山田祥平のRe:config.sys

アプリの時代は遠のいて




 MicrosoftからようやくAndroidスマートフォン用のSkyDrive公式アプリが登場した。iOS用には以前からあったものの、Andoroidではずっと待たされていたものだ。今回は、その概要を見ながら、クラウドサービスとアプリについて考えてみることにしよう。

●つぶしのきくテキスト形式

 ぼくは多くの情報をテキスト形式で保存している。文書への書式などは設定できないので、印刷して人に見せるために作成する文書はワープロを使うが、それ以外はすべてテキスト形式だ。とにかくツブシがきくというのがその大きな理由だ。

 今は秀丸エディタを愛用しているが、MS-DOSの時代には、ジャストシステムの一太郎を原稿を書くために使っていた、このアプリケーションは文書を作成すると、3つのファイルを生成した。拡張子は .ctl、.atr、.jxwとなっていて、このうち .jxwの拡張子を持つものがテキストファイルそのものだった。つまり、文字装飾や書式のデータが分離されていたので、ワープロソフトでテキストファイルを作成するということに比較的柔軟に対応できていたのだ。

 そんなわけで、ストレージには多くのファイルが存在するが、重要なものはすべてがテキストファイルになっている。

 ストレージ内のフォルダのうち、もっとも頻繁にアクセスするのが logs というフォルダだ。ここには、打ち合わせから記者会見、イベント情報、重要なWebサイトなど、カテゴリ、ジャンルを問わず、すべてのメモを保存するようにしている。もちろんそのほとんどがテキストファイルだ。そして、一部を除きサブフォルダに分類するようなこともせず、ベタにファイルが並んでいる。

 たった1行しかメモが記入されていないファイルもあれば、数千行のファイルもある。ファイル名についても特に規則を決めず、なんとなくつけている。でも、PCで参照する以上、検索すればいいので特に問題を感じない。

 1つだけ規則があるとすれば、メモをする前に必ず日付を入れるということだ。

〓2012年08月30日(木)11:02:11
〓××××

という書式で日時を入れるようにしている。頭の「〓」は目印で、次の行の「〓××××」となっているのはファイル名で、必要に応じてその部分を、別のキーワードに変更する。

 このフォーマットで現在日時とファイル名を生成するマクロを作ってあって、秀丸エディタではF12キーを押すと自動的に挿入される設定を作った。日本語入力で使っているATOKで「にちじ」を変換するとあらかじめ設定したフォーマットで日時情報を入れることができるので、それを使ってもいいかもしれない。マクロでやり続けているのはなんとなくにすぎない。

 日時というのはとても重要だと思っているのでこれは必須だ。だから、取材などで海外にでかけるときも、ノートPCの時計は必ずタイムゾーンを現地時刻に合わせる。

●サービスが優れていてもアプリがひどい

 さて、SkyDriveだが、当然ぼくの logs フォルダも、SkyDriveと同期させているので、自宅のデスクトップPCから、普段、用途に応じて使い分けている数台のノートPCのすべてで同じ内容に保たれている。そして、当然、スマートフォンでもクラウドを参照できる。実に便利になったものだ。

 前置きが長くなったが、SkyDriveの公式アプリの話をしよう。

 結論からいえばひどい。

 まず、iOS用のアプリでは、PCで作成したテキストファイルのShift JIS日本語のエンコードを判別することができず、表示は文字化けしてしまい使いものにならない。だから論外だ。

 新しく登場したAndroid用のものは、文字化けすることはないのだが、どのようなユーザーをターゲットにしているのかまったく理解できない。

 まず、ファイルの並び順を指定することができない。すべてのプロパティでの並び替えができるようにしろとまではいかないが、せめて、更新日時やファイル名の昇順、降順での一覧はできるようにしてほしい。しかも、全文検索はもちろん、ファイル名での検索もできない。10や20のファイルしかないならともかく、ファイルの数が100を超えたあたりでお手上げになってしまう。とにかく大量のファイルを扱うようにはできていないのだ。それに、共有の設定はできても、共有の解除ができないのもどうかと思う。

 通常、PCでは、ぼくの logs フォルダは、更新日付の昇順で表示されるようにしてある。だから、常に、直近のメモが先頭に出てくるので、すぐにそれにアクセスすることができるが、スマートフォンではそれができない。これは致命的といってもいい。

 SkyDriveの名誉のために言っておくと、このサービスそのものは実に便利で優れたものだと思う。欲を言えば、分散したフォルダ構造から任意の複数フォルダを同期の対象にできればうれしいといったところだろうか。

 直近ではWebのインターフェイスも変わって使いやすくなった。Webのインターフェイスでは、名前はもちろん、更新日や共有の有無、サイズ、それぞれの要素で昇順、降順で並び替えができるのがいい。こちらも欲を言えば、Windowsのエクスプローラでは、更新日降順による並び替えの際に、サブフォルダは一覧の最後にまとめて表示されるのだが、SkyDriveのWebインターフェイスでは、必ずフォルダが前にきてしまう。このあたりの細かいところが気になってしまう。

●作っている人は使っているのか

 こうした理由から、SkyDriveについては、以前から使っていたサードパーティ製の Browser for SkyDriveを、当面は使い続けることになりそうだ。決して使いやすくはないのだが、少なくともファイルの並び替えはできるので、ぼくの用途にはマッチしている。あるいは、ブラウザを使ってWebのインターフェイスでサービスを使うのも悪くないと思っている。

 そもそも、SkyDriveに限らず、こうしたアプリの完成度を見ていると、サービスそのものと、まったく連携がとれていないんじゃないかと思うことが多い。もしかしたら、このアプリを作った人たちは、サービスを理解していない、あるいは、サービスを使っていないんじゃないかと感じることもある。

 SkyDriveもそうだが、Facebookだって、Webの方がずっと使いやすい。文字サイズが自由になるので、ぼくは、Facebookについても、スマホではWebサイトのブックマークをホーム画面に保存してそちらを使っている。こういうのを見ると、もうアプリの時代ではないのかとも思うのだ。

 すべてがWebで完結するのであれば、極端な話、もうOSはなんでもいいといってもいい。ブラウザさえあればそれでいいからだ。そしてそれは、Windowsの根幹に関わることでもある。

 Windows 8は完成したけれど、かつてMetroと呼ばれていた新しい環境のためのアプリは、少なくとも現時点では、どれを見てもまだまだ習作的なものが多く、Windowsのメモ帳やペイント程度のものにすぎない。これではWindows 7から積極的に移行しようという魅力として不十分だ。結局は、従来から慣れ親しんだクラッシックデスクトップを使うことになり、そして、それはタッチのインターフェイスでは使いにいというオチになる。

 WindowsはすごいOSだと思うし、Microsoftが提供するクラウドサービスの数々も充実している。だがアプリがひどい。Microsoftは、そこを一体どう考えているのだろう。