鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第174回:7月9日~7月13日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


7月9日

■■ NEC、ADSLモデム内蔵の無線LAN対応ブロードバンドルータ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010709/nec1.htm

●ADSLモデム(ADSL modem)
 エーディーエスエルもでむ

 端末を通信回線に接続し、ADSLの伝送方式で通信を行なう装置。

 ある信号を別の信号に乗せることを変調(modulation)、その信号から元の信号を取り出すことを復調(demoduration)という。この変復調を行なう装置という意味から「MOdulator/DEModulator」を合成して名付けられたのが、モデムという名称である。

 アナログ回線用に敷設されているメタルケーブルを使い、高速なデジタル通信を行なうための伝送方式を総称して、xDSL(x Digital Subscriber Line)と呼んでいる。ADSL(Asymmetric DSL)は、その伝送方式の1つで、「asymmetric」と呼ばれるように、上り方向と下り方向の伝送速度が非対称になっており、インターネットのような(※1)受信が主体の通信に適している。

 現在ADSLモデムに使われている規格は、'99年にITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector~国際電気通信連合電気通信標準化部門)の標準勧告としてリリースされたもので、現在「G.992.1」と「G.992.2」という、通信方式の異なる2つの規格が標準化されている。

※1 ADSLは、もともとはVOD(Video On Demand)向けの通信技術として開発していたものなのだが、当初の思惑は実を結ぶことなく、インターネット向けの通信技術としてようやく開花したところである。

□ITU-T
http://www.itu.int/ITU-T/ (仕様書は有料でダウンロード可)
・G.992.1 - Asymmetric Digital Subscriber Line (ADSL) transceivers
・G.992.2 - Splitterless asymmetric digital subscriber line(ADSL) transceivers
【参考】
□xDSL
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980519/key30.htm#xDSL
□ADSL
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980202/key16.htm#ADSL
□G.lite
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991202/key100.htm#G.lite


●PPPoA(Point-to-Point Protocol over ATM)
 ピーピーピーオーエー

 PPPに準じた通信を、ATM(Asynchronous Transfer Mode)上で行なうためのプロトコル。

 PPP(Point-to-Point Protocol)は、電話回線などを使ってネットワークを接続するためのプロトコルで、インターネットのダイヤルアップ接続やLANのリモートアクセスなどに使われている。このプロトコルは、PPPサーバーとPPPクライアント間で、TCP/IPなどのネットワーク上でコミュニケーションを行なうためのプロトコルを確立し、ネットワークパケットを配送できるようにするための基礎となる仕組みを提供している。

 接続の過程では、ユーザー認証や使用するプロトコルに伴なうコンフィギュレーションなどの機能も用意されており、ダイアルアップ接続では、特定のISPにダイヤルし、このPPPによってユーザー認証や通信に必要な諸設定を行なった後、ISPのサービスを受けて、インターネットに透過的にアクセスできるようになっている。

 PPPoAは、このPPP接続をATMのフレーム上で行なうためのもので、ATMの中継網を使ってユーザーが上位のISPに接続する、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)やFTTH(Fiber To The Home)サービスで使われている。同様のことをEthernetフレーム上で行なうのが、PPPoE(Point to Point Protocol over Ethernet)で、どちらを採用しているのか、複数のISPを選択できるのか、同時にいくつのISPに接続できるのかなどは、業者やサービスによって異なる。

□RFC2364- PPP Over AAL5
ftp://ftp.nic.ad.jp/rfc/rfc2364.txt
【参考】
□PPP
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990318/key69.htm#PPP
□PPPoE
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010201/key151.htm#PPPoE
□TCP/IP
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980729/key40.htm#TCP/IP
□ADSL
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980202/key16.htm#ADSL
□xDSL
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980519/key30.htm#xDSL
□G.lite
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991202/key100.htm#G.lite


■■ 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
   IntelがNEC発表に合わせてデスクトップ版Tualatinを事実上発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010709/kaigai01.htm

●AGTL(Assisted Gunning Transceiver Logic)
 エージーティーエル
●AGTL+(Assisted Gunning Transceiver Logic Plus)
 エージーティーエルプラス

 半導体デバイスの入出力インターフェイスの1つ。AGTL+は、従来のPentium IIIやCeleronのシステムバスに、AGTLは、「Tualatin」というコード名で知られる新しいPentium IIIに採用されている。

 デジタル回路のインターフェイスは、信号の電圧の違いを使って「0」や「1」の状態を伝送している。Pentiumまでのシステムバスは、トランジスタのスイッチを使って、信号線にかける電圧(後期のCPUは3.3V)を直接ON/OFFするスタイルだった。これに対し、'95年にリリースしたPentium Proやその後のPentium IIのシステムバスは、信号線にかけた電圧を上下に振幅させて伝送する新しいインターフェイスが採用された。

 このインターフェイスの元となったのは、Xeroxが低電圧駆動の高速なロジックインターフェイスとして'91年に考案したもので、発明者のBill Gunningの名前にちなんで、「GTL」(Gunning Transceiver Logic:ガンニングトランシーバーロジック)と呼ばれていたものである。GTLは、基準電圧(VREF:Receiver Reference Voltage)である0.8Vに、±0.05Vという小さな振幅を付けて伝送。受信側では、基準電圧を参照して、信号がハイレベルにあるのかローレベルにあるのかを判定する仕組みである。IntelはこのGTLをベースに、66MHzで8デバイスをサポートできるシステムバスを設計。電圧仕様は、ノイズマージンをかせぐために「0.8V±0.05V」から「1V±0.2V」に変更され、「GTL+」と名付けられた。

 なお、実際の回路では、信号線にハイレベルにする電圧(VTT:Termination Voltage)をかけてドライブし、受信側の差動入力の一方にドライブされた信号を、もう一方にVTTの2/3の電圧を基準電圧として入力している。したがってGLT+のVTTは、1.5Vとなる。

 GTL+の基本仕様は、次のPentium IIIにもそのまま用いられているが、Pentium IIIは、ドライバに補助回路を加えた改良版になっており、Assist付きのGTL+ということで「AGTL+」という名前になった。

 高い電圧はノイズには有利だが、動作クロックが高くなるに連れて、信号の立ち上がりや立下りの遅延、オーバーシュートやアンダーシュート、リングバック(※1)などの波形の乱れが増え、高クロック化の大きな障害となる。Tualatinでは、VTTを1.25Vに下げ、「0.83V±0.2V」で駆動する新しいバス仕様を採用。これを、従来の「AGTL+」から「+」を取り、「AGTL」と呼んでいる。また、新しいバスではこのほかに、クロックインターフェイスに伝送特性の良いディファレンシャル(差動)インターフェイスも採用。製品では、従来のシングルエンドとディファレンシャルを自動検出する両対応の仕様になっている。

※1 立ち上げ時に予定の電圧を越えて上がりすぎてしまうのがオーバーシュート。立ち下げ時に下がりすぎてしまうのがアンダーシュート。その後、規定電圧に戻ろうとするのがリングバック。

□GTL/GTL+
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010201/key151.htm#GTL
□ディファレンシャルクロッキング
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010222/key154.htm#differ

[Text by 鈴木直美]


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