山田祥平のRe:config.sys
あると邪魔だがないと困る、それはプリンタ
2025年7月5日 06:14

家庭内のデジタルトランスフォーメーション(DX)も進み、暑中見舞いや年賀状も出さなくなり、利用頻度が少なくなったプリンタ。手元になければないでいざというときにはコンビニプリントも利用できる。それでもプリンタはあれば本当に便利なのか。その功罪を考えてみる。
愛機のプリンタ11年で逝く
手元のプリンタがとうとう使えなくなってしまった。逝った愛機はキヤノンのカラーレーザープリンタ「LBP7100C」で、購入したのは2014年1月だ。A4専用の製品で10年超えで使ってきたことになる。家の中のLANに有線接続し、デスクトップPCやノートPCから利用してきた。11年間故障は一度もなかった。
だが、この半年ほど不調が続いていた。紙詰まりが頻発するのだ。だからといって本当に紙が詰まっているわけではない。カセットを抜き差ししてやると、何ごともなかったかのようにプリントを再開する。プリント結果も特に問題がなかったので、だましだまし使ってきた。ところが先週、同じ症状に陥り、そして、何をやっても紙詰まりのエラーが解消しなくなったのだ。
最初は修理も考えた。10年も使っているのだから、紙の粉が蓄積されておかしくなっている可能性もある。だが、引取にせよ訪問にせよ修理サービスを使うとそれなりのコストと手間がかかる。11年前の購入時価格が3万7,800円のプリンタに、そのコストをかけるべきなのかは微妙だ。
それに、キヤノンはカラーレーザープリンタを個人向けとはしていない。法人向けなのだ。普通に個人としてヨドバシ・ドット・コムで購入したのだが、修理のことまでは考えていなかった。なんらかの保守サービスに入るか、スポットサービスを利用する必要がある。かなり高額だ。都度利用のスポットサービスの場合、訪問基本料金と技術料金、簡易点検料金の合算で3万7,500円で、部品代金が実費で必要になるようだ。
それはともかく、2024年12月末日で修理対応期間が終了していることも分かった。この製品は2012年12月の発売だったので、ちょうど12年間の修理対応期間だったことになる。
後継機を物色
そんなわけで後継機を物色したところ、キヤノンの「Satera LBP621C」が見つかった。ほんの少しフットプリントが大きくなっているが、カセットに入る用紙枚数も150枚から250枚になっているのでケアする頻度も低くなる。プリント速度も14ppmから18ppmでちょっと速い。懸念があるとすれば発売日が2019年5月なので、すでに6年前の製品になっているということだ。
最後まで迷ったのは姉妹機の「LBP622C」だ。何が違うかというと少しプリント速度が速く21ppmとなっている。だが、そこはどうでもいい。両面印刷対応というのが魅力だったのだ。プリントは出せば大量だ。束がかさばらず半分で済む両面印刷対応はうれしい。だが価格を見てあきらめた。LBP621Cが2万1,780円なのに対して、LBP622Cは4万7,640円と倍以上の開きがある。プリンタの使用頻度を考えると投資に見合わないという判断をした。
プリンタの使用頻度は極端に少ない。チェックしてみると11年間で約4,500枚のカラー印刷、約2,000枚のモノクロ印刷をしてきたようだ。合計6,500枚ということは、1日当たり1.6枚しか印刷していない。
紙はスーパーで売っている500枚パックのPPC用紙を使ってきた。6,500枚なら13パックといったところだろうか。パックあたり300円ほどなので4,000円程度だ。少し高い上質なものを買っても大した金額ではない。
印刷にはトナーが必要だ。トナーはブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4種類あって各色8,500円程度。11年間で10個くらい交換している。印刷時にトナーがもうすぐなくなるという警告が出るようになり、いよいよ空になってこのままでは機械的な故障を招くという最終警告表示に変わるまでを招くという表示に変わるまで半年程度かかる。1日に1.6枚しか印刷しないのだからそんなものなのだろう。だから、最終警告が出てからトナーを注文し、その当日か翌日に届くカートリッジに交換して使ってきた。
消耗品としてのトナーに使った金額は10万円程度ということになる。プリンタ本体と用紙、そしてトナーの合計金額は14万1,800円だ。これを印刷枚数の6,500で除すると1枚あたり21円程度となる。それがこの11年間使ったカラーレーザープリンタのランニングコストだ。
実はランニングコストはそんなにかからないレーザープリンタ
手元にプリンタがなければコンビニのプリンタを使えばいい。今は、ネットプリントなども簡単にできるので、あまり不便を感じることもないかもしれない。
コンビニプリントサービスの価格は、A4カラーが約60円、モノクロが20円といったところだろうか。愛機が11年間かけて印刷した6,500枚をこの金額で換算すると31万円かかる計算になる。プリンタを手元においた場合のざっくり倍額だ。必要なときにすぐに手元で印刷できることを考えれば、自前のプリンタは格安だ。新しいプリンタの価格は半額近いので、そのコストはもっと低くなる。
レーザープリンタは今回の購入で4代目となる。過去に使った製品は全部A4専用で、1988年頃に購入したキヤノンのモノクロレーザー、次はHPのLaserJet、そして最初のカラーレーザーが今回壊れた3万7,800円の製品で、新たに購入したのが4代目としてのLBP621Cということになる。買い換えのたびにコンパクトになり性能も向上し、価格も安くなっている。この先、10年以上使うであろうインフラへの投資としては、ずいぶんコストパフォーマンスが高い。
インクジェットプリンタの利用も考えた。A4普通紙へのカラー印刷時、そのランニングコストはレーザープリンタの半分くらいになる。けれども1日1.6枚という印刷頻度は、10日間とか1カ月間とかの長期にわたって印刷しないことがザラにあるということでもある。そのたびに、インクヘッドのクリーニングなどでインクが消費されることを考えると性能の維持に相当のコストがかかってしまう。
誤解を怖れずにいえば、もしかしたら、インクジェットプリンタこそ大量印刷に向き、カラーレーザープリンタは少量印刷に向いているといってもよさそうに思う。文字中心のビジネス文書のみならず、カラー写真がそれなりにレイアウトされているWebページやPDFなどの印刷用途では、ランニングコストが低く、高速なレーザープリンタが有利だからだ。趣味の写真を高画質に大量にプリントしたいといった用途ならともかく、日常的なプリントなら一般家庭にレーザープリンタというのは悪くない選択だ。使い勝手はそのほうがいいと思う。写真を印刷してもそれなりに満足できる。
ただし、それなりに体積はあるし、重量のことを考えると使ったら片付けるというのも難しい。常置場所の確保を考えると二の足を踏むかもしれない。でも、スペースが確保できるなら検討に値する。紙にコンテンツを印刷すれば、狭いディスプレイを補完することもできる。
まだ印刷が必要になることは少なからずあるからと購入したカラーレーザープリンタだが、このプリンタの買い替えが、将来必要になるときがくるのかどうか。だんだん耐久消費財みたいになってきたが末永くよろしくと声をかけておこう。