングマウスの有線モデルでは、ファブリックコーティングのケーブルを採用して耐久性を高めたり、逆に細く軽くしてマウスの動きを極力阻害しないようにしたりと、さまざまな工夫がされているが、やはりコードが付いていることによって、マウスの動きに制限がつく。

 もちろん、大きなマウスパッドを利用したり、マウス周辺を片付けたりすれば、ある程度解決するが、普段はWebブラウズが中心なライトゲーマーにとって、そのようなスペースを確保するのはあまり現実的ではないように思う。そのため、そのようなゲーマーにとって、ケーブルがない無線マウスは、かなり有意なチョイスだろう。

 前置きがやや長くなってしまったが、G7から5年、X8やMambaから1年半遅れて登場したPYRA WIRELESSは、無線ゲーミングマウスのジャンルを確立させるだけの実力を持っているのか、テストしてみたい。

●シンプルなハードウェア

 パッケージは透明の箱に入っており、高級感はある。パッケージには大きく「1000HZ WIRELESS」と謳われている。本体とレシーバ、充電用ケーブル、単4形ニッケル水素充電池2本、説明書、ドライバCD、クレジットカード風のユーザー登録カードのほか、キャリングポーチが付属しており、モバイルでの用途も考慮されている。

 マウス本体は4ボタン+ホイールで、左右対称デザインを採用する。詳細は後述するが、サイドボタンは標準では進む/戻るとしては機能せず、独自の「EASYSHIFT[+]」として機能する。

 マウスは小柄な部類に入り、日本人の手にもフィットしやすい大きさだ。角張っており、フォルムデザインのセンスとしては、デルの「Alienware」に近い印象を受ける。ボタン部はつや消しのプラスチック、両サイドのグリップ部分はラバーコーティングされている。ホイールはギザギザが入っていないものの、ラバーコーティングされており滑りにくい。高級感はないがチープ感もない、価格相応の作りとなっている。

 重量は電池込みの実測で97gと、無線マウスだけでなくゲーミングマウスとしても軽量な部類に入る。本体サイズが小さいこともあり、最初に持ったときに重く感じられるが、実際に操作し始めると適度な重さでストレスになることはなかった。

 左右クリックの間は青色のLEDラインが埋め込まれており、インジケータの代わりとして動作する。通常動作中はゆっくり点滅するが、電池が減っているとチカチカ速く点滅する。また、充電中はやや速い点滅、スリープ時は消灯と、非常にわかりやすい。

 左右のクリック感は、RazerやSteelSeriesの製品と比較するとわずかに重めだが、反りがよく、本体がギシギシすることはない。サイドボタンは高さがないためやや押しづらいが、どちらの手で持っても押しやすい位置にある。感触自体は左右クリックに似ている。ホイールクリックはかなり重めだ。

 一方、ホイール回転は、ゴムで1段階ごとにブレーキを止められたような、静かでクリック感があるのが心地良い。FPSゲームで、ホイールによる武器の切り替えなどで行き過ぎたりすることはまずないだろう。

 サイドボタンは、この手の左右対称形マウスでは必ず問題になるのだが、意図的に薬指を使うシチュエーションとしては絶好の位置にあるが、それは意図しない時に誤って押してしまいやすいことを意味する。

製品パッケージパッケージ内容マウス本体とレシーバ
マウス本体本体左側面本体右側面
本体後部本体前部手で握ったところ
本体上部のインジケータは状況によって光り方が変わる本体重量は実測で97g感触の良いホイール

 筆者は、薬指は普段あまり使わないボタンだと踏んで、右手で持った時に、左側のサイドボタンを「戻る」、右側のサイドボタンをEASYSHIFT[+]に割り当ててみたが、持ち上げたときにEASYSHIFT[+]を押してしまい、意図しない動作になることが何度もあった。いっそうのこと無効にしてしまうのも手だが、なんだか少しもったいない。後述するが、やはりEASYSHIFT[+]は親指側に割り当てて使うべきだ。

 裏面に目を向けると、電源のON/OFFスイッチ、電池ボックス、レシーバとのシンクボタン、レシーバ収納ベイが見える。製品情報では触れられていなかったが、電池は単4形×2で、標準でGPのニッケル水素充電式電池が付属していた。電池は付属のUSBケーブル経由で充電できる。なお、このUSBケーブルは充電のみを行ない、Mambaのように通信機能を備えていない。通信は常時無線レシーバで行なわれるわけだ。また、採用しているコネクタは一般的なminiBタイプで、手持ちのケーブルで充電できた。

付属のUSBケーブルは充電しながら利用できる手持ちのminiBタイプのUSBケーブルでも充電できた
 

 センサーは、本体を上から見て左側前寄りに配置されている。握ったときに人差し指に来る位置であり、一番操作しやすい。

 電源スイッチは、持ち運び時の電源のON/OFFの機能のほかに、左手用/右手用のボタンを入れ替える「HAND-MODE SWITCH」として機能する。左右のサイドクリックを押しながら、電源をONにするたびに、左右のボタン配置が入れ替わる。1人のユーザーがそのような使い方をするかどうか疑問だが、ユニークな機能と言えよう。

本体底面単4形充電池2本が付属し、これに充電する付属のレシーバを収納したところ

 ただし、筆者の環境だけかもしれないが、USBケーブルでPCに繋げて充電していると、意図しないときにPCがスリープから復帰したりすることがあった。デバイスマネージャで、「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」のチェックを外してもダメだったので、PC起動中にのみ充電するか、レシーバを抜いておくなどの対処をするしかない。

 バッテリの駆動時間は、正確には測っていないが、感覚としては一般的なWindows操作でほぼ丸2日持った印象だ。ヘビーなゲームユースだと、半日か1日が限度だと思う。持ち出すときは充電ケーブルも一緒に持っていくことをおすすめする。

 サイドボタンの問題と充電時の挙動を除けば、ハードウェアとしてほぼ満足のいく仕上がりだ。

●センサーと無線の性能
青色LEDセンサーの採用で、トラッキング性能を高めている

 次は、最大の焦点となるレポートレートとトラッキング性能についてテストしてみたい。本製品は、SideWinder X8と同じ青色LEDを採用しており、性能に期待ができる。

 まずは「Direct Input Mouse Rate」でレポートレートを確認してみた。レポートレートは1秒間にマウスから送られてきた座標位置の回数で、数値が高ければ高いほど精密な読み取りが可能だ。今回はこのピーク値を表にまとめた。

 今回は比較用にSideWinder X8を用意。一方、残念ながら同じ2.4GHz帯域無線形式を採用したMambaを用意できなかったので、厳密なテスト環境は異なるものの、前回のこのコラムからの結果を引用して比較した。結果は下記の通り。


【表】Direct Input Mouse Rateによるレポートレート

レポートレートレポート間隔
PYRA WIRELESS1,034Hz0.94ms
SideWinder X8516Hz1.94ms
Ikari Lazer(有線)516Hz1.93ms
Mamba(無線モード、参考値)852Hz1.17ms

 表からおわかりのように、PYRA WIRELESSは、SideWinder X8とMambaの無線モードのレポートレートをあっさり抜き、Mambaの無線モードを上回る1,034Hzを実現している。レポートの間隔も0.94msとクイックなレスポンスで、性能はまったく申し分ない。

 レポートレートをグラフィカルに表示してくれるシグマA・P・Oシステム販売の「MouseTest」で同様にテストしてみたが、キャプチャできたピークレポートレートもやはり950Hz台を超えている。

 では描かれる線はどうかというと、有線モードのMambaと比較するとやはりスムーズさで劣るが、無線のSideWinder X8、およびMambaと比較すればスムーズな線が描かれていることがわかる。他の無線マウスと同様レポートするタイミングにやや前後があるが、それほど大きな遅延はなく、かなり優秀だ。しかもテストしているのが2.4GHz帯の無線LANやマウスが混信している編集部内であり、そのような環境でもこれだけの結果が得られるのは素晴らしい。

