西川和久の不定期コラム

ドスパラ「Diginnos Stick DG-STK2S」

~Cherry Trail世代のAtom搭載スティックPC!

 ドスパラは2月5日、Cherry Trail世代のAtom x5-Z8300を搭載したスティックPC「Diginnos Stick DG-STK2S」を発表した。以前のモデルはBay Trailだったので、世代交代した形となる。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

GPUの性能アップ、IEEE802.11acとUSB 3.0が強化ポイント

 今回キーポイントとなるSoCは、Atom x5-Z8300。4コア4スレッドでクロック 1.44GHzから最大1.84GHz。キャッシュは2MB、SDPは2W。Cherry Trailと呼ばれ、Bay Trailの後継に相当する。

 違いは22nmプロセスルールから14nmへ、Intel HD GraphicsがGen7からGen8となり、最大4倍の16EUとなった(Atom x5-Z8300は12EU)。加えてHEVC(H.265)や4Kのハードウェアデコードにも対応するなど、主にグラフィックス関連が強化された。

 発表自体は2015年3月と割と早かったものの、実際このタイミングで出荷されたのはMicrosoftの「Surface 3」だけ。結構長い間、採用したPCが登場しなかった。2015年の秋頃から他社からも出始め、やっと最近スティックPCまで順番が回ってきた格好となる。IntelのサイトからAtom x5-Z8300はローエンドモデルに相当することが分かる。

 ご紹介するドスパラ「Diginnos Stick DG-STK2S」の仕様は以下の通り。

【表】ドスパラ「Diginnos Stick DG-STK2S」の仕様
SoCAtom x5-Z8300(4コア4スレッド、クロック 1.44GHz/1.84GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2W)
メモリ2GB(DDR3L-RS 1600)
ストレージ32GB/eMMC
OSWindows 10 Home(32bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、HDMI(音声出力はHDMI経由のみ)
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0
インターフェイス USB 2.0×1、USB 3.0×1、Micro USB(電源用)、microSDカードスロット(SDXC)
サイズ/重量113×40×18.3mm(幅×奥行き×高さ)/約75g
その他冷却用マイクロファンあり
直販価格18,520円(送料・税込)

 メモリは2GB/DDR3L-RS 1600、ストレージはeMMCで32GB。OSは32bit版のWindows 10 Home。メモリ2GBでも64bit版を搭載するPCが多い中、いろいろな意味でフットプリントの小さい32bit版を採用しているのは正解だろう。

 グラフィックスは先に書いた通り、Intel HD Graphics。外部出力用としてHDMIを備えている。なお音声出力ポートがないため、サウンドに関してはHDMIが兼ねている。できればスピーカー付きのディスプレイを用意したいところだが、スピーカーがなかったり、HDMI→DVI変換などを使った場合は、別途USBやBluetoothでサウンドデバイスを接続可能だ。

 ネットワークは有線LANはなく、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n/ac。Bluetooth 4.0にも対応している。IEEE 802.11acは旧タイプではなかっただけに嬉しい強化ポイントと言えよう。

 その他のインターフェイスは、USB 2.0×1、USB 3.0×1、Micro USB(電源用)、microSDカードスロット(SDXC)。USB 3.0があり、高速な外部ストレージ、外部ディスプレイ、GbEなどにも対応可能。また単純にUSBポートが2つあるのも扱いやすい。ファンには日本電産コパル製の高品質・高信頼性ファンを採用しており、安心して運用できる。

 サイズは113×40×18.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量約75g。直販価格は、税込・送料込で18,520円。2万円を切っているので手軽に購入可能だ。

 同社のサイトには、本体のみのモデル以外に、Diginnos Stick DG-STK2S 液晶セット、 Diginnos Stick DG-STK2S Microsoft製 無線キーボードセットも用意されている。手持ちで接続可能なディスプレイやキーボードがない場合は、これを利用する手もありだろう。

表/右/上。表に電源ボタン。放熱用のメッシュが結構ある。HDMI出力はキャップ付き。右サイドはmicroSDカードスロットと電源用のMicro USB
裏/左/上。左サイド奥がUSB 3.0、手前がUSB 2.0。下側は何もない
ACアダプタなど付属品。ACアダプタのサイズは約56×50×25mm(同)、重量116g。プラグがアダプタ式だ。出力は5V/3A。HDMI延長ケーブル付属
ScreenBeam Mini2(Miracastアダプタ)、Chromecastとの比較。同じスティック型とは言え、かなりサイズが違い結構大きい
実測で75g。仕様とピッタリ

 筐体は写真からも分かるように軽々片手で握れるスティックタイプだ。ただ一言でスティックタイプと表現しても、ScreenBeam Mini2やChromecastと比較するとずいぶん大きいのが分かる。

 ここまで大きいと、HDMIコネクタの負荷などを考え、ディスプレイ直付けではなく、付属の延長ケーブルを使うケースがほとんどだろう。であれば無理にスティックタイプに詰め込まなくても、放熱面でも融通が利く、超小型のPCでいいのでは……と純粋に思ったりもする。

 表にLEDの埋め込まれた電源ボタン。HDMI出力はキャップ付きだ。右側面はmicroSDカードスロットと電源用のMicro USB。左サイド奥がUSB 3.0、手前がUSB 2.0を配置。表、裏、左右に結構放熱用のスリットが入っている。重量は実測で75gと、仕様とピッタリだった。

