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想定以上に壊れた教育現場だからこそ。地道な改善を重ねたNEC渾身の「Chromebook Y4」

NEC Chromebook Y4

 NECは、GIGAスクール構想第2期に向けた教育向けの2in1 Chromebook「NEC Chromebook Y4」を発表した。価格はオープンプライス。2025年1月頃より受注開始する見込みで、出荷は同年2月下旬を予定している。2028年度までに200万台の提供を目指す。

 従来モデルと同様に360度回転するコンバーチブルデザインを踏襲。一方でプロセッサをIntel N100にしたほか、Wi-Fi 6Eへの対応を果たすなどスペックの強化を図った。このほか、メモリは4GBのLPDDR5、ストレージは32GBeMMC、ディスプレイは1,366×768ドット表示/USIペン対応の11.6型となっている。

 インターフェイスはUSB 3.2 Gen 1 Type-C×2(USB PD給電およびDisplayPort Alt Mode対応)、約100万画素前面/約500万画素背面(キーボード面、タブレット利用時に背面)カメラ、音声入出力などを備える。LTEモデルも同じ筐体となる。

 なお、バッテリ駆動時間および本体重量は測定中だが、ほぼ従来モデルと同等になる見込みだ。

本体天板
キーボード部
本体右側面。ボリュームボタンのみ
本体左側面にUSB 3.2 Gen 1 Type-C×2、音声入出力を搭載

過去の160万台の実績と教訓を生かした設計

 スペック面だけ見れば、NEC Chromebook Y4はGIGAスクール構想第1期で約160万台の販売実績がある「Chromebook Y2/Y3」の後継として妥当な進化を遂げた“だけ”のように見える。しかし、過去の教訓や修理事例などをベースに設計を一から徹底的に見直しされている。設計開発期間も従来より2カ月ほど延びたという。

 3日に都内で開かれた記者会見で、NEC スマートデバイス統括部 上席プロフェッショナル 加藤賢一郎氏は、「Chromebook Y2の時は、学習者用端末の1人1台の導入が最優先され、ネットワークや充電保管庫など、環境構築をする必要があったため、まず国が定めた基準をクリアするスペックを載せることを優先させた。

GIGAスクール1期での160万台の実績
加藤賢一郎氏

 しかしY4は、過去にあったトラブル/事例を教訓にもとに製品の完成度を高めなければならないほか、Y2/Y3からのスムーズな入れ替え、学習状況の見える化や実際の利活用、県の共同調達など一括大量調達への対応、既存端末のリユース/処分問題に対応する必要がある」と説明。つまり、Y4ではこれらの問題や課題にしっかり向き合って開発/準備しなければならなかった。

Chromebook Y4の壊れにくさへのこだわり
Y4の仕様上の主な特徴
Y4の基本スペック
スペック面ではIntel N100の搭載やWi-Fi 6Eへの対応により快適性が向上したという。これまで処理や通信の遅さが子どもたちの集中力を切らす原因となっていた
3種類のゴム脚を配置
滑りにくい筐体加工

 まずは電気設計における安全面への配慮だ。学校では発煙事故が発生しただけで消防が出動するケースがあるからだ。実際に従来モデルは、鉛筆の芯がコネクタなどに侵入してショートを引き起こす可能性があった。

 そこでY4ではサブボード(音量調節ボタンなど)への電源供給が不要な設計にしたり、すべての電源供給ケーブルに保護回路を追加したり、繰り返すヒンジの開閉によるケーブル噛みのリスクを低減するような設計を行なった。また、右利きが多い学生での利用を想定し、開口部を最小限に留めた。万が一机の上に鉛筆を置いたとしても、芯がポート部に侵入しにくい高さのポート配置とすることとした。

 一方で堅牢性や耐久性の強化については、外周を一体成型で柔軟性のあるTPUで囲むことで、落下耐性を高めた。ゴム脚も前部に2つ、中ほどに2つ、後部にバー型のものを1つ設けることで、学習机から多少はみ出しても滑って落下したり、学習机が傾いて滑って落下したりすることを防いだ。

 キーボードへの異物侵入を防ぐために、キーキャップ周囲の隙間を従来の0.6mmから0.5mmに短縮。端末底面のネジ脱落防止のために脱落防止リングも新たに設けた。また、バッテリも外部から交換可能なバッテリパックを採用し、内部基板と直接接触しないセパレート構造を採用することで、異物挟み込みによる破損を回避しつつ、現場や販売店におけるバッテリ交換作業も可能になった。

 従来のMIL規格準拠の堅牢性テストに加え、学校での使用を想定した品質試験も行なわれた。具体的には繰り返しの落下試験、角落下/繰り返しの角落下試験、そして加圧された状態での振動試験などである。同社によれば、「自転車のカゴに入れて持ち運んだり、ほかの教科書とともにランドセルに放り込んで走ったりなど、加圧と振動の両方で生じる不具合もあると」とのことで、こうした独自テストを追加したとのことだ。

電気設計周りの特徴
耐久試験の増加
机においた鉛筆の芯がささらない高さのUSB Type-Cポート
ゴム脚の追加により、机を斜めにした際に落下するリスクを低減した

 ちなみに今回、筐体色がグレーとなっているが、これは傷が付いても傷が目立ちにくいというメリットがあるほか、学校側からは新旧モデルを容易に見分けられるようにしてほしいという要望もあったため、そういったニーズに応えてとのことだ。また、バッテリの取り外しに際して使用するネジは十字ではなくトルクスとしたことで、子どもたちのいたずら防止対策にもなっているという。一方、いたずら防止という意味での「ネジレス化」については、衝撃が加わった場合の全体の破損するリスクを考慮して、あえて採用していないとのことだった。

本体底面。ゴム脚が手前、中部、奥に用意されている
着脱可能になったバッテリパック
バッテリパックは子どもが簡単に着脱できないよう、トルクスになっている
ネジにも脱落防止のリングを設けた

 子どもたちの学びを止めずに既存端末とスムーズに入れ替えられるようにする、という側面では、NEC倉庫内での起動確認やMDMへの登録代行、ラベル/フィルム貼りといった新たなキッティングメニューの追加、納品時の柔軟な対応、既設端末の無償回収もしくは買い取り、データ消去や証明書発行への対応を行なう。

 また、円滑な運用やさらなる端末の利活用においては、補助金対象の予備機(最大15%)の保管/修理/MDM再登録までの一元管理といった運用サービスの無償付与(諸条件あり)、最大6年まで対応可能な延長保証、過去に実績がある株式会社エーピーエスとの連携による端末/アプリについての問い合わせ対応/定期更新/活用の相談サービスの提供を行なうとしている。

追加のサービス

学習端末だからこそ、ビジネス機より高い堅牢性が求められる

 今回の発表会で示されたNECパーソナルコンピュータ群馬工場においての2021年4月~2023年8月期の修理対応件数は12,667件となっているが、修理部位はトップカバーが43%、液晶パネルが24%となっており、つまるところ故障の大半は「落下」である。教室において子どもたちの学習机がそもそも小さいため、不慮の落下も多いだろう。

過去の修理実績からの堅牢性強化点

 また、コネクタや開口部に異物(鉛筆や消しゴム)を入れるケースも多く、こうしたところも故障の原因となっている。

 こういった課題に対し、ゴム脚を増やすことで滑ることを防いだり、コネクタ数や開口部を減らしたりするといった地道な工夫により対処している点が、Y4の特徴だと言えるだろう。ちなみに開口部を減らす意味では、本機はファンレスによる冷却となっているが、プロセッサの消費電力は6Wをターゲットにしているとのことだった。