多和田新也のニューアイテム診断室

PC版登場が近づく「ロストプラネット2 Benchmark」を試す



 カプコンは17日、ロストプラネットシリーズ最新作「ロストプラネット2」のベンチマークツールをリリースした。すでにPlayStaion 3/Xbox 360向けに発売されているタイトルだが、この秋にPC向けがリリースされる。PC版ではDirectX 11(DX11)のテッセレーションやDirectComputeを用いた、よりクオリティの高い描画が行なわれるため、DX11のキラータイトルとしても期待されている。このベンチマークソフトを主要なビデオカードで試してみた。

●DX11/DX9の2モードが用意される

 今回リリースされたのは、ロストプラネット2のゲーム内容を描画するベンチマーク専用ツールである。ロストプラネットシリーズは過去にエクストリームコンディション、コロニーズという2つのタイトルがPC向けにリリースされ、これらはアプリケーション内にベンチマークモードを備えていた。ロストプラネット2は、正式版発売に先駆けて、このゲームを楽しめるか否かを判定できるベンチマークツールがリリースされたわけだ。

 ロストプラネット2は、カプコンが開発するゲームエンジン「MT Framework 2.0」を用いて開発されており、独自エンジンのベンチマークツールということになる。

 ベンチマークツールにはDX9モードとDX11モードが用意される(画面1)。この点は、同じカプコンがリリースしたバイオハザート5ベンチマークやデビルメイクライ4ベンチマークでDX9モードとDX10モードが用意されていたのと同様だ。

 起動するとメインメニューが表示され、ここから「Performance Test」実行すると、「テストタイプA」、「テストタイプB」の選択画面が表示される(画面2、3)。ここで任意のテストを実行する。

【画面1】ロストプラネット2ベンチマークを起動すると、DX9、DX11の各モードを選択可能なランチャーが実行される【画面2】メインメニュー。テストを実行するPerformance Tes”と、設定画面を呼び出すPC Settingsが用意される【画面3】テストはテストタイプAとテストタイプBの2つ。GPUの性能比較などにはテストタイプBが適している

 テストタイプA/Bの違いだが、これもバイオハザード5ベンチマークと同じような分類になる。すなわちテストタイプAの場合は、AI処理を含んだより実際のゲームに近い処理が行なわれ、そのために描画内容は実行ごとにかなり異なるものとなる。

 一方のテストタイプBはAI処理などは含まず、同一シーケンスのプロセスが実行される。

 ともかく、使用環境でロストプラネット2がどの程度のフレームレート、速度感で利用できるかをより実戦的に確認するならテストタイプA。フレームレートに加えて、ビデオカードの性能比較や、ハードウェアやドライバがロストプラネット2にどのぐらい最適化されているかの指標を得るならテストタイプBといった使い分けが妥当といえる。

 結果はフレームレートの推移と平均フレームレート、そのフレームレートをランク付けしたアルファベットが表示される(画面4、5)。ランクについて正確な情報はないが、ざっくりと確認した限りでは、15fpsを下回るとD、15~30fpsの範囲ならC、30~60fpsの範囲ならB、それを超えるとAと判定されるようである(0.1fps単位でのしきい値の正確な値はチェックしていない)。

【画面4】テストタイプAの結果画面。3つのシーンが実行され、その平均フレームレートとランクが出力される【画面5】テストタイプBの結果画面。こちらは1つのシーンのみで、AI処理などが入らない同一シーケンスが実行される

 解像度や描画クオリティなどの設定画面も用意されている。ここからは画面解像度やリフレッシュレートのほか、アンチエイリアスの指定、モーションブラーの有効化/無効化の指定、影(シャドウ)、テクスチャ品質、演出レベル、DX11フィーチャーのクオリティ指定が行なえる(画面6、7)。もちろん、DX9モードで起動した場合、DX11フィーチャーの項目は表示されない。

 設定はマイドキュメントのCapcomフォルダ内にconfig.iniとしてプレーンテキストで保存されており、より細かな設定をチェックすることができる。ただ、異方性フィルタリングについてはアプリケーション上、設定ファイル上にも指定がなく、ドライバによる設定を行なうことになる。

 このほかの機能としては、ベンチマーク実行中に[F1]キーを押すことでテッセレータのクオリティを無効、Low、Middle、Highで切り替えることができ、[F2]キーを押すことでワイヤーフレーム表示の有効化、無効化を切り替えることができるようになっている。

【画面6】設定画面。解像度、アンチエイリアスなどゲームタイトルでは一般的な設定項目が並ぶ【画面7】設定画面の下部は描画クオリティ関連となる。それぞれ、Low/Middle/Highの3段階の調整が可能で、これに加えて影、演出、DX11フィーチャーは無効化も可能となっている【画面8】マイドキュメント以下に保存される設定ファイル。ツール上の設定はいわばプロファイルとなっており、内部ではより詳細な設定が施されていることが分かる

 ちなみに、ロストプラネット2ベンチマークではDX11のフィーチャーを使い、テッセレーションによるジオメトリレベルでのオブジェクトの表現、DirectComputeによるシミュレーションを行った敵キャラクタのソフトボディや水面の表現などを行っている。参考までに、2つのシーンにおけるDX9モード、DX11モードのDX11フィーチャーをLowに設定した場合、Highに設定した場合の画面キャプチャを紹介しておく。

