山田祥平のRe:config.sys

ゴールデンウィークでわかった海外データ通信はローミングより現地SIM

 以前言った舌の根も乾かないうちに、まるで前言を撤回するようなことをする(「ゴールデンウィーク直前対策、海外データ通信は現地SIMよりローミング」参照)。時間と手間がかからず、簡単に低コストな現地SIMが入手できるならそれにこしたことはないという話だ。

ベトナムで始まったLTEサービスを体験するために現地SIMをゲット

 昨年(2016年)に引き続き、ゴールデンウィークはベトナムにでかけた。この原稿は、その現地のコーヒーショップで書いている。この春から、ベトナムの最大手キャリアViettelがLTEのサービスを開始したというので、その様子も見たかったので、ちょうどよかった。

 昨年は、ハノイから入り、飛行機を乗り継いでダナンに向かい、中部の観光地巡りをして、再び、ハノイに戻るスケジュールだったが、今年(2017年)はダナン直行便で直接ダナンに入り、空港そばのビジネスホテルで1泊してから海辺のリゾートで連休前の疲れを癒やし、そのあと大都会のホーチミンで数日を過ごすというスケジュールだ。

 ちなみにベトナムはドコモの海外1dayパケが980円だが30MBまでという容量制限がある。話にならない。またauの海外データ定額はベトナムでは3Gでしかつながらない。だからこその現地SIMだ。

 昨年と同様、ダナンの空港を降りて建物の外に出ると、いくつかのSIM屋のブースが見つかった。昨年SIMを調達したショップも開いていた。まったく同じだ。たぶん対応してくれた店員の女性も同じだ。

 1つ違ったのは、大きく4Gの文字が掲げられていたことだ。

 昨年は購入にはパスポートも何も必要なかったが(「オレオレ詐欺を防ぐ(かもしれない)モバイルテクノロジー」参照)、今年は提示を求められた。iPhoneを渡すと、日本語設定のままであるにもかかわらず、すべての設定を済ませてくれた点では同じだ。

 昨年の場合、価格としては、SIM代が100ドン、そのままでは残高ゼロなので、チャージのために100ドンで計200ドン。後で確認してみると、SIMに100ドンをチャージし、定額プランをSMSで申し込んで有効にしただけのようだった。このキャリアでは、191にプランの名前をSMSで送るとそのプランが有効になる。データ容量は1GBだ。その設定を店員がすべてやってくれる。これが昨年の体験だった。じつに簡単で時間もかからなかった。

 ところが、今年(2017年)、4G LTEのタリフを確認すると、3Gよりも大幅に安い。しかも、データ専用プランでは10GBが200,000VND(ベトナムドン)と破格だ。日本円にして約1,000円だ。迷うことなくそのデータ専用プランを申し込んだ。設定はすべておまかせだ。

 4G LTEのプランは始まってからまだ日がたっていないようだが、実質的に3Gの10分の1に近い価格で提供されているのは、やはり普及を狙ってのことなのだろう。ほぼ1週間程度の滞在なので、10GBもあれば、どんなに贅沢にパケットを使っても大丈夫だろうと思った。実際、ホテルのWi-Fiが快適に使えたので、ほとんど自分のデータ容量を消費することなく、ホーチミンに移動してきた。

データ通信SIMでも不自由はない

 ViettelのSIMは、特番191に対して「KTTI」や「KTMI」とSMSを送ると残高や残りデータ容量等を確認することができる。だが、今回はデータSIMなので、SMSが使えない。その代替として「*101#」とダイヤルすると、USSDを使って残高が確認できる……はずなのだが、それができない。

 いろいろ試行錯誤しつつ、インターネットで調べてみると、紐付けられた第2回線の容量を調べるために「*102#」としなければならないことがわかった。もっとも10GBあれば、残り容量を気にする必要はほとんどない。

 海外で通話ができないことは、それほど不便を感じない。通話が必要なときには、Office 365サービスに付随するSkypeの1時間まで無料通話ができるという機能を利用すれば、それでことが足りる。なんらかの事情で、こちらの携帯電話番号を伝えなければならない場合も、日本の携帯電話番号を伝えればいいし、そこに電話がかかってくることはついぞなかった。もっとも、かかってきた電話は別のサービスに転送して着信するので多額のローミング料金がかかるわけではない。

 SMSについてはちょっと困る。今回は利用しなかったがタクシーアプリなどでは登録時にSMSのために番号入力が必要な場合が少なくない。

 また、プリペイドの残高チェックやプランの申し込みなどは、SMSのコマンドを使うので、それが不便といえば不便だ。

3Gサービスと4Gサービスを1枚のSIMに共存させられるはず

 ダナンでの休暇を過ごしたあと、大都会のホーチミンに移動した。それまでの間に、いろいろ調べて、どうやらデータ専用プランに対して、通話とSMSのサービスを追加できるらしいことがわかっていた。

 そこで、ホーチミン到着後、Viettelのキャリアショップを訪れ、その設定をお願いしてみた。

 ところが、まったく要領を得ない。40,000ドン(約200円)を追加チャージするというので現金を渡してやってもらうのだが、それがうまくいかずに向こうも首をかしげている。そして、挙げ句の果てに、新しいSIMを購入しろというのだ。

 ホーチミンにいるのは3日間だけなので、新しいSIMを購入する必要性も感じられず、そのまま40,000ドンを返してもらって帰ってきた。時間を1時間無駄にした結果となったが、これも経験だ。

 4Gのデータ専用SIMに対して通話とSMSを追加するには、3Gのサービスを同じSIMに追加しなければならないはず。つまり、3Gと4Gサービスを1枚のSIMに共存させる必要がある。その方法がキャリアショップであるにもかかわらずわからないのだ。

 次回は、通話SIMを購入し、自分で4Gのデータ通信をSMSで申し込んだほうがいいなと、ちょっと反省した。だが、それも本当にうまくいくかどうかはわからない。サービス開始から時間もたっていない過渡期であるからこそのアクシデントであると思いたい。

期待したいローミングのあれこれ

 24時間980円で使えるドコモの海外1dayパケが米国でも使い放題になったり、auの世界データ定額の対象国が拡がったりと、ローミングについてはいろいろリーズナブルな施策をキャリア各社が打ち出している。だから、多くの国では、手間をかけて現地SIMを手に入れなくても、ほとんどの場合はローミングで十分だと思う。

 だが、いくつかの国においてはSIMロックフリーのスマートフォンに現地SIMという組み合わせがサイフに優しい。今回のベトナムであれば、まさに24時間分の価格で1週間をまかなえる。

 とはいっても、PCを接続して、Insider Previewの最新版に更新したりしようものなら、10GBといえども容量が心配になる。持ち込んでいるPCは3台あるので、とてもじゃないが足りないだろう。その点、容量のことを考えなくてもいいドコモのサービスはありがたい。できれば、全世界でこのサービスを展開してほしいものだが、ヨーロッパを始め、まだ全世界でというわけにはいかない。しかも期間限定で、先のことがわからない。

 折しもEU圏では、ローミングに際して特別な料金をとらない施策が全キャリアでスタートしようとしている。消費者にとってはじつにリーズナブルな施策だ。

 日本人の海外渡航者が、海外でトラブルに遭遇しにくいようにするためにも、常にスマートフォンが使えることは重要な要素だ。国としても、渡航者がコストを理由に海外でスマートフォンを使わない選択をしないように仕向けるべきではないだろうか。国内でのMVNO事業支援も重要だが、このあたりもメスを入れていただきたいと思う。さて、次は夏休み。