やじうまミニレビュー
ながら使用に便利な無線式リング型マウス
~サンワサプライ「リングマウスプラス」
(2015/10/10 06:00)
マウスやタッチパッドがPCを操作する上で優れたデバイスであることに疑いの余地はない。でもこれらは必然的に“接地できる場所”でなければ使えない代物だ。
立ちながら、寝転びながら、そんな使用方法に耐え得るポインティングデバイス――それが、サンワサプライの「リングマウスプラス」だ。Amazon.co.jpでの購入価格は4,980円だった。
見た目通り指にはめて使う指輪型のポインティングデバイスで、幅2.5cm/奥行き1.9cmと小型ながらバッテリを内蔵。連続駆動時間は約10時間とそれなりに長く、充電時間は1.5時間で済む。当然ワイヤレス接続だが、これには付属のUSBレシーバを使用する。Bluetoothには非対応だ。
PCにレシーバを接続して本製品の電源を入れると、デバイスマネージャーには通常の「HID準拠マウス」として認識される。この状態で問題なく動作するのだが、別途ドライバ込みのWindows用ユーティリティが用意されており、こちらをインストールすることでDPIの設定ができるようになる。DPIは自動可変の「Dynamic」のほか、250/500/750/1,000/1,250DPIの5段階で選択可能。細かい作業をするなら低DPIの方が有利だが、Dynamicでも十分使えるし、広い画面でのカーソル移動が楽だ。
ちなみに本体自体はMac OS Xもサポートするが、一部機能が効かないといった制限がある。また、Android OSでも動いたが、カーソルの挙動が不安定で操作しづらかった。
全部で5個のボタンを装備
一見このリングマウスはカーソル移動とクリックしかできないような単機能デバイスに見えるかもしれないが、実はこの大きさで5ボタンも備えている。
まず1つ目は「中央にある円形の黒いボタン」。ここにはレーザーセンサーが仕込まれており、この上で指を滑らせることでカーソルが動く仕組み。このボタンを押し込めば左クリックとして認識される。押し込み時のストロークは1mmあるかないかくらいだが、押し込むと「カチッ」といったクリック感があるので、押した感触は十分に得られる。
そして、この黒い円形ボタンを取り囲むように上下左右にもボタンがある。
上のボタンは「ドラッグボタン」。ここを押すと左クリックを押し続けた状態になる。つまり何かのアイコンの上で一度ボタンを押して離しても、カーソルを動かすだけでドラッグできるのだ。再度このボタンを押せば左クリックの押下状態が解除され、掴んでいたアイコンはドロップされる。もちろんアイコンだけでなく、文字列の上でこの操作を行なえば文字の範囲選択も可能である。中央の円形ボタンを押し続けることでもドラッグは可能だが、構造上そのままカーソルを動かすのは至難。ドラッグ操作を行なうには必須のボタンと言える。
次に、下のボタンだがこれは「戻るボタン」。Webブラウザ上で押せば、1つ前のページに戻ることができるし、エクスプローラー上なら1つ前の位置のフォルダに移動できる。結構利用頻度が高いボタンだ。
左のボタンは「マウスモード/スクロールモード切替ボタン」。ドラッグボタンと同じくトグル式になっており、一度押せばスクロールホイールを操作するモードに移行する。この状態ではカーソルの移動はできず、アプリケーションのスクロールバーにのみ反応する。再度ボタンを押すことでマウスモードに戻り、カーソルを動かせるようになる。ただ、残念なことに左右スクロールには対応していないらしく、いくつかのアプリで試してみたが微動だにしなかった。
最後に右ボタン。これはそのまま「右ボタン」である。マウスの右クリックと同じ動作をし、メニューなどが表示される。
これら5つのボタンを駆使してカーソルを操り、マウスの役割を果たすのだ。左右どちらかの人差し指に装着して、親指でスリスリと擦るようにして扱う。親指の腹ではなく先端の方で操作すると細かな移動がしやすかった。このほかに、中指に挿して人差し指と薬指で挟むように持つやり方も試してみたが、ほどよい安定感が得られてこちらも悪くない。ここら辺は個人の好みでしっくりくる付け方を探してみて欲しい。
ながら使用のリモコン的操作に好適
それでは、リングマウスプラスで実際に作業をしてみよう。
まずはタイピング。使ったのは一般的なメカニカルキーボードだ。颯爽とキーを打ち込もうとしたその時、もう難があることを察してしまった。Webサイトの製品紹介には装着したままでタイピングできると謳われており、それは便利だなと期待していたのだが、これは条件付きだったようだ。
というのも、文字入力中に指輪のインターフェイス部分がキートップにガツガツ当たってしまうからである。特に数字キーやファンクションキーを押そうと指を伸ばすと確実にヒットする。これは、指輪を上向きに付け替えれば回避可能だ。しかし、そのためにいちいち向きを変えていては使い勝手が悪すぎる。タイピングとカーソル操作の合わせ利用は相性が悪く、この使い方は断念せざるを得なかった。
次はPowerPointを使ってのスライド操作である。どちらかと言えば、こうした使い方が向いているように思える。読者諸氏には企画会議などでプレゼンをされている方も多いかと思うが、プロジェクタでパワポの資料を映し出しながら説明するには、手元のノートPCで操作するよりも、プロジェクタのスライドを直接指さしながらスライドをめくっていく方が説明しやすいし集中しやすいように思う。これを指輪型デバイスでこなしていく。超スタイリッシュである。
で、実際にスライドをめくるには画面を左クリックするだけなので、全く問題がなかった。では「前のページを見せて」などと言われてスライドを戻すにはどうするか。
これには右クリックボタンでメニューを呼び出して「前へ」をクリックしてもいい。でも3ページ戻るとなると大変なので、ここはスクロールモードを利用した方が楽だ。進むのも戻るのもホイール操作だけでできてしまう。ただ、微調整がうまくいかず、戻りすぎたり進みすぎたりする可能性があるのでそこは注意したい。プレゼンの見せ場となるスライドが予期せぬところで表示されてしまったり、ページを戻すのにあたふたしてしまうと、聴衆の興がそがれてしまうだろう。
なお、PowerPoint 2013はバックスペースキーで前のスライドに戻れるが、マウスなどの“戻るボタン”での戻るには対応していないようで、本製品の戻るボタンも動作しない。
とりあえずプレゼンで使えるのは分かったので、布団に寝そべった状態で使ってみた。ちなみに本製品の接続可能距離は10mほどあるので、ちょっとぐらい離れても問題ない。離れた位置にあるディスプレイを見つつブラウジングしてみたが、特に問題なく操作できる。もちろん使い始めは若干操作にもたつくが、慣れてしまえばWebサイトを閲覧する程度の大雑把な操作には十分対応できる。DVDプレーヤーを起動して、映画の見たいシーンだけを探してシークバーを動かしてみたが、こちらも難なく操作可能だった。
ご飯を食べながら、歯を磨きながら……など、この後も色々と試してみたが、利き手が塞がってしまう状況で非常に便利である。気になることを挙げるとすれば、左クリックをする際に微妙に動いた指にセンサーが反応し、若干カーソルも動いてしまうことがあるくらいだろうか。
これが主力のポインティングデバイスとして活躍することはないが、マウスやタッチパッドが使いにくいようなちょっとした状況では大いに利便性を発揮してくれる。リモコン的な操作に向いていると言えるだろう。約5,000円という価格はやや高めだが、今回紹介した使い方や「アレにいいかも」といった何かしらの使い方が思い浮かんだ方は、購入を検討してみてはいかがだろうか。