Macworld ASIA 2011取材の第3弾は、展示会場レポートをお届けする。
●アイディア勝負のiOSデバイス編「Smart Pen for iPad」を出展したYIFANG Digitalのブース |
日本国内では「MVPen」として販売されているペンタブレットがある。PCやスキャナがその場になくとも、専用ユニットと専用ペン使って紙などに書いた情報をデジタイズするユニットだ。データはユニット内に保存され、後からPCに転送できる。仕組みは超音波と赤外線を併用して、ペン先のトラッキングを行なっている。今回、Macworld ASIAで展示されていたのはそのiPad版となる「Smart Pen for iPad」。30pinコネクタに専用ユニットを取り付ける形で、iPadをペンタブレット化する製品だ。
従来のMVPenと同じように、30pinコネクタに付けた専用ユニットでペン先のトラッキングを行ない、iPadに手書入力が可能。App Storeからダウンロードできる専用アプリケーションでイラストなどが描ける。アプリケーションの操作は指先を使った基本的なタッチ操作でメニューを選択。このメニューからペン先の太さや使用する色などを選ぶことができる。実際に書く文字やイラストは専用のペン先のみをトラッキングするので、メニュー操作は指、実際の筆致はペンと使い分けるのがiPad版の特徴。
専用アプリケーションは他のサービスとも連携しており、作成したメモやイラストはそのままメール送信や、Twitter、Facebookへの投稿が行なえる。今回出展していたのは「YIFANG Digital」という企業だが、日本では既存のMVPenと同様にMVPenテクノロジーから販売される見通し。10月4日に開幕するCEATEC JAPANにも出展予定とのことだ。
「Smart Pen for iPad」で手書きメモを書いている様子。ペン先の太さや色の調整は左側のメニューを指先で操作して行なう | iPadの30pinコネクタに直接取り付ける専用ユニット。仕組みは従来のMVPenと同じで、赤外線と超音波を併用し、ペン先をトラッキングする | 作成した手書きメモやイラストはもちろん保存ができるほか、専用アプリケーションから直接メールしたりSNSサービスに投稿したりできる |
□YIFANG Digitalのサイト(英文)
http://www.yifangdigital.com/
「WOW-Keys」。USB接続のキーボードにiOSデバイス用のドックが付いている |
韓国のOMNIOが出展した「WOW-Keys」。PCとMacで利用できるUSB接続のQWERTYキーボードに、iPhone/iPod touch用のドックが付いている。ここにiPhone/iPod touchを差すことで、これらのiOSデバイスのキーボードとしても利用できる。入力先の切り替えは、キーボード右側にあるスイッチを使って行なうので、PC/Macとは接続したまま自在に入力先の切り替えが可能だ。また専用アプリケーションをインストールすることで、取り付けたiOSデバイスをPC/Macの10キーとしても利用することができるという。iOSデバイス接続時はキーボードをiOSのHotkeyとして一部の操作をキーボード側から実行できる。もちろんiTunesと同期するためのドックとしても機能する。対応するiOSデバイスは、iPhoneは3GS以降、iPod touchは第3世代以降となる。
同社からはもう1つドックスタイルの「WOW-Dock」も出展された。これも仕組みとしては前述のWow-Keysと同じで、ドック背面にUSBポートが2つ付いている。Bコネクタ側にUSBキーボード、miniAのコネクタをPC/Mac側にUSB接続して利用する。WOW-Keyに比べ、既存のキーボードを自由に利用できるという点ではメリットがある。会場では確認できなかったが、USBポートへの給電が足りればワイヤレスキーボードも利用できるかも知れない。iOSとPC側の入力切り替えはドック前面のトグル式スイッチの押下で行なう。対応するiOSデバイスはWOW-Keyのものに加えてiPadの全モデル。
キーボード右端にあるインジケータとボタン。トグル式スイッチの押下で、iOSデバイス側とPC側に入力先を切り替えることができる | 「WOW-Dock」。iOSデバイス用の30ピンコネクタをもつドック。前面には入力先切り替えスイッチとiOSデバイス操作のためのホットキーがある | WOW-Dockの背面。2つのUSBポートがある。B側にUSBキーボードを接続し、miniA側をPCトと接続する |
