西川和久の不定期コラム
NEC、10.1型WUXGA「LAVIE Tab W TW710/CBS」
~Cherry Trailとデジタイザペンを搭載した2-in-1
(2015/9/24 06:00)
NECは9月15日、Cherry TrailのAtomを搭載し、デジタイザペンにも対応した10.1型タブレットを発表した。10月中旬より販売が開始される。一足先に試作機を触る機会が得られたので、試用レポートをお届けしたい。
Atom x7-Z8700/メモリ4GBとデジタイザペンが魅力
今回発表されたのは、デジタイザペン付きでタブレット単体の「LAVIE Tab W TW710/CAS」と、それにキーボードを加えた「LAVIE Tab W TW710/CBS」の2機種。それ以外のスペックはOfficeも含め全く同じだ。
本機のキーワードとしては、Cherry Trail、メモリ4GB、デジタイザペン、解像度1,920×1,200ドットの10.1型IPS式液晶となるだろうか。これまで、Atomと言えばBay Trail、メモリも多くは2GBというものが大多数を占めていただけに、やっと世代変わりしそうな雰囲気だ。
今後もメモリに関してはこのサイズのタブレットだと2GB搭載機が多いと思われるが、OSのフットプリントが小さくなったとは言え、その上で動くアプリ(例えばChromeでタブを多く開くだけでかなりの消費量となる)、そして内蔵グラフィックス機能のIntel HD Graphicsとのメモリ共有を考えると、やはり4GBは欲しいところ。4GBあれば大抵のことはストレスなくできてしまう。
今回手元に送られてきたのは、後者のキーボード付きモデル「LAVIE Tab W TW710/CBS」。主な仕様は以下の通り。
NEC「LAVIE Tab W TW710/CBS」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Intel Atom x7-Z8700 (4コア4スレッド、クロック 1.6~2.4GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W) |
メモリ | 4GB(LPDDR3-1600) |
ストレージ | 64GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics |
ディスプレイ | 10.1型IPS式1,920×1,200ドット(光沢あり)、10点タッチ対応、Micro HDMI出力(最大3,840×2,160ドット) |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n/ac(867Mbps)、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス(本体) | 120万画素前面/500万画素背面カメラ、USB 3.0、microSDカードスロット、音声入出力、システムコネクタ、ステレオスピーカー(1W+1W) |
センサー(本体) | 加速度センサー、地磁気センサー、ジャイロセンサー、照度センサー |
インターフェイス(キーボード) | システムコネクタ |
サイズ/重量(本体) | 256.5×177×9.1mm(幅×奥行き×高さ)/約597g |
サイズ/重量(キーボード込み) | 256.5×197.4×16.95~23.95mm(同)/約1,147g |
バッテリ駆動時間(本体) | 約11.5時間 |
その他 | デジタイザペン、Office Mobile プラス Office 365 サービス付属 |
価格 | 84,800円前後 |
プロセッサはCherry Trail世代のAtom x7-Z8700。4コア4スレッドでクロックは1.6GHzから最大2.4GHz。キャッシュは2MBでSDPは2Wだ。Bay Trailの製造プロセスルールである22nmに対して14nmとなり、メモリクロックも1,333MHzから1,600MHzへ。より速く、より省エネとなっている。
OSは64bit版のWindows 10 Home。ストレージは64GBだ。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics。実行ユニット数が16となり、Bay Trailと比較して、最大2倍の性能を実現している。外部出力としてMicro HDMIを装備し、この時の最大解像度は3,840×2,160ドットとなる。
ディスプレイは、光沢ありの10.1型IPS式1,920×1,200ドット。10点タッチ対応だ。小型のタブレットで横が1,920ドットだとフルHD(1,920×1,080ドット)のものが多く、縦に使うと妙に間延びしてしまうが、Surface 3の3:2とまではいかないものの縦1,200ドットは扱いやすいアスペクト比だ。
