鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第16回:1月26日~1月30日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


1月26日

■■エプソンダイレクト、省スペースデスクトップと液晶ディスプレイなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980126/endeavor.htm

ライザーカード (Riser Card)
 ISAやPCIカードを装着するための拡張スロットは、マザーボード上にコネクタが取り付けられているものと、拡張スロット用のコネクタを備えた特殊な基板をマザーボードに取り付け、拡張カードはこの別基板に装着するようになっているタイプとがある。ケースに十分なスペースのある大型のマシンでは、一般に前者が用いられるが、省スペース向けの小型のマシンには後者を採用するものが多く、この後者のタイプで使われている、バスを引き出す特殊な基板のことを、ライザーカードと呼んでいる(階段の段と段の間にある蹴込みのことをライザーという)。

 拡張スロットをメインボードから切り離し、立体構造にすることによって(拡張カードはマザーボードと水平に挿すことになる)、拡張スロット分のスペースが有効に使えるようになるわけだが、ライザーカード自体に標準的な規格がなかったため、拡張方法はメーカごとにバラバラ。主にOEM向けに出荷されていた「LPX」というタイプはあったが、基本的には、汎用的なマザーボードというのは存在しなかった。'96年にIntelは、このライザーカードを使ったマザーボードの規格「NLX」を策定。ATXと同様のパブリックな規格として公開し(使用にあたっての許諾も不要)、これを採用するベンダーも増えつつある。

□NLX Motherboard Specification
http://www.teleport.com/~nlx/


1月27日

■■Compaq、Intel、MicrosoftがADSL技術の普及・促進を目的とした業界団体設立
http://sphere.watch.impress.co.jp/internet/www/article/980127/uawg.htm

ADSL (Asymmetric Digital Subscriber Line)
エーディーエスエル
 非対称デジタル加入者通信線。通常の電話回線に使われている2線式のケーブルを使い、光ファイバー並みの高速通信を行う通信技術。現在、上り方向に最大800kbps、下り方向に最大9Mbpsの非対称通信を実現している。メタリックケーブルを使った高速通信技術を総称して「xDSL」と呼んでいるが、ADSLはその中のひとつで、'89年にBellcore社が開発。ANSIの標準規格にもなっている。

 既存の電話回線がそのまま使える高速通信としては、国内ではISDNが広く普及している。ISDNは、双方向128kbpsのデータ通信を保証するサービスであり、専用線に関してもメタルケーブルで提供するのはここまで。さらなる高速通信には、光ファイバーというのがこれまでの定石となっていた。しかし、これは、既存のケーブルではこれ以上の高速通信が絶対に不可能というのではない。信号は、伝送距離や中継箇所が増えれば増えるほど劣化してしまうが、限られた条件下であれば、既存のケーブルであっても通信速度の向上は望めるし、新しい技術の導入によっても高速化の道は開かれる(極端な話、数百メートルであれば、50Mbpsの伝送を実現する技術も開発されている)。そこで、これから設備を整える光ファイバーではなく、既に引かれているケーブルを使って今すぐ何とかしようという動きが広まり、新しい技術としてxDSLが注目を集めるようになった。

 ADSLでは、ユーザー側と局の交換機の手前にADSLモデムを設置し、ケーブルを純粋にケーブルとして使用する。非対称という名前でも分かる通り、下り方向の転送速度に主眼を置いた規格で、局までの距離が4~5kmなら、T1回線並みの1.5Mbps(上りは数十~数百kbpsだが)が実現できるとされている(ADSLに限らず、高速になるのはあくまでこの2点間であって、その先は別のネットワークにつながることに注意)。双方を結ぶモデムには、ANSIの標準でもある帯域分割による多重化を行うDMT(Discrete Multi-Tone)という変調方式を使うタイプと、アナログモデムに似た変調方式であるCAP(Carrierless Amplitude/Phase modulation)方式を使うものがあり、相互接続はできない。そればかりか、同じ方式でもメーカー間に互換性はない。またこれまでは、ひとつの回線で音声通信とデータ通信を個別に行なうために、スプリッターという帯域分割装置を用いていたが、最近はこのスプリッターを使わない安価なモデムも開発されている。

