鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第178回:8月6日~8月17日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


8月6日

■■ アダプテック、ミッドレンジサーバー向けSCSI RAIDカード2機種
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010806/adaptec.htm

●VHDCI(Very High Density Cable Interconnect)

 ブイヘイチディーシーアイ

 SPI-2(SCSI Parallel Interface-2)から採用されたSCSIコネクタの1つで、0.8mmピッチ68ピンの外部接続用シールドコネクタ。

 SPIは、ANSI(American National Standards Institute~米国規格協会)で標準化が行なわれているSCSI(Small Computer System Interface)規格の1つで、一般的な8bitや16bitのパラレルインターフェイスを規定したものである。SPI-2はその第2世代の規格で、'99年にANSIの正式な規格(X3.302)として承認。第3世代のSPI-3(NCITS.336)も、既に2000年に正式な規格になっており、現在はSPI-4、SPI-5の標準化が進められている。

 SCSIの正式なコネクタには、シールドの有無とピン数、ピッチの異なる表のようなコネクタが規定されている。「シールド付き」は外部接続用のシールドケーブルに使うタイプ、「シールド無し」は内部接続用のフラットケーブル用である。

【SCSIコネクタ】
■シールド無し
 alternative 1-A cable : 50pin, 1.27mm
 alternative 2-A cable : 50pin, 2.54mm
 alternative 3-P cable : 68pin, 1.27mm
 alternative 4     : 80pin, 1.27mm(SCA-2)
■シールド付き
 alternative 1-A cable : 50pin, 1.27mm
 alternative 2-A cable : 50pin, 2.16mm
 alternative 3-P cable : 68pin, 1.27mm
 alternative 4-P cable : 68pin, 0.8mm(VHDCI)

 ピン数は、50、68、80の3タイプで、8bitバス(ナローSCSI)に50ピン、16bitバスに68ピン(ワイドSCSI)を使用。前者をAケーブル、後者をPケーブルと呼んでいる。80ピンタイプは、一般にSCA-2(Single Connector Attachment-2)と呼ばれている内部接続用コネクタで、SCSIバスと電源を1つのコネクタにまとめ、ホットプラグに対応できるようになっている。

 ピッチは、端子間の間隔のことで、2.54mm(0.1インチ)を一般にフルピッチ、その半分の1.27mm(0.05インチ)をハーフピッチと呼んでいる。シールド付きの2-Aケーブルに関しては、2.16mm(0.085インチ)ピッチのコネクタが使われているが、これは、プリンタに使われているセントロニクス、あるいはアンフェノールなどと呼ばれるているコネクタが使われている。ほかのコネクタがピン接触タイプであるのに対し、これだけ、面接触のリボンコネクタなのである。正確にはフルピッチではないのだが、このコネクタもフルピッチと呼ばれることが多い。

 VHDCIは、ハーフピッチよりもさらに高密度な0.8mmの68ピンシールド付きコネクタで、最近のワイドSCSI機器やホストアダプタには、これを採用するものも多い(コンシューマ市場ではSCSI自体の絶対数が少ないが)。

□SCSI Trade Association
http://www.scsita.org/
□T10 Technical Committee(SCSIなどの規格策定を行なっているANSIの委員会)
http://www.t10.org/
【参考】
□Ultra320 SCSI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010215/key153.htm#Ultra320
□Ultra160 SCSI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981105/key53.htm#Ultra160
□Ultra2 SCSI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980407/key25.htm#ultra2scsi


■■ 日立、SDRAMの動作電力を最大40%低減する回路技術を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010806/hitachi.htm

●センスアンプ(sense amplifier)

 微小な信号を検出可能なレベルに増幅する回路。あるいは、微小な信号を検知し、0または1の論理状態を出力する回路。PCでは、メモリセルの信号を検出増幅するチップ内の回路を指すことが多い。

 DRAM(Dynamic Random Access Memory)は、縦横に並んだ信号線の交点に、微細なコンデンサを配置した構造になっている。メモリセルは、この個々のコンデンサであり、僅かな電荷の蓄積(充電)によって、ビットの状態を記憶している。

