米IDGの会長Mike Kissberth氏 |
Macworld ASIAの基調講演は、会期初日と2日目の午前中にそれぞれ開催された。カンファレンス側のスケジュールは基調講演を午前に行なって昼食をはさみ、午後にはMobile Internet、Developer、Audio、Video、Photographyなどそれぞれの分科会にわかれて行なわれるようになっている。
初日の基調講演では、まず中国での初開催を祝してのオープニングセレモニーが行なわれた。そして基調講演に先立ち、協賛する北京市人民政府の要人から祝辞があった。この祝辞は2日目の講演冒頭にもあり、こんなところにも中国でのイベントらしさを見ることができる。
初日の基調講演は、まず主催者側である米IDGの会長Mike Kissberth氏がプレゼンを行なった。同氏はMacworld Expoが1985年のサンフランシスコ開催以来、25年にも及ぶ歴史ある展示会であることを述べるとともに、同社がApple製品に対してフォーカスし続けていることを強調した。そして「Apple製品の素晴らしさは箱を開けるときからスタートする」と紹介。また製品ジャンルごとの売り上げグラフなども示し、iPhone、iPadの突出した伸びとラップトップ製品の堅調な成長をポイントとして挙げ、さらに、今回のMacworld ASIA開催の直接要因でもあるAPAC(アジア-パシフィック)市場での2009年比で9倍にも及ぶ突出した伸びなどにも着目した。
一方で、先日発表されたスティーブ・ジョブズ氏のCEO退任にも触れて、意識調査としてはスティーブ・ジョブス氏の存在がApple製品の購買意欲に影響を与える割合は徐々に低下傾向にあったとして、ティム・クックCEOになったこれからも、消費者動向に大きな影響を与えることはないとしている。
●Angry Birds大ヒットの要因をプロダクトマネージャが紹介
Mighty EagleことCEOのPeter Vesterbacka氏は台風の影響で到着が遅れた。代わって講演したBad Piggy Bank ManegerのJulien Fourgeaud氏 |
続いては、「Angry Birds」がマルチプラットホームで大ヒットしているRovioからのプレゼンテーション。当初はRovio EntertainmentのMighty Eagle(役職名。事実上のCEO)であるPeter Vesterbacka氏による講演が予定されていたが、前日の台風15号の影響で日本から中国への到着が遅れているということで、同社のBad Piggy Bank Maneger(役職名。事実上のプロダクトマネージャ)、Julien Fourgeaud氏が代わって講演を行なった。
3人の学生によるゲームに対する情熱からスタートしたというRovioは、Angey Birdsで大ヒットを得るまでに51本のゲームを制作。Angry Birdsのヒットは常に情熱を持ち続けてきたゆえの結果だと振り返った。またAngry Birdsのヒット要因としては、わかりやすいキャラクター、下手な人も上手な人もそれぞれに楽しむことができるゲームとしての柔軟性、タッチパネル入力デバイスでの馴染みやすさなどを挙げた。一方で、(Seasonsなどで追加され続けている)ストーリーも重要だとしている。
さらに当初は地元であるフィンランドなど北欧を中心としたローカル市場からスタートしたコミュニティも世界中へと拡大。ユーザー間での情報交換にソーシャルサービスが使われていることや、Rovio自身も含めて積極的なQ&Aとユーザーからの要望を聞く姿勢などをヒットの要因と分析している。また、世界中では1日あたりで延べ2億分もの時間を費やしてプレイされているゲームが、果たしてカジュアルゲームに分類されるのかという疑問も投げかけた。もちろんこれは3.5億本というインストールベースがあってこそのカジュアルゲームということの裏返しでもある。
マルチプラットホーム展開については、スマートフォンからスマートTV、そしてコンソールゲーム機までに対応するのに加えて、Barns & Noblesの電子書籍端末(と言っても中身はAndroid)にも搭載されることを紹介した。他にもHTML5で書かれたChrome版や、友人とスコアランキングを競えるGoogle+といった、ブラウザベース、SNSサービスに対応した事例を紹介。またNFCを利用することで、まだLOCKされているレベルのUNLOCKキーを友人間でシェアできるという新しい試みも紹介した。
さらにARを使ったNOKIAショップでのプロモーションや、Angry Birds 2.0(バージョンではなく、いわゆる次のステップを示す)としてゲームを超えたエンターテインメント分野全般での市場構想などについても触れた。具体的には世界各地で開催されているファンイベントへの協賛や、キャラクター商品の開発などだ。この日の講演では触れられていないが、日本のポケモンジェットと同様に、FinAir(フィンランド航空)の機体にはAngry Birdsのキャラクターが描かれたりしている。また中国市場に向けては、Seasonsで追加された最新のストーリーがアジアを舞台にしたものであることなどを紹介した。加えて、アジア地域をはじめ世界各地では海賊版となるぬいぐるみやマスコットなどが氾濫しているのが現状だが、ライセンス商品の許諾依頼には応じるとしてRovioへのコンタクトを呼びかけている。
●次期iPhoneはHSPA+を搭載か? China Unicomのスライドに登場
中国におけるiPhoneキャリアであるChina Unicomの研究所副所長、黄文良(Huang Wenliang)氏によるプレゼンテーションは、3G網においてiPhoneは更に精彩を増すという内容となった。そして冒頭のスライドにはちょっとインパクトのある内容が含まれていたのがポイントである。
2007年に販売が始まった初代iPhoneではEdgeベースで、下り最高速度が480kbpsだったものが、iPhone 3G、3GS、4においてW-CDMAに対応して下り最高7.2Mbpsになったというもの。China Unicomもそれに応じて3G網の整備を行なっているという。そしてスライドの右端、2011年の部分にはiPhone 5の機種名と、HSPA+への対応、下り最高速度21Mbpsの記載があった。スライドによればChina Unicom自体のネットワーク整備はHSPA+に対応すべく2010年から行なわれており、すでに中国全土で2.6万基地局がHSPA+に対応しているとされているが、次期iPhoneのスペックとしてキャリア側からHSPA+対応が紹介されたのは初めてと思われる。
China Unicomからはほかにも、Appleとの協力により中国におけるiPhone利用の便宜を図るためのキャリア独自Appの開発や、店舗の整備などが紹介された。
そのほか、初日、2日目の基調講演で紹介された主なプレゼンテーションは写真を中心に紹介する。
(2011年 9月 28日)
[Reported by 矢作 晃]