西川和久の不定期コラム
Core i5-6600K+MSI Z170A GAMING M5でメインマシンを組む
~Skylake搭載PCを新調、その使い心地は?
(2015/8/29 06:00)
これまで筆者が主に使っていたPCは、Mac mini(Mid 2011)。Sandy Bridge世代のIntel Core i5-2520M搭載機だ。元々Haswell搭載のMac miniが出た時にリプレイスする予定だったものの、蓋を開けてみればメモリがロジックボード固定で増設不可。一気に購入意欲がなくなりそのまま使い続けていた。しかしSkylakeの登場でCPUは4世代も古くなり、加えてWindows 10リリース、時期的にも夏休み……ということで、重い腰を上げPCを1台組んでみた。今回はその工作レポートをお届けしたい。
ゲームをしない筆者がゲーミングマザーにした結果
8月上旬のタイミングで購入可能な第6世代Coreプロセッサは、Core i7-6700Kとi5-6600Kの2つに限られている。また、同時に出荷されたIntel Z170チップセット搭載マザーボードは、プロセッサがK型番の倍率ロックフリーのため、ゲーミングモデルがほとんど。ゲームをしない筆者にとって、これらはムダな数万円のコストアップとなってしまう。
9月以降にリリースされるであろう、K無しの第6世代Coreプロセッサを待ってもよかったが、夏休みモードが終わり仕事が忙しくなると、環境の入れ替えが大変なので、この機に組んでしまうことに決定。
だが、考えてみれば、OCはゲーム用途だけでなく、例えば通常は非OCで作業し、エンコードやRAW現像のバッチ処理など、少しでも時間を短縮したい時にOCするという手もあり、あながち無意味なわけでもない。ならばとマザーボードもゲーミング用をチョイスした。
以下が今回購入したリストになる。プロセッサとメモリ、マザーボード以外は手持ちで使い回すことが可能だったが、Mac miniを4年使った経緯もあり、次にまた組むとなると、同じ程度の年数が経っている可能性もあるため、全て新調している。総額で見ると、4年間使うとして約2,000円/月程度の計算だ。
構成 | |
---|---|
プロセッサ | Core i5-6600K(4コア、3.5GHz) |
メモリ | Crucial 8GB DDR4-2133×2 |
マザーボード | MSI Z170A GAMING M5 |
ストレージ | Samsung SSD 850 EVO M.2/120GB |
OS | Windows 10 Home(Windows 8.1からのUpgrade) |
ケース | Scythe RANA2 |
電源 | Scythe 剛力短2プラグインSPGT2-500P/A(500W/80PLUS BRONZE) |
CPUクーラー | Scythe SHURIKEN リビジョンB SCSK-1100 |
プロセッサはCore i5-6600K。4コア4スレッドでクロックは3.5GHzから非OC時最大3.9GHz。キャッシュは6MBでTDPは91W。常用PCとしてはTDPが高く、普段長時間付けっ放しのため電気代が気になるものの、他に選択肢が無いので仕方ない。
ただ、後述するが、ネットやテキスト入力レベルの操作であれば、システムとしての消費電力は然程上がらないことを確認。少しほっとしている。性能はi7の方が高いのは分かっているが、高価なので今回は見送った。
メモリはDDR4-2133 8GB×2の計16GB。8月に入って一気に値段が下がり、DDR3並の価格となったので、これは非常に助かった。
マザーボードは「MSI Z170A GAMING M5」。この製品を選択した理由は、別件で少し触ったとき、Windowsのネットワーク処理をオフロードできる「Killer E2400」を使ったGigabit Ethernet「GAMING LAN」が好印象だったのと、オーディオ系のGNDを独立させつつ「ALC1150」をシールド、電解コンデンサにオーディオ用のニチコンFG、さらにラインバッファにオペアンプを搭載するなど、「AUDIO BOOST3」と呼ばれるロジックが面白かったから。また3万円を超えるゲーミングマザーボードが多い中、3万円を切る価格も魅力的だった。
ストレージはM.2接続の「Samsung SSD 850 EVO M.2」120GBモデル。SSDはSATAタイプの手持ちがいくつかあり、使い回すことが可能だったが、せっかくマザーボードにM.2ソケットがあるので新たに購入。とはいえ、既に予算オーバー気味だったので大容量モデルは選べなかったが、多くのデータはNASにあり、OSとアプリ、若干の作業領域があれば事足りるので、120GBでも特に問題は無い。
と、ここまでは、ある意味一般的なチョイスかも知れないが、ここから先は少し変わる。せっかくOCできるのだから、大型のケースにして、CPUクーラーも巨大(もしくは水冷)で効果の高いものを……となるところを、ATX対応ケースとしては最小クラスの「Scythe RANA2」を購入。
ケースのサイズから、必然的に電源、CPUクーラーはコンパクトなものに限られ、それぞれ「Scythe 剛力短2プラグインSPGT2-500P/A」、「Scythe SHURIKEN リビジョンB SCSK-1100」を選択した。
このケース、写真からもわかるように、高さはATXマザーボードのサイズほぼそのまま。通常マザーボートの下(もしくは上)に入る電源ユニットを、横手に配置している。ドライブベイもかなり省略してあり、奥行きもあまり無い。これは電源ユニットの奥行きも同様で、123mmのショートタイプとなっている。これらの工夫により、高さと奥行きを抑えた結果、MicroATX用ケースと変わらないサイズを実現している。