 縦横に並んだメモリセルの列を選択する信号線をワード線という。このワード線に電圧をかけると、その列のメモリセルの内容が、もう一方のビット線に出力される仕組みになっている。メモリセルの出力は非常に微小であるため、チップはこれをインターフェイスレベルの規定電圧として出力する必要がある。これを行なうために、ビット線の先に用意されている回路がセンスアンプである。

【参考】
□SDRAM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980701/key36.htm#sdram
□Rambus DRAM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980610/key33.htm#Direct_RDRAM


8月10日

■■ IBM PC、8月12日で発売20周年
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010810/ibmpc.htm

IBM PC(IBM Personal Computer)
 アイビーエムピーシー

 IBM(International Business Machines Corporation)が'81年にリリースした、個人向けのデスクトップコンピュータ。

 '80年、フロリダ州ボカ・レイトン(Boca Raton)のESD(Entry Systems Division)研究室長William C. Loweのもとに集められた12人の技術者が、僅か1年で商品化したもので、IntelのCPUとMicrosoftのOSで構成される、現在のWindowsマシンの原形となっている。

 それまでのIBMは、一貫した自社生産がモットーだったが、1年のスケジュールは、とうていそれを許すものでは無かった。「Project Chess」と名付けられた、Loweの開発プロジェクトは、一切を外部から調達することにし、OSをMicrosoftに依頼。CPUは、周辺チップが充実している16bit CPUということで、Intelの8088を採用した。

 実はこの8088。内部的には16bitのCPUではあるが、外部バスは従来の8008や8080と同じ8bitに縮小した廉価版である。フル16bitの8086に比べると非力なチップではあったが、この辺は、あまたある8bit用に作られた周辺チップがそのまま流用できるというメリットを考慮しての選択だったのかもしれない。

 OSを受注されたMicrosoftの方も、急遽SCP(Seattle Computer Products)から86-DOS(QDOS[Quick and Dirty Operation System]とも)を買い取り、PC-DOSに仕立て上げるという突貫工事ぶり。が、そんなこんなの使い回し作戦が実を結び、1年後の'81年8月11日、コード名「Acorn」ことIBM PCがデビューを飾る。4.77MHzの8088と16KBのRAM(最大256KB)、320KBのFDDを搭載した、20×16×6インチ(幅×奥行き×高さ)、11.3kgの無骨なIBM PCは、'83年にはPC/XT、'84年にはPC/ATというニューモデルをファミリーに加えつつ、6年間後の'87年4月に販売を完了。この年を境に、IBMはPS/2路線にシフトするのだが、市場は結局、PC/AT互換機が支持を集める結果となる。

【参考】
□PC-DOS
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980617/key34.htm#PCDOS
□ALTAIR 8800
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010118/key149.htm#ALTAIR


■■ クリエイティブ、Annex C対応のADSLモデム「Broadband Blaster」
   --ルータタイプ、USBタイプの2モデルを用意
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010810/creative.htm

●Annex C(G.992.1 Annex C、G.992.2 Annex C)
 アネックスシー

 ITU-Tで標準化されたADSLモデム規格「G.992.1(G.dmt)」「G.992.2(G.lite)」の付随書の1つ。我が国のISDN規格(G.961 Appendix III)にADSLモデムを適合させるための仕様が書かれている。  ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)は、電話回線に使用しているメタルケーブルをそのまま使い、高速なデータ通信を行なう規格で、ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector~国際電気通信連合電気通信標準化部門)で標準化された「G.992.1(G.dmt)」と、その簡易版にあたる「G.992.2(G.lite)」という2つの規格に準拠した製品が一般に使われている。これらの規格は、ANSI(American National Standards Institute~米国規格協会)で標準化された「T1.413」をベースに、規格書本編でモデムの基本仕様を規定。各国の通信事情に合わせた要求などの付帯事項が、付属書(Annex)という形でまとめられている。

