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Xiaomi Go、旅の相棒としてのキャリーバッグ

 Xiaomiが日本市場に進出することを発表し、スマートフォン、スマートバンド、モバイルバッテリ、さらには炊飯器、スーツケースといった商品の発売を開始した。ハードウェア事業全体の純利益は5%を超えることはないと約束してのグローバル展開で、日本もその例外ではないという。そこで、「Xiaomi スーツケース クラシック 20インチ」を入手してみた。

消耗品としてのスーツケース

 スーツケースは消耗品と考える人が多い。個人的にも例外ではなく、壊れたら治す、治すのに高くつきそうなら新品に取り替える。それを繰り返してなんとなく間に合わせ的に調達してきた。スーツケースとしては預け荷物に使える最大サイズのものを常用し、身の回りの荷物を入れられて、短期間の出張などにも使える機内持ち込み可能なキャスターつきのキャリーバッグを補助に使っている。そして、2つのスーツケースには、旅行に持っていく小物類が入れっぱなしになっている。

 そのキャリーバッグのキャスターが壊れてしまった。数ヶ月前、出張に出かける当日の午前中、羽田空港に向かう東京・浜松町の駅でキャスターの車輪が割れてしまったのだ。これはまずいと瞬間接着剤を調達するために、そのあたりの100均を探すが見当たらない。仕方がなく駅ビルの書店で、けっこう高い接着剤をゲットした。そして、そのまま空港に向かい、ラウンジに着いたところで丁寧に修復した。ただ、応急処置であり、いつ同様の結果になるかわからない。

 調べてみると入手は2007年の夏、すでに12年も使っているものなので、まあ、仕方がない。ただ、車輪以外はとくに問題がないので惜しいことは惜しく、だましだまし使い続けてきた。機内に持ち込むので、投げられたり落下したり、押しつぶされたりといった可能性も低く、外観もきれいなままだ。それに、12年といっても毎日使うわけではなく、稼働は年間50日といったところだろうか。合算すれば600日だが、キャスターの寿命としてはそのくらいかもしれない。

 今回、Xiaomiの日本進出の発表会で、スマホ以外に、炊飯器やスーツケースなどの発売が発表されたのは嬉しかった。アジア圏にでかけたときに同社のショップを見かけると必ず立ち寄り、何かお買い得なものがないかをいつもチェックしてきたが、とくに、ビジネスバッグやバックパックについては魅力ある製品をかなり多く提供していることを知っていたからだ。

差別化が難しいスーツケース

 Xiaomi スーツケース クラシック 20インチは、名前からも想像できるように、約20インチの内寸を持つオーソドックスなスーツケースタイプのキャスターバッグだ。容量は38Lとされている。実測すると対角線が約23インチあったので、念のために試してみたが24型ディスプレイは入らなかった……。もっともキャスター部分の内側への出っ張りもあるからとうてい無理だ。なお、エレクトロニクス的なテクノロジーやスマート的な要素は皆無である。

 移動でよく使うANAの国際線機内持ち込みサイズは、辺(縦・横・高さ)の和が115cm以内かつ3辺それぞれの長さ55×40×25cm以内(22×16×10インチ)とされている。また、国内線ではちょっとルールが異なり100席以上の場合は国際線と同様だが、100席未満の場合3辺の和が100cm以内かつ3辺それぞれの長さが(45×35×20cm以内)となっている。

 この製品の総外寸は車輪やハンドルなどの出っ張りを含んで55×22.5×37.5cmなので100席未満の飛行機に乗るときには断られる可能性があるが、よほどのことがない限り、そんな小さな飛行機には乗らないだろう。

 素材はポリカーボネートで3層複合耐圧構造により耐久性を確保しているという。だから万が一預け入れることになったとしても、精密機器さえ取り出せば心配はなさそうだ。重量は3.3kgで極軽とはいえないが、許せる範囲だろう。ほぼ同等の容量を持ち、仕様がほぼ同じなRIMOWAのESSENTIAL LITE Cabinは2.2kgなのでそちらの方が軽い。ただ、Xiaomiの製品を8個買えそうな価格だ。比べる方がおかしいと言われそうだが、どうしても比べてしまう。

両側シェルの密閉がポイント

 クラムシェル型というのかどうか、このタイプのスーツケースを選ぶときの個人的な基準は、両側のシェルをネットで密閉できるかどうかだ。これがあるとないでは使い勝手は段違いだ。これがないと、床に置いて開いた瞬間に、上側になるシェルから中の荷物が飛び出してしまうことがあるからだ。空港や駅の公共スペースでそんなことになったら大慌てだ。

 そのくらい重要視しているポイントなのだが、各社のスーツケースをウェブで探してみても、きちんとそのことが記載されているのをあまり見かけない。スーツケースなんて外観よりもそちらの方がずっと大事なのにと思っているのだが、あまり重要視されていないのだろうか。しかも、店頭でチェックしても、完全に密閉できるタイプのものはあまり見かけない。あっても片側、あるいは、スキマがあって荷物がこぼれ落ちる。

 リモワのRIMOWAのESSENTIAL LITE Cabinは両側のシェルをちゃんと密閉できる。同じように、今回のXiaomiのものも完全密閉ができる。しかも、ネットポケットまでついているのはうれしい。外観の質感も悪くない。十二分に満足できるものだ。11~12月は出張が多かったが、その旅程には間に合わなかったので、細かい使い勝手についてはまだわからないところも多いのだが、いつも通りに使う分には問題はなさそうだ。また、耐久性についても、それがわかるのは数年後だろう。

Xiaomiのブランド力

 Xiaomi・エコシステムという言葉があるそうだ。Xiaomiはスマートフォンで有名になった企業で設立後9年目になる。スマホでは世界4位のメーカーとして知られ、スマホの会社として一部のマニアックな層に知られているがそれだけではなく、2,000以上のIoT製品を提供しているし、今回のスーツケースのようにいわゆる雑貨に相当する製品も多い。

 ただし、そのすべてを同社が自力で商品企画、開発しているわけではなく、エコシステム企業として280社以上を擁し、各社から調達した製品をXiaomiのマーケティングで売る。イノベーション、デザイン、品質を適正な価格で届けるというのが同社の方針だそうだ。

 そういう意味では同社をメーカーとしてではなく、ある種の商社としてとらえたほうがいいかもしれない。このスーツケースも、そんなエコシステムの中から生まれた製品であり、客観的に見てもリーズナブルでコストパフォーマンスの高い製品に仕上がっている。1万円出せば有象無象の同等スーツケースは買えるかもしれないが、Xiaomiのブランド力がその製品への信頼感を高めている。ただ、日本ではまだまだでそれこそ有象無象の1つかもしれないが、AnkerやHuaweiがそうだったように、時間の問題だと思われる。

 リモワは極端だとしても、ちょっと知られたメーカー製品なら同等のものが数万円を覚悟しなければならないのだから、ブランドとしてのXiaomiを受け入れることができるのならお買い得だ。そして、その真価は、日本というちょっと特殊な国において、同社がどのようなブランディングをし、マーケティングを展開していくかで決まる。

 今のところ同社製品を入手するにはAmazonでの購入しかないが、検索しても、並行輸入の製品が山のようにリストアップされ、今回の日本進出による正規品なのかどうかを判別するのはたいへんだ。ここはもっとうまく対策しないと、せっかくの日本市場参入が台無しになってしまいそうだし、Xiaomiのブランディングにも影響する。この原稿の執筆時点では、Amazonにおけるこの製品のページを見つけるのが難しい状態で、見つけることができても、現時点で在庫切れになっている。きっと、何らかの対策中なのだろうと信じたい。