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XYZプリンティング、世界初のコンシューマ向けFDM方式フルカラー3Dプリンタ

ダヴィンチ Color

 XYZプリンティングジャパンは21日、FDM方式(熱溶解積層方式)で1,600万色のフルカラー出力が可能な3Dプリンタ「ダヴィンチ Color」を発表した。ここでは、都内で開催された発表会の様子をレポートする。

 台湾XYZprintingは、3Dプリンタの開発・製造を行なっているメーカーであり、デスクトップ型3Dプリンタ市場では、2015~2016年の2年連続世界シェア1位を達成している。XYZプリンティングジャパンは、そのXYZprintingの日本法人として、2014年に設立され「ダヴィンチ」シリーズをはじめとする、同社の3Dプリンタを日本国内で販売している。

 今回発表されたダヴィンチ Colorは、2017年9月1日からベルリンで開催された「IFA 2017」で展示されたものだが、国内でのお披露目はこの発表会が初めてとなる。

FDM方式でフルカラー出力を実現したのは世界初

 まず、XYZprintingのディレクターであるFrank Ho氏が、ダヴィンチ Colorにかけられていた布のベールを取り払い、プレゼンテーションを行なった。

 Frank Ho氏によると、XYZprintingは2年前から、フルカラー出力が可能な3Dプリンタの開発をはじめ、FDM(FFF)方式の3Dプリント技術とインクジェット方式の2Dプリント技術を組み合わせることで、フルカラー3Dプリントを実現するアイデアを思いついた。より美しくフルカラー3D出力ができるように、フィラメントの材料やインクの成分について検討を重ね、製品化にこぎ着けたという。

 石膏粉末タイプやインクジェットタイプなどの、フルカラー出力が可能な3Dプリンタはこれまでにも存在しているが、これらは1,000万円を超えるものが中心であり、筐体も大きく個人が使えるような製品ではなかった。しかし、ダヴィンチ Colorでは、透明なPLAフィラメントを積層した後、インクジェット方式の2Dプリンタで色を付けることで、大幅な低価格化と小型化を実現した。こうした方式の3Dプリンタが一般向けの製品として発売されるのは、世界初とのことだ。ダヴィンチ Colorでは新たに44件の特許を取得し、さらに18件以上の特許の申請準備を行なっているという。

 これまでのダヴィンチシリーズは、XYZwareと呼ばれるソフトを使って出力を行なっていたが、ダヴィンチ Colorでは、XYZmakerと呼ばれる3Dモデリングソフトから出力するように変更されている。また、タブレットで動作するXYZmakerのモバイル版も現在開発中とのことだ。

最初に流れた動画の1シーン。XYZプリンティングは3Dプリンティングの進化をもたらした
今や、3Dプリンティングはカラーの時代へと突入する
新製品にかけられていた布のベールを、Frank Ho氏らが取り払った
ベールが取り払われ、新製品の「ダヴィンチ Color」が姿を現した
XYZprinting ディレクターのFrank Ho氏がプレゼンテーションを行なった
FDM(FFF)方式の3Dプリント技術とインクジェット方式の2Dプリント技術を組み合わせることで、フルカラー3Dプリントを実現するアイデアを思いついた
フルカラー出力の精度を向上させるために、フィラメントやインクの開発には苦労した
XYZprintingはこれまで3Dプリンタ関連の特許を298件所有しているが、ダヴィンチ Colorでは新たに44件の特許を取得。さらに18件以上の特許の申請準備を行なっている
ダヴィンチ Colorでは、XYZmakerと呼ばれる3Dモデリングソフトから出力する(従来のダヴィンチシリーズはXYZwareと呼ばれるソフトから出力していた)
タブレットで動作するXYZmakerのモバイル版を開発中とのこと

プラットフォームの自動校正機能やマグネット式プラットフォームを採用

 続いて、XYZプリンティングジャパン ディレクターのSherry Liang氏が、より詳しい製品説明を行なった。要旨は以下のとおりだ。

 CONTEXTの調査結果によると、XYZprintingは、2015年、2016年の2年連続でデスクトップ型3Dプリンタマーケット市場でシェア1位を獲得。XYZprintingのシェアは、2015年が21%、2016年は25%であり、右肩上がりで増加している。

 ダヴィンチ Colorは、世界初のFDM方式のフルカラー3Dプリンタであり、YMCKの4色インクにより1,600万色相当のフルカラー出力が可能である。また、ダヴィンチ Colorは、単にフルカラー出力が可能になっただけでなく、プラットフォームも大きく進化している。

 1つは、プラットフォームの自動校正(オートキャリブレーション)機能である。これまでのダヴィンチシリーズは、校正機能はあったものの、それはプラットフォームがどれだけ傾いているかを数値で表すもので、実際の修正は人間が手でネジを回して手動で行なう必要があった。

 それに対して、ダヴィンチ Colorでは、プラットフォームの下側に傾きを調整するためのモーターが2個搭載されており、メニューから校正を選ぶだけで、プラットフォームの傾きを調整し、エクストルーダーとの距離も適切に調整してくれるので、非常に便利だ。

 また、プラットフォームは、自由に曲げることができるマグネット式シートをテーブルに載せて使う構造になっており、造形が終わったらマグネット式シートを取り外して曲げるだけで、スクレイパーなどを使わずに簡単に造形物を取り外すことができる。こちらも、非常にうれしい改良点だ。

 なお、XYZmakerを利用して、出力可能なデータ形式は、OBJ形式、STL形式、3CP形式、AMP形式、PLY形式であるが、STL形式は色情報を持たないので、カラー出力はできない。もちろん、カラーインクを使わず、通常のFDM方式の3Dプリンタとして利用することも可能だ。同社は、3Dデータ共有サイトも運営しているが、ダヴィンチ Colorの登場にあわせて、3Dカラーデータを多数公開するという。これらの3Dカラーデータは、無料でダウンロードできる。

