イベントレポート

Adobe MAXでDellが狭額縁4K液晶ノート「Precision 5510」を展示

~歴代のPhotoshopもデモ

Adobe MAXの展示会場となるCommunity Pavilion

 Adobe Systems(以下Adobe)がクリエイター向けに開催しているAdobe MAXでは、Community Pavilionと呼ばれる展示会場が併設されており、そこではCreative Cloudの最新機能や、Adobeのパートナー企業のソリューションなどが多数展示されていた。その中から、主にPCに関連する話題を取り上げていきたい。

歴代のPhotoshopも展示

Adobe MAXにおいての、クリエイターであるレイス・バード氏のセッションでの1コマ。実際にPhotoshop CCなどを利用しながら参加者に具体的なテクニックを紹介していく

 Adobe MAXイベントの対象となるのは、Photoshop CCやIllustrator CCなどを利用してCGを作成するクリエイターだ。実際に、プレカンファレンスと呼ばれる、10月3日~10月4日に行なわれるPhotoshop CCなどの使い方を勉強するコースや、セッションと呼ばれるセミナーを覗いてみると、参加者は講師が説明するPhotoshopの使いこなしなどの説明に聞き入っていた。VAIO Z Canvasの記事中で紹介したレイス・バード氏もその1人で、Photoshop CCのブラシの使い方講座で、実際にVAIO Z Canvasを使いながら説明をしていた。筆者もPhotoshop CCのユーザーだが、正直ブラシがそのように使えるのかなどは考えたこともなく、感心することしきりだった。

ほぼブラシだけを利用してここまでCGを作ることが可能だという。絵心ある人は何でも使ってできてしまうということかもしれないが……
Community PavilionのAdobeブース

 展示会場となるCommunity Pavilionにも、クリエイターに向けた展示が多かった。モバイルアプリ(Photohop Fix、Capture CCなどの新ソフトウェアや、Photoshop Sketchなどの既存製品の最新版)、Creative Cloudのデスクトップアプリケーションの新バージョン(Photoshop CC、Illustrator CC、Premiere Pro CCなど)などが紹介されており、多くのクリエイターがソフトウェアを実際に試していた。

 企画として、各年代のPhotoshopを体験できるコーナーも用意され、1990年のPhotoshop 1.0、1994年のPhotohop 3.0、2003年のPhotoshop CS 1、そして2015年のPhotoshop CC 2015まで4つが体験できる、その時代のPCやMacなどで実際にそのバージョンが触れるようになっていたほか、その時代の家電製品や生活用品などが一緒に展示されており、懐かしさを感じさせるコーナーとなっていた。懐かしのグッズ、どうしたのだろうと思って聞いたところ、担当者がebayで買い集めたり、私物だったりを持ってきたりと結構大変だったそうだ。

こちらはPhotoshop Sketchの新機能「水彩画」。水彩画を描くように絵の具に水を垂らしていくと水彩画のようなイラストを作成可能。作成した画像はCreativeSyncなどを通じてPhotoshop CCなどへ転送して利用可能
2015年のPhotoshop CC 2015、現代なので違和感無い。ワコムのCintiq(液晶ペンタブレット)、Mac Pro、Windowsタブレットなどが現代的
2003年のPhotoshop CS 1。12年前で、白いiPodやNokiaのフィーチャーフォンなどが時代を彩っている
1993年は、唯一のWindowsでの表示。Windows 3.xの画面になっていた
1990年のPhotoshop 1.0、Macintosh Classicが非常に懐かしい。音楽もテープで、マイケル・ジャクソンのBAD……調べてみたら1987年発売だった
どのマシンも実際に動かしてみることが可能だったので、来場者は興味津々に触っていた
クリエイター向けのイベントらしく、お約束の落書きコーナー。壁だけでなく床や椅子などもオッケー
3Dプリンタのコーナーがあるのも特徴で、このような本格的なやつからスタンプが作れるやつまで、多彩な3Dプリンタが活躍していた

重さ1.78kgと画期的な軽量さで4KなDell Precision 5510が要注目

 既報の通り、今回のAdobe MAXにはMicrosoft Surfaceがダイアモンドスポンサーに、そして日本のVAIOがゴールドスポンサーになってAdobe MAXに出展し、Microsoftは2日目以降に「Surface Book」と「Surface Pro 4」を、VAIOは「VAIO Z Canvas」の米国向けモデルを出展した。

 他方Dellもプラチナスポンサーを務めており、Community Pavilionに出展し、クリエイター向けのPCワークステーションや液晶ディスプレイなどを展示した。その中でも注目だったのは、米国で発表されたばかりの「Precision 5510」だ。写真で見て分かるように、狭額縁で大きな話題になったビジネス向けのノート「XPS 13」を彷彿とさせる狭額縁の液晶ディスプレイを採用し、デザインのテイストもかなりXPS 13に近くなっている。

