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Windows 10 S搭載のモバイルノートPC「Surface Laptop」

~今ならWindows 10 Proへも無料で切り替え可能

Surface Laptop

 日本マイクロソフトから登場した「Surface Laptop」は、13.5型液晶搭載のモバイルノートPCである。これまでのSurfaceシリーズは、タブレットとしてもノートPCとしても使える2in1 PCとして展開してきたが、Surface Laptopは、オーソドックスなクラムシェル型ノートPCであり、主に学生をターゲットとした製品である。

 Surface Laptopは、日本マイクロソフトの製品として初めて、OSにWindows 10 Sを採用したことが特徴だ。Windows 10 Sは、Windows 10ファミリーに新しく追加されたエディションであり、Windowsストアから入手したアプリしか動かないようになっている。いわゆるストアアプリしか利用できず、デスクトップアプリは動かない半面、セキュリティや性能の点ではメリットがある。

 Surface Laptopは、搭載メモリやSSD容量の違いによって、下位モデルと上位モデルの2モデルがある。今回、8GBメモリと256GB SSDを搭載した上位モデルを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

筐体は質感の高いアルミ合金製、キーボード周りにアルカンターラを採用

 まず、外観からチェックしていこう。Surface Laptopは、シンプルで洗練されたデザインである。筐体の素材にはアルミ合金が採用されており、質感も高い。本体色は、上位モデルのみプラチナ、グラファイトゴールド、バーガンディ、コバルトブルーの4色から選択可能であり、カラーバリエーションが豊富なことは嬉しい(下位モデルはプラチナのみ)。

 今回の試用機の筐体カラーはプラチナだが、実際の色はつや消しのシルバーといったほうが近い。天面の中央には、Windowsの旗マークがあり、マイクロソフトのSurfaceシリーズであることを主張しつつも、高級感を演出している。

 キーボードの周りやパームレスト部分に、アルカンターラと呼ばれる人工皮革素材を採用していることもSurface Laptopの特徴だ。アルカンターラは、イタリアのアルカンターラという企業が製造している素材で、外観や触感は天然のスエードに似ている。そのため、自動車の内装や家具などに使われており、BMWやベンツ、ランボルギーニなどにも採用されている。

 アルカンターラは東レが開発したエクセーヌの別ブランドであり、耐久性や耐光性、難燃性に優れた素材だ。日本マイクロソフトの製品としては、Surface Pro 4用の「Signatureタイプカバー」に続く採用となる。このアルカンターラの触感だが、手のひらを置いても、冷たさを感じず、適度な柔らかさが心地よい。

 本体サイズは、308.02×223.20×14.47mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.25kgである。13.5型液晶搭載モバイルノートPCとしては、最軽量というわけではないが、十分携帯できる重さだ。液晶のヒンジは130度程度まで開く。

Surface Laptopの上面。シンプルなデザインで好感が持てる
Surface Laptopの底面
キーボードの周りやパームレスト部分には人工皮革素材のアルカンターラが使われている
液晶のヒンジは約130度まで開く
Surface Laptopの試用機の重量は、実測で1.263kgであった

PCとしての基本性能にも不満はない

 では、Surface LaptopのPCとしてのスペックを見ていこう。Surface Laptopは、CPUとして、Core i5-7200U(2.50GHz)を搭載する。Core i5-7200Uは、開発コードネームKaby Lakeと呼ばれていたCPUであり、デュアルコアCPUだが、Hyper-Threadingテクノロジーにより、最大4スレッドの同時実行が可能だ。また、TurboBoostテクノロジーにより、負荷に応じて最大3.10GHzまで動作周波数が向上する。

 メモリは上位モデルは8GB、下位モデルが4GBだが、後から増設はできないので、なるべく上位モデルを選ぶことをお勧めする。

 ストレージとしては、256GB SSDが搭載されている(下位モデルは128GB)。SSDは、NVMe対応であり、試用機には東芝の製品が採用されていた。上位モデルなら、メインマシンとして十分利用できる性能を持っていると言える。

試用機のデバイスマネージャーを開いたところ

キーボードやタッチパッドの操作性も良好

 キーボードは、アイソレーションタイプの全84キーで、キーピッチは19mm、キーストロークは1.5mmである。キー配列は標準的で、剛性感も十分あり、タイピングはしやすい。ただし、電源ボタンがキーボード最上部に配置されていることがやや気になる。

 キーボードにはバックライトが搭載されており、暗い場所でも快適に入力が可能だ。バックライトの輝度は3段階に変更できる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。2in1 PCやモバイルノートPCでは主流のクリックボタンとパッドが一体化したタイプだが、パッドのサイズが大きく、操作はしやすい。複数の指でのジェスチャー操作にも対応している。

