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鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第142回:10月23日~11月2日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


10月25日

■■後藤弘茂のWeekly海外ニュース
  AMDの「Hammer」はレイアウトを終え年末にテープアウトへ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001025/kaigai01.htm

エクスクルーシブキャッシュアーキテクチャ(Exclusive Cache Architecture)

 AMDが2000年6月にリリースした、2次キャッシュ統合型Athlon(コード名Thunderbird)とDuronに採用した、新しいキャッシュアーキテクチャ。

 メインメモリに使われているDRAMは、CPUのスピードに比べてかなり低速であるため、DRAMのスピードに合わせていると、システムのパフォーマンスが大幅に低下してしまう(※1)。そこで、CPUが頻繁にアクセスするコードやデータを、高速な少量のメモリ(高価なSRAMを使用)に蓄えておき、メモリアクセスが効率良く行なえるように工夫している。

 このようなメモリをキャッシュメモリといい、現在のCPUは、アクセススピードを重視した1次(L1~Level 1)キャッシュと、容量確保を重視した2次(L2)キャッシュの2段構成を採用。一般には、メインメモリの一部分をL2に、さらにその一部分をL1に入れ、L1が駄目ならL2、それでも駄目ならDRAMという手順でメモリにアクセスしている。

 従来のAthlonでは、フルスピードでアクセスできる128KBの1次キャッシュをCPUコアに内蔵(オンダイ[on-die])していたが、2次キャッシュ(512KB)は外部(オフダイ[off-die])に置かれており、CPUコアの数分の1のクロックで動作していた(※2)。新しいAthlonでは、この2次キャッシュもコアに統合され、フルスピードでアクセスできるようになった(1次キャッシュよりも遅延は大きい)が、容量はこれまでの512KBから256KBに半減。

 これを補うために、L1とL2の内容が重複しないように制御する新しいキャッシュアーキテクチャが採用された。L1とL2を排他的に(exclusive)使用することから、これを「エクスクルーシブキャッシュアーキテクチャ」と呼んでいる。

 エクスクルーシブキャッシュアーキテクチャでは、L2のヒットしたデータをL1に転送してくると同時に、オーバーライトされるL1のデータを「Victim Buffer」(※3)と呼ばれるバッファに待避する。L2は、L1に転送したデータを破棄し、代わりにVictim Bufferの内容を格納する。キャッシュの内容は重複しないので、128KB+256KB=384KBのデータがフルにキャッシングされることになる。その反面、Victim BufferからL2への転送という余分なサイクルが必要になるが、一般的なアプリケーションの下では、空き時間に行なわれるケースが多いので問題にならないとしている。

(※1)例えば、メモリとしては非常に高速な10ns(1ナノ秒=10億分の1秒)は、わずか100MHzでしかないので、500MHzのCPUは常に4クロック待たされ、100MHz相当のCPUとしてメモリにアクセスすることになる。この100MHzも実際には、一般に使われているSDRAMで連続したデータを転送している間のタイミングであり、このほかにアドレスを指定してからデータが読み出せるようになるまでの大きな遅延なども加わるため、DRAMのアクセスは非常に遅いものとなる。
 キャッシュは、高速にアクセスできるメモリに一次的に蓄えることと、キャッシュ~DRAM間のデータ転送をまとめて行なうことによって、DRAMへのアクセス回数を極力減らし、パフォーマンスの低下を防いでいる。

(※2)Pentium IIIやCeleronでは、32KBのL1に対し、L2は128(Celeron)、256(現行のIII)KBで、ともにフルスピードアクセスだが、初期のIIIやIIは、512KBのオフダイキャッシュで、ハーフスピード動作となっていた。

(※3)Athlonのキャッシュライン(キャッシングの単位となるメモリブロック)は64バイトで、Victim Bufferはこれを8エントリ格納できる。

□AMDプロセッサのページ
http://www.amd.com/japan/products/cpg/cpg.html
【参考】
□バックサイドキャッシュ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990114/key60.htm#backside_cache
□2次キャッシュ(L2 Cache)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971209/key10.htm#L2cache


10月31日

■■富士通、日本語入力ユーティリティ「I am J」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001031/fujitsu.htm

親指シフト
おやゆびしふと

 富士通が同社のワープロ「OASYS」とともに'79年に発表した、日本語入力用に最適化された、キーボード(キー配列)、および入力方式。'90年には、これをもとに日本語入力コンソーシアムでNICOLA配列(NIhongo-nyuryoku COnsortium LAyoutの略でニコラと読む)が規格化され、その後はこれに準拠したものが用いられている。

 現在一般に使われている日本語キーボードは、「JIS配列」と呼ばれるもので(※1)、英文タイプとカナタイプのキー配列をもとに、'72年にJIS C-6233(現在のX 6002)「情報処理系けん盤配列」として規格化された配列がベースとなっている。JIS配列では、シフトキーと組み合わせて、1つのキーで2種類の文字が打ち分けられるが、小さい「ァィゥェォ」や記号などがシフト側に割り当てられているほかは、1文字1キーが基本。3段のキーに収められたアルファベットに対し、仮名は4段をフルに使用しており、タッチタイプに不利といわれている。

 親指シフトでは、ホームポジション(※2)の親指の位置(スペースのところ)に、左右の親指で操作するシフトキー(親指右キー、親指左キー)を配置。これらを文字キーと同時に打鍵することによって、1つの文字キーで3文字を打ち分けられるようになっており、濁音や半濁音も含んだ仮名キーをアルファベットと同様の3段に収納。文字の配列も、日本語入力時の打鍵パターンに最適化されており、タッチタイピングの日本語入力が効率良く行なえるとされている。

(※1)英語キーボードのASCII配列とは、一部の記号の位置が異なる。JISではその後、'86年にC 6236(後のX 6004)「仮名漢字変換形日本文入力装置用けん盤配列」というキー配列も策定。「新JIS配列」と呼ばれたこの配列は、シフト側も積極的に利用して、仮名キーを3段に収めたものだったが、ほとんど採用されることなく、'99年には規格そのものが廃止されている。

(※2)左右の人差し指を「F/ハ」「J/マ」に置いた位置で、これら2つのキートップには、マークが付けられていることが多い。ちなみに「ホーム」には、「本来の」とか「最初の」という意味があり、[Home]キーは、カーソルをOSやアプリケーションのホームポジションに移動するためのキー。ブラウザを開いた時に表示される最初のページや、サイトの最初のページはホームページ。ログイン時のカレントディレクトリとなる、そのユーザーのディレクトリはホームディレクトリと呼ばれる。

□富士通OASYS WORLD
http://www.fmworld.net/oasysworld/
□オアシスのホームページ
http://www.fujitsu.co.jp/people/kanda/
□日本語入力コンソーシアム(NICOLA配列の規格書があります)
http://nicola.sunicom.co.jp/
【参考】
□JIS配列
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990924/key91.htm#JIS
□104キーボード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980624/key35.htm#keyboard
□106キーボード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990729/key86.htm#106


11月1日

■■ソニー、40GB光ディスク「5.25インチUDO規格(案)」を策定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001101/sony.htm

RLL(Run Length Limited encoding)
アールエルエル

 ディスクなどにデータを記録する際の信号処理方法の1つ。

 デジタルデータを記録、あるいは伝送する際に、記録や伝送に適した形に信号変換することを変調という。デジタル信号の記録や伝送は、単純に考えるならば、「0」と「1」をそのまま電圧の高低や磁束の方向などに対応させればよい。これをそのまま連続的に信号の状態に反映したものをNRZ(Non Return to Zero)、1でパルスを発生させ、後は0の状態を維持するタイプをNRZI(Non Return to Zero Inverted)という。

 いずれも、信号の中に0か1を判定するタイミング(クロック)が盛り込まれていないため、別にクロック信号を用意しなければ同期をとることができない(ただし、超低密度記録や低速伝送なら同期ビットを先行させるだけでも実用になる)。

 信号の中にクロック用のパルスを盛り込んだ簡単な方式に、FM(Frequency Modulation)やMFM(Modified Frequency Modulation)がある。FMは、古い単密度のFDに用いられた方式で、すべてのビットにクロックを付加したNRZIである。すなわち、すべてのタイミングでクロックパルスを出力し、それに続いてデータパルスを出力して いく(0ならパルスは発生しない)。

 この方式では、1ビットのために2回のパルスを発生させため、本来の記録/伝送能力が半減してしまうことになる。MFMは、この効率の悪いFM方式を改善したもので、倍密度以降のFDや初期のHDDに用いられた。「1」の時には、データパルスが発生するので、それをそのままクロック代わりに使用。「0」の状態が連続する時に、2ビット目から、ビット間にタイミング用のパルスを出力していく(読み出し時は、データとクロックを検出するために2倍のクロックでサンプリングする)。これで、本来の能力通りの記録/伝送が行なえるのである。

 さらに高密度化するために、連続するビット列をクロック成分を検出できるビットパターンにコード化する様々な方式が開発された。RLLは、そんな変調方式の1つで、HDDの代表的な変調方式である。コード化は、大きなビット数のコードの中から、都合の良い遷移パターンが得られるコードを選び、これにデータビット列を割り当てていく。コードのサイズや選び方で実際の方式は千差万別だが、コード化した連続するパターンの1と1の間に出現する0の最小値と最大値(パルスの反転間隔の最小値と最大値)を添えて、RLL(2.7)、RLL(1.7)というように記述される。

□EFM(Eight to Fourteen Modulation)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000713/key127.htm#EFM
□PRML(Partial Response Maximum Likelihood)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001027/key141.htm#PRML


■■元麻布春男の週刊PCホットライン
  TVチューナ一体型ビデオカードの草分け「ALL-IN-WONDER RADEON」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001101/hot115.htm

Bob、Weave
ボブ、ウィーブ

 テレビやビデオで使われているインタレース方式の映像を、プログレッシブ(ノンインタレース)方式に変換する方法。

 テレビやビデオの映像信号は、最初に走査線の奇数ライン、次に偶数ラインと、1ラインおきに2回の走査で1フレームを描くインタレース方式が採用されている。国内のTV方式であるNTSC(National Television System Committee)信号は、525本の走査線で構成された1フレームを毎秒約30回更新しているが、実際には、262.5本の走査線で構成された奇数ラインと偶数ラインの粗い画面を、交互に60枚更新していることになる。これを、PCのディスプレイのようなプログレッシブ方式のディスプレイやプログレッシブ入力を持ったプロジェクタなどで再生する場合には、フィールド走査を解除(de-interlacing)し、プログレッシブ信号に変換しなければならない。

 Bob(上下に動くという意味)は、フィールド画像の上下のラインから足りないラインを補間し、完全なフレームに変換する方式。Weave(織り合せるという意味)は、2つのフィールドを合成して完全なフレームに変換する方式である。

 Weaveは、元々がフィルムベースだったビデオ信号(プログレッシブからインタレースに変換されたもの)に有効な方式だが、単純な合成では、フィールド間のずれが大きい動きの速いビデオベースの映像で、奇数ラインと偶数ラインが互い違いになるコーミング(combing)と呼ばれるいう現象が目立つ。Bobではコーミングは起こらないが、1ラインを2回描くだけの単純な補間では、縦の解像度が落ちエッジが階段状になるジャギー(jaggy)が目立つ。

 最近のソフトDVDプレーヤーやプログレッシブ出力、ラインダブラーなどでは、映像に応じてWeaveとBobを切り換えたり、ジャギーやコーミングを補正する高度な補間技術や合成技術を使い、美しい映像に仕上げる工夫を凝らしたものが多い。

【参考】
□NTSC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990204/key63.htm#NTSC
□プログレッシブスキャン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980917/key46.htm#progressive_scan
□ラインダブラー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000310/key111.htm#line doubler
□2-3プルダウン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000818/key131.htm#2_3

[Text by 鈴木直美]


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