 最大造形サイズは185×185×150mm(幅×奥行き×高さ)で、積層ピッチは0.1~0.4mmである。利用できる材料は、カラー出力専用PLA(3DカラーインクジェットPLA)と通常のPLA、より強度の高いTough PLA、PETGで、カラー出力を行なう場合は、カラー出力専用PLAYを利用する必要がある。ヒートベッドは搭載していないため、ABSは利用できない。

 5型のカラータッチパネルも搭載しており、操作性もより向上している。

 ダヴィンチ Colorの税別本体価格は、送料、初期設置費用込みで698,000円だが、10月24日までに予約すると550,000円で購入できる。予約は9月21日開始で、販売開始は10月25日を予定している。カラー出力専用PLAフィラメントは600gで4,280円、専用インクは40ccで各色9,800円で販売される。

XYZプリンティングジャパン ディレクターのSherry Liang氏
デスクトップ型3Dプリンタの市場シェアの変遷。2014年は、XYZprintingのシェアは19.95%で2位だったが、2015年にはシェアが21%に上昇して1位となり、2016年にはさらにシェアが上がって25%となった
FFF方式について。熱でフィラメントを溶解して積層する方式。FDM方式とも呼ばれる
ダヴィンチ Colorの特徴。積層した表面にCMYKインクを吹き付けることで、1,600万色のフルカラー出力を実現。
プリントプラットフォームの進化。プラットフォームの下にモーターが2個設置されており、プラットフォームの傾きやエクストルーダーとの距離を自動的に校正してくれる。また、取り外し可能なマグネット式プラットフォームを採用し、出力物の取り外しが容易になった
ダヴィンチ Colorの出力例。ちょっとわかりにくいが、二重の籠のようになっており、内側の籠にも色がついている
XYZmakerを使って3Dデータをスライスし、ダヴィンチ Colorから出力を行なう。ただし、STL形式のデータには色情報は含まれていないため、カラー出力はできない
B2Bだけでなく、個人ユーザーでも手が届く範囲の価格である
カラー3Dデータも、XYZprintingの3Dデータ共有サイトから無料でダウンロードできる
ダヴィンチ Colorの詳細仕様。最大造形サイズは185×185×150mm(幅×奥行き×高さ)で、積層ピッチは0.1~0.4mmである。ヒートベッドは非搭載なので、ABSは利用できない
暫定的な販売チャンネル。代理店経由だけでなく、量販店でも販売されるほか、amazonやXYZプリンティングジャパンのECサイトでも販売される

内部のフレームもより強固になり、造形精度も向上

 発表会では、ダヴィンチ Colorの実機や造形サンプルも展示されていた。本体サイズは、600×581×640mm(幅×奥行き×高さ)であり、これまでのダヴィンチシリーズよりも一回り以上大きい。また、強固なアルミフレームを採用しており、高い剛性と精度を実現。マグネット式シートは薄いが丈夫で、何度も繰り返し使えるとのことだ。上面の右奥にはUSBポートがあり、Wi-Fiドングルを装着することで、Wi-Fi経由での造形も可能になる。

フィラメントリールは右側面に装着する。リールの上にフィラメントフィーダーがあり、フィラメントをエクストルーダーに供給する
ダヴィンチ Colorの内部。左上のインクジェットヘッドにインクカートリッジをセットする
プラットフォームの下にモーターが2基あり、プラットフォームの傾きを自動校正することができる
アルミフレームを採用しており、高い剛性と精度を実現
右上には5型カラータッチパネルを搭載。表記は8カ国語対応で、直感的な操作が可能だ
プラットフォームの上にマグネット式シートを乗せ、その上に造形することで簡単に造形物を取り外せる
このようにマグネット式シートは柔らかいので、曲げて造形物を取り外すことができる
上面の右奥にはUSBポートがあり、Wi-Fiドングルを装着することで、Wi-Fi経由での造形が可能
専用インクカートリッジ。インクはYMCKの4色独立タイプである
ダヴィンチ Colorの造形中の様子。フィラメントを積層したら、インクジェットで上から色を付けるという手順を繰り返して造形する

 造形サンプルについては、以下の写真を見てもらいたいが、表面だけでなく、内部や裏面に色を付けることもできる。たとえば、下の写真で紹介しているチェーンを組み合わせたモナリザなどは、1回の造形でできており、まさに3Dプリンタならではの構造である。

 発色もなかなか良好であり、石膏粉末タイプとは違って細く尖った角なども折れずに造形できる。積層誤差もかなり小さく、3Dプリンタとしての基本性能も十分だ。最初の例のお面の場合、インク1セットで約65個の造形が可能とのことであり、インクのランニングコストも比較的安い。

 フィギュアや模型、住宅模型の作製など、フルカラー出力が可能になったことで、用途も格段に広がったといえる。ダヴィンチ Colorの登場によって、3Dプリンタ市場や3Dプリンタを利用したソリューションがさらに広がることを期待したい。

ダヴィンチ Colorの造形例。このお面は内側にもカラーで文字が印刷されている
お面の造形直後の状態。ここから不要なラフトやサポートを外す。積層ピッチは0.2mmで、造形には7時間30分かかったという
こちらはチェーンを組み合わせてできたモナリザ。こうした立体を造形できるのは3Dプリンタならではだ
チェーンを組み合わせてできているので、このように自由に曲げることができる
色の濃淡の表現もできる
台座と恐竜に色をつけた造形例。サポートとラフトには色がついていないので、その部分を取り外せばよい
こちらも恐竜の造形例だが、尖った角もきちんと造形されている
先ほどの恐竜と形状は同じだが、色が変わると全然違う印象になる