西川和久の不定期コラム

デル「Venue 8」

~LTE対応モデルでも税別27,980円の8型Androidタブレット

デル「Venue 8」

 デル株式会社は7月17日、Atom Z3480を搭載した8型Androidタブレットを2モデル発表、順次発売する。特徴的なのは、LTE対応モデルで27,980円(税別)と安価なことだ。今回はもう一方のWi-Fiモデルが編集部から送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

Atom Z3480を搭載したAndroidタブレット

 ここのところAtom搭載のAndroidタブレットが多数登場している。今回ご紹介するタブレットも、SoCにAtom Z3480を搭載。2コアで最高クロック2.133GHz(Burst時)と、以前に紹介したASUS「MeMO Pad 7」(Atom Z3745、1.33GHz/1.86GHz、4コア)よりSoCの総合性能は劣るものの、ワンランク大きい液晶サイズと高解像度、IEEE 802.11ac対応、しかも内容のわりに安価……と、魅力的な製品に仕上がっている。主な仕様は以下の通りだ。

デル「Venue 8」の仕様
SoCAtom Z3480(Burst周波数2.133GHz、2コア)
メモリ1GB(LPDDR3-1066)
ストレージ16GB(eMMC)
OSAndroid 4.4
ディスプレイIPS式8型液晶ディスプレイ、1,920×1,200ドット(WUXGA)、タッチ対応
グラフィックスPowerVR G6400
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0
その他Micro USB、microSDカードスロット、200万画素前面カメラ、
500万画素背面カメラ、ヘッドフォン/マイクコンボミニジャック
センサーGPS(LTE版のみ)
バッテリ17.29Whr(4,550mAh)/1セル
サイズ/重量130×216×8.95mm(幅×奥行き×高さ)/約338g
価格22,980円(税別)/Wi-Fi版、27,980円(税別)/LTE版

 SoCは先に書いた通りAtom Z3480。2コアでBurst時クロック2.133GHzとなる。Windows向けのBay TrailとCPUコアは同じ「Silvermont」だが、内蔵グラフィックスがPowerVR G6400に変更された「Merrifield」だ。メモリは1GB、ストレージは16GBのeMMCを搭載。

 ディスプレイはIPS式の8型液晶パネルを採用し、解像度は1,920×1,200ドット(WUXGA)と高解像度。外部出力用のMicro HDMIやMHLはない。

 インターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0、Micro USB、microSDカードスロット、200万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ、ヘッドフォン/マイクコンボミニジャック。IEEE 802.11acに対応しているのがうれしいポイントと言えよう。microSDカードスロットは、SD/SDHC/SDXC対応で最大64GBまでをサポート。センサーとしてGPSも搭載している。

 バッテリは17.29Whr(4,550mAh)/1セルを内蔵。駆動時間は公開されていないが、Atomなので長時間駆動が期待できる。この点については後半で検証したい。

 サイズは130×216×8.95mm(幅×奥行き×高さ)、重量約338g。今回のWi-Fiモデルは22,980円(税別)でカラーバリエーションはブラックのみ。LTEモデルは27,980円(税別)でカラーバリエーションはブラックとレッドの2種類。その差たった5,000円であればLTEモデルの方が売れそうだ(レッドがあるのも魅力的)。

前面。中央上に200万画素カメラ。下のボタンはソフトウェア式
背面。上部中央に500万画素カメラ
上/右側面。上部側面にヘッドフォン/マイクコンボミニジャックと電源ボタン。右側面にMicro USB、音量±ボタン、microSDカードスロット(LTEモデルではここにSIMカードスロットも入る)。左側面は何もない
付属品など。USB式のACアダプタとUSBケーブル。ACアダプタはサイズ43×40×25mm(幅×奥行き×高さ)。重量33g
重量は実測で336g
Nexus 7(2013)との比較。7型と8型と1サイズの違いだが随分大きい。下側面のメッシュの部分はスピーカー

 筐体は冒頭の写真からも分かるように、片手で持つにはギリギリのサイズだ。7型と比較して僅か1サイズだが随分違う。裏には細かい溝があり滑り難いよう工夫されている。

 前面には中央上に200万画素カメラ。下の3つのボタンはソフトウェア式だ。背面の中央上には500万画素カメラがある。

 上側面はヘッドフォン/マイクコンボミニジャックと電源ボタン。右側面にMicro USB、音量±ボタン、microSDカードスロット。LTEモデルの場合ここにSIMカードも入るようになっている。左側面は何もなく、下側面のメッシュの部分にスピーカーが埋め込まれている。多くのタブレットでは下側面にMicro USBを配置しているが、右側面にあるのは珍しいレイアウトだ。

