山田祥平のRe:config.sys

お願いWiMAX

 世界最薄8.4mmというモバイルルーター「URoad-Aero」が発売された。さまざまなデバイスからWiMAXを使える環境が、これでまた1つ進化したといえるくらいの刷新だ。今回は、この新しいモバイルルーターを使いながら、WiMAXのこれからを考えてみる。

存在感がまたゼロに近づくURoad-Aero

 URoad-Aeroは、これまで1年間使ってきた「URoad-SS10」の11.8mmよりも、さらに薄く、そして、重量も12g減って74gとなった。かなりのダイエットだが、それでいて、仕様上のバッテリ稼働時間は12時間と、以前の9時間の3割増しだ。実際に使ってみても、ほぼ仕様通りの実稼働時間が得られる。ぼくは、常々、モバイル機器のバッテリ稼働時間は16時間が理想といっている。なぜなら、1日のうち8時間は、ユーザーである人間自身が寝ているか、確実に電源が確保できる場所にいるにちがいないと思うからだ。この製品の12時間という稼働時間は、その16時間に、あともう一息といったところで高く評価できるものだ。

 しかも、この薄さ、この軽さで、バッテリが交換可能である点もうれしい。予備のバッテリがあれば、24時間の稼働が手に入るのだ。バッテリを単体で充電する方法がないのは残念だが、予備バッテリを1つ持っていれば本当に安心だ。ほぼ毎日使っていると、バッテリの劣化によって、バッテリ運用時間は短くなっていき、1年後には情けないことになっているだろうが、そうなっても、新しいバッテリに交換すれば、仕様通りの値が復活するという安心感もいい。

 スペック的には、連続待ち受け20時間とか、連続待機1,000時間といった驚異的なスペックも持ち合わせているのだが、実際の運用では、スマートフォンやタブレットはずっとつながりっぱしでなければ困るので、それらの値は意味をなさない。スリープから復帰させたときだけ通信するPCならともかく、接続を維持したままで使うマルチデバイスの時代には、どうしても連続通信時間がカギとなるんじゃないだろうか。

 とはいうものの、タイマーによって、自動的に起動と休止を遷移するという気の利いた機能も用意されている。自分が絶対にルーターを使わない時間があるなら、それを設定しておくことで、無駄なバッテリの消費を抑止することができる。毎日、一定のパターンで活動できる場合には便利な機能だろう。

手に取らなくても他の機器からステータスがわかる

 モバイルルーターは、縁の下の力持ち的存在なので、本体がどんなにスタイリッシュでも、それはあまり関係がないともいえる。電源を入れてカバンの中やポケットの中に入れてしまったら、外出中に取り出すことはまずない。そこがスマートフォンとは大きく異なる点だ。

 そうはいっても、これまでのモバイルルーターは、本当に電波をつかまえているのかとか、バッテリ駆動時間を延命するために、こまめに休止状態に遷移させたり復帰させたりといった手当が必要だった。でも、この製品なら、まさにその存在を忘れることができる。

 外出中に本体を手にしなくてよくなったのは、無償配布されているスマートフォンアプリ「URoad-Magic」が大幅に使いやすくなったからでもある。このアプリは、AndroidやiOSなどで稼働し、URoad Aeroの各種機能を本体に一切触れることなくコントロールするためのものだ。もちろん、電波強度やバッテリの残り容量などルーターのステータスを知るためにも便利だ。

 このアプリの新機能の1つとして「ステータスバー表示」が追加された。わざわざアプリを起動しなくても、スマートフォンの通知領域に、電波強度とバッテリの残り容量が表示できるようになり、それが常に最新情報にリフレッシュされるようになったのだ。

