Hothotレビュー
Windows 10 S搭載のモバイルノートPC「Surface Laptop」
~今ならWindows 10 Proへも無料で切り替え可能
2017年9月14日 12:24
日本マイクロソフトから登場した「Surface Laptop」は、13.5型液晶搭載のモバイルノートPCである。これまでのSurfaceシリーズは、タブレットとしてもノートPCとしても使える2in1 PCとして展開してきたが、Surface Laptopは、オーソドックスなクラムシェル型ノートPCであり、主に学生をターゲットとした製品である。
Surface Laptopは、日本マイクロソフトの製品として初めて、OSにWindows 10 Sを採用したことが特徴だ。Windows 10 Sは、Windows 10ファミリーに新しく追加されたエディションであり、Windowsストアから入手したアプリしか動かないようになっている。いわゆるストアアプリしか利用できず、デスクトップアプリは動かない半面、セキュリティや性能の点ではメリットがある。
Surface Laptopは、搭載メモリやSSD容量の違いによって、下位モデルと上位モデルの2モデルがある。今回、8GBメモリと256GB SSDを搭載した上位モデルを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
筐体は質感の高いアルミ合金製、キーボード周りにアルカンターラを採用
まず、外観からチェックしていこう。Surface Laptopは、シンプルで洗練されたデザインである。筐体の素材にはアルミ合金が採用されており、質感も高い。本体色は、上位モデルのみプラチナ、グラファイトゴールド、バーガンディ、コバルトブルーの4色から選択可能であり、カラーバリエーションが豊富なことは嬉しい(下位モデルはプラチナのみ)。
今回の試用機の筐体カラーはプラチナだが、実際の色はつや消しのシルバーといったほうが近い。天面の中央には、Windowsの旗マークがあり、マイクロソフトのSurfaceシリーズであることを主張しつつも、高級感を演出している。
キーボードの周りやパームレスト部分に、アルカンターラと呼ばれる人工皮革素材を採用していることもSurface Laptopの特徴だ。アルカンターラは、イタリアのアルカンターラという企業が製造している素材で、外観や触感は天然のスエードに似ている。そのため、自動車の内装や家具などに使われており、BMWやベンツ、ランボルギーニなどにも採用されている。
アルカンターラは東レが開発したエクセーヌの別ブランドであり、耐久性や耐光性、難燃性に優れた素材だ。日本マイクロソフトの製品としては、Surface Pro 4用の「Signatureタイプカバー」に続く採用となる。このアルカンターラの触感だが、手のひらを置いても、冷たさを感じず、適度な柔らかさが心地よい。
本体サイズは、308.02×223.20×14.47mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.25kgである。13.5型液晶搭載モバイルノートPCとしては、最軽量というわけではないが、十分携帯できる重さだ。液晶のヒンジは130度程度まで開く。
PCとしての基本性能にも不満はない
では、Surface LaptopのPCとしてのスペックを見ていこう。Surface Laptopは、CPUとして、Core i5-7200U(2.50GHz)を搭載する。Core i5-7200Uは、開発コードネームKaby Lakeと呼ばれていたCPUであり、デュアルコアCPUだが、Hyper-Threadingテクノロジーにより、最大4スレッドの同時実行が可能だ。また、TurboBoostテクノロジーにより、負荷に応じて最大3.10GHzまで動作周波数が向上する。
メモリは上位モデルは8GB、下位モデルが4GBだが、後から増設はできないので、なるべく上位モデルを選ぶことをお勧めする。
ストレージとしては、256GB SSDが搭載されている(下位モデルは128GB)。SSDは、NVMe対応であり、試用機には東芝の製品が採用されていた。上位モデルなら、メインマシンとして十分利用できる性能を持っていると言える。
キーボードやタッチパッドの操作性も良好
キーボードは、アイソレーションタイプの全84キーで、キーピッチは19mm、キーストロークは1.5mmである。キー配列は標準的で、剛性感も十分あり、タイピングはしやすい。ただし、電源ボタンがキーボード最上部に配置されていることがやや気になる。
キーボードにはバックライトが搭載されており、暗い場所でも快適に入力が可能だ。バックライトの輝度は3段階に変更できる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。2in1 PCやモバイルノートPCでは主流のクリックボタンとパッドが一体化したタイプだが、パッドのサイズが大きく、操作はしやすい。複数の指でのジェスチャー操作にも対応している。
アスペクト比3:2のタッチパネル対応高解像度液晶を搭載、Surfaceペンにも対応
13.5型で、2,256×1,504ドットの高解像度液晶を搭載していることも魅力だ。最近は、フルHD液晶が主流だが、フルHDの場合、画面のアスペクト比は16:9になる。大部分のWebサイトは縦長にデザインされているので、アスペクト比16:9でWebブラウズをすると、縦方向の解像度がもう少し欲しいと感じることも多い。Surface Laptopの液晶のアスペクトは3:2であり、1,920×1,080ドットのフルHDと比べて解像度が縦横とも高いだけでなく、より正方形に近くなっているため、Webブラウズなども快適だ。