【画面9】DX9モードの描画。DX11モードに比べると敵キャラクタの描画がシンプルなほか、水面の光の反射が異なってくる
【画面10】DX11モードでDX11フィーチャーをLow設定にしたもの。これでも敵キャラクタや水面の描画はかなり変わっている
【画面11】DX11モードでDX11フィーチャーをHigh設定にしたもの。とくに敵キャラクタの変化に注目
【画面12】別シーンにおけるDX9モードの描画
【画面13】DX11モードでDX11フィーチャーをLow設定にしたもの。DX9モードとは水面の描画が大きく異なっている
画面14 DX11モードでDX11フィーチャーをHigh設定にしたもの。DirectComputeでシミュレートされた水面の動きが顕著なものに

●DX11対応ビデオカード6製品で性能比較
【写真1】テストに使用したビデオカード

 それでは、DX11に対応した主要なビデオカードにおいて本ベンチマークツールを試してみた結果を紹介する。環境は表のとおりで、ビデオカードはAMD、NVIDIA両社からリファレンスカードを借用している(写真1)。余談ながら、AMDからはRadeon HD 5970も借用していたのだが、このカードの環境ではロストプラネット2ベンチマークを起動しても何も表示されず、数秒後に強制終了されるトラブルが発生したためテストできていない。

 テストはDX11モードとDX9モードの両モードに加え、DX11モードはDX11フィーチャーをLow、Highに切り替えた場合も測定している。解像度は1,280×800ドット、1,680×1,050ドット、1,920×1,200ドットで、それぞれの解像度でアンチエイリアス(AA)および異方性フィルタリング(AF)を指定しない条件、4xAAと16xAFを指定した条件をテストする。AAはツール上の設定画面から、AFは各ドライバの設定画面で指定している。

【表】ベンチマーク結果
ビデオカードRadeon HD 5870
Radeon HD 5850
Radeon HD 5770
GeForce GTX 480
GeForce GTX 470
GeForce GTX 460 (1GB)
グラフィックドライバCatalyst 10.7GeForce Driver 259.32β
CPUCore i7-860(Turbo Boost無効)
マザーボードASUSTeK P7P55D-E EVO(Intel P55 Express)
メモリDDR3-1333 1GB×4(9-9-9-24)
ストレージSeagete Barracuda 7200.12 (ST3500418AS)
電源CoolerMaster RealPower Pro 1000W
OSWindows 7 Ultimate x64

 テスト結果はグラフ1~3となった。まずDX11モードに関してだが、こちらは全般にGeForce勢が良好な傾向を見せている。GeForce勢に比べるとRadeon勢はAA/AF適用時のスコアの落ち込みも大きめだ。分かりやすいところでは、DX11フィーチャーをHighに設定した際、AA/AF適用なしの場合ならRadeon HD 5850とGeForce GTX 460が同等程度のフレームレートになるのに対し、AA/AFを適用するとGeForce GTX 460が良好な結果を見せる。

 また、DX11フィーチャーのクオリティを下げると、余計に差が開くのは意外な結果となった。以前にHeaven Benchmarkを用いて、テッセレーションクオリティを変化させてGeForce GTX 480とRadeon HD 5870の性能差をチェックするテストを実施したが、その際にはテッセレーションクオリティが高いほどGeForce GTX 480の優位性が増すという結果が出た。

 ロストプラネット2ベンチマークでは、DX11フィーチャーのクオリティを下げたほうがGeForce GTX 400シリーズの優位性が増す傾向が出ている。Radeon HD 5870をGeForce GTX 460が上回る結果が出ているのは、この傾向を如実に示すものといえるだろう。このベンチマークにおけるDX11のフィーチャーはテッセレーションだけを使っているだけではないことが影響したと思われる。

 DX9モードでは描画負荷が低いこともあってかDX11モードに比べて全体の性能差が縮まる結果となった。低解像度ではRadeon HD 5870がGeForce GTX 480を上回る結果も見せている。

【グラフ1】ロストプラネット2ベンチマーク・DX11モード(DX11フィーチャー:High)
【グラフ2】ロストプラネット2ベンチマーク・DX11モード(DX11フィーチャー:Low)
【グラフ3】ロストプラネット2ベンチマーク・DX9モード

 以上、簡単ではあるが、リリースされたばかりのロストプラネット2ベンチマークを試した結果である。MT Frameworkは過去のバージョンも含めてNVIDIA製ビデオカードで最適化が進んでおり、そうした性格が感じられる結果ではある。

 そうした最適化云々を抜きにしても、国内のDX11対応タイトルとして期待している。本稿で示したような静止画では伝わりにくいが、DX11フィーチャーをHigh設定にした際に見られる水面の動きや敵キャラクタの肌の雰囲気は、DX9モードとは明らかに一線を画している。

 ビデオカードに興味があるユーザーや海外タイトルを楽しむほどのゲーマーならばDX11対応ビデオカードをすでに導入しているかも知れない。ただ、冒頭でキラータイトルという表現を用いたとおり、このソフトウェアを高クオリティで楽しみたいという欲求が動機となって、国内においても幅広いユーザ層にDX11対応ビデオカードの導入が広がるきっかけになるかも知れない。