西川和久の不定期コラム

3TOPSのNPU付きで2万円切り。Android 15タブレット「Teclast P50AI」

 TeclastはAI機能を持つAndroid 15搭載11型タブレット「P50AI」の販売を11月8日から開始した。ほぼ同じタイミングで編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

3TOPSのNPU搭載SoCを採用した11型Androidタブレット

 最近本誌でもNPU内蔵のプロセッサが数々発表され、TOPSというキーワードをよく見かけるようになった。Copilot+ PCは40TOPS以上が必要なのはご存知の通り。

 そして今回ご紹介する「P50AI」は、プロセッサ(SoC)に3TOPSのNPUを内蔵する「Allwinner A733」を採用。Copilot+ PCとは桁1つ違うのだが、これで何ができるの?と疑問を持つ人もいらっしゃるだろう。この辺りは以降説明したい。

 もう1つハードウェア的な特徴として、USB Type-Cが2つ搭載されていることが挙げられる。うち1つはUSB 3.2 Gen 2(つまり10Gbps)、DisplayPort Alt Mode、USB PD充電対応と、ローエンドタブレットでは珍しい構成となっている。また、デジタルコンテンツ保護のWidevine L1も対応している。主な仕様は以下の通り。

Teclast「P50AI」 の仕様
SoCAllwinner A733(8コア、Cortex-A76×2+Cortex-A55×6/最大2GHz、GPUにIMG BXM-4-64-MC1内包)
メモリLPDDR5 6GB
ストレージ128GB+microSDカードスロット
OSAndroid 15
ディスプレイ11型IPS式(1,280×800ドット)、90Hz、Widevine L1、TÜV Rheinlandの低ブルーライト認証
ネットワークWi-Fi 6、Bluetooth 5.4(LDACコーデック対応)
インターフェイスUSB Type-C×2(内1つはUSB 3.2 Gen 2、DisplayPort Alt Mode、USB PD充電対応)、microSDカードスロット、2スピーカー、3.5mmジャック
カメラ前面:500万画素/背面:1,300万画素+8万画素深度
バッテリ/駆動時間7,000mAh
サイズ/重量258mm(長さ)×170mm(幅)×8.3mm(高さ)/540g
価格2万900円(クーポン利用で1万6,900円)

 SoCは今回初登場のAllwinner A733。8コアでCortex-A76×2+Cortex-A55×6、最大2GHz。GPUにIMG BXM-4-64-MC1内包。そして3TOPSのNPUを内蔵する。メモリはLPDDR5 6GB。ストレージ128GB+microSDカードスロット。OSはAndroid 15となる。

 ディスプレイは11型IPS式(1,280×800ドット)。リフレッシュレート90Hz、Widevine L1対応、TÜV Rheinlandの低ブルーライト認証などにも対応する。解像度が1,280×800ドットと低い割に頑張っていると言える。

 ネットワークはWi-Fi 6、Bluetooth 5.4。BluettothはLDACコーデック対応だ。そのほかのインターフェイスは、USB Type-C×2、microSDカードスロット、2スピーカー、3.5mmジャック。USB Type-Cが2つあるのは珍しい上に、うち1つはUSB 3.2 Gen 2(10Gbps)、DisplayPort Alt Mode、USB PD充電対応で、こだわりが伺える。

 カメラは前面:500万画素、背面:1,300万画素+8万画素深度。7,000mAhのバッテリを内蔵し、サイズ258×170×8.3mm、重量540g。価格は2万0,900円。当初先着500台/2時間限定で1万5,900円だったが、今ではクーポン利用で1万6,900円だ。

 パフォーマンスは後半のベンチマークテストで検証したいが、このクラスなので爆速は期待できないものの、それでも2万円切りでこの内容であればお買い得ではないだろうか。

パネル中央上に前面カメラ。フチはそれなりにある
背面。エメラルドグリーンっぽい金属筐体はなかなか綺麗。右上にカメラ群
左側面/上側面。左側面に角に3.5mmジャック、Type-C(手前/主に充電用)、microSDカードスロット、Type-C(フルファンクション)。上側面に電源ボタンと音量±ボタン
右側面には何もなく、下側面にスピーカーR/L
microSDカードスロット。トレー式ではなくダイレクトに差し込むタイプ
右側が背面カメラ、左側はフラッシュ
付属品はACアダプタ、USB Type-A/Type-Cケーブル、なぜかイジェクトピン
重量は実測で542g