さらに、10点マルチタッチ対応のタッチパネルを搭載しており、タッチ操作も可能なほか、オプションの新型Surfaceペンによる手書き入力にも対応している。現時点では、Surface Laptopで利用する場合の筆圧感知レベルは1,024段階で、傾き検知には対応していないが、今後のアップデートで筆圧感知レベルがSurface Proと同じく4,096段階になり、傾き検知にも対応するとのことだ。また、液晶の保護ガラスとして、コーニングの「Gorilla Glass 3」が採用されており、傷などにも強い。
今回は、Surfaceペンもあわせて試用してみたが、遅延が少なく、書き味は非常に良好であった。付属の「Office Home & Business 2016」の「OneNote 2016」やプリインストールされている「SketchBook」の体験版が筆圧感知に対応している。ただし、タブレット形状になるわけではないので、本格的なイラストを描くにはあまり向かない。
Windows Hello顔認証カメラやTPM 2.0も搭載
Surface Laptopは、セキュリティ機能も充実している。液晶上部に、ビデオチャットなどに利用できる720pカメラとWindows Hello顔認証サインイン用カメラを搭載しており、Windows Helloの顔認識機能を利用してログオンが可能だ。
実際に、Windows Helloの顔認識を使ってみたが、認識は高速で精度も高い。液晶上部をちょっと見つめるだけで即座にログオンされるので、非常に快適であった。指紋認証よりも気軽に利用できるので、セキュリティを気にする人には特にお勧めしたい。また、セキュリティチップのTPM 2.0も搭載している。
インターフェイスは必要最低限だがバッテリ駆動時間は長い
インターフェイスとしては、USB 3.0とMini DisplayPort、ヘッドセット端子のほか、Surface Connectと呼ばれる独自の端子が用意されている。USBポートはできれば2基欲しかったところだが、必要最低限の端子は備えているといえる。
無線機能としては、IEEE 802.11ac対応無線LAN機能とBluetooth 4.0+LEを搭載。ACアダプタは44W仕様で、コンパクトで携帯しやすい。DCコネクタがSurface Connectであり、USB Type-Cと同じく上下の区別がないので、どちら向きに挿しても問題がない。また、Surface Conncectはマグネットで固定される仕組みになっており、強い力がかかると外れるようになっている。
ビデオ再生時の公称バッテリ駆動時間は、最大14.5時間とされている。そこで、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、13時間7分という結果になった。無線LAN常時オンでこれだけ持てば、かなり優秀と言える。
Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えも簡単
前述したように、Surface Laptopは、OSとしてWindows 10 Sを搭載しているため、実行できるアプリに制限がある。Windowsストアからダウンロードしたアプリ以外を実行しようとすると、ストアアプリしか実行できないことを伝える画面が表示され、実行できない。しかし、従来のデスクトップアプリが使えないと不便なことも多いため、Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えが可能になっている。
Windows 10 Proへ一度切り替えると、基本的にWindows 10 Sに戻すことはできない。また、Windows 10 Proへの切り替えは、本来は有料(6,900円)なのだが、2018年3月末(当初は2017年12月末までだったが延長された)までは特別に無料で切り替えが可能だ。切り替えは、Windowsストアから行なえ、切り替えにかかる時間も2分30秒程度であった。また、Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えを行なっても、すでにインストールされているアプリやデータなどが消えることはない。
ベンチマーク結果も満足
参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー XIV 紅蓮のリベレーターベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。
比較用として、LGエレクトロニクス「LG Gram 15Z970-GA55J」、日本HP「HP Elite Slice」、レノボ「ThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。なお、これらのベンチマークはストアアプリではなく、Windows 10 Sでは動かないため、Windows 10 Proに切り替えた状態で計測を行なった。
結果は下の表に示したとおりで、同じCPUを搭載したLG Gramと比べて、PCMark 8のスコアはやや低くなっているが、ドラゴンクエストXベンチマークソフトは、かなり上回っている。CrystalDiskMarkは、シーケンシャルリードはかなり高速だが、ランダムリードやランダムライトの性能は他のSSDに比べて落ちるという結果になった。実際の使用感は快適であり、メインマシンとしても十分に使える性能であろう。