□ADSL Forum
http://www.adsl.com/
□Universal ADSL Working Group
http://www.uawg.org/


1月29日

■■PC Watchラジオ第67回放送「AMUAMUのアキバの楽屋から Radio version」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/radio/index.htm

Socket 7
ソケットセブン
 75MHz以上のPentium Processor(MMX版を含む)で使われている、321ピンのZIF(Zero Insertion Force)タイプのCPUソケット。AMDのK6やCyrixの6x86等の互換プロセッサも、これを採用している。

 386互換プロセッサが台頭しはじめた90年代初頭。Intel社は486ファミリーへの移行に拍車をかけるべく、486に対するCPUのアップグレードプラン(OverDriveProcessor)を打ち出し、ハードベンダーに対しZIFソケットの装備を要請した。CPUを押し込むそれまでのLIF(Low Insertion Force)ソケットと違い、ZIFソケットはレバーの操作で簡単にCPUが脱着できるようになっており、「OverDrive Redy」と書かれた青いソケットは、一般には「ODPソケット」と呼ばれていた。その後、新しいCPUのリリースに伴って、ピン数の異なるODPソケットが登場。以後、歴代のソケットは「Socket x」という名前で呼ばれるようになり、ユーザーが容易に識別できるよう、ソケットにも名前がプリントされるようになる。

 以下は、歴代のソケットと基本的なアップグレードパスである。Socket 7は、133MHzのPentium時代に登場したもので、物理的にはホールが1個多いSocket 5だが、電気的には、その後に登場したMMX Pentiumに見られる、供給電圧の2系統化(CPUコアにI/Oよりも低い電圧を供給)への対応を意味する(実際の製品には対応していないものもある)。

Socket #ピン実装されているCPUアップグレードパス
Socket 1169486 SX/DXクロックアップ(75/100MHx)
Socket 2238486 SX/DXクロックアップ(75/100MHx)
DX2Pentium技術(63/83MHz)
Socket 3237486 SX/DXクロックアップ(75/100MHx)
DX2Pentium技術(63/83MHz)
DX4なし
Socket 6235DX4将来予定
Socket 4273Pentium 66/60MHzクロックアップ(133MHz)
Socket 5320Pentium 75-133MHzクロックアップ、MMX技術(125-180MHz)
Socket 7321Pentium 75-233MHzクロックアップ、MMX技術(125-200MHz)
Socket 8387Pentium ProPentium II技術


 
Slot 1
スロットワン
 Pentium IIで使われている、CPUを装着するためのコネクタ。
 Pentium Proの改良版として登場したPentium IIでは、それまでのPGA(本連載第13回「SPGA/BGA」参照)パッケージを一新。カートリッジスタイルの、S.E.C.(Single Edge Contact)パッケージを採用した。Pentium Pro/IIでは、システムバスとキャッシュバスに独立したバスを用意したDIB(Dual Independent Bus)アーキテクチャが使われており、二次キャッシュをパッケージ内に実装している。Pentium Proでは、CPUコアと2次キャッシュの2つのチップ(ダイ)をひとつに納めた巨大なパッケージ(Dual Cavity PGA)を採用していたが、Pentium IIでは、BGA(本連載第13回「SPGA/BGA」参照)とよく似た、LGA(Land Grid Array)に納められたCPUコアと、二次キャッシュ用の汎用のBSRAM(Burst SRAM)を1枚の基板上に実装。この基板を金属のケースで密封し、PGAのピンの代わりに、シングルエッジコネクタによってマザーボードに装着する。

 従来のICパケージのイメージとはほど遠い、ほとんどゲームカートリッジのようなパッケージだが、Intelは、今後10年にわたってこのスタイルを採用するといっており、初代にあたるPentium II用のコネクタをSlot 1と呼んでいる。ちなみにこのSlot1は、逆差し防止用のアクセスノッチが付いた5インチのコネクタで、基板の両面に上下2段の接点が242個用意されている。

[Text by 鈴木直美]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp