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LaVieが謳う軽さは正義

 NECパーソナルコンピュータから「LaVie Z」と「LaVie Tab S」が相次いで発売された。どちらもカテゴリ中、最軽量クラスのデバイスだ。初めて出逢うデバイスは、まずは手にとって、その重量感を確かめるようになってしまった昨今、同社の目指す世界を考えてみよう。

新型LaVie Zが正統進化

 まず、LaVie Z(LZ750/NSB、LZ550/NSB)は、初代モデル(LZ750/HS)からさらに80gも軽量化を遂げ、13.3型ワイド液晶搭載ノートPCとして世界最軽量の795gを実現した製品だ。液晶パネルにはIGZOを採用、2,560×1,440ドットの高精細表示を叶えた。

 初代LaVie Zの不満はバッテリのもちが悪かった点だ。1日の持ち歩きにはちょっと不安になるくらいだった。急速充電対応で、1時間で80%を蓄電するとはいえ、個人的にはすでに、ACアダプタを持ち歩く習慣はなくなってしまっている。だが、新機種では、IGZOによる省電力、Haswell採用による消費電力減により、従来よりもバッテリ容量を減らしてダイエットしながらも、駆動時間が延びて8.1時間から9.2時間になっている。

 手にとってみた印象として、795gは、もはや異次元の軽さというのにも磨きがかかり、80gのダイエット効果は絶大だと感じる。13.3型ということもあり、本体サイズはほぼA4クリアファイルと同じだ。このサイズから「ヒラヒラ」という形容詞が浮かんでくるくらいで、たとえ同じ重量のデバイスがあったとしても、きっとそれよりも軽く感じてしまうだろう。

 タネ明かしをしておくと、冒頭の写真はモデルさんに、できるだけ軽そうに持ってほしいとリクエストして撮影したものだ。でも、そう言って手渡したとたん、彼女は「軽ッ!!」と叫んだのだ。だから、軽そうに見えるのはウソじゃないし、ヤラセでもない。

 うれしいのは、キーボードのタッチが初代に対して若干改善されている点だ。今回は、筐体色がムーンシルバーだけだった初代に対して、ストームブラックが追加されたのだが、それに伴ってキートップの表面の手触りが変わった。初代は指先がキートップでツルツルと滑る感覚があって、タイプに不安感が残っていたのだが、ストームブラック色のキートップは、その感覚が大幅に抑制されタイプしやすくなっている。

 ただ、実に残念に思うのは、スペースキーの長さで、これがちょっと長すぎる。もし、手元にフルサイズの109キーボードがあれば確認してほしいが、スペースキーの右端はNのキーより、ほんの少し左に寄り、Mキーの真下に変換キーがある。だが、LaVie Zでは、Mキーの下までスペースキーが伸び、変換キーはそのしわよせで極小となり、大きく右にシフトしている。だから、右親指を降ろしたときの相対位置が通常のキーボードと異なり、変換キーを叩いたつもりがスペースキーを叩いてしまうことが多くなる。

 このキーボードだけを使っている分にはきっと慣れるだろう。気にならなくもなるだろう。また、変換キーなど使わないというユーザーには、スペースキーが長い方がむしろいいかもしれない。でも、あっちこっちのデバイスをとっかえひっかえ使っていると、このレイアウトはちょっと致命的だとも言える。

 また、タッチパッドが大きいのも相変わらずで、タイプの仕方によっては、予期せぬタイミングでカーソルがジャンプしてしまうことが多いのにも閉口する。タイプに専念したい時は、Fn+スペースでパッドを無効にしてしまうのがよさそうだ。

 実に細かい点で恐縮だが、感じる不満はそのくらいだ。画面サイズが大きく、キーボードの横幅に余裕があるだけに惜しいところだ。

タッチ対応で情報消費にも対応

 IGZO液晶採用の新LaVie Zはタッチ画面非搭載だ。これからの時代、やはりタッチは必要だと感じているユーザーに向けて、タッチ画面搭載の「LZ650/NS」も用意される。両機を用意することで、想定ユーザーをシフトさせているのだ。1gでも軽い筐体を求めるプロフェッショナル的なユーザーを想定したタッチ非対応機と、タッチ対応を求めるカジュアル的なユーザーを想定したタッチ対応機である。情報生産と情報消費を按分した結果だともいえる。

 ぼくとしては、もはや、タッチ操作なしでWindows 8.1を使う気にはなれないので、選ぶとしたら重量がかさんでしまってもタッチ対応のLZ650/NSを選ぶだろう。そうすると重量は964gになる。初代のLaVie Zが875gだったので、89g重くなっている。

 ちなみに増えたこの重さは、タッチ画面の実装と、バッテリの増量のために使われている。さらにHaswellのおかげで駆動時間は短く感じていた8.1時間から、14.5時間にまで伸びた。これだけあれば、とりあえず、一般的な外出には不満を感じない。いずれもカタログスペックだが、話半分が実時間になったイメージだ。

 キーボードの打鍵感も、タッチ対応機と同じで悪くない。ただし、変換キーのレイアウトについては同じ不満を感じる。パッドの誤動作については、タッチ対応ということもあり、常時無効化でもあまり困らない。