 筐体はスリムな金属筐体でなかなかスタイリッシュ。背面のエメラルドグリーンも綺麗だ。重量は実測で542g。片手だと少しつらいが、両手で持つのにはなんの問題もない。

 前面はパネル中央上に前面カメラ。フチはそれなりにある。背面は右上にカメラ群。左側面に角に3.5mmジャック、USB Type-C(手前/主に充電用)、microSDカードスロット、USB Type-C(フル機能)。上側面に電源ボタンと音量±ボタン。右側面には何もなく、下側面にスピーカーR/Lを配置。

 このクラスとしては(このクラスでなくても)、USB Type-Cが2つは珍しく、上側は主に充電用、下側はUSB 3.2 Gen 2、DisplayPort Alt Mode、USB PD充電対応のフルファンクションとなる。試しにいつものキーボード付きモバイルモニターへ接続したところあっさり表示。ミラーリングとなる。もちろんキーボードも使用可能。

USB Type-Cでいつものキーボード付きモバイルモニターへ接続(ミラーリングのみ)

 付属品は、ACアダプタ、USB Type-A/Type-Cケーブル、イジェクトピン。イジェクトピンはどうやら上位モデルがSIMに対応しており、パッケージを共通化するため入っている様だ。本機としては使い道がない。

 11型IPS式(1,280×800ドット)のパネルは解像度はイマイチだが、実際動画などを観ると結構色が映える。また輝度も高め。視野角やコントラストもOK。Widevine L1認証なので映画なども十分楽しめる。

 季節柄もあるかも知れないが、発熱はまったく気にならない。サウンドはスピーカーが下側面にあるため、何かで音を反射するようにするとバランスが良くなる(とは言えシャリシャリ音なのだが)。パワーはかなりあり、音量50%でも煩いほど。

背面カメラ/写真モードで撮影

 カメラは、前面の画質が少し荒い。Web会議で使うにしてももう少し画質がほしいところ。背面カメラはサンプルを掲載した。価格を考えれば可もなく不可もなし。結構寄れるのでマクロ的にも使用可能だ。

 さて、3TOPS NPUの用途だが、サイトによると、「AIビデオアップスケーリング」(720p以下の動画を最大2.5Kへ)、画面上のコンテンツを分析し、各シーンに合わせたカラーエンハンス設定、画像からテキストを認識する「AIテキスト抽出」……といった裏方的な処理が使える。

姿勢リマインダー
エアジャスチャー。上/下、戻る(手のひら反転)、スクリーンショット(手を握る)対応

 一方で、ユーザーが意図的に使えるのは、「AIジェスチャーコントロール」と、ユーザーの姿勢を認識、姿勢調整を促す「AI姿勢認識」となる。

 前者は上/下スワイプ(手のひらを上下に)、戻る(手のひらを反転)、スクリーンショット(手を握る)などが操作できる。実際試したところ、前面カメラに手をかざすすと(認識すれば)画面に手のひらアイコンが出て、この状態で次のジェスチャーをすれば反応するようだ。が、あまり感度は良くない印象だ。一方、後者はいらぬお世話的な感じだ。個人的にはどちらも常用したい気分にはならなかったが、キッチンで料理をする際に使えたり、子どもが使うタブレットの機能としてはアリなのかもしれない。

 細かい部分に気になるところがあるものの、価格が2万円未満。そんなタブレットにあれこれ文句言う方が筋違いだろう。同じ価格帯の中では、うまくまとまった1台だ。

Android 15ベースでシンプルなアプリ構成

 初期起動時、ホーム画面は1画面。Dockに設定、ファイル、YouTube、Chromeを配置。右端は最近起動したアプリとなる。またデフォルトのナビゲーションはボタン式(もちろんジャスチャー式にも対応)。IMEはGboard。