大きさ的に取り回しが楽で、しかも軽い。昔と違い、3.5インチHDDや5インチのDVD/BDドライブは不要で、CPU内蔵のIntel HD Graphics 530は(ゲームさえしなければ)十分な性能。増設するとしても、2.5インチSSDもしくはM.2なのでスペース的な問題も無い……と、今時のパーツ構成によって、個人的には十分な構成となった。
唯一残念なのは、CPUクーラーのスペースが実測でソケットの約110mm四方、高さ最大117mmまで(ケースの仕様)の制限から、あまり大きいものを選べなかったこと程度だ。仕様上ギリギリのサイズだが、107×136×117mm(幅×奥行き×高さ/搭載ファン含む)の「Scythe SCIOR-1000」も載るかも知れない。とはいえ、先に書いたように積極的にOCする予定もないため、今回は手堅さを優先した。
ケース購入時から予想していた問題だったが、SATAおよびUSB 3.0コネクタが電源ユニット(の固定金具)に干渉し、ケーブルを挿すことが困難だった。フロントパネル用のUSB 3.0ピンヘッダは完全に装着が不可能で、SATAコネクタは、上段なら何とか収まった。どちらも当面使わないので個人的には問題ないが、この手のケースを使う際には、事前にマザーボードの主要コネクタの位置や向きを確認した方が無難だろう。
なお、このRANA2は既に販売終了となっており、流通在庫しか残っていない。これに代わる候補としては、先日AKIBA PC Hotline!に掲載された、Mini-ITXケース並のサイズでATXマザーが入るキューブ型ケース「RM1」などがカッコよくていいかも知れない。
UEFIに関しては、本来ここでOCの細かい設定を行なうのだが、今回は一通り作動の確認だけ行ない、BIOSのバージョンが上がっていたのでアップデートした程度だ。
なお、Windows 7をインストールする際は、SETTINGS > Advanced > Windows OS Configuration > Windows 7 InstallationをEnableに設定する必要があるので要注意。
実際に同設定を行なわずにWindows 7のセットアッププログラムを実行して試してみたところ、最初の(言語や時刻、キーボードの種類などを選択するパネル)部分でキーボードが使えず、デッドロックした。
OSはWindows 8.1からWindows 10 Homeへアップグレード
OSは64bit版のWindows 10 Home。ライセンスが余っていたWindows 8.1からのアップグレードだ。
手順はまずWindows 8.1をインストールし、初期起動後、マザーボード付属の「MSI DRIVER SOFTWARE SETUP」から必要な項目を選びセットアップ、デバイスマネージャーに不明なデバイスが無いことを確認後、Windows Updateを待たずに「MediaCreationTool」を使用してWindows 10 Homeへアップグレードした。
余談になるが、Windows 10のリリース後、本機を含む計8台のPCにWindows 10をインストールした。内訳はWindows 7からが3台、Windows 8.1からが3台、Windows 10 Insider Previewが2台となる。
この内、Windows 7搭載機に関しては、もともとAtom+IONやCeleron、Core 2 Quadなど、もう現役として使っていないほぼ放置状態のPCだが、全てのマシンでトラブルなく、調子よくWindows 10が動作している。
中でもCore 2 Quad Q9550とGeForce GT 720(ファンレス)、8GBメモリと70GB SSD搭載PCは、快適にWindows 10が動くため、ついつい電源を入れがちだ。動作が遅ければ使わないのだが、いかんせん普通に使える分、何となくもったない感じがしてしまう。しかしTDP 95W、アイドル時の消費電力が今回のシステムのおよそ倍……と、電気代を考えるとやはり使用は止めるべきだろう。
以下にマザーボード付属のユーティリティの画面キャプチャを掲載したので、参考にして欲しい。
「Killer Network Manager」は、ネットワーク使用量トップ5アプリケーション、使用量・ダウンロード/アップロード、帯域制限などを表示・管理できるアプリケーションだ。
「MSI COMMAND CENTER」は、UEFIでできる多くの部分をWindows上でも可能にするアプリ。ゲーミングマザーボードらしく、ファンの回転数や温度、プロセッサの各コア状況、電圧変更、Ratio/Base clockの変更なども行なえる。
「GAME BOOST」は、OCに必要な難しいこと抜きのメーカーお任せのOCモードで、i5-6600Kの場合、4.1GHzまでブーストすることができる。今回、筆者もOCに関してはこれだけを利用している。ただしこれをオンにすると、一旦再起動が必要となる。
「MSI GAMING APP」は、システムの動作モードを変更するソフトウェアで、「サイレントモード」はWindowsのコントロールパネル/電源のバランスと同じ、「ゲーミングモード」は常時クロックを3.9GHzに固定、「OCモード」は先のGAME BOOSTに切り替える。またここには無いが、コントロールパネル/電源を省エネに切り替えると、クロックを約0.8GHzに固定でき、ほぼアイドル時+α程度でシステムを運用できる。
テキスト入力処理やWeb閲覧、フルHD程度の動画を再生している程度の範囲であれば、瞬間的に上がることはあるものの、およそこのレベルに収まる。この時の消費電力はシステム全体で50Whほど。これなら長時間作動させても然程気にならないレベルだ。またプロセッサの温度も30度前後で安定している。
「MSI LIVE UPDATE 6」はドライバやユーティリティの更新用、「MSI FAST BOOT」は文字通りFAST BOOTのオン/オフを設定する。
簡易OC「GAME BOOST」の効果は?
