■西川和久の不定期コラム■
オンキヨーデジタルソリューションズ株式会社は4月25日に、3月19日に発表したスレートPC「TW3A-A31」のメモリとSSDの容量を強化した3モデルを追加発表し、5月中旬より順次出荷を開始した。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けする。
●Celeron、Core i3/i7を選べるスレートPC3月19日に発表された3モデルは、Core i7-2677M(TW3A-A31C77H)、Core i3-2367M(TW3A-A31C37H)、Celeron 867(TW3A-A31E87H)のプロセッサを搭載。全モデル、メモリやSSDなどの仕様は共通で、メモリ2GB、SSD 32GB、11.6型1,366×768ドットのマルチタッチ(静電容量式)液晶パネル、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0+HS、USB 2.0、miniHDMI出力、SDカードスロット、130万画素Webカメラ、ヘッドフォン出力を装備。3軸加速度センサー、照度センサーを内蔵している。
それぞれ価格は119,800円、94,800円、84,800円。この時点において、第2世代Core i7を搭載したスレートPCは世界初だった。
そして4月25日、メモリ 4GB、SSD 64GBへ容量を倍増したモデルが追加された。Windows 8を見越した対応だろう。今回届いたのはCeleron 867/メモリ2GB/SSD 64GBの「TW3A-A31E88H」だ。主な仕様は以下の通り。
CPU | Intel Celeron 867(2コア/2スレッド、クロック1.3GHz、キャッシュ 2MB、TDP 17W) |
チップセット | Intel HM65 Express |
メモリ | 2GB/PC3-10600/1333MHz DDR3 SDRAM 204ピンSO-DIMM(1スロット空き0) |
SDD | 64GB |
OS | Windows 7 Home Premium SP1(32bit) |
ディスプレイ | 11.6型マルチタッチ(静電容量式)液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | Intel HD Graphics、mini HDMI出力 |
ネットワーク | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0+HS |
その他 | USB 2.0×1、SDカードスロット、130万画素Webカメラ、ヘッドフォン出力、3軸加速度センサー、照度センサー |
バッテリ | リチウムイオンバッテリ(約6.5時間) |
サイズ/重量 | 299×209×18mm(幅×奥行き×高さ)/約1.09kg |
価格 | 89,800円 |
プロセッサはCeleron 867。2コア2スレッドでクロックは1.3GHz。Hyper-Threading、Turbo Boostなどには非対応でSandy Bridgeアーキテクチャとしてはローエンドのタイプとなる。冒頭にも書いたように、Core i7-2677MとCore i3-2367Mを搭載したモデルもあるので、用途や予算に応じて選ぶことができる。
チップセットはIntel HM65 Express。メモリは2GBでストレージは64GB SSD。OSは32bit版のWindows 7 Home Premium SP1。軽い作業ならメモリ2GBでもWindows 7は使えるものの、できれば4GBは欲しいところ。今回4GBのモデルも追加されたが、Core i7の最上位モデルだけであり、Core i3とCeleron機に関しては2GBに留まっている。また4GBの時は、オプションとして64bit版も選べた方が良いだろう。
ディスプレイは、光沢タイプの11.6型マルチタッチ(静電容量式)液晶パネルだ。解像度は1,366×768ドット。外部出力としてminiHDMI出力を装備している。グラフィックスは、CeleronはIntel HD Graphics、Core i3/i7に関してはIntel HD Graphics 3000となる。1,366×768ドットあるので、Windows 8をインストールした時、Metroスタイルアプリを画面分割して表示する「スナップ機能」も問題無く使用できる。
ネットワークは、有線LANは無く、無線LANがIEEE 802.11b/g/n、そしてBluetooth 3.0+HSにも対応。その他のインターフェイスとしては、USB 2.0×1、SDカードスロット、130万画素Webカメラ、ヘッドフォン出力。また3軸加速度センサー、照度センサーも内蔵する。
以前、Windows 8 Consumer Previewの記事で触れたが、インストール時、DVDドライブとキーボード接続するためできればUSBポートは2つ欲しかった(USB HUBを使う場合、外部電源供給タイプでないとバスパワーのDVDドライブが動かないケースがある)。
サイズは299×209×18mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.09kg。バッテリ駆動時間は最大6.5時間だ。
価格はSSD 32GBモデルと比較して、5,000円アップの89,800円。Core i3モデルも同じ価格差だ。注意する点として、3月19日に発表されたCore i7でメモリ2GB/SSD 32GBの「TW3A-A31C77H」はラインナップから消え、メモリ 4GB/SSD 64GBの「TW3A-A31C79H」が新たに追加された(バッテリ駆動最大6.1時間)。こちらは134,800円となる。
カスタマイズに関しては、プロセッサやメモリ、OSなど主要コンポーネントの変更はできず、BluetoothキーボードやMicrosoft Officeなどの追加オプションとなっている。
液晶パネルのサイズが11.6型と言うこともあり、同社の10.1型スレートPC「TW2A-A25Z7D」と比較した場合、フチの部分があるものの、ほぼパネルサイズがそのまま大きさの差となる。また厚みが18mm、重量約1.09kgなので、iPadやAndroid系のタブレットより、それなりに大きく重く、片手ではなく、両手を使って持ち上げた方が無難だ。