 クラムシェルのノートPCに、タッチ画面はいらないというユーザーは少なくない。でもぼくはそうは思わない。この軽さの筐体だと、画面を開いた状態で、左手で画面の下部をつかんでボディを支え、右手の親指でスクロール操作などをすると、まるでタブレットを使っているかのようにクラムシェルを扱うことができる。どうせキーボードは頻繁に使うのだ。使いたいときだけ出してくるよりも、ずっと露出していた方がいい。IGZO液晶でないこと、解像度がフルHDにとどまっていることに不満を感じるユーザーもいるかもしれないが、そのことで、この製品の使い勝手に影響はないと思う。

 日常的に5.7型画面のスマートフォンを使うようになり、最近は、7~8型程度の画面には、あまり魅力を感じなくなってきてしまっている。だから、LaVie Zの13.3型画面は、最初は大きすぎると感じることもあったのだが、初代を1年以上使ってみて、このくらいのサイズがあってもいいと思うようになった。新製品の発売に先立ち、量産前の試作機を約1カ月評価させてもらったが、その印象は変わらない。13.3型画面をタッチで操作できるというのは、想像以上に気持ちがいいものだと感じるようになった。もしかしたら、これが4型程度の画面を持つスマートフォン、たとえばiPhoneのユーザーなんかだと話が違ってくるのかもしれない。

大きなスマートフォンとしての軽量タブレット

 7~8型画面には魅力を感じなくなってきているといった、その舌の根も乾かぬうちになってしまうが、LaVie Tab Sも、かなり魅力を感じるデバイスだ。8型よりさらに小さい7型画面のAndroidタブレットだが、その重量は250gで、これまた驚く軽さだ。同じサイズの画面を持つNexus 7(2013)よりも、40gも軽い。

 NECカシオモバイルコミュニケーションズがドコモ向けに提供していた「MEDIAS TAB UL N-08D」は2012年8月当時、世界最軽量最薄の約249g、7.9mmを誇っていたが、そこにわずかに届かないといったところだろうか。

 Androidのバージョンは4.2で、将来的にバージョンアップの予定はないそうだ。解像度も欲張らず1,280×800ドットとなっているが、それにも大きな不満は感じない。バッテリ容量に多少しわ寄せが行っているのか、ちょっと残り容量が不安になるくらいの減り方をするのだが、まあ、1日の外出で困ることはなさそうだ。

 シェルがAndroid標準とはかなり趣が異なり、使い勝手の点で面食らうかもしれない。例えば、アプリドロワーがなく、数枚のホーム画面に平面的に並ぶ。アプリをインストール日順や五十音順に並び替える手段もない。だから、大量のアプリを入れてしまうとどうにもならなくなってしまう。目的のアプリを探すのが大変だ。

 また、ホーム画面からアプリのアイコンを長押ししてごみ箱に入れる操作は、アプリのアンインストールになるといった具合で、一般的なAndroidのホーム画面操作に慣れていると、ちょっと面食らってしまう。ちなみにこのホームは、レノボの「YOGA TABLET」と同じだ。まさに兄弟機で、中味は同じかもしれない。だが、ユーザー層をうまく切り分け差別化ができているように感じた。

 特筆すべきは、最近のAndroidタブレットには珍しくバイブによるフィードバック機能が実装されている点だ。これは素晴らしいと思う。スマートフォンでは当たり前の機能だが、このフィードバックがあることで、フリック入力の際などのミスが激減する。iOSにはないこの機能を、他のAndroid機が、どうして積極的に搭載しないのか不思議なくらいだ。

 逆に残念なのは、文字の密度だ。同じ解像度を持つNexus 7(2012)と比べた時に、OSのバージョンは違うのだが、文字が小さい。その分、1画面で見ることのできる情報の量は増えるが、量よりもスケーリングを優先してほしいユーザーもいるはずだ。このサイズのタブレットに魅力を感じるユーザーには、スマートフォンの小さな画面と情報表示のサイズに不満を感じている層も少なくない。文字サイズをもう少し改善できれば、そこに訴求できるだろうことを考えれば、ちょっともったいない気がする。

ヒトとコンピュータの関係を支える軽さは正義

 いずれにしても250gという重量は、まさにスマートフォンに毛の生えた重量だ。LaVie ZとLaVie Tab Sの両方を持ち歩いても、ほとんど負担にならないという領域に達している。つまり、LaVie Zの795gと、LaVie Tab Sの250gは、両方で1,045gだ。

 一方、これに対して、LaVie Zのタッチ対応版は964gある。1045g≒964gととるか、81gも差があるととるか、964g+250gで1,214gになっても両方がいいとするか……。

 グラム単位で計算しながらの、この悩みは、まさに贅沢そのもので、重量級のノートPCを毎日持ち歩いていたかつてを考えたら、本当に夢のような時代がやってきたのだと思う。

 軽さは正義だ。NECパーソナルコンピュータには、忠実に、その正義を明確なカタチにして提供しようとする姿勢を感じる。軽量化のトレードオフとしては、バッテリ駆動時間や堅牢性などがあるが、そこにも大きな不満を感じるさせることなく仕上げているのはさすがだ。

 ある意味で、今は、ヒトとコンピュータの距離は、物理的にも心理的にも縮まり、むき出しの手でコンピュータに触れる時代だ。コンピュータそのものがHIDに近い存在になってもいる。そんな時代だからこそ、軽さは正義なのだ。その絶妙なバランス感を忘れずに、次も、その次も、アッと驚く製品を生み出してほしいと思う。

(山田 祥平)