アイソレーションタイプのキーボードを採用。キーピッチは19mmで、キーストロークは1.5mm。配列も標準的で使いやすい
キーボードバックライトを搭載。暗い場所でも快適に入力できる
ポインティングデバイスとして、タッチパッドが採用されている。クリックボタンとパッドが一体化したタイプだが、パッドのサイズが大きく、操作性は良好だ

アスペクト比3:2のタッチパネル対応高解像度液晶を搭載、Surfaceペンにも対応

 13.5型で、2,256×1,504ドットの高解像度液晶を搭載していることも魅力だ。最近は、フルHD液晶が主流だが、フルHDの場合、画面のアスペクト比は16:9になる。大部分のWebサイトは縦長にデザインされているので、アスペクト比16:9でWebブラウズをすると、縦方向の解像度がもう少し欲しいと感じることも多い。Surface Laptopの液晶のアスペクトは3:2であり、1,920×1,080ドットのフルHDと比べて解像度が縦横とも高いだけでなく、より正方形に近くなっているため、Webブラウズなども快適だ。

 さらに、10点マルチタッチ対応のタッチパネルを搭載しており、タッチ操作も可能なほか、オプションの新型Surfaceペンによる手書き入力にも対応している。現時点では、Surface Laptopで利用する場合の筆圧感知レベルは1,024段階で、傾き検知には対応していないが、今後のアップデートで筆圧感知レベルがSurface Proと同じく4,096段階になり、傾き検知にも対応するとのことだ。また、液晶の保護ガラスとして、コーニングの「Gorilla Glass 3」が採用されており、傷などにも強い。

 今回は、Surfaceペンもあわせて試用してみたが、遅延が少なく、書き味は非常に良好であった。付属の「Office Home & Business 2016」の「OneNote 2016」やプリインストールされている「SketchBook」の体験版が筆圧感知に対応している。ただし、タブレット形状になるわけではないので、本格的なイラストを描くにはあまり向かない。

液晶は13.5型で、解像度は2,256×1,504ドット。10点マルチタッチ対応で、Surfaceペンに対応する
オプションのSurfaceペンのパッケージ。初代に比べて遅延が少なくなり、快適に手書きイラストやメモを描ける
Surfaceペンには、サイドと上部にボタンが用意されている
Surfaceペンで絵を描いているところ
Surfaceペンで絵を描いている様子。遅延が少なく快適だ
Surfaceペンで書いた名前

Windows Hello顔認証カメラやTPM 2.0も搭載

 Surface Laptopは、セキュリティ機能も充実している。液晶上部に、ビデオチャットなどに利用できる720pカメラとWindows Hello顔認証サインイン用カメラを搭載しており、Windows Helloの顔認識機能を利用してログオンが可能だ。

 実際に、Windows Helloの顔認識を使ってみたが、認識は高速で精度も高い。液晶上部をちょっと見つめるだけで即座にログオンされるので、非常に快適であった。指紋認証よりも気軽に利用できるので、セキュリティを気にする人には特にお勧めしたい。また、セキュリティチップのTPM 2.0も搭載している。

液晶上部に、720pカメラとWindows Hello顔認証サインイン用カメラを搭載している
Windowsのサインインオプション。Windows Helloの顔認識をサポートしている

インターフェイスは必要最低限だがバッテリ駆動時間は長い

 インターフェイスとしては、USB 3.0とMini DisplayPort、ヘッドセット端子のほか、Surface Connectと呼ばれる独自の端子が用意されている。USBポートはできれば2基欲しかったところだが、必要最低限の端子は備えているといえる。

 無線機能としては、IEEE 802.11ac対応無線LAN機能とBluetooth 4.0+LEを搭載。ACアダプタは44W仕様で、コンパクトで携帯しやすい。DCコネクタがSurface Connectであり、USB Type-Cと同じく上下の区別がないので、どちら向きに挿しても問題がない。また、Surface Conncectはマグネットで固定される仕組みになっており、強い力がかかると外れるようになっている。

 ビデオ再生時の公称バッテリ駆動時間は、最大14.5時間とされている。そこで、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、13時間7分という結果になった。無線LAN常時オンでこれだけ持てば、かなり優秀と言える。

左側面には、USB 3.0ポートとMini DisplayPort、ヘッドセット端子が用意されている
左側面の端子部分のアップ
右側面には、Surface Connectが用意されている
右側面の端子部分のアップ
付属のACアダプタ。44W仕様で、コンパクトだ
DCコネクタがSurface Connectになっている。マグネットで固定される仕組みで、USB Type-Cと同様に、どちら向きに挿しても問題ない
ACアダプタ(ケーブル込み)の重量は217gであった

Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えも簡単

 前述したように、Surface Laptopは、OSとしてWindows 10 Sを搭載しているため、実行できるアプリに制限がある。Windowsストアからダウンロードしたアプリ以外を実行しようとすると、ストアアプリしか実行できないことを伝える画面が表示され、実行できない。しかし、従来のデスクトップアプリが使えないと不便なことも多いため、Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えが可能になっている。