液晶パネルは光沢タイプで、写真からも分かるように映り込みがある。明るさやコントラストは十分あり、発色も自然だが、視野角は狭い(扉と正面の写真参照。どちらも輝度最大)。マルチタッチの反応は過去操作した同種のスレートPCと比較して同程度だった。
筐体は、縁の部分がツヤありブラック、他の部分は少しグレーがかったホワイトとシンプル。左側面に入出力関係、右側面に電源やボリュームなどスイッチ系がまとめてあり、分かり易くかつ扱い易い構成だ。裏中央に一見小さいパネルに見える部分があるが、これは単に枠線が書かれているだけでメモリ交換用などのパネルでは無い。また、バッテリは内蔵型で交換は出来ない。
ノイズや振動は、SSDなのでほぼ感じられないが、裏側の左下、丁度メッシュがある部分が若干暖かくなる。
サウンドに関しては、ステレオ感があり、中域から高域にかけての抜けが良い。ただし、低音はサイズ的に無理があり、加えてパワーも不足気味。Realtek HD オーディオマネージャのサウンドエフェクトを使って補正すれば若干補うことは可能だ。
全体的にiPadやAndroidタブレットなどと比較して、ルックスや質感などがいかにもPCと言う感じで今一歩。今後に期待したい。
●高速なSSDで全体的にサクサク動くOSはメモリ2GBと言うこともあり、32bit版のWindows 7 Home Premium SP1を搭載。CeleronのIntel HD Graphicsにしても、Core i3/i7のIntel HD Graphics 3000にしても、メインメモリ共有タイプなので、用途にもよるが、メモリ2GBではなく4GB、そしてOSは64bit版が欲しいところだ。
初期起動時のデスクトップは賑やかで、左側はほぼ2列分のショートカットが、右側にはウィジェットが並んでいる。SSDは64GBの「C400-MTFDDAT064MAM」。Cドライブ1パーティションで約59GBが割当てられている。工場出荷時の空き容量は42.9GB。
Wi-Fiモジュールは「Intel Centrino Wireless-N 130」、その他のデバイスとしては、「Light Sensor」(照度センサー)も表示されている。
起動時のデスクトップ。左側はほぼ2列分のショートカット、右側にはウィジェットが並び賑やかだ | デバイスマネージャー/主要なデバイス。SSDは64GBの「C400-MTFDDAT064MAM」、Wi-Fiモジュールは「Intel Centrino Wireless-N 130」 | HDDのパーティション。Cドライブ1パーティションで約59GBが割当てられている |
プリインストールされているソフトウェアは、「BookLive!Reader for オンキヨー」、「ebi.BookReader3J」、「乗換案内」、「iフィルター6.0」、「ATOK 2011 for Windows (60日無償試用版)」(未セットアップ)、「マカフィー・PCセキュリティセンター 60日期間限定版」(未セットアップ)、「O-Easy」、そして各デバイスのユーティリティなど。
電子書籍リーダーが入っているのがスレートPCらしいところか。またオプションで「Microsoft Office Personal 2010/Home and Business 2010/Professional 2010」も追加できる。
「O-Easy」は、画面キャプチャからも分かるように、タッチパネルを意識したもので、デバイスのON/OFFや音量、輝度の調整がワンタップで簡単に設定でき、右側面にある[Fn]キーを押しても起動する。物理的に回転をON/OFFするスイッチが無いため、この「G-Sensor」をON/OFFすることによって代用する。
なお、後述するBBenchはこの状態(Bluetooth/Cam/G-SensorをOFF、Volumeをミュート)に加え、輝度を最小にして計測した。
O-Easy | e-onkyo music | オンキヨー電子マニュアル |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.2。プロセッサ 4.2、メモリ 5.5、グラフィックス 4.2、ゲーム用グラフィックス 5.5、プライマリハードディスク 7.8。プロセッサやグラフィックスに関しては、CeleronそしてIntel HD Graphicsと言うこともあり速くないが、SSDなのでプライマリハードディスクが7.8と、システムやアプリケーションの起動などはキビキビ動き、あまり遅さを感じない。
参考までにAtom Z670(1.5GHz/2GB/32GB SSD)を搭載した「TW2A-A25Z7D」のWindows エクスペリエンス インデックスは、総合 2.0。プロセッサ 2.0、メモリ 4.1、グラフィックス 2.9、ゲーム用グラフィックス 3.0、プライマリハードディスク 5.9と、時代を感じさせるスコアとなる。
CrystalMarkは、ALU 14253、FPU 12505、MEM 18035、HDD 32636、GDI 6059、D2D 1396、OGL 1973。こちらも同様で、HDDが3万越え。スレートPCの用途を考えると、少なくともI/O周りが速いのは有効だろう。
BBenchは、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでの結果。バッテリの残5%で15,947秒/4.4時間。最大の6.5時間とは割と開きがある。また、バックライトを最小にするとほとんど見えなくなるため、実作業した場合、もう少し駆動時間は短くなると思われる。バッテリ交換ができず、またスレートPCの性格上、電源ケーブルが接続されていると邪魔になるため、もっと頑張って欲しいところだ。
以上のようにTW3A-A31は、CeleronからCore i7までプロセッサを選べる11.6型スレートPCだ。解像度が1,366×768ドットなので、Windows 8をインストールした時、Metroスタイルアプリを画面分割して表示する「スナップ機能」も問題無く使用できる。6月に入ればリリース候補版(RC)にあたる「Windows 8 Release Preview」が公開されるので、インストールすればフルにWindows 8を試すことができるだろう。
現在、Core i7にまで対応したスレートPCはまだ珍しく、Windows 7用のスレートPCとして使うのはもちろん、Windows 8を見越し、少し先取りしたいユーザーにも魅力的な1台だ。