 付属のACアダプタは、サイズ約56×50×25mm(同)、重量116gと本体よりも重くなっているのは皮肉なものだ。出力は5v/3A。モバイルバッテリで駆動するのは少々つらいだろう。プラグの部分が着脱式で各国対応できるようになっているが、付属するのは国内用のみとなる。

 振動はほぼ皆無。ノイズは普通の位置からでは全く聞こえず、ヘッドフォン並みに本体を耳に近付けるとファンの音がする。通常用途では問題のないレベルだ。発熱はベンチマークテスト中も暖かい程度で熱くはならなかった。冷却用のファンが結構効いている。

 スティックタイプが出始めた当初は、ファンの有無や形状など、主に熱に気を使っていた部分が多くみられたものの、いろいろな経験を得た上で、Cherry Trail世代では一発目からうまく熱をコントロールできているようだ。

割と普通に使えるスティックPC

 OSは32bit版のWindows 10 Home。初期起動時のスタート画面(タブレットモード)、デスクトップ共に素のまま。PDFの「Diginnosかんたんリカバリー」のショートカットがあるだけと実にシンプルだ。

 ストレージは32GB/eMMCの「Toshiba 032G72」。C:ドライブのみの1パーティションで28.57GBが割り当てられている。空きは、標準アプリも含め全てをアップデートした状態で18.6GBだった。回復パーティションは450MB。あまり余裕がないため、データ類はmicroSDカードかNASなどネットワーク上に置くことになるだろうか。

 Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 3165」。BluetoothもIntel製だ。

スタート画面(タブレットモード)はWindows 10 標準
起動時のデスクトップ。Windows 10 標準で「Diginnosかんたんリカバリー」のショートカットだけ配置
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージは32GB/eMMCの「Toshiba 032G72」。Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 3165」。BluetoothもIntel製
eMMCのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで28.57GBが割り当てられている

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリはなし。デスクトップアプリは、「マカフィーインターネットセキュリティ」のみ。加えてPDFで「Diginnosかんたんリカバリー」が入っている程度だ。eMMCの容量が32GBと少ないこともあり、ほぼ素のWindows 10となっている。

Diginnosかんたんリカバリー(PDF)
マカフィーインターネットセキュリティ

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2 Home(accelerated)、CrystalMark(4コア4スレッドで条件的には問題ない)、Google Octane 2.0の結果を見たい。winsat formalはメモリ3GB未満だと上限が5.5になるため、合わせてバンド幅も記載している。

 winsat formalの結果は、総合 4.1。プロセッサ 6.1、メモリ 5.5(9550.11621MB/s)、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.95。PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1307、CrystalMarkは、ALU 21548、FPU 18136、MEM 16390、HDD 19941、GDI 3878、D2D 1922、OGL 2385。参考までにGoogle Octane(Edge)は6951。

 Cherry Trailの特徴通りグラフィックスの性能が向上している。またプロセッサもそれなりの速度なので、実際操作しても割とストレスなく作動する環境だった。

 PCMark 8 バージョン2 Home(accelerated)/詳細を見ると、クロックはほぼ1.84GHzで作動しているのが分かる。Casual GamingとVideo Chatだけ急激にクロックが落ちているが、替りにGPUが活発化し温度が一番高い状態になる。温度は68~80℃辺り平均70℃前後、結構高めだ。冷却用ファンを搭載しているので、積極的にプロセッサを作動させているのだろう。

winsat formalコマンドの実行結果。4.1。プロセッサ 6.1、メモリ 5.5(9550.11621MB/s)、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.95
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1307
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)/詳細。クロックは0.4GHzから最大の1.84GHz。ほぼ1.84GHzで作動している。プロセッサの温度は68~80℃辺りと結構高めだ
CrystalMarkの結果。ALU 21548、FPU 18136、MEM 16390、HDD 19941、GDI 3878、D2D 1922、OGL 2385
Google Octane 2.0(Edge)。6951

 「割と普通に使えるスティックPC」と、妙な見出しを付けてしまったが、これは結構本音だ。Bay TrailのAtomは、タブレットやスティックタイプも含む超小型PCを触っても「やっぱりAtom」感が強かった。「ライトな用途であれば」と書く時は、割とそんなところだ。

 しかしCherry Trail(Braswellも含む)になると、操作しても「やっぱりAtom」があまり感じられないのだ。それより先にメモリ2GBやストレージがeMMCの制限に気が取られる。

 もちろん最新のCoreプロセッサには及ばないが、5年ほど前のNehalem世代3桁型番Core i搭載メインストリーム・ノートPCと比較しても遜色ないレベルにあるのはベンチマークテストの通り。加えてUSB 3.0やビデオハードウェアデコードに対応している分、便利で処理も軽くなる。

 ローエンドのAtom x5-Z8300でこれなのだから、Atom x7-Z8700搭載のスティックタイプがあれば面白そうだ。メモリは4GBだとさらにGoodだろうか。


 以上のようにドスパラ「Diginnos Stick DG-STK2S」は、Cherry Trail世代のAtom x5-Z8300、メモリ2GB、ストレージ32GB/eMMCを搭載したスティックタイプの超小型PCだ。IEEE802.11acやUSB 3.0に対応し、冷却用ファンありと、前モデルで不満だった部分が解消され一層使いやすくなり、パワーも上がっている。

 仕様上で気になる部分もなく、Cherry Trailなスティックタイプを探しているユーザーにお勧めの逸品と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/