Surface Laptopのベンチマーク結果 | Surface Laptop | LG Gram 15Z970-GA55J | HP Elite Slice | ThinkPad X1 Carbon |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i5-7200U(2.5GHz) | Core i5-7200U(2.5GHz) | Core i7-6700T(2.8GHz) | Core i7-6600U(2.6GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 620 | Intel HD Graphics 620 | Intel HD Graphics 530 | Intel HD Graphics 520 |
PCMark 8 | ||||
Home conventional | 2518 | 2714 | 3262 | 2635 |
Home accelerated | 3024 | 3330 | 3580 | 3176 |
Creative conventional | 2658 | 2747 | 3396 | 2691 |
Creative accelerated | 3885 | 4103 | 4550 | 3890 |
Work conventional | 2725 | 3125 | 3462 | 2928 |
Work accelerated | 3789 | 2534 | 4730 | 4063 |
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K | ||||
1,280×720ドット 最高品質 | 6622 | 5145 | 6595 | 6796 |
1,280×720ドット 標準品質 | 7254 | 6347 | 7153 | 6844 |
1,280×720ドット 低品質 | 8352 | 7203 | 8346 | 6851 |
1,920×1,080ドット 最高品質 | 3988 | 2609 | 3230 | 3109 |
1,920×1,080ドット 標準品質 | 4925 | 3534 | 4148 | 4256 |
1,920×1,080ドット 低品質 | 5976 | 4147 | 4927 | 5835 |
ファイナルファンタジーIXV 紅蓮のリベレーターベンチマーク | ||||
1,280×720ドット 最高品質 | 1844 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1947 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 2554 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 3373 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 3395 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
CrystalDiskMark 5.1.2 | ||||
シーケンシャルリードQ32T1 | 648.0MB/s | 547.8MB/s | 550.7MB/s | 2592MB/s |
シーケンシャルライトQ32T1 | 241.7MB.s | 383.2MB/s | 515.1MB/s | 1533MB/s |
4KランダムリードQ32T1 | 105.0MB/s | 277.2MB/s | 316.0MB/s | 545.9MB/s |
4KランダムライトQ32T1 | 41.00MB/s | 264.0MB/s | 298.6MB/s | 251.7MB/s |
シーケンシャルリード | 401.2MB/s | 500.2MB/s | 481.1MB/s | 1854MB/s |
シーケンシャルライト | 231.8MB/s | 386.1MB/s | 454.6MB/s | 1528MB/s |
4Kランダムリード | 6.660MB/s | 21.95MB/s | 28.29MB/s | 53.99MB/s |
4Kランダムライト | 36.00MB/s | 72.80MB/s | 58.61MB/s | 164.5MB/s |
完成度とコストパフォーマンスの高いモバイルノートPC
Surface Laptopは、Surfaceシリーズ初のオーソドックスなクラムシェル型モバイルノートPCだが、Surfaceシリーズで培った技術が注ぎ込まれた、完成度の高い製品である。Windows 10 Sを採用したことで、下位モデルが126,800円、上位モデルが146,800円と、リーズナブルな価格を実現している。Office Home and Business 2016が付属することを考えれば、コストパフォーマンスはかなり高いと言える。
Windows Hello顔認証への対応やアスペクト比3:2の高解像度液晶も魅力だ。アルカンターラ素材の手触りも素晴らしい。バッテリ駆動時間も長いので、遠方への出張が多い人にもお勧めだ。PCとしての基本性能だけでなく、デザインにもこだわりたいという人には、有力な選択肢となるだろう。