PYRA WIRELESSのMouseTestの結果SideWinder X8のMouseTestの結果Ikari Laser(有線)のMouseTestの結果
Mamba(無線モード)のMouseTestの結果(参考値)Mamba(有線モード)のMouseTestの結果(参考値)

 クイックなレスポンスとスムーズなカーソルの動きは、Windowsのデスクトップを使っていてもわかる。実際にFPSゲームなどをやっていても、遅延やカーソルの飛びを感じられず、有線マウスから乗り換えられるだけの十分な快適さが得られた。

 唯一、本機がゲーミングマウスらしくないポイントとして、しばらく触れないとサスペンド状態に入る点が挙げられる。ゲーミングマウスはいつでもゲーマーのクイックなレスポンスが得られるよう、フル稼働しているのがほとんどだが、本機は3分間程度操作しないとディープスリープに入り、マウスをクリックしないとカーソルが動かない。マウスを3分間使っていないのなら、そもそもマウスを使ってゲームすらしていないという開発者の思惑なのかもしれないが、ゲーミングマウスとしては珍しい仕様と言ってもいいだろう。

●ソフトウェア

 最後にソフトウェアを見ていこう。

 ドライバ設定画面のUI自体は、Razerのそれと似通っており、ゲーミングデバイスらしい設定画面となっている。解像度設定/感度/ホイールスクロール速度の切替と、ボタンの機能割り当て、ドライバの情報表示/アップデートがタブで分けられ、1画面でできるようになっている。また、下部に5つのプロファイルを設定して切り替えられる。

 なお、解像度は、ほかのゲーミングマウスだとわりと細かく設定できるが、本製品は400/800/1,600dpiの3段階にしか切り替えられない。割り切った仕様と言えよう。

 ボタン機能の割り当ては直感的で、マウスオーバーするとどのボタンに当たるのか線が引かれるためわかりやすい。割り当てられる機能は、標準ではWindowsのショートカットキーをはじめ、いくつかのゲーム内でのショートカット、解像度切り替え、プロファイル切り替え、マクロなどが割り当てられる。

 ボタンは左右クリック、サイドボタン、ホイールクリックのほかに、ホイールの上下にも機能が割り当てられるのがユニークだ。

ドライバ画面の「MAIN CONTROL」のタブ。速度や感度関連がまとめられているドライバ画面の「BUTTON ASSIGNMENT」のタブ。ボタンの割り当てはここで行なうドライバのバージョン確認やアップデートが行なえる「UPDATE/SUPPORT」タブ

 そして特徴的なのはEASYSHIFT[+]だ。これはキーボードで言うところのFnキーにあたるようなもので、EASYSHIFT[+]をボタンに割り当てれば、そのボタンが押されている間、ほかのボタンは第2の機能が動作する。EASYSHIFT[+]ボタンが押されている時のボタン配列も、1画面内で設定できるようになっており、積極的に使って欲しいという開発側の意図だろう。

 本機のボタンは4個+ホイールと、ホイールの上下が割り当て可能だと含めても7個と、ほかのゲーミングマウスと比べて比較的少ないが、このEASYSHIFT[+]を併用すれば、さらに6つの機能が追加できるため、1プロファイルあたりではほかのゲーミングマウス以上の機能が割り当てられる計算だ。メリットとしては、持ち方をまったく変えることなく、割り当てた機能にアクセスできることが考えられる。

EASYSHIFT[+]を有効にすると、EASYSHIFT[+]ボタン押下時の割り当てができる

 例えば、ホイールの上下に関して通常時はスクロールの動作をさせておいて、EASYSHIFT[+]が押されている間はボリューム調節を割り当てておけば、ゲーム中マウスから手を離すことなくボリュームが調節できるので、夜にゲームをやる場合などに、起動してから「音量が大きすぎた」と思ったシチュエーションでもすぐに対応できて便利だ。

 ゲーム内でもその有用性は発揮される。FPSゲームの銃弾のリロードで「R」キーを使う場合、EASYSHIFT[+]で左クリックに割り当てておけば、左手の中指で「W」、人差し指で「D」キーを押して右前方向へ移動しながら、銃弾のリロードができるわけで、普段ではなかなか難しいと思われる動作も実現できる。