 上から下へのスワイプで通知エリア/クイックアクセス、下から上へのスワイプでアプリ一覧、壁紙長押しでホーム画面の設定など、一般的な操作となる。128GBのストレージは13GBが使用中(若干の画面キャプチャを含む)。

ホーム画面
通知エリア/クイックアクセス(1/3)
通知エリア/クイックアクセス(2/3)
通知エリア/クイックアクセス(3/3)
壁紙長押し
Widevine L1認証
設定/タブレット情報
設定/ストレージ

 インストール済のアプリは、「時計」、「Keepメモ」、「Gmail」、「連絡帳」、「カレンダー」、「フォト」、「アシスタント」、「カレンダー」、「キッズスペース」、「デバイスを探す」、「ドライブ」、「フォト」、「プレイヤー」、「マップ」、「ユーザーセンター」、「音声レコーダー」、「緊急情報」、「時計」、「設定」、「電卓」、「AW OCR」、「Camera」、「Chrome」、「Files」、「Google」、「Google TV」、「Meet」、「MiracastReceiver」、「Playストア」、「Playブックス」、「Play Games」、「System Update」、「YouTube」、「YT Kids」、「YT Music」。

アプリ一覧(1/2)
アプリ一覧(2/2)

 アプリはほぼGoogle系。ほかの対応デバイスの画面として使えるMiracastReceiverがあるのが珍しいところか。試しにWindowsへ接続してみたが、うまく行った。とはいえ、遅延があるので、リアルタイムに操作する用途というよりは、PDFなど資料を他人に見せるビューワ的な感じの用途がメインになるだろうか。

MiracastReceiverアプリ
Windowsに接続したところ

 PCモードは、最近よく見かけるWindowsのデスクトップっぽい画面でマルチウィンドウが使用可能だ。ただハイパフォーマンス機ならともかく、この手の遅いデバイスではあまり実用的ではない……っと思うのは筆者だけではないだろう。

 画面分割モードは、アプリ起動中にDockのアイコンを長押しすると[分割画面]がほかの項目と合わせて表示されるので、選択すると分割される。ただし、アプリによってできないものもあるので注意したい。

PCモード
画面分割モード

価格なりのパフォーマンス

 ベンチマークテストは簡易式でGeekBench 6と(もうメンテナンスされていないのだが過去との互換性を考慮して)Google Octane 2.0の結果を掲載したが、予想通り低スコアとなる。

 Unisoc T606を搭載したBlackview「Tab90WiFi」(カッコ内)と比較すると、631/1,513(369/1,208)、n/a(446)、16,356(12,825)というように、やや上回る数値を示す。

 GeekBenchのGPUは何十分待っても結果が出ないので、n/aとした。CPUに関しては本機の方が少し速い感じだろうか。GPUに関しては1度だけ183と出たものの、以降何度やっても一向に処理が進まないので、この値が正しいかは不明だ。

 バッテリ駆動時間は、明るさ、音量ともに50%。Wi-Fi接続でフルHD動画を連続再生したところ約7時間でバッテリが切れた。50%でもかなり明るく、また音量もあったので、そちらにバッテリを食われたのか、8時間には届かなかった。

GeekBench 6(Single-core/Multi-core)の結果は631/1,513(369/1,208)
Geekbench 6。Vulkan n/a(446)
Google Octane 2.0。16,356(12,825)
6時間経過で残27%

 以上のようにTeclast「P50AI」 は、Allwinner A733、6GB/128GB、90HzやWidevine L1認証の11型IPS式(1,280×800ドット)、そしてOSにAndroid 15を採用したタブレットだ。価格を考えるとなかなか良くできているのだが、問題はパフォーマンスで、同クラス同様にメインストリームと比較すると遅い。

 とは言え、アプリさえ動き出せば、画面が綺麗でサウンドもパワーがあるということもあり、動画を観るといった用途などでは結構楽しめる。ビューワー的な用途であれば大丈夫そうな感じだ。この手の利用で安価なAndroidタブレットを求めているユーザーに使ってほしい1台と言えよう。