 Windows 10 Proへ一度切り替えると、基本的にWindows 10 Sに戻すことはできない。また、Windows 10 Proへの切り替えは、本来は有料(6,900円)なのだが、2018年3月末(当初は2017年12月末までだったが延長された)までは特別に無料で切り替えが可能だ。切り替えは、Windowsストアから行なえ、切り替えにかかる時間も2分30秒程度であった。また、Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えを行なっても、すでにインストールされているアプリやデータなどが消えることはない。

Windows 10 Sでストアアプリ以外を実行しようとすると、このような画面が表示され、実行できない
Windows 10 Sのバージョン情報
ライセンス認証から、「Windows 10 Proに切り替える」を選択することで、Windowsストアに移動する
ストアで、「入手」をクリックする
「インストール」→「はい、アップグレードを開始します」をクリックすれば、Windows 10 Proへの切り替えが開始される
Windows 10 Proに切り替えた後のバージョン情報

ベンチマーク結果も満足

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー XIV 紅蓮のリベレーターベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。

 比較用として、LGエレクトロニクス「LG Gram 15Z970-GA55J」、日本HP「HP Elite Slice」、レノボ「ThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。なお、これらのベンチマークはストアアプリではなく、Windows 10 Sでは動かないため、Windows 10 Proに切り替えた状態で計測を行なった。

 結果は下の表に示したとおりで、同じCPUを搭載したLG Gramと比べて、PCMark 8のスコアはやや低くなっているが、ドラゴンクエストXベンチマークソフトは、かなり上回っている。CrystalDiskMarkは、シーケンシャルリードはかなり高速だが、ランダムリードやランダムライトの性能は他のSSDに比べて落ちるという結果になった。実際の使用感は快適であり、メインマシンとしても十分に使える性能であろう。

Surface Laptopのベンチマーク結果Surface LaptopLG Gram 15Z970-GA55JHP Elite SliceThinkPad X1 Carbon
CPUCore i5-7200U(2.5GHz)Core i5-7200U(2.5GHz)Core i7-6700T(2.8GHz)Core i7-6600U(2.6GHz)
GPUIntel HD Graphics 620Intel HD Graphics 620Intel HD Graphics 530Intel HD Graphics 520
PCMark 8
Home conventional2518271432622635
Home accelerated3024333035803176
Creative conventional2658274733962691
Creative accelerated3885410345503890
Work conventional2725312534622928
Work accelerated3789253447304063
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1,280×720ドット 最高品質6622514565956796
1,280×720ドット 標準品質7254634771536844
1,280×720ドット 低品質8352720383466851
1,920×1,080ドット 最高品質3988260932303109
1,920×1,080ドット 標準品質4925353441484256
1,920×1,080ドット 低品質5976414749275835
ファイナルファンタジーIXV 紅蓮のリベレーターベンチマーク
1,280×720ドット 最高品質1844未計測未計測未計測
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)1947未計測未計測未計測
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)2554未計測未計測未計測
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)3373未計測未計測未計測
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)3395未計測未計測未計測
CrystalDiskMark 5.1.2
シーケンシャルリードQ32T1648.0MB/s547.8MB/s550.7MB/s2592MB/s
シーケンシャルライトQ32T1241.7MB.s383.2MB/s515.1MB/s1533MB/s
4KランダムリードQ32T1105.0MB/s277.2MB/s316.0MB/s545.9MB/s
4KランダムライトQ32T141.00MB/s264.0MB/s298.6MB/s251.7MB/s
シーケンシャルリード401.2MB/s500.2MB/s481.1MB/s1854MB/s
シーケンシャルライト231.8MB/s386.1MB/s454.6MB/s1528MB/s
4Kランダムリード6.660MB/s21.95MB/s28.29MB/s53.99MB/s
4Kランダムライト36.00MB/s72.80MB/s58.61MB/s164.5MB/s

完成度とコストパフォーマンスの高いモバイルノートPC

 Surface Laptopは、Surfaceシリーズ初のオーソドックスなクラムシェル型モバイルノートPCだが、Surfaceシリーズで培った技術が注ぎ込まれた、完成度の高い製品である。Windows 10 Sを採用したことで、下位モデルが126,800円、上位モデルが146,800円と、リーズナブルな価格を実現している。Office Home and Business 2016が付属することを考えれば、コストパフォーマンスはかなり高いと言える。

 Windows Hello顔認証への対応やアスペクト比3:2の高解像度液晶も魅力だ。アルカンターラ素材の手触りも素晴らしい。バッテリ駆動時間も長いので、遠方への出張が多い人にもお勧めだ。PCとしての基本性能だけでなく、デザインにもこだわりたいという人には、有力な選択肢となるだろう。