 先述のように、もし薬指にこの機能を割り当てた場合、意図しない時に動作をする可能性がある。デフォルトでは親指側にEASYSHIFT[+]が割り当てられていて、薬指側では何も割り当てられていないことからもわかるように、「EASYSHIFT[+]は親指で積極的に使って、薬指側はEASYSHIFT[+]との組み合わせて使うべし」、ということなのだろう。

 なお、プロファイルは最大5つまでを設定できる。また、ボタン機能の割り当てでプロファイルを切り替えられるようになっている。

【9月29日訂正】記事初出時、ハードウェアにプロファイルを保存して、すべての機能をドライバで再現できるとしておりましたが、これは誤りで、マクロなどは再現できませんでした。開発元に確認したところ、ハードウェアプロファイルは持っていないとのことです。お詫びして訂正します。

 「EDIT PROFILE」では、最大3つまでのアプリケーションを登録でき、指定したアプリケーションが起動したら、そのプロファイルに切り替えるといった設定ができる。各プロファイルの横に「WP」ボタンがあるが、これは「Windows Profile」と呼ばれるもので、これをONにしておくと、ゲームからWindowsのデスクトップに復帰したときに、そのプロファイルを読み込んでくれる。

 先述のように、EASYSHIFT[+]は、ゲーム用プロファイルで親指側に割り当てておけば、ゲーム中の操作性を高められるが、Windowsのデスクトップに戻ったら「戻る」ボタンを割り当てたプロファイルに戻すようにすれば、あたかも普通の4ボタンマウスのように使えるわけだ。よく考えられた仕組みと言えよう。

アプリケーション起動を検出して自動的にプロファイル切り替えを行なえるWindows ProfileボタンをONにしておくと、アプリケーション終了時に自動的に指定したプロファイルに戻ってくるはずだが、筆者の環境では動作しなかった

 ところが、筆者のWindows 7 Home Premium(32bit)の環境で、Windows Media Playerが起動したら、スクロールの上下をボリューム調節に設定するプロファイル設定してみたが、確かにプロファイルはうまく切り替えられたものの、Windows Media Player終了後にWindows Profileに戻ることができなかった。筆者の環境の問題だけかもしれないが、ドライバのアップデートによる改善に期待したい。

 このほか、ほかのゲーミングマウスと同様、マクロを記録する機能を備えている。マクロ機能では、ボタンの押下間隔なども調節可能であり、高機能な部類に入る。「SWITCH TO ADVANCED EDITOR」を押すと、キーの押下時間/間隔をスライドバーで視覚的に調節でき、ユニークだ。

マクロマネージャーの画面キーの押下時間を視覚的にドラッグで設定できるADVANCED EDITORだが、残念ながらスライド時に正確な数値がポップアップで出ないため、指定した時間を正確に調節するためには通常画面に戻って数値を入力する必要がある

 プロファイルの切り替えがうまく行なえないなど、まだ未熟な面も見られるが、ドライバの出来は総じて高い完成度にあり、ほかのゲーミングマウスに引けを取らない。特にEASYSHIFT[+]は、ボタンの少なさをカバーできる画期的なシステムと言えよう。

●基本性能は高く、ゲーム用として実用的

 以上見てきたように、PYRA WIRELESSはソフトウェアの点で一部未熟な面も見られるものの、センサーや無線性能に関わる基本的な部分は完成度が高く、ことレスポンスやレイテンシに関しては、過去に試した3モデルの中でもっとも優れた結果を示しており、有線モデルと肩を並べられる一線級のゲーミングマウスであることは確かだ。

 バッテリ駆動時間が短いのが唯一の難だが、それを除いても、冒頭に述べたように有線マウスには代え難い、無線ならではの使いやすさがある。低価格で気軽に導入できるPYRA WIRELESSは、高性能な無線マウスを期待していたゲーマーにオススメできるマウスだけでなく、今後の無線ゲーミングマウスジャンルにおける1つの指標になるのではないだろうか。

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(2010年 8月 10日)

[Text by 劉 尭]