 付属のUSB式ACアダプタのサイズは43×40×25mm(幅×奥行き×高さ)。重量33gと小型だが、一般的なUSBポートからも充電可能だ。

 IPS式の8型液晶は明るさ、コントラスト、発色、視野角全て良好で、7型と比べると、サイズが大きい分、写真も動画も迫力がある。また解像度も1,920×1,200ドットと申し分なく、HD解像度前後のタブレットとは一味違う満足度だ。

 振動やノイズに関しては皆無だが、長時間使うと若干暖かくなる。ただ、熱いと思うレベルではないので気にならないだろう。サウンドは十分にパワーがあり、MaxxAudioの効果なのか音の抜けも良い。これまで試したタブレットの中では上位に位置付けられるクオリティだ。

カメラはAF搭載。露出補正やホワイトバランスなど一般的な機能もある
編集機能は外部アプリを利用
500万画素カメラのサンプル(曇天)。解像度は1,920×2,560ピクセル。フルオートで撮影(3mm、ISO33、f/2.4、1/70秒)

 500万画素の背面カメラは、AFを搭載し、露出補正(-2~+2)、場所、カウントダウンタイマー、画像サイズ(5M/3M/2M/1N/VGA)、ホワイトバランス(白熱灯/蛍光灯/AUTO/昼光/曇り)、撮影モード(スポーツ/夜景/夕焼け/パーティー)に対応。編集に関しては外部アプリを利用する。

 曇天で撮影したサンプルを掲載したが、ご覧のように花の色が飽和しており、あまり自然な感じではない。また、手ぶれ補正もなく、筐体サイズも大きめのため安定した持ち方が出来ない。写りも含め、あまり期待しない方がいいだろう。

パフォーマンス、バッテリ駆動時間ともに問題なし

 Androidの正確なバージョンは4.4.2。メーカーに確認したところ4.4系で搭載した新しいランタイムARTには未対応なので注意して欲しい。

 ストレージは10.58GB中空きは9.89GB。音楽や動画はmicroSDカードに退避させて運用することになる。

 初期起動時の画面は壁紙が異なり、若干のフォルダやアプリへのショートカットが増えているだけでAndroid 4.4系そのものだ。クイック設定や通知エリアもまったく同じ動作となる。

 5画面あるホーム画面は1/5と5/5が未使用。2/5は電源管理ウィジェットとPocketCloud、3/5はいくつかのショートカットとフォルダー、4/5はアナログ時計ウィジェットと設定を配置している。このままではシンプルすぎて使いにくいため、ある程度のカスタマイズが必要だと思われる。

ホーム画面2/5。電源管理ウィジェットとPocketCloud
ホーム画面3/5。いくつかのショートカットとフォルダー
ホーム画面4/5。アナログ時計ウィジェットと設定
Googleアプリフォルダ。Google+、Playムービー&TV、Playニュース、Playゲーム、ドライブ、写真、ハングアウト
Productivityフォルダ。DropboxとPOLARIS Office 5
設定/ストレージ。計10.58GBで空き9.89GB
設定/タブレット情報。バージョンは4.4.2
通知エリア。MaxxAudioのコントロールが追加されている
MaxxAudio

 プリインストールソフトウェアは、「カメラ」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「ダウンロード」、「ドライブ」、「ハングアウト」、「ブラウザ」、「マップ」、「メール」、「音声検索」、「時計」、「写真」、「診断ツール」、「設定」、「電卓」、「名刺認識」、「連絡帳」、「Chrome」、「Dropbox」、「Evernote」、「Gmail」、「Google」、「Google+」、「Google設定」、「Inside Venue」、「MaxxAudio」、「Movie Studio」、「Playゲーム」、「Playニューススタンド」、「Playストア」、「Playブックス」、「Playミュージック」、「Playムービー&TV」、「PocketCloud」、「POLARIS Office 5」、「Skitch」、「YouTube」。