 ADSLモデムは、約4kHzのアナログ伝送しか行なっていなかったメタルケーブルの高域(G.dmtで1,104kHz、G.liteで548kHzまで)をフルに使って、高速なデジタル伝送を行なう。ADSLの信号は、26kHz以上の高域だけを使用するようになっており、同じケーブルでアナログの電話も同時にサービスすることができる。  ISDN先進国の日本では、米国や欧州の方式に比べると、少し効率の悪い伝送方法を使っている。具体的には、米国は2B1Q(※1)、欧州は4B3T(※2)という符号化方式を使い、受信信号から自分が送信した成分を取り除くエコーキャンセラという方式で双方向通信を実現している。一方の日本のISDNは、AMI(※3)という符号化方式で、送受信を交互に切り換えるTCM(Time Compression Multiplexing)という方式で双方向通信を行なう。米国方式では、1クロックで2bitの双方向通信が行なえるが、日本方式では1bitの片方向しか送れないため、実質4倍のクロックで伝送しなければならないことになる。その結果、米国の80kHz(欧州方式だと90kHz)に対し320kHzという広い帯域(※4)を使用することになり、それだけADSL間との干渉が多くなることが懸念されていた。これに対処するための特別仕様を盛り込み、伝送ロスを最小限に押さえるのがAnnex Cである。

 信号の干渉……すなわちクロストーク(漏話)は、信号を発生する装置がケーブルの遠端(加入者側から見た場合には局側)にある時よりも、近端にある時の方が多い。したがって、交互に送受信を行なうTCMでは、送受信が切り替わるたびに漏話量が変わり、S/N比が規則正しく変動することになる。この変動に合わせて伝送パラメータを変えれば、漏話の影響を最小限に押さえることができるというのが、Annex Cの趣旨である。

 変調速度(1秒当たりの変調回数)が同じなら、1回の変調に乗せるビット数を増やせばそれだけ伝送速度が上がる。が、ビット数を増やすと誤り率も上がるため、それだけ高いS/N比が要求される。ADSLモデムは、使用帯域全体を4kHzの小さな帯域に分け、それぞれの帯域に搬送波を立てて個別に変調を行なっており、接続時には、回線の品質をチェックし、各帯域に割り当てるビット数を調整することによって、回線状態に最適化している。S/N比が良ければ高速に、悪くてもそれなりのスピードで通信できるようにしているわけだ。漏話の影響がある場合、ISDNの送受信方向を考慮しなければ、全体的な速度低下を招くことになる。そこで、S/N比の比較的良好な遠端漏話(FEXT[Far End Cross Talk])用のビット割り当てと、漏話の影響が多い近端漏話(NEXT[Near End Cross Talk])用のビット割り当てを用意し、ISDNの送受信のタイミングに合わせて切り換える方式を規定。これを、DBM(Dual BitMap)方式と呼んでいる。Annex Cにはもう1つ、FEXT用のビットマップだけを使う方式も規定されており、こちらはFBM(FEXT BitMap)方式と呼ばれる。

※1 2B1Q(2 Binary 1 Quanternary)は、4レベルの信号を使って2値を伝送する符号化方式。1クロックで4通りの状態を表せるので、2bitの伝送が行なえる。

※2 4B3T(4 Binary 3 Ternary)は、3レベルの信号3クロック分(27パターン)で、4bit(16パターン)を符号化して伝送する方式。

※3 AMI(Alternate Mark Inversion)は、3レベルの信号を使って2値を伝送する符号化方式。3レベルの信号は、直流成分が現れない様に+と-を交番させるためのものであり、1クロックで1bitの伝送になる。

※4 いずれも基本成分の帯域で、実際にはこれに整数倍の高調波が現れる。

【参考】
□ADSLモデム
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010719/key174.htm#ADSL
□xDSL
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980519/key30.htm#xDSL
□ADSL
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980202/key16.htm#ADSL
□G.lite
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991202/key100.htm#G.lite

[Text by 鈴木直美]


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