□OMNIOのサイト(英文)
http://www.iomnio.com/
おそらく初めての製品化と想像されるiPad 2専用のバッテリージャケット。出展したMiLiは中国に拠点を持つShenzhen Hali-Power Industrialのブランド。iPhone向けのパワージャケットや外付けバッテリ、ジャケットタイプのPicoプロジェクターなどを販売している。先日ベルリンで開催されたIFA 2011ではiOSデバイス用の30ピンコネクタとUSB端子を搭載して、iPhoneやAndroidスマートフォンから直接印刷できるPhotoプリンタなども出展していた。日本国内ではact2などが一部製品の販売代理店となっている。
今回紹介されたパワージャケットは写真を見てのとおりiPad 2専用。背面をしっかりと覆い、8,000mAhのバッテリ容量をもつ。持ってみたところかなり軽量なので、リチウムポリマーを利用していると想像されるが、近日出荷ということで重量等を含めた詳細は未公表。
iPad 2専用のパワージャケット。タブレットとしてはかなりバッテリが持つイメージのあるiPad 2だが、それでもなお外部バッテリの需要があるのだろうか? | 背面。グリップを考慮してか、背面は平坦ではなく段差がつけてある。純正のSmartCoverを付けたままで利用可能とのこと。 |
□MiLiのサイト(英文)
http://www.iphonemili.com/
他、ユニークなiOSデバイスに対応する製品は写真を中心に紹介する。
●ストレージの出展が目立つMac OS関連製品
Thunderbolt対応のRAIDアレイをいち早く発表したことで注目を集めているPromise Technology。本誌でも西川和久氏がレビューしたPegasus R4、R6を、COMPUTEX TAIPEIに引き続いてデモンストレーションしていた。またComputex Taipeiで発表されたファイバーチャネルで接続するSAN環境とThunderboltをブリッジするためのアダプタ「SANLink」の紹介も行なわれていた。
また、会場に実機こそなかったものの、新たなThunderbolt対応ストレージ「Pegasus J4」を発表。2011年内に発売予定としている。Pegasus J4はいわゆるJBOD(Just a Bunch Of Disks)対応のケースで、内蔵する複数のHDDを論理的に統合、システム側からは1つの記憶装置に見えるままに大容量化する仕組みのストレージとなる。複数ドライブを内蔵してはいるが、RAIDのようにストライピングやミラーリングが行なわれるわけではない。Pegasus J4では、2.5インチのHDDを最大4基内蔵可能としている。サイズは現行のMac miniと同様のフットプリントを持つということで、ブース内の紹介写真でもMac miniと重ねている写真が使われていた。
現在発表されているThunderbolt対応のストレージは同社のPegasus R4、R6やLaCieのLittle Big Diskのように、RAIDのストライピングを利用して転送速度を稼ぐ製品がほとんど。そのため、価格帯としては高めとなり、なかなか一般向けとは言いにくかった。JBODの場合でも、内部には論理的に統合するためのコントローラやThnderboltに対応するためのコントローラが必要となるため、必ずしも低価格とは言えないもののRAIDよりは製品コストを落とすことができる。いわゆるエンドユーザー向けに一歩近づいた製品と言えるだろう。
Promise Technologyでは同製品を2011年内に発売するとしているが、内蔵するHDD構成による容量の設定や価格等は未発表。
またLaCieもブース出展しており、先日発表されたLittle Big Diskのパッケージと製品を展示していた。ほかにもストレージ関連の出展は多く、Western DigitalやSeagateなど自作PCユーザーにはお馴染みのHDDメーカーも、バルク製品ではなく外付けのストレージとして、パーソナルクラウドサービスなどのソリューションを含めた製品展示を行なっていたのが印象的だった。また、Mac Proに似たアルミのパンチングデザインでMacユーザーには人気のあるG-Technologyはby Hitachiと表記され、HGST傘下であることを印象づける展示になっている。いずれもブランド力を生かして商機に繋げようという思惑があるものと思われる。
□Promise Technologyのサイト(Promise J4の情報はまだ掲載されていない)