OCの効果を見るまえに、非OC状態で「winsat formal」コマンド、PCMark 8 バージョン2、3DMark、CrystalDiskMark、CrystalMark(4コア4スレッドなので条件的には問題ない)を測定した。winsat formalはWindows 10でゲーム用グラフィックスが無くなったので、Windows 8.1でも測定、OC時の値も掲載した。
Windows 8.1 | Windows 10 | Windows 10(OC) | |
---|---|---|---|
総合 | 6.8 | 6.8 | 6.9 |
プロセッサ | 8.2 | 8.2 | 8.3 |
メモリ | 8.2 | 8.2 | 8.3 |
グラフィックス | 6.8 | 6.8 | 6.9 |
ゲーム用 | 6.8 | n/a | n/a |
ストレージ | 8.15 | 8.15 | 8.15 |
まずwinsat formalの値だが、Intel HD Graphics 530は性能が向上し、総合スコアが6.8まで上昇している。プロセッサやメモリ、ストレージのスコアは8.xなので、まだバランスは取れていないが、全て8.xにするにはGTX 9xx系を搭載する必要があり、内蔵グラフィックスとしてはかなり頑張っている方だと思われる。
OCは、思いきりチューンしたわけでなく、先に書いた「GAME BOOST」設定の4.1GHz。定格の3.9GHzからは200MHzのクロック上昇で、劇的に速くなるわけではない。ストレージ以外の各スコア+0.1ポイントといったところだ。
PCMark 8 バージョン2のHome acceleratedテストは3788。3DMarkはIce Stormが89084、Cloud Gateが8844、Fire Strikeが1154となった。Cloud Gateでもシーンによっては30fpsを切っていたので、処理能力が向上したとはいえ、Intel HD Graphics 530はヘビーなゲーム用途には向いていない。
CrystalDiskMarkは、Seqリード507.4(MB/sec)/ライト492.1(同)、512Kリード453.0(同)/ライト392.9(同)、4Kリード40.68(同)/ライト123.8(同)、4K QD32リード364.6(同)/ライト349.3(同)と、SSD仕様上の「シーケンシャルアクセス、リード最大540MB/sec、ライト最大500MB/sec」がほぼ出ている。
CrystalMarkは、ALU 94568、FPU 87777、MEM 92437、HDD 43290、GDI 24364、D2D 6740、OGL 19430。少し前に掲載したCore i7-6700K搭載のマウスコンピュータ「MDV ADVANCE MDV-GZ7700X」には一歩及ばない感じだ。
CrystalMarkのOC(GAME BOOST)時は、ALU 99979(非OC時94568)、FPU 92901(同87777)、MEM 89671(同92437)、HDD 44496(同43290)、GDI 25269(同24364)、D2D 7449(同6740)、OGL 20236(同19430)。メモリ以外全面的に上昇している。
ザックリ計算して、(当たり前だが)+200MHz分となる約5%の向上。他のテストもほぼ同じで、1.05を掛けた値の近似値となった。プロセッサの温度は最大65度程度。この状態でもファンの音はほとんど聴こえず、個人的に静音性は十分合格レベルだ。
試用期間が短く、まだデータを集めていないので、断言はできないものの、この結果から予測すれば、実作業のエンコードやRAW現像のバッチ処理なども、1時間かかるところがOCで約3分の短縮となる(ファイルI/Oが大量に入るのでそこまで縮まらないだろうが)。
確かに速いには違いないが、かなり微妙だ。10分以上差があれば大きいと言えるが、そのためには先の計算なら+800MHzとなる4.7GHzまでOCしなければならないため、今回のCPUクーラーでは難しいということで実験していない。
以上のように、Intel Core i5-6600K+MSI Z170A GAMING M5で組んだ新しいメインマシンだが、+200MHzのOC程度ではあまり実践的な効果は無いものの、USB 3.1 Gen1/Gen2/Type-C対応やM.2 SSD、Killerによる快適なネットワークなど、コンパクトな筐体にSkylakeのパワーと最新デバイスが満載で、個人的には満足している。仕事の状況によっては、ケースを大きくしてCPUクーラーをパワーアップ、OCを追い込むことも可能だ。さて、この構成で何年使うだろうか。