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鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第127回:7月3日~7月6日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


7月5日

■■ソニー、1.3GBの倍密度CD-ROM/R/RW規格「DDCD」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000705/sony2.htm

トラックピッチ(track pitch)

 トラックの間隔。
 ディスクやテープメディアのトラック密度を示す数値で、トラック間隔を通常はμmで表す。例えば、CD-ROMの1.6μmに対しDVD-ROMは0.74μm、DDCD(Double Density CD)では1.1μmとトラックピッチを1/2前後に縮小し、記録密度を高めている。

 HDDに関しては、一般に1インチあたりのトラック数をTPI(Tracks Per Inch)という単位で表わす。先の1.6μmは、15,876TPIに相当する。


最小ピット長(minimum or shortest pit length)

 最も短いピットのトラック方向の長さ。
 CD-ROMやDVD-ROMは、透明な基板にピット(pit)と呼ばれる小さなくぼみを作り、その上に、アルミなどの反射膜と保護膜をコーティングした構造になっている(※1)。ピットの無い部分(ランド)では、照射したレーザー光はそのまま反射するが、ピットのある部分では、出っ張ったピット(照射面から見るとくぼみではなく突起)とランドとで反射のタイミングが異なり、位相差が生ずる。この位相差によって光の回折が起こり、ピット上では反射光が弱くなる(※2)。ピックアップは、このピットによる反射光の僅かな変化を検出しているのである。

 データは、ピットの有無に直接bitの状態を割り当てるのではなく、高い信頼性や安定性を得るために、検出しやすい形で記録されている。具体的には、反射光が変化する瞬間であるピットのエッジでbitの「1」を、エッジとエッジの間隔が続くところで「0」を表わす。すなわち、ピットの長さ(や間隔)が一定のbitパターンとなる記録方法である。

 最小ピット長は、最も短いピットの長さで、これが、ピックアップに求められる識別能力(解像度)であり、同時に線方向の記録密度に関わる重要なパラメータとなる。ちなみに、CD-ROMは0.833μm、DDCDは0.623μm、DVDは0.4μmとなっており、短いほど高度な検出能力が要求されるが、記録密度はそれだけ高くなる。

(※1)DVD-ROMには、両面ディスクや2層ディスクがあり、単層ディスクの片面がこのような構造になっている。両面ディスクは、これを貼り合わせたもの。2層ディスクは、文字通り2層構造になっており、上層の反射膜に半透明の金属を蒸着する。

(※2)RやRWの場合には、記録層の有機色素や相変化材を変化させ、ピットに相当する反射率の違いを作り出している。

【参考】
□CD-R
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971224/key12.htm#cd_r
□CD-RW
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971224/key12.htm#cd_rw
□DVD-ROM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980127/key15.htm#dvd-rom
□DVD-R
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981029/key52.htm#DVD-R
□DVD-RW
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991014/key94.htm#DVD_RW


CIRC(Cross Interleaved Reed-Solomon Code)
シーアイアールシー

 CDの記録に使われている、エラー訂正方式。
 リードソロモン(RS)符号は、Irving S. ReedとGustave Solomonが'60年に発表したエラー訂正符号である。一般的なエラー訂正符号が、ビットエラーの訂正を基本としているのに対し、複数ビット(ブロック内のバイト単位のエラー)を対象とした訂正を行なうのが特徴で、通信や記録メディア等で広く使われている。

 CDに採用されているCIRCは、ディスクの汚れや傷等に起因するまとまったエラー(バーストエラー)の訂正能力を高めるために、このRS符号をインターリーブの前後で付加したものである。具体的には、連続する24バイトのデータに対して、4バイトのRS符号を付加し、データを複数のフレーム(ブロック)に分散する(このようにデータの並び順を替えることをインターリーブという)。分散データで構成される28バイトの各フレームに対し、さらに4バイトのRS符号を付加。都合1フレーム32バイトのデータとしてディスクに記録される(記録時にはこれをさらにEFM変調する)。

