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鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第141回:10月16日~10月20日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


10月16日

■■松下、2HD FDで32MB記録できる次世代スーパーディスクドライブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001016/pana.htm

ZBR(Zone Bit Recording)
ゼットビーアール、ズィービーアール

 ディスクドライブのトラックフォーマットの1つで、同心円状のトラックを一定の半径ごとにいくつかのゾーンに分け、外周にいくにしたがって段階的にセクタ数を増やしていく記録方式。

 FDDや古いHDDでは、ディスクの内外周に関係無く、放射状に同数のセクタを作り、ディスクを一定の速度で回転させて読み書きを行なっている。この方式では、ディスクの外周にいくに従って記録密度が低くなってしまうため、大きな無駄が生ずる。

 そこで、現在のHDDや高密度ディスクでは、同じメディアをより効率よく利用できるよう、外周にいくにしたがってセクタ数を増やし大容量化を図っている。記録時には、一定の速度で回転するディスクに対し、ヘッドの記録周波数を変えてビットサイズが一定になるように調整していることから、これをZBRと呼んでいる。ちなみに、ディスクの回転数が一定なので、内周よりも外周の方がデータの読み書きは高速になる。

【参考】
□CAV (Constant Angular Velocity)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971105/key5.htm#cav
□PCAV(Partial Constant Angular Velocity)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000721/key128.htm#PCAV


PRML(Partial Response Maximum Likelihood)
ピーアールエムエル

 高密度ディスクなどで用いられている、微弱で緻密な信号を正確に読み出すための信号処理方式。

 デジタルデータの記録や伝送では、電圧の高低や光の明暗、音の高低、磁束の方向といった対極する2つの状態を用いて「0」と「1」という2値のビットを表している。信号の検出は、これら2つの状態を判別していくことなのだが、信号が微弱になればなるほど、状態の変化が緻密(高密度あるいは高速)になればなるほど、正確な判別が難しくなる。この問題を解決するために、PRとMLという2つの技術を組み合わせた信号処理方式がPRMLである。

 2値を表す理想的な信号は、急峻な変化と安定した状態を維持する矩形のパルス波である。従来のピーク検出方式は、このような理想的な信号を前提に、例えばサンプル点で検出した電圧が一定の値以上だったらHigh、満たなかったらLowというように判別していた。

 しかし、実際にはこのような理想的な信号は得られず、信号が緻密――すなわち周波数が高くなればなるほど、著しく歪んだ不完全な特性(Partial Response)になってしまい、ピーク検出での判別は困難になる。これが、高速伝送や線方向の記録密度を上げる大きな妨げになっていたのである。

 PRMLは、信号が前の信号の干渉を受けるて歪むということを逆手にとり、相関性を持った干渉を意図的に付加していく。例えば、一連のビット列を表すパルス波に対し、直前のパルス波を加算して出力。読み出し時には、波形の2点を計測し「High、Mid、Low」の3値を判別して、歪んだ波形から元のパルス信号を復元していく。これがPRという技術で、限られた周波数の中で、2値のパルス波よりも緻密な信号が扱えるようになる。

 復元される信号は、元のビット列を直接表したものではなく、先行する信号と相関を持ったものである。この相関性から、もっとも確からしい(Maximum Likelihood)ビット列を推測して元の符号を検出していく。これが日本語では最尤(さいゆう)復号法と呼ばれるML技術で、低いS/N比でもエラーの少ない読み出しが可能となる。


■■アイ・オー、WOLRD PC EXPOの参考出展内容を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001016/iodata.htm

ESS ID(Extended Service Set IDentifier)
イーエスエスアイディー

 無線LANの規格である「IEEE 802.11」で、個々のネットワークの識別に使うID。

 有線LANは、ケーブルを使って物理的に接続しなければ通信できない。無線LANの場合には、電波が届くことがこの物理的なケーブルの接続に相当するため、そのままでは、同じ通信エリア内で同じチャンネルを使う全てのノードが、ひとつのネットワークに接続されてしまうことになる。

 電波が干渉してしまうこのような環境下でも、個別のネットワークが構成できるように、ネットワーク内の無線端末やアクセスポイントには、同じネットワーク内の相手であることを識別するための共通の文字列(可変長)を設定する。これをESS IDといい、各ノードが、通信エリア内の同じESS IDを持つ相手とだけ通信を行なうことで、ネットワークの論理的な分離が行なえるようになっている。

 ESS IDが異なれば、同じ通信エリア内で同じチャンネルを使っていても、全く別のネットワークとして認識。逆にESS IDが同じなら、異なるチャンネルが設定されたアクセスポイントも同じネットワークと認識されるので、移動中の端末が次々に接続先を変更しながら、アクセスポイントのサービスエリアを渡り歩いていくローミングもサポートされていれば利用できる。

【参考】
□IEEE 802.11
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991007/key93.htm#IEEE_802


10月20日

■■カノープス、TVチューナー付きMPEG-2キャプチャカード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001020/canopus.htm

音声多重/ステレオ放送
おんせいたじゅう/すてれおほうそう

 1つのチャンネルを使って、音声や文字、データなどの付加情報を送る放送サービスの1つで、一般には、'82年にスタートしたテレビジョン音声多重放送のこと。

 現在行なわれているテレビの多重放送には、ステレオ放送や2カ国語放送に使われている「テレビジョン音声多重放送」、文字や画像情報を付加する「テレビジョン文字多重放送('85年~)」、様々なデータを伝送する「テレビジョンデータ多重放送('96年)」の3つのサービスがある。文字多重とデータ多重は、映像信号に符号化したデータを重畳(重ね合わせること)するタイプで、FM文字多重放送('94年~)も同種のサービスに分類できる。

 一方の音声多重放送は、アナログの音声信号を重畳するタイプで、FMラジオ('69年~)やAMステレオ放送('92年~)と基本的には同じタイプのサービスである。

 テレビの1チャンネルは6MHzの帯域があり、この帯域の下側4.2MHzはAM変調(※1)された映像信号に、そのすぐ上の500kHz(4.5MHz±250kHz)はFM変調(※2)された音声信号に割り当てられている。すなわち、映像と音声を周波数分割によって多重化した信号というわけである。音声多重放送は、この音声信号用の帯域を、同様の方法でさらに多重化する。

 具体的には、変調しないベースバンドの和信号(L+R=モノラル)または2カ国語の主音声の上の帯域に、FM変調した差信号(L-R)または2カ国語の副音声を重畳。さらにその上の帯域にAM変調した制御信号を重畳し、全体をFM変調したのがテレビの音声信号である。

 モノラルと主音声がベースバンド部分に置かれているので、音声多重に未対応の機器でもこれまで通りに再生できる。対応機器は、ステレオ放送なら和信号と差信号を組み合わせて左右のチャンネルを取り出し、2カ国語放送なら主音声と副音声を切り換えるようにする。制御信号は、このステレオ放送と2カ国語放送を識別するためのもので、ステレオ放送中は982.5Hz、2カ国語放送中は922.5Hzの正弦波が送られている。

 なお、この音声多重方式は日本独自のものであり、映像が同じNTSC方式であっても、米国のMTS(Multichannel Television Sound)とは互換性が無い。またPAL系では、英国のNICAM(Nearly Instantaneous Compandable Audio Matrix)やドイツのA2などの音声多重方式もある。

(※1)AM(Amplitude Modulation~振幅変調)は、搬送波の振幅で変調する方式。
(※2)FM(Frequency Modulation~周波数変調)は、搬送波の周波数で変調する方式。

□世界電気&放送大辞典(ソニー)~各国の電源と放送方式の一覧
http://www.geton.smoj.sony.co.jp/products/tourist/contents/denkihoso/denki-j.html
【参考】
□FM文字多重放送
http://watch.impress.co.jp/docs/article/991119/key98.htm#FM
□NTSC(National Television System Committee)
http://watch.impress.co.jp/docs/article/990204/key63.htm#NTSC
□PAL(Phase Alternating Line)
http://watch.impress.co.jp/docs/article/20000622/key124.htm#PAL


■■シングルCD-Rを使ったMP3プレーヤーが本格化ほか
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001020/wpe11.htm

シングルCD(CD Single)
しんぐるシーディー、シーディーしんぐる

 ソニーとPhilipsが共同で開発し'88年に商品化された、直径8cmのCD規格。

 直径12cmのCD(Compact Disc)は、30cmのLPレコード(※1)に代わるアルバム用のメディアとして'82年に商品化。'86年にはLP盤の生産数を、翌'87年には全アナログレコードの生産数を上回り、名実ともにオーディオメディアの主役の座に就いた。

 引き続きソニーとPhilipsは、17センチのEPレコード(※1)をリプレイスするシングル盤(※2)用のメディアとして、8cmのCDシングルを市場に投入。僅か1年で、シングル盤の大半がCDに移行することになった。ちなみに現在は、12cm盤を使ったマキシシングル(CD Audio Maxi-single)というのもあり、シングル盤の半数がマキシシングルでリリースされている。

 8cm盤は、12cm盤の外径をそのままコンパクトにしたもので、容量はオーディオトラックで21分、データで185MB。シングル盤のCDや小容量のCD-ROMに使われているほか、CD-RやCD-RWメディアも発売されている。

(※1)初期のレコードは、毎分78回転で回る30cm盤で、SP(Standard Play)レコードと呼ばれていた。片面で4分程度の再生しかできなかったSP盤に対し、'48年にCBSが長時間再生の可能な33 1/3回転の30cm盤を、翌'49年にはRCAが45回転の17cm盤を発表。前者はLP(Long Play)、後者はEP(Extended Play)と呼ばれた。後のレコード盤は、これに25cm盤を加えた3つのサイズと2種類の回転数の組み合わせになり、LP/EPは、回転数の呼称となっている。

(※2)同じサイズで長時間再生を狙ったLP盤に対し、EP盤はSP盤相当の再生時間をコンパクトなサイズで実現したもので、片面に1曲しか入らないことからシングル盤とも呼ばれた。ちなみに、プロモートの主体となるレコード盤の表をA面、裏をB面。両方をプロモーションにかける場合には両A面といい、収録状況の全く異なる現在のCD環境でも、これらの用語が未だに使われている。

【参考】
□各種CD規格
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981007/key49.htm#Orangebook_part3

[Text by 鈴木直美]


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