無線LANは、IEEE 802.11a/b/g/n/acで、IEEE 802.11acは867Mbps対応だ。Bluetooth 4.0も搭載している。
そのほかのインターフェイスは、120万画素前面/500万画素背面カメラ、USB 3.0、microSDカードスロット、音声入出力、システムコネクタ、ステレオスピーカー(1W+1W)。Cherry Trailになり、USBが3.0になったのもメリットと言えよう。センサーは加速度センサー、地磁気センサー、ジャイロセンサー、照度センサーを搭載している。
付属のキーボードには汎用的なインターフェイスはなく、本体と接続するシステムコネクタのみとなる。
デジタイザペンは両モデルに標準装備で2,048段階筆圧対応だ。直径9.5mmと太めで、単6形乾電池(アルカリ)1本を必要とする。キーボードの右奥に収納でき、さらにUSBポートに挿せるペンホルダーが付属する。
本体のサイズは256.5×177×9.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量約597g。キーボードと合体時は256.5×197.4×16.95~23.95mm(同)、約597g+約550gの計1,147gと1kgを少し超えてしまう。バッテリ駆動時間は約11.5時間。キーボード側にバッテリは内蔵していない。
価格は「Office Mobile プラス Office 365 サービス」付きで84,800円前後。キーボード無しで71,800円前後だ。8型のタブレットが2万円前後で買えることを考えると、大手国内メーカー、画面サイズと解像度、メモリ+2GB、デジタイザペン、Officeなどのプラスαを考慮しても若干高めだろうか。
本体は背面がメタリックなシルバー、キーボードも同じ仕上げてなかなかクールだ。本体の重量は約597g。片手でスッと持ち上がり、ずっしり重い感じはない。ただキーボードと一緒になると計1,147gとなり、10.1型と小ぶりな分、逆に重く感じてしまう。
また写真のキャプションにも書いたが、閉じた状態は単にキーボードの後ろにパネルを引っ掛けて置くだけなので、手前でロックされておらず、双方を持ち歩くには便利とは言え、何かの拍子に分離して落としてしまいそうで、ちょっと不安になる。パネルの傾きも変えることもできず、扉の写真の角度固定となる。
前面中央上に120万画素カメラ、中央下にWindowsボタン。背面左上に500万画素カメラ、下両側面にスピーカー。上側面に電源ボタン、下側面にシステムコネクタ。左側面はロックポートのみで、右側面に音声入出力、音量±ボタン、microSDカードスロット、Micro HDMI、USB 3.0、電源入力と、コネクタ類が集中している。
ACアダプタはサイズ約91×27×35mm(同)、重量約175g。ミッキータイプのコネクタが使われている。特筆すべきは充電時間。約2時間(正確には2.2時間)でフル充電が可能だ。後述するBBench実行後、0%から100%までが驚くほど速かった。
10.1型IPS式パネルは明るさ、コントラスト、そして視野角も十分で、品質の高いパネルが使われていると思われる。1,920×1,200ドットの解像度なので、文字などのジャギーもほとんど目立たない。10点タッチもスムーズだ。
キーボードはJIS標準配列(85キー)の着脱式。磁石が使われているものの、軽い力で直ぐ外れるタイプとなる(と言って下に向けて落ちるほど弱くもない)。またバッテリは内蔵せず、システムコネクタ以外の汎用コネクタはない。
仕様上のキーピッチは18.5mm、ストローク1.8mmとほぼ一般的なノートPCのキーボードと変わらない。たわむこともなく、ストロークもそれなりにあるので快適に入力可能だ。タッチパッドはその分、少し小さいが、1枚プレートのボタン無しを採用している。
デジタイザペンは、後述するソフトウェアから分かるようにワコム製だ。またペン自体の太さが一般的な丸形ボールペンとほぼ同じで、重みもそこそこありバランス良く扱うことができる。デスクトップでポインティングデバイスとして使っても全く問題なく、さすがと言ったところ。収納はキーボード右の奥に収納スペースがある。
ただ個人的にはHP「Elite x2 1011 G1」搭載のデジタイザ(同じくワコム製だがペン側にバッテリ無し)の方が使いやすかった。この点はフィーリングや用途にもよると思うので、書き心地は店頭などで試して欲しい。
USB 3.0に刺さるペンホルダーは、アイディアとしては申し分ないものの、外すとなくしそうで、と言って付けっ放しだと根元から折れそうな感じがする。ペン同様、どこかに収納できればいいのだが……。