 スマートフォンは本体のデータ通信をWiMAXに任せてしまうので、単体ですべての通信をまかなっているときに比べれば倍以上にバッテリ運用時間が延びる。だから、このアプリによる多少のバッテリ消費は無視できるといってもいい。スマートフォンのステータスバーをみれば、ルーターがどのような状態で稼働しているのかを、いちいちアプリを起動することなく確認することができる。この機能が追加されたことで、外出先でルーターを手に取ることはまずなくなる。

既存ユーザーに不親切

 たった1年でこんなに進化したのだから、すぐに買い替えようと思った。だが、UQコミュニケーションズのサイトを確認してみると、案の定、買い増しをするよりも、いったん解約して新規契約した方がリーズナブルな雰囲気だ。

 残念ながら、この原稿を書いている時点でURoad-Aeroは対象機種に入っていないが、まとめてプラン600と月割を併用することで、毎月600円を機器代相当月賦として負担し、同額が割り引かれて相殺される。それが2年間続き、実質負担はゼロでありながら、機器代が14,400円以内なら結果的に無償で端末が手に入るというシステムだ。

 一方、新規に年間パスポート加入では、登録料3,150円を負担することで新端末を4,800円で入手できる。合計金額は7,950円だ。

 もし、加入したまま買い増しした場合、2年間の契約維持を覚悟しなければならなくなり、さらに、次の新端末発売時には、また、複雑な損得勘定をしなければならなくなってしまう。

 携帯電話の機種変更も同様だが、ずっと継続的に利用してきた既存ユーザーは、もう少し大事にされてもいいんじゃないだろうか。

教えてUQ

 WiMAX内蔵PCは、とにかく液晶を開いたらすぐに繋がっているという点で実に便利な存在だ。本体とは別にモバイルルーターの充電状況などを気にすることもない。でも、今の状況を見ていると、今後、ずっと、内蔵PCが供給され続けることはなさそうだ。だから、WiMAXは基本的にモバイルルーターが命綱になるのは間違いない。

 UQコミュニケーションズにお願いしたいのは、まず、内蔵PCでなくても、内蔵PCであるかのような使い勝手を享受できる端末を用意することだ。もちろん、今回のURoad-Aeroなども、PCのWi-Fiをオンにしておけば、実質的には液晶を起こしてスリープから復帰すれば、自動的に再接続されるので、同じといえば同じなのだが、もし、マウスのナノレシーバーのように、USB端子に装着しっぱなしにできるドングルがあれば、かなり便利なんじゃないかと思う。

 また、モバイルルーターにしても、Wi-Fiを使わず、BluetoothのPANで使えるようなものを用意すれば、もっとバッテリ駆動時間は延びて、ぼくの理想に近い16時間くらいにはなるんじゃないだろうか。

 直近のWiMAXは、移動中の地下鉄でも使えるようになって、ますます便利な存在になりつつある。その一方で、これからどうなっていくのかというのが不安材料として残っていることも確かだ。やはり、UQコミュニケーションズには、3年先、5年先の中・長期的なビジョンを、現実的なものとして、そろそろ語りはじめてほしいと思う。

 少なくとも現状では、容量上限なし、帯域制限なしの定額で、高速インターネット接続ができる最強のインフラとして便利に使えているのがWiMAXだ。都心はもちろん、地方などにいってもあまり困ることはなくなっている。もちろん、携帯電話網に比べれば、圏外になってしまう場面は少なくないのだが、それを補って余りある使い勝手があるだけに手放せない。もちろん、手元には、現役で使っているWiMAX内蔵PCが何台もあるというのも理由の1つだ。

 これらのPCがライフサイクルを終え、LTE通信などを前提とした新たなプラットフォームに移行したとき、UQコミュニケーションズはWiMAXのインフラをどのようなかたちでぼくらに提供してくれるのかを知りたい。現状でWiMAX内蔵PCでしか使えない、海外でのローミングサービスの行方も気になるところだ。こうした点をクリアにし、これからもWiMAXを使い続けていこうと思わせる材料が欲しい。それが今のWiMAXへのお願いだ。

(山田 祥平)