http://jp.promise.com/
ロLittle Big Diskの製品情報
http://www.lacie.jp/external/lch-lb/
一部のユーザーの間では数カ月前から話題となっていたMac向けのBD再生ソフト「Mac Blu-ray Player」を扱うMacgoのブース |
Mac関連ソフトでは、数カ月前より登場しているMac OS X向けのBlu-ray再生ソフトウェアを販売するMacgoが展示会場でブースを構えていた。Appleが販売するMac製品でBlu-rayドライブを標準搭載する製品はないものの、OSとしてはBlu-ray Disc(以下、BD)をサポートしており、データディスクとしての利用はできる。サードパーティの周辺機器としてはMac Pro向けの内蔵BDドライブが販売されているほか、多くのPC用外付けBDドライブも、USBなどでMacに接続すればドライバなどのインストールをすることなく、マウントすることが可能だ。もちろん、データの書き込みには専用ソフトが必要になるが、Mac OS XでまったくBDが利用できないというわけではない。
ただし、これはデータディスクとしてのBDの話で、映像メディアとしてのBDとは意味が異なる。こちらは著作権保護のためのHDCPの仕組みやさまざまな権利関係があって、Mac新製品発表時のQ&Aなどではたびたび話題にのぼり、MacにBDを搭載しない理由の1つとしてスティーブ・ジョブズCEO(当時)が挙げていたポイントでもある。もちろん同社的にはBDといったディスクメディアではなく、iTunes StoreやApple TVを利用したコンテンツ配信ビジネスに重点を置くためという側面も戦略的には重要と言えただろう。
そうした背景のなかで登場したのが、このMac Blu-ray Playerだ。ではこのソフトウェアがこれら著作権保護や権利関係をすべてクリアして登場したのかと言えば、かなり疑問は残る。実際、登場直後から試してみてはいるものの、手持ちのBDでも再生できるものと再生できないものがあったり、途中で止まったり、音声が出たり出なかったりする。また、再生時にはネットワーク接続が必須な上に、HDCPによる保護の対象にならないはずのアナログ出力にも映像表示ができたりもする。おおざっぱに分類すれば、再生できるのは主に古いBDで、新しいものほど再生が難しい。暗号鍵を特殊な方法で入手しているのだとすれば、かなりグレーな手段ではないかと想像するのはたやすい状況だ。
ソフトウェアはダウンロード販売で、試用期間は3カ月とこうしたソフトウェアとしてはかなり長め。現在の価格は39.95ドルに設定されている(10月1日以降は、試用期間をやめて59.95ドルになると予告されている)。製品は登場以来頻繁にバージョンアップを繰り返しており、当初のバージョン1.0から、現在は1.8.4まで到達している。要求されるMac側の仕様はMac OS X 10.5以降で、プロセッサはCore 2 Duo 2.4GHz以上、PC向けで構わないが2倍速以上のBDドライブももちろん必要になる。
いずれにせよ、前述の理由から現段階ではオススメできるソフトウェアとは言いがたい。仮に権利関係がすべてクリアだったにせよ、買ったその日にちゃんと再生できないBDタイトルが存在するのも事実だからだ。場合によってはソフトウェアを購入したはいいものの、サポートが受けられないまま製品自体がなくなってしまう可能性もある。ジャンルとしてはそれなりのニーズがある製品なので、権利関係も含めてすべての条件や課題がはっきりするまでは、慎重に動向を見極めるようにしたい。
□Macgoのサイト(英文。日本語ページへのリンクもある)
http://www.macblurayplayer.com/
そして、やはりMacworldは「お祭り」と言うことで、展示会場の一角には歴代のApple製品を展示するコーナーが用意されていた。しかし残念ながら、展示品はいずれも保管状態がいまひとつ。元々、中国ではApple製品がさほど流通していなかったという背景があると想像される。また、中国で初開催ということを意識したのか、台湾のmoshiは自社ブースで同社製品の歴史を辿るコーナーを用意していた。
いわゆるOld Mac、あるいはApple II等のコレクションを展示。残念ながら保管状態はいまひとつ | 台湾のmoshiも自社のブースで、同社の歴代製品を一堂に展示していた。 |
(2011年 9月 28日)
[Reported by 矢作 晃]