山田祥平のRe:config.sys

パソコンとオーディオ

 PCを含むスマートデバイスで音楽や動画コンテンツを楽しむ機会が激増している。やはりそれなりのクオリティは確保したいし、ずっとヘッドフォンというのも抵抗がある。そんなわけで、オーディオ再生環境を見直してみることにした。

PCのオーディオセットを入れ替える

 手元でずっと使っているタワー型自作デスクトップPCのマザボードには光デジタル音声端子が装備されている。そこにDAコンバータをつなぎ、その出力をアンプに接続して、スピーカーを鳴らす。20年近く、この構成で音を鳴らしてきた。DAコンバータもアンプもそれなりにクラシックなものだし、スピーカーも負けないくらいに古いものだ。

 今回は、スピーカーはそのままで、DAコンバータとアンプを入れ替えてみることにした。これまで使っていたのは、DAコンバータがCECのDX71、アンプはAURA VA-200 STINGRAYというものだった。

 両方とも20年以上使ってきた。DAコンバータはまだ大丈夫そうだが、アンプはボリュームにガリが出ているし、ロータリースイッチも接触不良を起こしていて切り替えにも支障がある状態だ。

 すでに修理やオーバーホールはメーカーや代理店が受け付けていないので延命措置を施すには、工房探しなど、色々とやっかいなハードルを越えなければならない。コストもかなりの額を覚悟する必要がある。その価値があるかどうかも分からない。

 あまり深く考えないで、最近発売されたばかりのTEAC AI-301DA-Zを入手してみた。Bluetooth、USB入力、光、同軸音声入力ができる小型アンプで、デスクトップオーディオアンプというカテゴリに分類されるらしい。今回は、フルサイズコンポをこのコンパクトな装置に置き換えてみた。

数百円の投資でも音が変わる

 接続については何も難しいことはない。ただ単にTOSケーブルと呼ばれる光ケーブルでPCの光デジタル音声端子とこのアンプを接続するだけだ。幅215mmというコンパクトなサイズなので、ダンゴ状のACアダプタがついてきても不思議ではないのだが、ちゃんとした電源が内蔵され、本体裏に3ピンのソケットを持っているのはうれしい。もうACアダプタは使いたくない。

 まず、20年前の光ケーブルをそのまま使った。特に不満はなかったのだが、少し長すぎるようなので、短いケーブルに交換した。こちらはAmazonベーシックで631円と、極端に廉価なものが見つかった。

 注文したケーブルが到着するまでの1日、20年前のケーブルで音を出していたのだが、ケーブルを新品に交換したら、びっくりするほど音が変わった。光ケーブルでデジタルなのにこういうことがあるのかと思う。デジタルながらアナログなんだと思う。かなりコストパフォーマンスの高い投資だ……。

 PCにこのアンプを接続するには、Bluetoothを使う方法もあるが、映像コンテンツを楽しむことを考えると有線でつないでおく方がいい。本当にわずかだが、音声が映像に対して遅延するために映画などを見るときに違和感があるからだ。

 有線についてはUSB接続することもでき、ASIOドライバなども用意されている。今は、慣れ親しんだ光接続で楽しんでいるが、これから色々と比べながら音の変化を楽しみたいと思う。

 ちなみにアンプの入手価格は5万2,800円だった。これまで使ってきたDAコンバータとアンプの組み合わせは40万円近かった。20年以上使った40万円のシステムを、5万円のシステムと比べると、好き嫌いで言うなら前の方が好きだった。だから処分せずにほかの用途で使うことを考えることにする。先の楽しみとしてとっておこう。

 新しいアンプに不満があるとすれば、再生を続けるとかなり熱くなることくらいだが、触れないほどにはならない。4Ωのスピーカーを接続した40Wのアンプとしてはこんなものか。欲を言えば、インプットセレクターとして使い、別のアンプに接続できるようにラインアウト端子があればよかったのにと思う。

新しい当たり前を自分で作ろう

 スピーカーについてはデスクの上に置きたくないと思うようになった。邪魔なのはもちろんだが、それなりに大きなオブジェクトがずっと見えているというのは圧迫感もあるので避けたかった。

 机上はオーディオ的にもよくないそうだ。でも、本当は耳の高さにスピーカーがあるのが理想的だ。そこはあきらめることにして、今回は、これまた年代物のELAC CL310 JETというスピーカーを床の上に置くことにした。20年以上使っているものだ。

 床の上に置いたスピーカーは、デスクに向かって座ると、さすがに音が明後日の方向に出ていることが分かるくらいだ。そこで、少し上方に傾けることにした。少し探すと、色々な製品が見つかったが、今回は、KIKUTANIというメーカーのモニタースピーカースタンドMO-SPS-Zを試してみた。左右ペアで3,000円以下で入手できた。

 早い話が金属板の両端を折り曲げただけのもので、表裏反転させることで15度または10度にスピーカーを傾けることができる。15度ではまだ足りないのでインシュレータ代わりにさらに板を敷いて上方に向かせた。これで下方からダイレクトに耳に音が届くような感じになった。邪道かもしれないが悪くない。前身が音に包まれているような感じと言えなくもない。これを新しい当たり前とする。

PCは最重要オーディオソース

 20年間使った40万円のセットに匹敵するクオリティの音を鳴らす5万円のセットに、時の流れと技術の進化を痛感したが、本当にびっくりしたのはケーブルだ。光ケーブルを交換しただけで音が大きく変わった。これはもうスピーカーケーブルも新しくするしかないと思っている。内緒だが、スピーカーケーブルも20年選手だ。スピーカーの位置も耳の高さをあきらめれば、さらに工夫のしがいがありそうだ。

 CDやDVD、BDなどのメディアを楽しむことがなくなった今、PCは重要な音源再生ソースだ。

 ピュアオーディオを追求するつもりもないし、オーディオに部屋を支配されたくもない。でも、ちょっとの工夫と数千円程度の投資で色々と変化を体験できるのは楽しい。

 オーディオは、スマホなどのガジェットで楽しむことが多くなったが、外出の機会が激減し、自室でスピーカーが鳴らす音を楽しむ機会が増えたことで、ちょっとしたオーディオ装備の見直しに至った。デジタルにしてもアナログにしても、いったいどこまでコロナ禍は人の暮らしに影響を与えるのだろうか。