 Android 4.4標準アプリに加えて、Inside Venue(サイトへのショートカット)、Dropbox、Evernote、POLARIS Office 5など、いくつか実用的なアプリが追加されている。いずれにしてもGoogle Playに対応しているので、必要に応じてアプリをダウンロードすれば良いだろう。

工場出荷時のアプリ1/2
工場出荷時のアプリ2/2
Inside Venue
PocketCloud
POLARIS Office 5

 ウィジェットは「アナログ時計」、「あすすめのコンテンツを楽しむ」、「カレンダー」、「デジタルクロック」、「ドライブ」、「ドライブのショートカット」、「ドライブのスキャン」、「ハングアウト」、「フォトギャラリー」、「ブックマーク1/2/3/4」、「ミュージックプレイリスト」、「メール」、「メールフォルダ」、「経路を検索」、「再生・マイライブラリ」、「書籍」、「設定をショートカットとする」、「電源管理」、「連絡先」、「Dropboxフォルダ」、「Evernoteのショートカット」、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Now」、「Google Playニューススタンド」、「Google Playブックス」、「Google Playミュージック」、「Google+ユーザーの場所」、「Google+投稿」、「Google検索」、「Playストア」、「POLARIS Office 5」、「YouTube」が用意されている。

ウィジェット1/6
ウィジェット2/6
ウィジェット3/6
ウィジェット4/6
ウィジェット5/6
ウィジェット6/6

 ベンチマークテストは、AnTuTu 安兎兎ベンチマークとGPU BENCHMARKの結果を掲載した(カッコ内はNexus 7 2013/4.4.4/ART)。

 結果は、総合 29101(19978)。Multitask 5391(3324)、Dalvik 2597(1179)、CPU Int 1715(2265)、CPU Float 2435(2034)、RAM Operation 1359(1106)、RAM Speed 2622(1749)、2D 1637(1636)、3D 8992(4966)、I/O Storage 1683(1084)、I/O Database 670(635)。

 GPU BENCHMARKは、Fill Testが6199、High Polygon Modelが369、Many Modelsが426、Per Vertex Lightingが2060、Per Vertex Lighting & Specularが2261、Per Pixel Lighting & Specularが2640、Per Pixel Lighting & Specular & Normal Mapが2504、YEBIS Resolution 420x234が320、YEBIS Resolution 800x450が300、YEBIS Resolution 1280x720が195だった。

 AnTuTu 安兎兎ベンチマークのグラフを見ると上から6番目。比較対象に使用しているNexus 7(2013)よりもかなり高い性能となる。

 参考までにGoogle Octance 2.0の結果も掲載したかったが、後半でChromeブラウザごと落ちてしまうので測定できなかった。この件は、プリインストール時のChromeブラウザだけでなく、アップデート後も同じ。またJavaScriptを多用していると思われるサイトでもしばしば落ちる。Chromeブラウザはアプリの中でもよく使うだけに気になる部分だ。

AnTuTu 安兎兎ベンチマーク1/2。総合 29101。Multitask 5391、Dalvik 2597、CPU Int 1715、CPU Float 2435、RAM Operation 1359、RAM Speed 2622、2D 1637、3D 8992、I/O Storage 1683、I/O Database 670
AnTuTu 安兎兎ベンチマーク2/2。上から6番目と高スコア
GPU BENCHMARK。スコアは6199/369/426/2060/2261/2640/2504/320/300/195

 バッテリ駆動時間は、音量・輝度50%、音量50%に設定し、ローカルのHD動画を繰り返し再生したところ、残1%でちょうど8時間だった。LTEモデルの場合、モデムをオンにしていると、一般的にここでかなり電源が食われため、もっと短くなるだろう(いろいろなスマートフォンを使った経験では、感覚的にモデムオフとオンで2倍程度違う)。


 以上のようにデル「Venue 8」は、Atom Z3480を搭載した8型Androidタブレットだ。ARTに非対応、(アップデートで直るだろうが)Google Octance 2.0後半のChromeブラウザが落ちる以外は特に欠点らしい欠点もなく、非常にバランスの良い製品に仕上がっている。

 今回は試用できなかったが、LTEモデルが27,980円と言うこともあり、MVNOのSIMカードを使い、何処でもネットに接続できるタブレットが欲しいユーザーにお勧めしたい逸品だ。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/