カメラは軽く試したところ、一頃から比べるとずいぶん良くなっている。ただ背面でも500万画素、大きいのでホールドし辛い、反応が鈍い……など、ハイエンドクラスのスマートフォンと比較するとまだまだ。おそらくこの手のデバイスを所有するユーザーは、スマートフォンもそれなりのものを持っていると思われ、ならばスマートフォンを使った方がいいだろう。
振動やノイズは皆無だが、長時間使用すると、背面右側半分が結構暖かくなる。サウンドは背面の小さいスリットからも分かるように、仕様上1W+1Wの割りにパワーがなく、何とか鳴るレベルだ。せっかく画面が美しいだけに、もうひと押し欲しいところか。
Cherry TrailのAtomで従来より少し高速作動
OSは64bit版のWindows 10 Home。タブレットモード時のスタート画面は、Office MobileとNEC以降がプリインストールとなる。デスクトップは、壁紙の変更と、国内メーカー機らしくショートカットが少し多めの配置だ。もちろん2-in-1なのでキーボードの着脱で、タブレットモードのON/OFFが自動的に行なわれる。ただしキーボードを付けたまま起動するとタブレットモードになってしまう。試作機なので調整しきれてないのだろう。
同じAtomでもCherry Trail、しかもメモリ4GB搭載ということもあり、従来のBay Trailでメモリ2GBのマシンとは確実に1ランク上の作動となる。HDMIで外部ディスプレイへ接続すれば、簡易デスクトップではなく、普通のデスクトップとして十分機能する。
ストレージは64GBのSanDisk「SDW64G」が使われ、C:ドライブのみの1パーティションで約56.99GBが割り当てられ、空きは34.5GB。ただし、同社のサイトにある仕様表には「約56GB/約29GB」と書かれており、空き容量が出荷版とは異なる可能性がある。予めご了承いただきたい。
プリインストールのソフトウェアは、ストアアプリは、「LAVIEアシスト」、「LAVIEフォト」、「LAVIE動画ナビ2.0」、「My Time Line」、「NAVITIME」、「Note Anytime」、「PhotoDirector Mobile」、「PowerDirector Mobile」、「SmartVision/PLAYER」、「マカフィーセントラル」、「楽天gateway」などと、ユニバーサルWindowsプラットフォームアプリの「Office Mobile」となる。
デスクトップアプリは、「パーティション設定ツール」、「バッテリ診断ツール」、「おすすめ設定」、「ペンバッテリ残量通知ツール」、「らくらく無線スタートEX」、「再セットアップメディア作成ツールといったツール系と」、「ebi.BookReader4」、「WinShot」、「ファイナルパソコン引越し」、「マカフィーリブセーフ・インターネット」、「ワコムペン」など。ストアアプリも含め、ストレージが64GBの割りにはソフトウェアが満載だ。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、BBenchの結果を見たい。CrystalMark(4コア4スレッドで条件的には問題ない)のスコアも掲載した。なお、PC Mark8も測定したが、試作機ということもあり、値が不安定だったので、掲載は見合わせた。
winsat formalの結果は、総合 4.9。プロセッサ 6.6、メモリ 5.9、グラフィックス 4.9、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.9。ただしメモリに関しては4GBに満たない時は強制的に5.9となる。Bandwidthは10,336.00465MB/secだった。
BBenchは、本体単独で電源オプション:バランス、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残4%で37,612秒/10.4時間。何時もの残5%で37,248/10.3時間となった。仕様上、約11.5時間なのでほぼその通りだ。ただし、バックライト最小だと結構暗く、実際はもう少し短くなると思われるが、10.1型のパネルでこれだけ駆動できれば十分だろう。
以上のようにNEC「LAVIE Tab W TW710/CBS」は、10.1型IPS式1,920×1,200ドットのパネルと、Cherry TrailのAtom x7-Z8700/メモリ4GBを搭載、そしてデジタイザペン対応の2-in-1だ。バッテリ駆動時間も実測で10時間以上。仕様の範囲内で気になる部分もなく、完成度の高いマシンに仕上がっている。フル充電の時間が早いのも見逃せないポイントだ。
価格的にはもうひと頑張りして欲しいところであるが、国内メーカー製でいろいろな用途に利用できる2-in-1もしくはタブレットを探しているユーザーにお勧めの1台と言えるだろう。