 15.6型の液晶ながら、解像度は3,840×2,160ドット、いわゆる4KやUHDなどと呼ばれる高解像度の液晶が搭載。デジタイザの機能は搭載されていないが、10点のマルチタッチに対応している。インターフェイスとしてはUSB 3.0×2、Thunderbolt 3×1、HDMI出力が用意されている。

 CPUは第6世代CoreプロセッサおよびXeonプロセッサで、展示されていた製品にはXeon E3-1505M v5というCPUが採用されていた。Xeon E3-1505M v5は、TDP 45WのCPUで、4コアCPUと、Intel HD Graphics P530(GT2)のGPUを内蔵している。ベースクロックは2.8GHz、シングルコア時には3.7GHz、デュアルコア時には3.5GHz、クアッドコア時には3.3GHzまでTurbo Boostが効く設定になっている。説明員によれば、メモリは最大で32GBまで、ストレージは2TB、バッテリは56Whrないしは84Whrを初期構成時に選択が可能と言うことだ。

 これだけ強力なスペックになっていながら、非常に軽量になっており、重量はわずか1.78kg、本体サイズは357.1×235.4×16.7~20mm(幅×奥行き×高さ)。非常に薄型で狭額縁の液晶ディスプレイを採用することで、小型化とデザイン性を両立した。クリエイターやハイエンドユーザーのようにクアッドコアCPUが欲しいというユーザーなら要注目の製品と言えるだろう。

Precision 5510、15.6型の4Kディスプレイを搭載しながら重量は1.78kgから
本体の右側面、SDカードとUSB 3.0、ケンジントンセーバーのホールが用意されているのはさずがビジネス環境がよく分かっているDellと言うべきか
本体の左側面、USB 3.0、HDMI、Thunderbolt 3、ヘッドフォン端子
閉じてもこの薄さ、最も厚い部分でも20mmとモバイルワークステーションとしては画期的に薄型
解像度は3,840×2,160ドット
一般的なな15.6型の製品と重ねてみたところ15.6型は手前部分がはみ出していることが分かる。それだけDell Precision 5510はコンパクトに作られている
CPUはXeon E3-1505M v5が搭載されていた。TDP 45WのXeonになるので、他の選択肢もおそらく45WのHプロセッサが採用されていると考えることができる
キーボードとタッチパッド、キーボードの配列もシンプルで、キータッチに関してはXPS13などで割と評判がよかったキーボードに近いと感じた。パッドも大型で使いやすい

HPは昨年販売を開始したRealSense搭載sproutを展示してデモ

 HPは昨年(2014年)から米国で販売中の、RealSense搭載クリエイター向けのPCを展示していた。HPのsproutはいわゆる液晶一体型のPC(AIO)だが、23型液晶の上部にユニークなプロジェクタとRealSenseのカメラが装着されている。プロジェクタは、上に向かって付いているが、上部にミラーがついており、そのミラーで反射して、液晶部分の手前に設置する専用のマットに投射する形になっている。

 プロジェクタで、物体を置く位置などが指定され、それで物体を置くと、RealSenseの3Dカメラで3次元の測定が可能になり、3Dモデルなどを作成できる。それをPhotohop CCやIllustrator CCなどに取り込んで編集したり、編集した結果を3Dプリンタに打ち出すことが可能になる。

 CPUはCore i7-4790S、8GBメモリ、1TBのHDDというPCのスペックで、3Dプリンタなしのモデルが1,599ドルから、Dremelの3Dプリンタ付きのモデルが2,399ドルとなっている。現在はゲームやWindows Helloがよく使われるアプリケーションになっているRealSenseだが、こういうアプリケーションは実用性が高く、将来有望なアプリケーションと言えるだろう。

 このほか、AMD、Intel、NVIDIAといった半導体メーカー各社もブースを構えており、自社の最新CPUやGPUにより、PCの性能が上がりクリエイターの作業効率が改善するとアピールしていた。

HPのsproutは第4世代Coreプロセッサを採用しているAIO
下部に敷かれているマットに、プロジェクタから表示で画面が表示される、手の動きなどはRealSenseのカメラで認識
マットは簡単に外すことができる。マットを外すとプロジェクタとRealSenseによる認識はオフになる
イラストをを表示してそれに手を加えたりできる
RealSenseのカメラを利用して物体認識が可能になっている
取り込んだ物体をタッチで回転したりも可能
取り込んだデータをPhotoshop CCに転送して加工することもできる
マシンの後部と側面、ペンが付いているが、単なるスタイラスペンで、デジタイザの機能などは持っていない
AMDブース、FireProをアピール
IntelブースではSkylakeをアピール
NVIDIAブースはQuadroやCreative CloudをNVIDIA GRIDで利用するソリューションをアピール

(笠原 一輝)