 ディスクから読み出した32バイトのフレームデータは、2バイトまでのエラーであれば、付加されたRS符号を使って訂正することが出来る。ただし、汚れや傷は高密度のディスクにとって巨大なエラー源であり、訂正能力を遥かに超えるエラーが集中してしまう。分散していたデータを元の並び順に戻すと、エラーフレームの中身は複数のフレームに分散されることになり、最初に付加したRS符号で訂正可能(エラーの個所が判明しているので28バイト中4バイトの訂正が可能)な、僅かなエラーとして扱える可能性が出てくるのである。

【参考】
□C1エラー/C2エラー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000601/key121.htm#C
□ECC(Error Checking and Correcting )
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980805/key41.htm#ECC
□パリティ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981112/key54.htm#parity
□CRC(Cyclic Redundancy Checking)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000217/key108.htm#CRC


EFM(Eight to Fourteen Modulation)
イーエフエム(へんちょう)

 CDなどの記録に使われる変調方式(符号化方式[※1])。
 CDは、トラック上に記録されたピットの有無により、レーザーの反射光の明暗が微妙に変化する(ピット部では暗くなる)のを検出する仕組みになっている。具体的には、反射光が暗くなる、あるいは明るくなる瞬間――すなわちピットの両エッジを「1」とし、同じ状態が続く他の部分を「0」としてビット列を記録している。しかし、明暗が激しく交番する(1の連続)と検出が難しくなり、同じ状態が延々と続く(0の連続)と不安定になってしまう。そこで、明暗の変化がある程度一定の周期で均等に起こるように(ピットの長さや間隔が一定の範囲内に納まるように)データを符号化し、これを元にピットを形成。この時使用する符号化方式をEFMと呼んでいる。

 「Eight to Fourteen」が示すように、EMFは8bitのデータを14bitに拡張したものである。14bitで表わすことの出来る16,384通りのコードの中から、1のビットと1のビットの間に必ず2~10個の0が入る、記録に最適なコードを256個セレクト。これに8bitのコードを割り当てる。例えば「\」は、8bitコードでは「01011100」というビット列だが、EMF変調後には「01000000000100」という14bitのコードで表わされる(※2)

(※1)一般には、ある信号を別の信号に乗せることを変調というが、記録系ではビット列をメディアの特性などに合わせたコードに変換する符号化方式のことをいい、記録変調と呼ぶこともある。

(※2)CDでは、続くビット列の間に3bitのマージンビットを挿入して調整するため、8bitのデータは最終的に17bitになる。


■■ダイジェスト・ニュース(7月5日)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digest/

DLP(Digital Light Processing)
ディーエルピー

 TI(Texas Instruments, Inc.)が開発した、Digital Micromirror Device(DMD)を使ったプロジェクション技術。

 '87年に開発されたDMDは、シリコン基板上に16μm角の小さな鏡を格子状に並べたデバイスである。1つ1つの鏡は、個々の画素に相当し、SVGAなら48万個、XGAなら78万個、SXGAなら131万個以上の鏡が、小さな基板上にぎっしり敷き詰められている。個々の鏡は、対角線を中心に±10度の角度に傾くようになっており、この傾きを切り換えて、照射した光を特定の方向に反射するかしないかを制御する。切り換え時間は、10μ秒と非常に高速で、反射時間を制御することによって輝度を作り出す。

 DLPは、このDMD素子を光学系に使用した同社の技術や製品の総称で、'96年に最初のDLPプロジェクタが発売。従来の液晶プロジェクタ(大半が透過型)に比べ光利用率が高く、高い輝度とコントラストの鮮明な映像が得られるのが最大の特徴で、その後各社が相次いで採用。2000年には、DLPシネマ映写機を使ったフルデジタル映画 「トイ・ストーリー2」の国内上映でも話題となった。

□DLPホーム(日本テキサスインスツルメンツ)
http://www.tij.co.jp/jrd/dlp/docs/index.htm

[Text by 鈴木直美]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp